プログラミング経験はゼロでした。「ゲームエンジン」という言葉の意味すら知りませんでした。そんな状態で、AIに言葉で説明するだけで3日でゲームを1本作り、リリースまでにかかったお金は $45 でした。
この記事は、おバカなレースゲーム「スパームレース」の開発日誌の第1回です。
- Google Play: スパームレース
- Web版(itch.io): Sperm Race — 最初に公開したのは itch.io で、そのあと Google Play でリリースしました。
「簡単なゲームを作ろう」から精子までさかのぼった
最初の目標はシンプルでした。「とりあえず簡単なゲームを作ろう」。
ところが「簡単なゲーム」を突き詰めていくうちに、考えがどんどん原始的なところへ下りていきました。ルールがひとつだけのゲーム、説明のいらないゲーム、誰でも知っているゲーム。そうやってさかのぼってたどり着いたのが精子でした。前に泳いで卵子にたどり着けばゴール。考えてみれば、私たち全員が一度は1位を取ったことのあるレースです。
そう思った瞬間、ひとりで笑ってしまいました。「あれ、これ面白いぞ」。
このひと言でゲームの方向が決まりました。真面目なゲームではなく、見た瞬間にクスッと笑えるおバカなゲームにしようと。
ゲームエンジンが何かも知らなかった
私はコードを書いたことがありません。Unity や Godot のようなゲームエンジンがあることも、それが何をするものなのかも知りませんでした。
だからエンジンなしで始めました。Claude(Sonnet)に韓国語で「こんなゲームを作りたい」と伝えると、返ってきたのはブラウザですぐ動く HTML ファイル1つでした。あとでこれをそのまま Android アプリに包んで Google Play に出しました。コードを自分で書かず、AIに言葉で説明して作るこのやり方は、いまの言葉でいうバイブコーディングです。振り返ると、何も知らないまま始めたのがかえって速かったと思います。エンジンのインストールも勉強もなしに、初日から遊べたからです。
最初の指示:「精子が卵子に会いに行くゲームを作りたい」
この一文で最初のバージョンができました。画面に精子が現れ、指で動かせました。
問題はしっぽでした。棒のようにピンとまっすぐで、精子というよりマッチ棒に近い見た目でした。そこで2つ目に言ったのがこれです。
「しっぽにウェーブを入れて」
左が最初のまっすぐなしっぽ、右がウェーブを入れた次のバージョンです。しっぽを揺らしただけで、ようやく生きている精子に見えるようになりました。これで主人公が決まりました。
3日間、足して、削って、また足した
そこからは止まりませんでした。ひとつ作って遊んでみると、次のアイデアが浮かびます。浮かんだら足し、試してイマイチなら削り、また足す。その繰り返しでした。
- 「マップを作って」 泳ぐ場所ができました。
- 「障害物も作って」 よけるものができた瞬間、ゲームになりました。これがいまのアドベンチャーモードです。
- 「本物のカーレースみたいに精子レースを入れて」 トラックを3周するレーシングモードができました。
- 「競馬みたいに自動で走って、自分は障害物を置くモードを作って」 応援する精子を選び、障害物で優勝を手助けするダービーモードです。
- 「がんをモチーフに逃げ回るサバイバルモードを作って」 迷路の中でがん細胞をよけて1分30秒生き残るモードです。
ダウンロードフォルダに残っているファイルの日付を見ると、当時のスピードがそのままわかります。8月19日の未明に最初の HTML ファイルを受け取り、翌日の午後までに修正版を16回受け取り直しました。半日に4〜5回のペースで「ここ直して → 新しいファイルを受け取る → 遊ぶ」を繰り返した計算です。その間にコードは 47KB から 149KB に増えました。8月21日には、もうストア用のスクリーンショットを撮っていました。
絵も効果音もコードで
このゲームには画像ファイルが1枚もありません。キャラクター、背景、トラック、迷路まで、すべて Sonnet がコードで描きました。
左からアドベンチャー、レーシング、ダービー、サバイバルです。精子は楕円1つと揺れる線、トラックは太い曲線、迷路は光る直線だけ。おバカなゲームには、むしろこのシンプルさが合っていました。
効果音も同じです。音声ファイルは使わず、Sonnet がコードで音を合成しました。ゲームのフォルダに入っている音のファイルは、Pixabay の無料BGMだけです。
テスターの最初の反応:「斬新!」
リリース前にテスターに遊んでもらいました。返ってきたのは「斬新!」というひと言でした。
「あれ、これ面白いぞ」から始まったアイデアは、私ひとりだけが面白がっていたわけではなかったのです。
リリース時に入っていたのはこれだけです。
- モード4つ:アドベンチャー(全120ステージ)、レーシング(3周)、ダービー、サバイバル(1分30秒生き残る)
- 13言語に対応
- 操作:ドラッグ、矢印キー・WASD、ゲームパッド
友達と一緒に遊べるマルチプレイ(ダービーは最大10人、ほかのモードは4人)は、リリース後のアップデートで追加しました。
で、いくらかかったのか:$45
| 項目 | 使ったもの | 費用 |
|---|---|---|
| コード | Claude Pro のサブスク(Sonnet) | $20(1か月) |
| グラフィック | コードで描画 | $0 |
| BGM | Pixabay の無料音源 | $0 |
| 効果音 | コードで作成 | $0 |
| リリース | Google Play デベロッパー登録 | $25(1回だけ) |
| 合計 | $45 |
いまは Claude Max 20× を使っていますが、スパームレースはPro プランだけで最後まで作りました。 1か月以内に終わったので、サブスク代も1か月分だけです。
ちなみに AIゲーム制作費計算機 で小規模なゲームを計算すると、画像・音楽AIと Claude Max を使う標準の組み合わせで $128〜181 になります。スパームレースはその約25〜35%で済んだことになります。
次回予告
ここまでだと「AIで3日でゲームがサクッとできた」ように見えます。でも本当の苦労はそのあとでした。作るのは3日、バグを直すのには14日かかったのです。
次回:作るのは3日、バグ直しは14日 — AIに「バグを探して」と頼むとなぜ関係ないところをいじるのか、最終的に人がバグを見つけてAIに直させるようにした方法をまとめます。
この記事は tokensave.app にも掲載しています。



