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都知事杯First Stageで落選したので、Trait Compassを5つの審査軸で自己評価した

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Last updated at Posted at 2026-09-27

はじめに:「作ったこと」と「示せたこと」は、別だった

都知事杯オープンデータ・ハッカソン2026に、相談先探しを支援する「Trait Compass」で参加しました。結果は、First Stageで落選でした。

「何が足りなかったのだろう」。

この問いを、機能の数だけで考えると難しくなります。困りごとの整理、相談先検索、相談準備メモ。データの取り込みやプライバシーへの配慮も含めて、作ったものはあります。

ただ、資料を見直して気になったのは、別のことでした。

何を作ったかは説明している。でも、それによって誰の行動がどう変わるのかを、どこまで示せていたのか。

そこで、公式の5つの審査軸に沿って振り返りました。「こうすれば通過できた」という攻略法ではなく、次に何を確かめるべきかを整理するための記録です。

TL;DR

  • セルフチェックと支援情報の橋渡しで、説明の主役が分かれていました。 今なら、自治体ごとに分散した情報から「次の相談先を探せること」を先に伝えます。
  • データ件数や技術名より、利用者にとっての意味を示す必要がありました。 情報の根拠・鮮度・地域差と、AIを使う必要性や検索の精度を結び付けて説明します。
  • 掲載実績と利用者の成果は別でした。 次は「どれだけ掲載したか」に加えて、「使った人が次の行動を決められたか」を確かめます。

Trait Compassの振り返りを、データ活用、アイデア力、技術力、ソーシャルインパクト、サービスデザインの5つの問いで整理した図。点数や審査結果の推定ではない。

Part 1:何を作り、2分で何を伝えたのか

Trait Compassは、発達特性に関連する日常の困りごとを整理し、年齢・地域・相談したいことから公的な支援情報を探し、相談の準備につなげるWebアプリです。医学的な診断をするものではありません。設計の全体像はプロジェクトのREADMEにまとめています。

First Stageは、公式の案内では2分間のプレゼン動画等による審査です。当時の資料は、次の6枚で構成していました。

表紙 → 課題 → セルフチェックから相談先を探すデモ → データ活用 → プライバシー → 社会実装

参照したのは2026年8月29日時点のスライドとスピーカーノートです。現在のアプリにある機能を、当時すでに伝えられていた実績として扱わないようにしました。

並べてみると、流れ自体がばらばらだったわけではありません。ただ、このサービスの中心である「行政の支援情報を、次の行動に変える仕組み」は4枚目に置いていました。

ここから、5つの軸で見直していきます。

Part 2:5つの審査軸で見直す

公式の審査基準は、「データ活用」「アイデア力」「技術力」「ソーシャルインパクト」「サービスデザイン」です。以下の表は、その基準を自分のサービスへの問いに置き換えたものです。

審査軸 今回、自分に問い直したこと
データ活用 件数だけでなく、根拠・鮮度・地域差が相談先探しにどう役立つかを示せたか
アイデア力 誰が、どんな場面で使い、何を得られるかを一言で伝えられたか
技術力 RAGやクラウドを使ったことではなく、必要性と精度を説明できたか
ソーシャルインパクト 課題の大きさだけでなく、利用者の声や行動の変化を示せたか
サービスデザイン チェック結果を見たあと、またはチェックをせずに、次の行動へ進めるか

1. データ活用:集めた量より、探せる状態に変えた意味

自治体ごとに、支援情報の形式や分類は異なります。Trait Compassでは、CSV・PDF・Webページに分散した情報を共通形式に整理し、地域・ライフステージ・相談分野から探せるようにしました。

当時のデータ活用スライドにも、この流れや、出典・ライセンス・最終取得日を公開する方針は載せています。つまり、「説明していなかった」という反省ではありません。

足りなかったと感じるのは、その整備によって、利用者の何が楽になるのかを前に出すことです。

たとえば、「多くの窓口を掲載した」だけでなく、「自治体ごとの分類を読み解かなくても、自分の条件から候補を探せる」と説明する。取得日を表示することも、単なる管理項目ではなく、「利用前に情報の時点と公式の根拠を確かめられる」と伝える。

また、掲載数が少ない地域を、支援そのものが少ない地域と混同させてはいけません。データの未整備と、現実の支援の有無は別です。

今なら、データの価値をこう説明します。

自治体ごとに分散した支援情報を、根拠と情報の時点を確認しながら、困りごとから探せる形に整えました。

2. アイデア力:セルフチェックが主役なのか、相談への橋渡しが主役なのか

Trait Compassには、2つの価値があります。

日常の困りごとを整理すること。そして、整理した困りごとから公的な相談先を探すことです。

当時のデモは、30問のセルフチェックから始めました。これは操作の説明としては自然ですが、今読み返すと、セルフチェックそのものの印象が強くなる構成です。

本当に解決したかったのは、 「困っていることには気づいた。でも、どこに相談すればいいのか分からない」 という場面でした。

たとえば、「子どもの学校生活で気になることがあり、住んでいる自治体の相談先を初めて探す保護者」。今なら、このような一つの利用場面を最初に置きます。これは説明用の場面であり、利用者ヒアリングの実例ではありません。

対象年齢を広く設計したことを、取り消す必要はないと思っています。サービスが扱う範囲と、2分で最初に見せる場面は、同じ広さでなくてよかった。 ここが反省点です。

提出時の説明はセルフチェックから相談先へ進む構成。今なら、分散した支援情報を整理して次の相談先を探せる価値を先に説明し、セルフチェックは入口の一つとして位置付ける。

3. 技術力:RAGを使った。その先を説明できたか

当時の資料には、Cloudflare Workers・D1・R2などの構成や、個別回答を端末内で処理する設計を載せました。

ただ、技術名を並べても、それだけでは「なぜこの課題に必要なのか」までは伝わりません。ここは、RAGのように検索と生成AIを組み合わせる仕組みでも同じです。

相談先を探すサービスなら、説明したいのは「AIを使っている」ことより、年齢や地域が対象外の候補を出さず、根拠のある情報へ案内できるかです。

今なら、「困りごとの表現の揺れを検索でどう扱うか」「条件が合わない候補をどう除くか」「候補がないときに、無理に答えを作らないか」を、代表的なケースで示します。そのうえで、条件検索だけの場合と比べ、RAGを使う意味があるのかを確かめたいです。

現在のREADMEのAI・RAG品質評価には評価の仕組みも整理しています。ただし、評価の仕組みがあることと、提出時点で精度や改善効果を示せていたことは別です。

反省は「もっと高度なAIを入れるべきだった」ではありません。技術を選んだ理由と、うまく働く範囲を、確認できる形で示すべきでした。

4. ソーシャルインパクト:54自治体に掲載した。その先は?

当時の最後のスライドでは、東京都の62区市町村のうち54区市町村で支援情報を掲載していることを示しました。これは当時の掲載範囲であり、各自治体の情報をすべて網羅したという意味ではありません。

データを集めて公開し、動く形にしたことは、確かに一つの実績です。

でも、「54自治体に掲載した」は、作り手が用意したものの量です。「使った人が次の相談先を決められた」は、利用者に起きた変化です。

今回の資料では、後者を利用者の声や実証結果として示せていませんでした。課題の大きさを説明することと、自分のサービスが役立ったと示すことを、十分に分けられていなかったと思います。

次は、保護者や支援者に試してもらい、「次に連絡する候補を選べたか」「探す途中でどこに迷ったか」を確かめたいです。

主要な指標にしたいのは、試した人のうち、適切な次の行動を見つけられた人の割合です。単に「見つかった気がする」だけではなく、選んだ窓口の対象地域や年齢も確認します。これは今後の検証方針で、測定済みの成果ではありません。

当時の掲載実績は54区市町村。次に検証したいのは、利用者が条件に合う相談先候補を選び、次の行動を決められるか。掲載範囲と利用者成果を分けて考える図。

5. サービスデザイン:30問に答えないと、使えないように見えていなかったか

Trait Compassは、セルフチェックをしなくても支援情報を探せます。当時のデモ資料にも注記し、スピーカーノートでも触れています。

ただ、画面の大きな流れは「30問のセルフチェック → 相談分野 → 相談先」でした。

相談したいことが決まっている人にとっては、まず窓口を探せる方が自然です。今なら、「困りごとを整理したい人」と「相談先をすぐ探したい人」の2つの入口を、最初から同じくらい分かりやすく見せます。

そして、相談先の一覧が出たところで説明を終えない。候補の公式情報を確認し、必要なら相談準備メモを作るところまで、一つの場面として見せたいです。

回答を端末内で処理することや、AI利用を任意にすることも、残したい設計です。ただし、その説明を短くすることと、実装上の配慮を減らすことは別です。

迷わず進めることと、安心して使えること。その両方が、次の行動につながっているか。 画面が用意できたかではなく、実際の使われ方で確かめたいと思います。

Part 3:今なら、何を変えるか

振り返って変わったのは、「あと何を実装するか」より先に考えることでした。

提出時に前へ出していたこと 今なら先に確かめ、伝えたいこと
セルフチェックから始まる操作の流れ 誰が、どの場面で、次の相談先を探せるのか
使った技術や整備したデータ なぜ必要で、どこまで正しく案内できるのか
対応する自治体の数 利用者が次の行動を決められたか

ここから先は、まだ完了した改善実績ではなく、次に取り組む方針です。

最初の一文を変える

今なら、サービス紹介はこう始めます。

自治体ごとに分散した支援情報を整理し、日常の困りごとから、自分の地域の相談先を探せるようにしました。

セルフチェックは、この説明のあとに「困りごとを整理する入口の一つ」として紹介します。

一つの利用場面で、最後まで試す

最初からすべての年齢・目的を検証しようとせず、一つの場面で、探し始めてから次の行動を選ぶまでを観察します。

候補が出たかだけでなく、対象条件を理解できたか、公式情報を確認できたか、相談する内容を整理できたか。そこで止まるところを見つけて直します。

スライドより先に、成果の材料を増やす

資料の順序を変えるだけなら、すぐにできます。でも、それで利用者の成果が生まれるわけではありません。

次は、実際に試してもらった人数、迷った箇所、改善した内容を残す。結果が良くなかったケースも含めて、何を変えたかを説明できるようにしたいです。

「伝え方が悪かった」で終わらせず、「伝えられる根拠が足りなかった」ことも引き受ける。 今回の振り返りで、ここは外したくないと思いました。

まとめ:「足りなかった機能」より、「確かめられていなかった価値」

5つの軸で振り返っても、落選理由を確定することはできません。説明を変えれば通過できた、とも言えません。

それでも、次にやることは見えました。

データを集めたなら、探しやすさにつながったか。AIを使うなら、使わない場合と比べて意味があるか。画面を作ったなら、そこで止まらず次の行動に進めるか。

Trait Compassで作りたかったのは、セルフチェックの結果を出すことではなく、困っている人と相談先のあいだをつなぐことです。

次は、「ここまで作りました」の続きを、「使った人に、こういう変化がありました」で示せるようにする。 そのための検証を進めていきたいと思います。

参考資料・関連リンク

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