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Cisco Merakiと他社クラウド管理UIの比較 — UI設計思想の違いに注目する

Last updated at Posted at 2025-12-12

:christmas_tree: はじめに

この記事はシスコの有志による Cisco Systems Japan Advent Calendar 2025 の 12 日目 (シリーズ 2) として投稿しています。

📅 これまでのカレンダーの一覧

2017 年版: https://qiita.com/advent-calendar/2017/cisco
2018 年版: https://qiita.com/advent-calendar/2018/cisco
2019 年版: https://qiita.com/advent-calendar/2019/cisco
2020 年版 (1): https://qiita.com/advent-calendar/2020/cisco
2020 年版 (2): https://qiita.com/advent-calendar/2020/cisco2
2021 年版 (1): https://qiita.com/advent-calendar/2021/cisco
2021 年版 (2): https://qiita.com/advent-calendar/2021/cisco2
2022 年版 (1,2): https://qiita.com/advent-calendar/2022/cisco
2023 年版: https://qiita.com/advent-calendar/2023/cisco
2024 年版: https://qiita.com/advent-calendar/2024/cisco
2025 年版: https://qiita.com/advent-calendar/2025/cisco

:chocolate_bar: クラウドNW管理について

クラウド型ネットワーク管理プラットフォームは、無線LAN・スイッチ・SD-WAN などのネットワーク運用を大きく効率化し、監視・可視化の在り方にも変化をもたらしました。中でも Cisco Meraki Dashboard は、その分かりやすさと統一されたUIで多くのユーザー様に支持されています。

私は以前、別のネットワークベンダーでクラウド管理型Wi-Fi/スイッチ製品を扱っていましたが、縁あって現在はCiscoでMerakiに関わっています。

以前の製品(以下、製品Bとします)のUIに慣れ親しんでいた私が、初めてCisco Meraki Dashboardを触ったとき、**「同じクラウド管理コンソールなのに、情報の見せ方やメニューの掘り下げ方が全然違う」**ということに気づきました。

本記事では、特定の製品を批判する意図はなく、**「なぜそのUI構成になっているのか?」**という背景を、管理対象デバイスの広さ(IoTなど)や設計思想の違いから考察してみたいと思います。

:apple: Cisco Merakiの概要(簡潔)

Cisco Meraki は、クラウドベースのネットワーク管理を前提として設計された製品ファミリーです。設定のシンプルさとUI・UXの統一性を強く意識しており、導入から運用まで“迷わない”ことを追求しています。

● Meraki の主な特徴

  • すべての設定がクラウド経由で即時反映
  • シンプルで直感的な UI による低い学習コスト
  • AP・スイッチ・SD-WAN・カメラ・センサーなど管理対象が幅広い
  • すべての製品が単一の UI に統合されている
  • 特にカメラや環境センサーなど管理領域が広い点は、Meraki UIの構造にも影響しています

:map: Cisco Meraki の UI 構成・論理図

Meraki Dashboard は “製品カテゴリ、または利用したい機能を軸とした階層構造” という分かりやすい構成を採用しています。ユーザーはまず製品カテゴリ(無線・スイッチなど)を選び、その中で設定や監視を行います。

● Meraki UI の設計思想

  • 製品カテゴリ、機能単位で明確にメニューが分かれている
  • 画面レイアウトが統一されていて迷いにくい
  • Network(ネットワーク単位)で全デバイスをグループ化
  • 導線が短く、操作の完結性が高い
  • 「ITインフラ」だけでなく「物理空間(オフィス)」そのものを管理する思想
    • カメラや環境センサーも同じ「Network」に含まれるため、「東京本社のWi-Fiが落ちた時に、現地のカメラ映像や温度を同じ画面ですぐ確認する」といった横断的な運用が可能になっています。

● Meraki UI の論理構成(概念図)

スクリーンショット 2025-12-12 0.55.36.png
(一部機能割愛&わかりにくい図ですみません・・・)

● 実際のMeraki UI の見た目
Organization > Overview画面
スクリーンショット 2025-12-12 0.58.02.png

画面左側のメインメニュー
(製品カテゴリー・機能ごとのボタンが配置されている)
スクリーンショット 2025-12-12 17.46.42.png

Wireless > Monitor or Configure
スクリーンショット 2025-12-12 17.45.52.png

いかがでしょうか。上のツリー図を見た後に実際のキャプチャを見るとよりイメージが湧きやすくなるかもしれませんが、Meraki の UI では主要なメニューボタンが画面左側に集まっており、「製品のカテゴリごとに設定をする」「使いたい機能ごとに設定をしにいく」という設計で、階層が浅く目的地にたどり着きやすい点が使いやすさにつながっていると考えます。

:orange_book: 他社クラウド管理UIで見られるアプローチ(一例)

Meraki とは対照的に、他社のクラウド管理コンソールでは別の UI 構造を採用している場合があります。本記事では特定の製品名は挙げず、一例を挙げてご紹介します。

コンテキスト(文脈)の切り替え 他社UIでは、設計思想として**「設定(Configuration)」と「監視(Monitoring)」のモードが明確に分かれている**ケースが多く見られます。「今は設定をする時間」「今は監視をする時間」と意識を切り替える必要がある一方で、誤操作を防ぎやすいという側面もあります。 対してMerakiは、設定画面と監視画面がシームレスに同居しており、モード切替のステップを省いている点が特徴です。

● 他社 UI で見られる特徴

  • デバイスの論理的な集まりやロケーション(Site)を主軸にした階層構造
  • 階層を指定した上で対象デバイスグループ、特定デバイスに対して設定適用・監視
  • AP・スイッチ・ゲートウェイなど多要素の “関係性” を可視化

Meraki が「シンプルな設定と使いやすさ」を重視していることから、製品カテゴリ・機能ごとのアプローチをしているのに対し、他社 UI では「多様なデバイスは一旦ひとまとめにしてから、さらにその下の階層で必要なデバイスに対して設定・監視していく、といったアプローチもある印象です。では、実際に例を図示していきます。

:watermelon: 他社クラウド管理 UI で見られる構成(概念図)

製品カテゴリよりも “サイト(ロケーション)” や “デバイスの集まり” を中心として構成されることがあります。

スクリーンショット 2025-12-12 0.45.39.png

● この構造のメリット

  • サイト単位での運用状況が俯瞰しやすい
  • 多段の階層になっているため、より細かな制御・監視が可能

:libra: Meraki と他社 UI の比較 — 設計思想のちがい

観点 Cisco Meraki 他社管理UI
UIの軸 製品カテゴリ・機能 ロケーション+デバイスのグループ
設計思想 シンプル・直感的 俯瞰・分析
情報量 必要最低限で見やすい 情報が多く細かい分析が可能(?)
強み 誰でも迷わない操作感 大規模運用(?)
管理対象 AP/SW/SD-WAN/カメラ/センサー AP・SW・GWなどメインのNW製品

単純な優劣ではなく、目的や規模によって適した UI が分かれるのかなと思います。
また、UIは人によって好みや馴れなどがあると思いますので、優劣をつけることはできないと思っています。

(Merakiの設計はシンプルで直感的なだけではなく、AIを活用したNW環境のトラブルシュート機能や設定の自動化機能など様々な機能が毎年拡充されています。)

:thinking: 【考察】なぜUIのアプローチが異なるのか?

前職と現職で両方のUIを触り比べた結果、この違いは単なるデザインの好みではなく、**「管理対象の広さ」「アプローチの方向」**の違いから来ているのではないかと推察しました。

1. IoTデバイスを含んだ「空間管理」か、「ネットワーク機器管理」か

Meraki は Wi-Fi やスイッチだけでなく、スマートカメラ(MV)や環境センサー(MT) も管理対象です。
もし Meraki が「デバイス種別ごとの縦割り」を強制するUIだった場合、カメラの映像を見るために別メニューを開き、Wi-Fi の設定でまた戻り…といった操作の分断が発生します。
「IT管理者だけでなく総務担当者も見るかもしれない」という前提があるため、「物理的な拠点(Network)」という箱の中に全てのデバイスをフラットに並べる必要があったのだと考えられます。

2. 「広さ」のMeraki vs 「深さ」の他社

  • Meraki のアプローチ(広さ・体験):
    • NW機器からIoTまで幅広いデバイスを、**「横断的」**に管理することに特化しています。「詳細なパラメータ調整」よりも「誰でもパッと見て状況がわかる」ことを優先したUI設計と言えます。
  • 他社のアプローチ(深さ・専門性):
    • デバイスごとの設定項目を**「深掘り」**することに長けています。大規模ネットワークにおいて、機種ごとの詳細なパラメータチューニングや、階層構造を駆使した設定テンプレートの適用など、専門的なエンジニアリングを支えるためのUI設計と言えます。

本記事が、Cisco Merakiへの更なる理解と他製品と比較する際の一助となれば幸いです。
皆さまの環境での気づきや活用アイデアの参考になれば嬉しく思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

:sunrise: まとめ — UI の差は“思想の差”

Meraki と他社クラウド管理 UI の違いは、画面デザインの差というよりも、ネットワークをどう運用してほしいかという設計思想の違いかなと考えます。

● Cisco Meraki

  • 迷わない、シンプル、統一感
  • 多様なデバイスを単一 UI で管理できる
  • 少人数運用や多拠点でも扱いやすい

● 他社 UI(一般的傾向)

  • サイト、デバイス中心で俯瞰しやすい
  • 分析情報が豊富で大規模向き(?)

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