前回は、「セル・オートマトン」について解説しました。
この計算モデルを使って脳をシンプルなコードで実装していくのですが、今回はそのために必要とされるシンプルな「脳のモデル」について解説します。
以下の通りに何回かに分けて解説しますが、今回はその2になります。
その1 -セル・オートマトンとは?-
その2 -セルの並べ方-
その3 -ニューロンの配置-
その4 -恒常性と馴化-
その5 -ヘブ則の導入-
セルの並べ方
今回セル・オートマトンでシミュレートするのは「大脳皮質」のみです。
大脳皮質は大脳を膜状に覆う部位で、さまざまな情報を統合し「心」や「意識」などの重要な役割を担います。
ヒトの大脳皮質は、非常に大雑把にですが半球面の形状をしています。
(https://ja.wikipedia.org/wiki/大脳皮質 より引用)
大脳皮質を模するのであれば、近い形状のネットワークを作るのが妥当そうです。
しかしながら、今回は球面や半球面ではなく「トーラス」上に多数のニューロンを配置することにします。
トーラスは、以下に示すようなドーナツ状の立体です。
(https://ja.wikipedia.org/wiki/トーラス より引用)
トーラスの表面は、まるで30年前のRPGのように上端は下端につながっており、左端が右端につながっている世界です。
このようなトーラスに表面上に格子状にニューロンを配置すれば、世界を「行列」として扱うことが可能になり、コンピュータ上での扱いが楽になります。
そして、この各格子、すなわちセルに仮想的な神経細胞を配置することで、仮想的な大脳皮質を作ってみることにします。
今回は、トーラスの表面上に、仮想的な神経細胞を256 × 256 = 65536個格子状に配置します。
ヒトの大脳皮質に神経細胞は約100億なので、これと比較すると大幅に少なく、昆虫程度の神経細胞数になります。
しかしながら、たとえばミツバチの場合、巣箱から餌場までの距離と方向を、太陽の方向を基準に正確に8の字のダンス言語によって仲間に伝えます。
また、ハエはアクロバティックな飛行をし障害物を難なく避けることができます。
このような昆虫の高度な認識能力、社会性は数10万個程度の神経細胞で実現されています。
そういう意味で、今回の神経細胞数65536は何らかの知能を発揮するために決して少ないニューロン数ではないかと思います。
なお、動物の神経細胞数に関してはこちらに一覧があります。
https://ja.wikipedia.org/wiki/動物のニューロンの数の一覧
今回の「その2」では、脳を模したセル・オートマトンにおけるセルの並べ方について解説しました。
「その3」に続きます。
なお、本記事の内容は、拙著「あたらしい脳科学と人工知能の教科書」をベースにしています。
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