「大きなオフィス、小さな仕事」からの脱却——選べる働き方が組織を強くする
現実:大きなオフィス、小さな仕事
多くの日本企業では、立派なオフィスがあり、たくさんの人が集まり、でも生み出されている価値は小さい。会議のための会議、承認のための承認、出社のための出社。
これを「大きなオフィス、小さな仕事」と呼びたい。
Jason FriedとDHHが書いた『小さなチーム、大きな仕事(ReWork)』が示したのは、その逆だった。小さなチームで、シンプルに動き、大きな価値を生む。2010年に出版された本が、今も色褪せないのはなぜか。
AI時代に加速するReWorkの思想
リモートワークの普及、そしてAIの台頭によって、「小さなチームでできること」の幅は劇的に広がっている。
かつては人手が必要だった作業をAIが補い、少人数でも大きな成果が出せる時代になった。ReWorkが「べき論」として語っていたことが、今や「普通にできること」になりつつある。
小さいチームで動く、非同期で進める、無駄な会議をなくす——これらはもはや特殊な働き方ではなく、合理的な選択だ。
ただし、日本ではそのままでは機能しない
ReWorkの思想は主に欧米の文化的背景に基づいている。個人主義が前提で、セルフマネジメントができる人が集まることが前提だ。
日本では話が違う。
日本人の多くは、自ら勉強会に参加したり、積極的に情報を取りにいくタイプではない。オフィスにいれば、隣の人の会話から自然に学べた。ふとした雑談からヒントをもらえた。リモートになった瞬間、その「偶発的な学び」がゼロになる。
結果、孤立するだけでなく、成長の機会も失う。
これはReWorkが解決していない問題だ。
必要なのは「コミュニティ」という補完装置
日本でリモート×小さいチームを機能させるには、もう一つの要素が必要だと思っている。それがコミュニティだ。
ただし、ここで言うコミュニティは勉強会でも社内研修でもない。
- 参加しないことへの罪悪感がない
- でも、いると自然に学べる
- 義務ではなく、居心地のよさで人が集まる
そういうゆるい場だ。強制した瞬間に死ぬ。義務になった瞬間に形骸化する。
大事なのは「選べる環境」
すべての組織をリモート×小さいチームに変える必要はない。大きな組織が必要なビジネスも当然ある。
でも今、その選択肢がほぼないことが問題だ。
「大きなオフィスで働く」以外の選択肢が当たり前になったとき、人は自律し始める。選択肢があるから自分で考える。自分で考えるからセルフマネジメントが育つ。セルフマネジメントができるから、小さいチームが機能する。
選べる環境が、人を育てる。
どう作るか
トップダウンで「リモートチームをやります」「コミュニティを作ります」では機能しない。
理想は、この考え方に共感した人が少しずつ集まり、やりながら形を作っていくことだ。最初から完璧な設計は要らない。動かしながら直す——これもまたReWorkの精神に通じる。
一つだけ意識したいのは、負担を強いない設計だ。日本人に向けて広げるなら、参加コストを限りなく下げることが鍵になる。
ReWorkを読んで「いい本だな」で終わらせるのはもったいない。あの本が示した方向に、日本の文脈で必要なピースを足す。それが次のステップだと思っている。
まだ答えは出ていないし、自分自身もやりながら模索している段階だ。でも、同じように感じている人と一緒に考え、少しずつ形にしていきたいと思っている。もし共感してくれる人がいれば、ぜひ話しかけてほしい。