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AI時代、デザイナーが一番「作っていない」のではないか?:InHouseDesigners Park レポート

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「デザイナーがバイブコーディング(AIとの対話による爆速開発)でプロダクトを作って、課金実装までしたという話を全然聞かない。逆に営業職やエンジニアがAIでサービスを作るついでにデザインを勉強して、リリースまで漕ぎ着けている事例が増えてきている」

先日参加した「InHouseDesigners Park」というインハウスデザイナー向けのイベントで、深津貴之さんが放ったこの言葉に、会場が凍りついた。本来、AIが最も有利に働くのは、視覚表現とユーザー体験を司るデザイナーのはず。しかし現状は、非デザイナーがAIを武器にデザインの領域を侵食している一方で、デザイナーはIllustrator、Photoshop、Figma上で「整える」ことに終始し、自分のプロダクトそのものを作り上げるまでには至っていない。

私自身(@Perk_sh)、グラフィックデザイナーとして活動してきたが、1年前にiOSエンジニアの学習を始め、Cursorを使ったアプリ開発を経験している。その過程で、深津さんのこの発言が示す**「危機感」**を、身をもって感じている。この記事では、イベントで語られた洞察を紹介しながら、AI時代に対してデザイナーがどう向き合うべきか、考えてみたい。


30分で新しい概念を学べる時代:AIを使った学習・実践の仕方

深津さんが教授を務める大学の授業で最優先に教えているのは、「生成AIを使って、いかに素早く勉強して知識を実践投入できるか」という、AIを使った学習の仕方だという。

深津: 「1時間半の授業の冒頭で、今日は行動経済学を勉強するから、30分以内にコンセプトを自分で調べて使えるようになれ、といったことをやっています。新しい概念や業界を知らなくても、1〜2時間で最低限その業界のことを喋れる知識を、全部自分で勉強できるようになろう、ということを教えています」

30分で新しい概念を学ぶ。1〜2時間で業界の知識を習得する。聞いた瞬間、「本当にそんなことできるの?👀」と思ったが、実際にCursorを使った開発を経験してみると、確かに可能だと感じた。

以前は新しいツールやトレンドが出るたびに「また覚えなきゃ...」と気が重くなっていた。しかし今は、ChatGPTやCursorに聞けばすぐに答えが返ってくる。分からないことがあっても、すぐに調べて実践できる。この変化は、クリエイターの働き方そのものを根本から変えている。

深津さんが教えているのは、AIの使い方そのものではなく、「結果を最速で出すための方法」——新しい知識をどうやって素早く獲得し、実践に活かすかという方法論だ。


「思い」や「色」から始めることの問題:デザインの前提とゴール設定

デザインを持ってくる人の8割くらいは、ゴールの説明なしに作ったものの説明をしてくる。深津さんは、その時点で突き返すことが多いという。

深津: 「一番最初に『思い』や『色』の話が上がってきた時です。『僕はこういうことがしたいんです』『ここが好きでこの色にしました』という話は、前提がズレていると感じます。色などは単なる手段に過ぎません。『思い』は、課題を解決する時のストーリー要素でしかない。基本的には『目的や課題がズレていないか』を確認し、そこに対して『ゴール』を置き、そのゴールに行くために何をやるか、という順番で話すべきです」

なぜそうなってしまうのか?深津さんは、ジュニアデザイナーたちがデザインを自分の「作品」だと思っている人が多すぎると指摘する。

AIがデザイン(に近いもの)を生成できるようになった今、「きれいなもの」を作るだけでは価値がない。そのデザインが何を解決するのか、どのようなゴールに向かっているのか、という目的意識が重要になってきている。

初期の打ち合わせでは、FigmaやPhotoshopは起動しないようにと言っている。企画書や手書きの紙、画像生成AIでもいい。初期段階の方向性調整のために、1ピクセル単位の✴︎アライメントを直して持ってくるのは良くない。全部合意するまでPhotoshopはいらない。

この言葉は、デザイナーがデザインツールに頼って「整えること」に没頭しがちな現状への警鐘でもある。細部を作り込む前に、まず最速で目的とゴールを明確にすること。それが、AI時代のデザイナーに求められるスキルとのこと。


Day 0で物を作れる人:AI時代のデザイナーの価値

深津: 「僕が採用したい人の最低条件は、スキルよりも『デイゼロ(Day 0)で物を作れる人』です。会議が終わる5分前までに、動くものや仮説を作って見せられる人。逆に、『来週までに考えます』という人は、今の時代ならAIに任せちゃったほうがいいかなと思います」

AIが3秒で納品してくる時代に、「来週までに考えます」では遅すぎる。これから求められるのは、即座に動くものを作り、仮説を検証できる能力。

深津: 「生成AI前提の時代に、デザイナーが持つべき価値とは?『最終出力物の品質や成果に対して責任(✴︎コミット)を持てるか』です。ほぼ全員がクリエイティブディレクターの能力を求められる時代になります。また、これからはジュニアがシニアに上がるための『中間の仕事』がAIに奪われてなくなるので、そのキャリア形成は大きな課題です」

これは、デザイナーのキャリアパスそのものへの問いかけでもある。従来、ジュニアがシニアになるために必要だった「中間の仕事」——細かい調整や繰り返し作業がAIに奪われるなら、どうやってジュニアは成長するのか?

もしかしたら、最初から「最終出力物の品質や成果に対して責任を持てる」レベルで働くことかもしれない。AIを活用すれば、従来ならシニアしかできないような仕事を、ジュニアの段階から実践できる。そうやってキャリアを形成していく時代なのかもしれない。


デザイナーが「整えること」に終始している現実

冒頭で紹介した深津さんの発言を、もう一度考えてみたい。

「デザイナーがバイブコーディングでプロダクトを作って、課金実装までしたという話を全然聞かない。逆に営業職やエンジニアがAIでサービスを作るついでにデザインを勉強して、リリースまで漕ぎ着けている事例はたくさんある」

この言葉は、デザイナーがAI時代に取り残されている現状を、痛烈に指摘している。

私自身、グラフィックデザイナーの中ではかなり早くからCursor等のAIツールを使い始めた。自分が使いたいアプリをリリースし、先日AdMobを入れて少額ながら収益を得ることができた。アプリ開発には、グラフィックデザイナーの知見を応用できる部分も多い。

1年間のアプリ開発に使う言語の学習を経て、グラフィックデザイナーからiOSエンジニアへの転職も経験した。かなり珍しいケースかもしれない。

本来、デザイナーと言語生成AI(LLM)は最も相性の良い組み合わせだと思う。デザイナーには、プログラミングや他のジャンルを越境してみてほしい。

しかし、現状はデザイナーは、まだ「整えること」——ピクセル単位の調整、デザインシステムの維持、ビジュアルの洗練——に終始している。それは確かに重要な仕事だが、それだけでは、AI時代に十分な価値を提供できない。

深津さんが指摘するように、本来AIが最も有利に働くのはデザイナーのはずだ。視覚的な表現力、ユーザー体験への理解、創造的な思考、作ることへのバランス感覚——これらのスキルと、AIと組み合わせることで、プロダクトそのものを作り上げる力になる。

しかし現状は、その可能性を活かしきれていない。むしろ、非デザイナーがAIを武器に、デザインの領域まで侵食している。これは、デザイナーにとって大きな危機であり、同時に大きなチャンスでもある。


AI時代のデザイナーに求められること

登壇者の宇野さんは、「デザイナー生存戦略」という言葉に違和感があると語った。

宇野: 「デザイナーが主語ではなく、まず『デザイン(課題解決)』という機能が先にあるべきです。技術は常に変わります。僕もPhotoshopからFigma、AIへとツールを変えてきましたが、本質的な目的は変わっていません。生存戦略なんてものはない。新しく生まれるデザインを乗りこなせるかどうか、その変化を楽しめるかどうかが全てです」

ツールは変わっても、デザインの本質——課題解決——は変わらない。重要なのは、新しい技術を恐れず、むしろ積極的に取り入れ、その変化を楽しむことだ。

AI時代のデザイナーに求められるのは:

  1. AIを使った学習・実践の仕方を身につける:30分で新しい概念を学び、すぐに実践に投入できる能力
  2. 目的→ゴール→手段の順序で考える:「思い」や「色」ではなく、課題解決から始める
  3. Day 0で物を作れる:会議が終わる5分前までに、動くものや仮説を作って見せられる
  4. 最終出力物の品質や成果に対して責任を持つ:クリエイティブディレクターの能力を、最初から求められる
  5. プロダクトそのものを作り上げる:「整えること」に終始せず、バイブコーディングでプロダクトを作り、リリースまで持っていく

深津さんの言葉は、デザイナーへの挑戦状だと感じた。AI時代に、デザイナーはどう価値を提供するのか?その答えは、おそらく「自分の意思で作り始めること」——自分のプロダクトを作り上げること——にあるのではないだろうか。


イベント情報: InHouseDesigners Park

✴︎アライメント(alignment)は、デザイン用語で要素の位置を揃えることです。テキストや画像などを基準線やグリッドに合わせて整列させる作業を指します。

✴︎コミット(commit)は、ビジネスやプロジェクト管理の文脈で「責任を持って取り組む」「確約する」という意味で使われます。記事内では、最終的な成果物や結果に対して責任を持つことを指しています。

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デザイナーとiOSエンジニアが一緒に個人作業するイベント「iOSエンジニア & デザイナー ガチもく会」を運営しています。
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