既存のシンプルなドイツ語辞書Webアプリを発見した時、その基本的な機能に物足りなさを感じました。そこで、このアプリを学習分析機能を備えた高度な教育プラットフォームに変身させるプロジェクトに着手しました。
元のアプリは、TU Chemnitzの辞書データを使用したベーシックな検索機能のみを提供していました。TypeScriptで構築されており、Parcelバンドラーを使用したモダンな開発環境は整っていましたが、学習者のニーズに応える機能は皆無でした。
最初の改造は、学習履歴システムの実装でした。単純な検索履歴ではなく、ユーザーの学習行動を深く分析するシステムを構築しました。検索した単語、検索時刻、検索頻度といった基本的な情報に加え、マウスの動きや滞在時間などの行動データも記録するようにしました。
特に興味深い機能として、マウストラッキングシステムを開発しました。ユーザーが単語を検索する際のマウスカーソルの軌跡、移動速度、加速度、方向転換回数などを詳細に記録し、学習の困難度や集中度を定量化します。これにより、どの単語に苦戦しているかが客観的に把握できるようになりました。
次に取り組んだのは、練習用テキスト機能の強化です。元のアプリには簡単なテキスト入力エリアがありましたが、これを複数のノートを管理できる高機能なシステムに拡張しました。各ノートには個別のタイムスタンプと学習履歴が紐付けられ、学習進度を詳細に追跡できます。
操作性の改善も重要な改造ポイントでした。元のアプリでは検索のたびに選択ツールポップアップが表示されていましたが、これをオプション化し、ダブルクリックで直接検索が実行されるモードを追加しました。また、シングルクリックとダブルクリックを切り替える機能により、ユーザーの好みに応じた操作が可能になりました。
データ管理の面では、学習履歴のエクスポート・インポート機能を実装しました。学習データをJSON形式で出力し、他のデバイスやバックアップシステムとの連携を可能にしました。また、最大1000件までの履歴保存制限を設け、パフォーマンスの維持と実用性のバランスを取りました。
技術的な挑戦として、セルフホスティング環境の構築も行いました。元のアプリはTU Chemnitzのサーバーに依存していましたが、独自のCDNサーバーを構築し、Express.jsベースの開発サーバーも追加しました。これにより、開発効率が大幅に向上しました。
最終的に、単純な辞書検索ツールを、学習者の行動を分析し、個人最適化された学習体験を提供する高度なアプリケーションに変貌させることができました。この改造を通じて、オープンソースプロジェクトの拡張可能性と、既存ツールを活用した新しい価値創造の可能性を実感しました。