1. はじめに
6/30(火)に日本マイクロソフト品川本社にて開催されたGitHub Copilot Quest Lv3:Hack the Legacyに、日立製作所として参加させていただきました!
本記事では
について掲載しています。
ハッカソンへの参加もAI-DLCの実践も初めてだったため、ハッカソン当日はかなり緊張しましたが、すごく良い経験をさせていただいたと感じています。
その経験が
- 「ハッカソンに参加してみたいけど自信がない」
- 「AI-DLCを実践してみたいけどアプローチがわからない」
という方の背中を少しでも押すきっかけになればと思い、本記事を執筆いたしました!
ぜひ本記事を最後まで読んでいただけると幸いです!
また、このハッカソンはアスキー社様と弊社より、当日の記事と動画が公開されています。
ぜひこちらも見ていただけますと幸いです!
発言は個人の見解に基づくものであり、所属組織を代表するものではありません。
なお、7/23にGAされたAI-DLC Workflows v2については、ハッカソン当日時点ではGitHub Copilot未対応だったため、AI-DLC Workflows v1を利用しました。
2. GitHub Copilot Questとは
GitHub Copilot Questとは、日本マイクロソフト株式会社が主催する招待制のハッカソンです。マイクロソフトのAIコーディングアシスタントであるGitHub Copilotをフル活用して、設定された「クエスト」を解決する成果物を短期間で作成します。「GitHub Copilotを用いて、いかにレガシーシステムを効率的にマイグレーションできるか」がこのハッカソンでのチャレンジになります。
イベントの目的
2.1 これまでのハッカソン
GitHub Copilot Questは、2025/12/15に初めて開催され、初回のテーマは
- Java 5で構築された書店販売管理システム
- .NET Framework 3.0をベースに4.8にアップデートされたミュージックストアアプリ
のモダナイゼーションであり、自由にテーマを選べる形式でした。初回のハッカソンには
- NECソリューションイノベータ
- NTTデータグループ
- 野村総合研究所
- 日立製作所
- 富士通
の計5社(敬称略)が参加しました。
2026/3/10にLv2として第2回のGitHub Copilot Questが開催され、Lv2のテーマは
- 2000年頃にJavaで構築された書店システムのWebアプリケーション
のモダナイゼーションであり、Lv1とは異なり、全チーム同じテーマへのチャレンジでした。Lv2のハッカソンには
- アバナード
- NECソリューションイノベータ
- NTTデータグループ
- 野村総合研究所
- 日立製作所
- BIPROGY
- 富士通
の計7社(敬称略)が参加しました。
2.2 Lv3のテーマ
Lv3のテーマは
- Linux + GnuCOBOLで構築した勘定系バッチシステム
のモダナイゼーションであり、Lv2と同様に全チーム同じテーマへのチャレンジでした。Lv3のハッカソンには
- NECソリューションイノベータ
- NTTデータグループ
- 日本アイ・ビー・エムシステムズ・エンジニアリング
- 野村総合研究所
- 日立製作所
- BIPROGY
- 富士通
の計7社(敬称略)が参加しました。
Lv3から大きく変わった点として、Lv1とLv2ではAzureへの移行が任意だったのに対し、Lv3ではAzureへの移行が必須になりました。
これまでAzureへの移行まで到達したチームがいないことに加えて、かなりレガシーな言語であるCOBOLからのモダナイゼーションということで、歴代最高の難易度だったのではないかと思います。事実として、ハッカソン開始時に日本マイクロソフトの柳原さんが「このハッカソンは私と皆さんの戦いであり、このアプリは私からの挑戦状です!」とおっしゃっていました。
3. AI-DLCとは
AI-DLC(AI-Driven Development Life Cycle)とは、AWSが提唱するソフトウェア開発に対するAI中心の革新的なアプローチであり、AIを開発の構造そのものに完全に組み込むよう設計された新しい開発手法です。
AI-DLCでのソフトウェア開発は3つのフェーズで構成されています。
Inception(開始)
- AIがビジネス意図を詳細な要件、ストーリー、ユニットに変換
- チーム全体が AI の質問や提案を積極的に検証
Construction(構築)
- AIが論理アーキテクチャ、ドメインモデル、コードによる実装、テストを提案
- チームが技術的決定とアーキテクチャの選択についてリアルタイムで明確化
Operation(運用)
- チームの監督のもとでInfrastructure as Codeとデプロイメントを管理
AI-DLCはGitHub上でオープンソースとして公開されており、GitHub Copilotに加えて、KiroやClaude Code, Codexなどでのセットアップ手順まで記載されているため、誰でも簡単にAI-DLCを実践することができます。
2026/6/18にプレビューリリースされたAI-DLC Workflows v2は、現時点ではGitHub Copilotに対応しておりません。
3.1 AI-DLCを採用したきっかけ
AI-DLCを採用したきっかけは、AWS Summit Japan 2026にて開催されたAI-DLCハッカソン「人をダメにする」サービスを考えよう!を現地で聴講したことです。
Summitでこのハッカソンを聴講し、「自分もAI-DLCを実践してみたい!」と思っていたところ、ちょうど翌週にGitHub Copilot Questがあることを思い出し、そこで実践してみようと思いました。
また、マイクロソフトさんのお金で好きなだけGitHub Copilotを使えるこの機会を使わない手はないと思い、思う存分AI-DLCを実践させていただきました!
4. 当日の成果
結論から申し上げますと、ハッカソンの約7時間でJava 25 + Spring Batchへのモダナイゼーションに加えて、Azureへの移行と一部機能の現新比較テストまで到達しました!
具体的には
- 全22機能をDockerイメージとしてAzureにデプロイ
- 勘定系のコアとなる夜間バッチ処理の現新比較テスト
まで完遂することができました。
GitHub Copilot Questでは、チームごとにランク付けなどはしませんが、現新比較テストまで到達していたチームは他にいなかったため、AI-DLCのメリットである開発速度を遺憾なく発揮できたと感じています。
4.1 サブエージェントの作成
AI-DLCの質を上げるためには、事前の環境セットアップが重要だと考えていたため、サブエージェントを拡充させました。
| # | エージェント | 担当 |
|---|---|---|
| 1 | aidlc-specialist | 全体司令塔・ワークフロー管理 |
| 2 | cobol-analyzer | 全22サブシステムの仕様復元 |
| 3 | azure-migration-architect | Bicep / インフラ設計 / デプロイ |
| 4 | spring-batch-engineer | Java25 + Spring Batch の実装 |
| 5 | test-parity-engineer | COBOL=Java の数値一致テスト |
| 6 | source-code-reviewer | コードレビュー・品質ゲート |
AI-DLCに特化したaidlc-specialistを全体の司令塔とし、cobol-analyzerで仕様復元、azure-migration-architectとspring-batch-engineerでモダナイゼーション、test-parity-engineerとsource-code-reviewerで品質を確保するといった構成になっています。AI-DLCを回す前にサブエージェントを拡充させたことによって、各フェーズにて複数のサブエージェントを並列で回し続け、それによって開発速度を向上させることができたと感じています。
4.2 Inceptionでの計画策定
Constructionでの後戻りを防ぐために、Inceptionを重点的に回すことを意識しました。Inceptionを何度も回し、チームとAIの間でゴールのイメージと必要な作業について認識を合わせることを大切にしました。特に、Inceptionではハッカソンのテーマに対して、AIが様々な提案を提示してくるため、その都度チーム内で話し合いを行い、最適な意思決定を心掛けました。
また、GitHub Copilot Questは時間制限がかなりシビアであったため、ハッカソンの時間内で到達可能なゴールについてAIとチーム内で明確化するようにしました。それに加えて、ハッカソンの時間制限を考慮し、現時点と残り時間に応じてフォールバックを実施するようにしました。それによって、ハッカソンの限られた時間内でも「Azureへの移行」と「一部機能のテスト」といった見える成果を発表できたと考えています。
4.3 アーキテクチャの変更点
単純なAzure Virtual Machinesへの移行ではなく、可能な限りクラウドネイティブなアーキテクチャ設計を心掛けました。
| # | レイヤー | AS-IS | TO-BE |
|---|---|---|---|
| 1 | 言語/実行 | COBOL (GnuCOBOL) | Java 25 + Spring Batch |
| 2 | 組み込みSQL | OCESQL | MyBatis |
| 3 | ファイルI/O | 固定長 (パック10進) | BeanIO |
| 4 | 実行基盤 | Linux VM | Azure Container Apps |
| 5 | データベース | PostgreSQL | Azure Database for PostgreSQL |
| 6 | ファイル授受 | ローカルディスク | Azure Blob Storage |
| 7 | メッセージング | RabbitMQ | Azure Service Bus |
| 8 | シークレット | 設定ファイル | Azure Key Vault |
| 9 | 監視 | ログファイル | Azure Monitor |
| 10 | デプロイ | Makefile | GitHub Actions + Bicep |
時間が足りず、一部妥協した設計になってしまいましたが、将来的なアーキテクチャを見据えて、段階的に拡張できる設計にすることを心掛けました。
5. AI-DLCを初めて実践した感想
これまでは、AI-DLCについての公式ドキュメントやリポジトリを読んだり、Summitでのセッションやハッカソンを聞いたくらいしかなかった私が、実際に手を動かしてAI-DLCを初めて実践してみた感想をまとめます。
5.1 とにかく開発速度が速い
AI-DLCのワークフローを開始すると同時に、とてつもないスピードでInceptionが進められるため、最初はかなり衝撃を受けました。AIがハッカソンの意図をくみ取り、そこから詳細な要件を落とし込んでいくまでのスピード感が速すぎて、現行システムの動作を確認しているうちに、AIが現行システムを深部まで理解し、人間のためにまとめてくれていました。
5.2 人によるレビューがボトルネック
一方で、AI-DLCの開発速度が速すぎて、AIが生成した応答やドキュメントをレビューする時間を確保することができませんでした。限られた時間内で成果が求められるハッカソン特有の感想かもしれませんが、AI-DLCを実案件に取り入れていく中でも、衝突する課題なのかもしれません。全ての成果物を人間がレビューすることは難しいと思われるため、どこまでをAIに任せて、どこまでを人間がレビューするかを最初に決めておく必要があると感じました。
5.3 AIからの提案にベストアンサーできない
重要な決定が求められる場面で、AIが人間に対して様々な提案をしてきますが、私が持ち合わせている技術ストックでは、AIからの提案にベストアンサーをすることができなかったと感じています。チーム全体で話し合っても、AIからの提案にどう回答すべきかわからない場面が多く、一部の提案に対してはAIが推奨する決定をそのまま実行させるという運用をしました。
5.4 品質をどう確保していくか
AI-DLCでは、重要な決定は人間に委ねられるため、人間の決定が成果物の品質に直結すると感じました。AI-DLCはAI中心の革新的なアプローチでありますが、あくまで最終的な判断を行うのは人間になります。そのため、人間側も求められている要件を深く理解し、AIからの提案にベストアンサーできるよう、準備をしておくことが重要だと感じました。
6. 初めてハッカソンに参加した感想
初めてハッカソンに参加させていただいた感想としては、とにかく楽しかったです!開発を進めていく中で衝突した課題を1つ1つクリアしていく感覚や、AI-DLCという未体験の開発手法を実践しながら試行錯誤していく過程がとにかく楽しく、ハッカソンを通じてとても良い経験をさせていただいたと感じています。個人的には、チームでオフィスに集まって開発をすること自体が1年次の研修以来だったため、なんだかとても懐かしい気持ちにもなりました。
また、チームによってハッカソンへのアプローチが多種多様だったことも、すごく興味深いと感じました。
| # | 企業名(敬称略) | 特徴 |
|---|---|---|
| 1 | NECソリューションイノベータ | Issue駆動開発を採用 |
| 2 | NTTデータグループ | Azure Virtual Machinesへの移行で安定性重視 |
| 3 | 日本アイ・ビー・エムシステムズ・エンジニアリング | Azure Kubernetes Serviceへの移行 |
| 4 | 野村総合研究所 | Flaskでモダンな勘定系システムを構築 |
| 5 | BIPROGY | Code to Doc, Doc to Codeの考え方を採用 |
| 6 | 富士通 | COBOLが得意な計算処理はCOBOLのまま移行 |
今回のハッカソンにはインフラエンジニアの方の参加が多く、かなりモダンなアーキテクチャ設計をしているチームがいくつか見られました。Azureの知見が乏しい私としては、AWSだけでなく、Azureについても勉強していきたいと強く感じました。
7. おわりに
改めて、GitHub Copilot Quest Lv3:Hack the Legacyという素晴らしいハッカソンに参加させていただくことで、とても貴重な経験をさせていただいたと感じています。また、ハッカソンとAI-DLCに初めて挑戦することができた上に、他のチームのアプローチから学び、刺激を受けることで、自分自身のモチベーションをより高めることができたと感じています。このモチベーションを忘れずに、日々の勉強に励んでいきたいと考えています。
最後に、GitHub Copilot Quest Lv3:Hack the Legacyを企画・運営してくださったすべての方に感謝申し上げます。
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