はじめに
心理的安全性について学ぶ中で、その土台となる相互理解を深めるために、「雑談をしましょう」という言葉をよく聞きます。しかし、「今日は暑いですね。。。」みたいな天気の話ばかりで、期待している効果は得られないはずです。そこで、仕事における良い雑談とはどんなものか知るため、ピョートル・フェリクス・グジバチ氏の『世界の一流は「雑談」で何を話しているのか』という本を読んでみたので、その学びをアウトプットします。
参考文献
本記事では、以下の書籍を読んで得た学びをアウトプットします。
また、本記事で紹介している内容は、書籍のほんの一部であり、内容に共感していただけたら購入を強く勧めます。
※解釈が誤っている箇所がありましたら、教えていただければ幸いです。
『世界の一流は「雑談」で何を話しているのか』
ピョートル・フェリクス・グジバチ (著)
結論
- 雑談とは、「相手を理解するための深い会話」である
- 成果につながる雑談をするためのポイントは以下である
- 相手を驚かせないレベルの「自己開示」をして、自分を知ってもらう
- 好奇心を持って、相手の「人間性」や「人となり」を知ろうとする
- 「信頼関係」の構築が目的であることを忘れない
- 相手と「ラポール」(後述)を作れているか、客観的な目で観察しながら話す
そもそも雑談とは
「雑談」の位置づけ・目的は、日本の一般的なビジネスマンと一流・海外のビジネスマンで大きく異なり、以下の表のように整理できます。
日本のビジネスマン | 一流・海外のビジネスマン | |
---|---|---|
位置づけ | イントロ 世間話 取るに足らない話 |
ビジネスの場 ざっくばらんな情報交換 相手を理解するための深い会話 |
第一目的 | 無駄な緊張感を取り除く 相手との距離感を縮める |
ラポール(後述)を作る |
意図/狙い | - | ①相手/ビジネスの状況などを確認する ②相手の信用を作る ③最新動向や現状の情報を収集する ④自社の意向や進捗状況などを報告する ⑤最新の情報を相互に認識する |
最終目的 | 成果を出す | 成果を出す |
ラポールを作るには
ラポールとは、「お互いの心が通じ合い、穏やかな気持ちで、リラックスして相手の言葉を受け入れられる関係性」という意味の心理学用語です。
- ラポールを作るための3原則
- 相手が「何を大切にしているか?」を知る
- 相手が「何を正しいと思っているか?」を知る
- 相手が「何を求めているか?」を知る
- この3原則を達成するための手法:「7つの質問」
- 以下の質問を表現を工夫しながら、さりげなく聞く
- 質問①あなたは仕事を通じて何を得たいですか?
- 質問②それはなぜ必要ですか?
- 質問③何をもっていい仕事をしたと言えますか?
- 質問④なぜ今の仕事を選んだのですか?
- 質問⑤去年と今年の仕事はどのようにつながっていますか?
- 質問⑥あなたの一番の強みは何ですか?
- 質問⑦あなたは今どんなサポートが必要ですか?
良い雑談とは
良い雑談には、以下の特徴がある
-
自己開示がある
- 自己開示=プライベートな情報を含めて、自分の「思い」や「考え方」などを相手に素直に伝えること
- お互いの心理的な距離を縮めることができる
- 信頼関係構築につながる
-
相手に特化している
- 自己開示できるような質問をする
- 「これだけ暑いと、週末は何をしているんですか?」
- 相手の表情やその日の様子を確認し、臨機応変に話す
- 「お疲れのご様子ですが、何かありましたか?」
- あなたやきみではなく、名前を呼んで雑談する
- 自己開示できるような質問をする
-
十分に準備している
- 「何のために相手に会うのか?」を確認できている
- 今日、相手に会う目的は何か?
- お互いに何が知りたいのか?
- どんな関係性を作りたいのか?
- その関係性は短期か長期なのか?
- 相手は何を理解すれば納得するのか?
- 根回し・データ収集を怠っていない
- 会議の参加者はどんなメンバーなのか?
- それぞれがどんな意見を持ち、どんな見方をしているのか?
- この会議でどんなことを聞きたいのか?
- 何を肯定材料と考え、何が否定材料になるのか?
- 「何のために相手に会うのか?」を確認できている
Tips
「聞きにくいこと」を質問するときに便利なフレーズ
以下が便利なフレーズです。
- 「素朴な疑問なんですけど」
- 「少し話が脱線しますが」
- 「こんなことをお聞きすると、失礼にあたるかもしれませんが」
- 「お気を悪くされたら、恐縮ですが」
以下が肝心です。
- 自分や相手のキャラクター、場の雰囲気を考慮しながら、適切なフレーズを選ぶこと
- 「笑顔」で、相手と「目」を合わせて、「何気なく」聞いてしまうこと
聞くべきではないこと
- 誰にでも共通する「雑談のタブー」は存在しない
⇒ すべては相手との「関係性」次第 - 最低限のマナー
-
相手のプライベートに、いきなり踏み込まない
例:「ご結婚はなさっていますか?」
→ 相手は独身であることに悩んでいるかもしれない
⇒ 質問のアングルを変えるとよい
⇒「休日は何をされていますか?」 -
「ファクト」ベースの質問は意外に危険
例:「こちらの会社の前は、どこにお勤めでしたか?」
→ 前の会社をリストラされて、忸怩たる思いをしているかもしれない
⇒ 価値観・信念・期待ベースの質問にする
⇒ 「商社マンとして、何を大切にしているのですか?」 -
ビジネスの場で「収入」の話はしない
例:「あなたの年収はいくらですか?」 - 「下ネタ」で距離感が縮まることはない
-
相手のプライベートに、いきなり踏み込まない
おわりに
今回は、『世界の一流は「雑談」で何を話しているのか』 を読んで、学びをアウトプットしました。大変多くの学びがあり、雑談の根本的な定義から考えさせられる本でした。
雑談の解釈は日本と海外で大きく異なると著者は述べていますが、私は「距離感を縮める」と「ラポールを作る」という第一目的のところは似ていると感じました。しかし、肝心なのは、「ラポール」という名前までつけて明確に意識しているという点だと思います。この意識が、なんとなくでやっていた雑談を明確な目的のある雑談に変える気がします。
最後に、この素晴らしい書籍を執筆してくれた、ピョートル氏に心から感謝します。ありがとうございました。