皆さん初めまして。個人開発をしているまめ太と申します。
今回は私が作ったアプリ、「vicara」について紹介させていただければと思います。
vicara は、ソロ開発者が複数の AI エージェント(Claude Code / Gemini / Codex 等)を安全に並列動員し、スクラムの仕組みで開発を統制するためのローカル・コントロールプレーンです。
「AIに任せきりにする」のではなく、人間が主導権を握ったまま、複数の実行主体をオーケストレートすることに特化しています。
なぜこの記事を書いたのか
今、AI コーディングの世界は凄まじいスピードで進化していますが、多くの人が「チャットでの微調整」という一対一の限界に留まっています。
私がこの記事を書いたのは、かつての私のように「AI チャットの次の一歩」を探している開発者の方々に、**「AI をエージェントチーム(軍団)として率いるワクワク感」**と、それが現実になった時の圧倒的な開発スピードをぜひ体験してほしいと思ったからです。
「AI に書かせる」のではなく「AI を率いる」。この記事を通じて一人でも多くの「将軍(ユーザー)」と繋がり、vicara という司令塔を一緒に育てていければ、これほど嬉しいことはありません。
🔗 GitHub: https://github.com/ytakahashi0302-ghb/ai_scrum_tool
(もしよければ Star をいただけると、開発という戦いへの大きな励みになります!)
1. はじめに:競馬予想アプリと Antigravity が教えてくれたこと
巷では AI コーディングが爆発的に流行っています。
私も Pixel ユーザーということもあり、Google One の特典などで Google AI Pro を契約していました。Gemini Canvas 機能などで「ぱっとモックを作る」便利さは知っていましたが、当初はあくまで「便利なチャット相手」という認識。正直、AI とがっつり協力して本格的にプロダクトを作り込むような、本格的な AI コーディングにはまだ足を踏み入れておらず、一歩引いた立場で見ていました。
そんな折、Zenn で話題になった 「AI将軍 (AI Shogun)」 という記事に出会います。
そこで語られていた「AIがAIを率いて開発する」世界観を目の当たりにし、「衝撃を受けた」というより、強烈に**「自分も実際に触ってみたい!」**と突き動かされました。
早速、Google AI Pro を契約していたこともあり、当時少し耳にしていた Antigravity を「実際に自分でも触ってみたい」と試してみることにしました。
「何を作ろうかな」と考え、まずは競馬予想アプリや、飲酒記録アプリといった比較的シンプルなものを作ってみたのですが……そこで想定を遥かに超える衝撃を受けました。
日本語で指示を出しただけなのに、バックエンドからインフラ周りまで、想像以上に「まともなもの」が魔法のように組み上がっていったのです。「AI で作れる」という話は知識として知っていましたが、実際に自分のアイデアが形になるのを目の当たりにする体験は、単なる知識とは全く別次元の感動でした。
直面した「2つの壁」
自分のアイデアがみるみる形になっていく面白さを実感した一方で、すぐに2つの壁にぶつかりました。
一つ目は 「コンテキストの壁」 です。
開発の規模が少し大きくなると、単純な指示の繰り返しだけでは、どうしても自分の意図(コンテキスト)が AI へ正確に伝わらなくなっていくのです。
もちろん私自身の伝える能力の不足もあるかもしれませんが、チャットという線形のやり取りだけでは、複雑な仕様や設計思想を管理し続けるのは限界があると感じました。
二つ目は 「利用制限の壁」 です。
誤解してほしくないのは、私は既存の AI プロバイダーを批判したいわけではありません。むしろ、エンジニアを一人雇うコストを考えれば、月額 数千円 でこれだけの成果が出るのは「価格以上の圧倒的な価値」を猛烈に感じています。
ただ、個人開発者のリアルな「お財布事情」としては、もう一段上のプランへ上げようとすると月額 数万円(約3万円〜)といった世界になり、さすがに常用するには厳しいものがあります。
「AI を使い倒したいが、1つのサービスに依存するとコストや制限がネックになる。複数の AI を賢く使い分けながら、高精度な開発を続けられる環境が欲しい」
そう考えて開発をスタートしたのが、今回紹介する vicara です。
2. vicara とは:AI 開発の「コントロールプレーン」
vicara は単なる AI チャットツールでも、スクラム支援ツールでもありません。
ソロ開発者が**複数の AI コーディングエージェントを安全に率いるための、ローカルファーストな「開発コントロールプレーン」**です。
これまで「AIにスクラムを組ませる」という表現をしてきましたが、本質的にスクラムは重厚な管理のための道具ではありません。
人間と AI が、同じ目線でプロジェクトを進めるための「共通の開発手法(プロトコル)」 です。
1人で開発していると、自分の中にある曖昧な仕様(コンテキスト)を AI へ適切に伝えるのが最大のボトルネックになります。スクラムのフレームワーク(インセプションデッキ、バックログ、スプリント)をあえて通すことで:
- 人間側: 自分のアイデアを構造化し、AI が動きやすい単位で「指示の文脈」を整えられる。
- AI側: 「何を作るか」「何をもって完了(Definition of Done)とするか」が明確になり、自律実行の精度が劇的に上がる。
vicara は、このスクラムという共通言語を通じて、複数の AI 実行主体をオーケストレート(統合制御)するための司令塔なのです。
3. このツールの「3つの統制力」
① マルチベンダー・マルチエージェント並行運用
Claude Code, Gemini CLI, Codex CLI...。今、最高級の実行主体たちが次々と登場しています。
vicara はこれらを「役割」として各エージェントにパッチし、1 つのバックログから同時に出撃させることができます。
- 「UI 修正は Gemini 隊に、ロジックのリファクタは Claude 隊に」
- 特定のベンダーに依存せず、コストや Rate Limit を見ながら最適に配分。
② Git Worktree による「不可侵なレビューフロー」
これが vicara の最大の強みです。エージェントが作業を開始すると、裏側で Git Worktree を使って現在の作業ブランチとは別の独立したディレクトリを展開します。
- 自分のブランチを汚される心配がない(汚染の隔離)。
- AI が裏で実装している間、自分は別の作業(あるいは別のエージェントのレビュー)を並行して行える。
- AI の成果物が気に入らなければ、ワンボタンで Worktree を破棄可能。
③ ローカル・ファーストな透明性とコスト可視化
全てのターミナルログ、ローカル DB (SQLite)、さらにトークンコスト。
vicara はこれらを全て手元で可視化します。「AI がどこで、いくら使って、何をしているか」を完全に掌握した状態で開発を進められます。
4. 実際のワークフロー:Scrum as an Operating Model
vicara はスクラムのフレームワークを「指示のテンプレート」として活用します。
- インセプションデッキ: AI と対話してプロダクトの「魂(文脈)」を固める。
- バックログ生成: 曖昧なアイデアから AI がチケットを切り出し。
- 並行実行: 各ロールのエージェントが出撃し、Worktree で実装。
- 統合レビュー: ユーザーは上がってきた成果を安全にレビュー・マージ。
管理のためのスクラムではなく、**「複数の AI を迷いなく動かすための共通言語」**として活用するのが vicara 流です。
5. 最後に:誰もが「将軍」になれる時代の開発基盤へ
AI コーディングの世界は、単体ツールの性能を競うフェーズから、それらをいかに統制して「チーム」として機能させるかのフェーズへ移りつつあります。
まだまだ発展途上のアプリです
vicara は現在 Alpha 版として公開しており、正直なところまだまだ不安定な部分や、実装したい機能(エージェント間比較レビューなど)が山積みです。
- 現時点では Windows 環境での動作を優先しています。
- エッジケースでのバグが含まれている可能性があります。
しかし、**「複数の AI に役割を持たせてチームとして動かす」**という体験そのものは、既にかなり形になってきました。もし興味を持っていただけたなら、ぜひリポジトリを覗いて、あなたの開発チームに AI エージェントたちを迎え入れてみてください。
🔗 GitHub リポジトリ
https://github.com/ytakahashi0302-ghb/ai_scrum_tool
フィードバック、Issue、さらに Star は大歓迎です。一緒に最強の「ソロ・チーム」を作りましょう。
連載:複数の AI を率いる司令塔「vicara」の裏側
この記事では vicara の思想と概要を紹介しました。次回以降は、この「コントロールプレーン」を支える具体的な技術や、より詳しい比較について掘り下げていく予定です。
- 第1弾:概要・思想編(本記事)
- [第2弾:技術深掘り編] :Tauri v2 + ターミナル統合 + Git Worktree をどう実装しているか
- [第3弾:徹底比較編] :Claude Code や Devin とはどう使い分けるべきか
ぜひ、今後の更新もチェックしていただけると嬉しいです!


