はじめに
Zettelkasten(ツェッテルカステン)という情報管理システムをご存知でしょうか?
個人知識管理(=Personal Knowledge Management、以下PKM)やObsidianの文脈でその名前を耳にした方も多いのではないでしょうか。
「情報管理システム」と聞くと難しく感じるかもしれませんが、この記事では私が感じている通り、Zettelkastenを「PKMフレームワーク(構造・枠組み)の1つ」として紹介します。
すぐれた構造は信頼できます。
(中略)
枠組みを信頼できれば、何もかも頭のなかでまとめようとしなくてもよくなり、重要なこと、すなわち内容、主張、アイデアに集中できます。
ズンク・アーレンス. TAKE NOTES!――メモで、あなただけのアウトプットが自然にできるようになる (pp. 26-27). (Function). Kindle Edition.
Zettelkastenで最も大切なこと:自分の言葉で書き出す
Zettelkastenに関する本や記事ではリンクや原子性といった要素が頻繁に取り上げられています。もちろんこれらもZettelkastenというフレームワークに置いては重要な要素です。
- リンク(ノート同士を繋げる)
- 原子性(1つのノートに1つのアイディアのみを記述する)
しかし私がZettelkastenを実践する中で最も大切だと感じている原則は、インプットした情報を「自分の言葉で書き出すこと」です。
なぜ「自分の言葉」が大切なのか
知識を 「消費」ではなく「内面化」するためです。
具体的な例として、私がZettelkastenをはじめたときの話をします。
私がZettelkastenをはじめたとき、上で引用したTAKE NOTES!という本を読むところから始めました。この本はZettelkastenの具体的な方法論だけでなくその意図についても書かれているため、Zettelkastenを理解するためにもまず1つ目のノートはこの本から得た知識で作ろうと考えたのです。
そして読み終わったときの感想は「ふーん」と「なるほどね」でした。
困りました。これではノートを書くことが出来ません。
私は正直にGeminiにアドバイスを求めました。
正直この本を読んでも何も思うところがない…というよりほとんど何も覚えていないんですが、その場合はどうすればいいんでしょうか?
Geminiの回答を要約すると以下の通りでした。
- 「何も残っていない」ということは、あなたの現在の読書スタイルが、知識の「内面化」ではなく「消費」に偏っていることを示唆している
- 次にすべきことは「本を閉じ、記憶を頼りにアイデアを絞り出すこと」だ
本を閉じる!?記憶だけを頼りにアイデアを絞り出す!?
ただでさえ本の内容が何も残っていないのにそんなことをしたら、誤った内容を書いてしまうことは想像に難くありません。わざわざ記憶だけを頼りに情報を保存することに何の意味があるのでしょうか?
しかしTAKE NOTES!にもGeminiの発言を裏付けるような記述がいくつもあったのです。
メモを自分の言葉で書くと「自分の頭を使う」ことができる
この点について、ルーマンは永久保存版のメモの重要性を述べています。
「学術的なテキストを読む際の問題は、重要なこととささいなこと、新規の情報と繰り返されただけの情報を見分ける基準を培うために、短期記憶ではなく長期記憶が必要になるということだ。
しかし、もちろん何もかも覚えておくことはできない。それは丸暗記だ。つまり、言い換えると、選び抜いて読み、幅広く、つながりのある参考資料を抜き出さなければならない。また、繰り返し登場する概念を追えるようでなければならない。しかし、指導が不可能ならどうやって学習するのだろうか。(中略)おそらく最善の方法は、メモをとることだ。抜粋ではなく、テキストを凝縮して書き直した説明である。すでに書かれているものを書き直すことで、観測した内容の枠組みやパターンやカテゴリー、あるいは特定の説明を可能にして他の説明を排除する条件や仮定に注意を向けるように、ほぼひとりでに鍛えられる。
ズンク・アーレンス. TAKE NOTES!――メモで、あなただけのアウトプットが自然にできるようになる (pp. 136-137). (Function). Kindle Edition.
言い換えられなければ、真に理解できていないということ
かつて、物理学者でノーベル賞受賞者のリチャード・ファインマンは、ある概念を理解しているかどうかは、入門講義ができるかどうかで決まると述べました。
手にペンをもって読むのは、この講義のミニ版です。
ズンク・アーレンス. TAKE NOTES!――メモで、あなただけのアウトプットが自然にできるようになる (p. 139). (Function). Kindle Edition.
再読は学習の役に立たないのと同じぐらい、理解の役にも立ちません。詰め込みによって、ごく短いあいだだけ情報を頭に入れることができるのは確かです。試験に合格するぐらいのあいだは覚えていることができます。
しかし、詰め込みは学習を助けてくれません。
ズンク・アーレンス. TAKE NOTES!――メモで、あなただけのアウトプットが自然にできるようになる (p. 143). (Function). Kindle Edition.
他にも同様の記述が本当にたくさんありましたが、きりがないのでここまでにしておきます。
これらに"繰り返し登場する概念"は「抜粋ではなく自分の言葉に書き直したメモを取ることで自分の頭を使う(再読や丸暗記は学習や理解の役に立たない)」です。
とはいえ本の内容を何も覚えていない私がいきなり"自分の言葉に書き直す"ことは不可能です。覚えていないのですから。
ではどうすれば「本を閉じて自分の言葉に書き直す」ことができるようになるのでしょうか?
本を閉じて自分の言葉に書き直すためには:書き直す意識を持って読む
答えはシンプルです。自分の言葉で書き直すことを考えながら本を読むことです。
私が実践している 「書き直す意識」 を持つための具体的な観点は以下の通りです。
- この本(章)の最も重要なメッセージは何だったか?
- この本を読んで、自分の仕事(プログラミング)に応用できると思ったことは何か?
- この本の主張に対して、自分は同意するか、反論するか?その理由は?
間違いを恐れる必要はありません。記憶が不正確でも構いません。
情報を思い出す試みに労力をつぎ込めば、最終的に手伝ってもらわなければ思い出せなかったとしても、長い目で見て、きちんと覚えている可能性がずっと高くなります(Roediger and Karpicke, 2006)。
ズンク・アーレンス. TAKE NOTES!――メモで、あなただけのアウトプットが自然にできるようになる (p. 143). (Function). Kindle Edition.
おわりに
さあ、自分の言葉でメモを取りましょう!