博報堂テクノロジーズの鈴木です。
前回(CCoEはカルチャー醸成のコラボレーションハブである)、人生で初めて技術ブログというものを投稿したところ、予想以上に多くの方に読んでいただき、沢山の反響もいただきました。本当にありがとうございます。組織内外(CSPも含め)の方々への挨拶状代わりとさせていただくという、私の目標が無事に達成できたかと思います。
だいぶ間が空いてしまいましたが、今回はCCoEの未来について考えてみたいと思います。
課題設定としては 「CCoEって会社にとって必要なの?ある程度やることやったら、要らないんじゃない?」 という、自分の職や立場を失いかねない、少し心がざわつくテーマです。
未来への道しるべ。クラウドジャーニー(戦略)策定
私が新たにCCoE活動を始める決意をした際、活動計画の道しるべとすべく策定したものが クラウドジャーニー でした。CCoEの成熟度により、どういったカテゴリやタスクに注力すべきか、さらには我々の現在地を再確認すべく作成したものでしたが、時間軸やカテゴリの粒度に甘い部分があり、CCoE活動が無事に軌道に乗った暁には、再度じっくりとアップデートに取り組みたいとずっと温めていました。
その第一歩として、CCoEチームにて「CCoE中長期計画(仮)」のディスカッションを開始し、まずは発散的思考でいくべく、ブレストを行いました。
なお、CCoE活動においてやるべきこと、ベストプラクティスとアンチパターンについては様々な会社が既に情報を公開して下さっているので、色々と参考にさせていただきました。皆様ありがとうございます!
(我々博報堂テクノロジーズのCCoEチームとしても、そのようなナレッジ蓄積の一翼を少しでも担えれば、と改めて思い、こうしてブログを書いております)
CCoEという組織が当たり前のように続くとは限らない。一体いつから錯覚していた?
CCoE活動について、外部情報やチームメンバーそれぞれの経験と知見、他社事例など各自が思いついた考えを出していく中で、ある方の発言に私は衝撃を受けました。
「CCoEの解散をゴールに置いている組織もあるかもしれない」
つまり、それはどういうことかというと「CCoEの活動成果として必要なガバナンスやセキュリティ等の体制の構築、各種要素が実装できれば、CCoEという組織的活動は不要になる。そこを目指して活動する」ということです。
私は、そんなことをまったく考えてもいませんでした。CCoEという組織が当たり前のように未来永劫ずっと続くかのような前提で捉えてしまっていました。このような自分の凝り固まった考えを打破してくれるような、学びや気付きがあるCCoEチームという存在は大変ありがたいことです。
改めてよく考えてみると、確かにCCoE組織というのはどんどん人やリソースが拡大していくイメージがそこまで強くありません。それどころか少数精鋭な印象もあります(なんなら自分のように一人CCoE経験者もたくさんいるはず)。
CCoEの未来を3パターン考えてみた
そこで「解散や不要論も含めたCCoEの未来」を3パターン考えてみました。あくまでも私個人の妄想ですので、異論は認めます。
パターン1:CCoE消滅
これは先程述べたように、やるべきこと(=やれること)を完遂し、CCoEという存在が必要な理由が無くなるパターンです。
会社によってCCoE組織の設置理由はそれぞれの事情で様々あるかと思いますが、CCoEが会社から求められていた当初の目標を達成し、それ以上の追加ミッションが無く、活動リソースへの投資も無いのであれば、CCoEという組織的活動はそこで試合終了です。任務完了したからといって自爆まではしませんが、それ以上の活動をCCoEメンバーが自ら求めたり動いたりしない限り、自然消滅してしまいます。
そこまでいかなくても、CCoEとしてやれることが少なくなってきてしまったら、停滞→衰退→消滅のサイクルに近づいていくかもしれません。実はこのパターンは少し気を抜いただけでありえそうなので、非常に危険だと思っています。
ですから、もしCCoEという組織を存続させたいのであれば、CCoEとしては自発的にやるべきことを生み出す&提案していく&会社全体を巻き込んでいく、といったプロアクティブな活動が求められます。
パターン2:CCoE進化・スピンオフ
これは良い意味での発展的解散になります。CCoEの活動が従来のミッションである「クラウド」の領域に留まらずに、他のエリアまで侵食もしくは進化・変様、あるいは取り込まれていくパターンです。
例えば、CCoEの重要ミッションのひとつに「セキュリティ」がよくあるかと思います。セキュリティの専門部門が無い組織において、CCoEが率先してクラウドのセキュリティ関連のタスクを多くこなしてフォーカスしていくうちに、やがてCSIRTのようなセキュリティ部門を立ち上げていく(スピンオフ)、みたいなことがありえるかもしれません。
他には、CCoEとしてコスト管理(FinOps)や勉強会開催・教育体制の構築というようなエンジニアカルチャーの醸成に強く関わっていくうちに、会社全体でそれらの戦略立案・実行をしていくCTOオフィスのような組織に変わっていく、もしくはその一部に取り込まれる、といったこともありえそうです。
総じてCCoEの活動領域は「クラウド」が入り口かもしれませんが、組織や会社への関わり方としては非常に広く、なおかつ深いことばかりです。その上、会社の戦略やカルチャーといった根幹の部分にも強く影響します。元々CCoEだけを担っていた組織が進化して、CCoEという活動は組織全体の活動の一部に取り込まれていくこともありえるかも、と思いました。
この「自分たちの活動がクラウドにとどまらない」という点については、既にCCoE活動をやられている方であればお気付きだと思います。コラボレーションハブとして、社内外のあらゆる利害関係者と全方位的に接していく上では「これってCCoEの仕事じゃないかも」的な事も積極的に拾っていく必要がありますし、クラウドテクノロジーという技術をフックとした攻め方ではなく、マーケティングやビジネスのエリアまで含めた戦略と戦術を駆使して日々悪戦苦闘されているでしょう。
パターン3:CCoEは終わりなき旅
最後に紹介するのが「俺たちの旅はまだ始まったばかりだ!」という、延々と終わりのない旅を続けていくパターンです。
簡単に言うと「CCoEのやることは尽きない」ということです。当初設定された目標やタスクを完遂したとしても、次から次へと新たな課題が降ってくる、湧いてくる、もしくは自分達で生み出すということが行われるため、CCoEという組織が新たなチャレンジに向かって永続していくイメージです。
パターン1のCCoE消滅の逆説的になってしまいますが、まだやるべき課題や取り組むべきタスクが残っている、でもリソースの問題や政治的理由でこれ以上どうにも出来ない、これでCCoEは終わりだと行き詰ったとしても「あきらめたらそこで試合終了ですよ」という気持ちで諦めない限り、CCoEの活動は終わらないことになります。
そこまで根強いもので無かったとしても、例えばCCoEが何らかの運用や定常業務、もしくはキーファクターを握っていて、代わりの利かない存在であれば、細く長く生きていくことも可能かもしれません。これもいわゆる一つの生存戦略です。
結論:CCoEという組織およびチームメンバーはどうあるべきか?
以上のように、CCoEの未来を3つ挙げさせていただきましたが、みなさんの中でしっくりくる将来像はありましたでしょうか?
すべてを通して見えてくるものは 「CCoEの存在価値」 という点かと思います。
存在価値が無くなるのか?それとも存在価値の測定が変わるのか?あるいは普遍的にあるものなのか?という受け身的な見方がある一方で、いずれにしても自ら存在価値を生み出していかないと終わりは来る、ということは明白です。CCoEという組織およびチームメンバーの価値を自らアップデートし続けないと、この先、生きのこれません。
CCoEという組織については、CCoEに対するニーズヒアリングを行い、会社やビジネスの成長と方向性などの未来予測と組み合わせることで、CCoEのミッションを適切に変化させていき、存在価値をアップデート出来るかと思います。
個人としては、課題調査とソリューションの検討を絶えず行い、それに合わせたスキルや知識を取得していくことで価値が上がります。
更に追加して、この「存在価値」というキーワードから私が導き出した結論としては 「CCoEの未来はどうなるか分からないが、変化に強いCCoE組織と人になることを目指す」 ということになります。
変化に強い、つまり柔軟性と対応力があることが、存在価値を生み出す源泉であり、不確実性のある未来への備えとなります。硬直性が高いと、変化に追いついていけず、あっという間にCCoE組織は取り残され崩壊していくかもしれません。
やるべきこと、やらなくてはいけないことが突然やってきたり、そもそも価値発揮のゲームチェンジが起きてしまった際でも、華麗に立ち振る舞えるような調和能力の高さが、自分達の価値と信頼に繋がります。
ここまでくると「結局当たり前の一般論に落ち着いたのか」と察した方もいるかと思いますが、確かにこれは別にCCoEという組織に限った話ではなく、一般的な会社や組織における生存戦略と持続性の論点と同様です。
ただしクラウドというテクノロジーエリアは最先端エリアである故に少々特殊で、パブリッククラウドは次から次へと新たなイノベーションを生み出しプロダクトが増加し、利用者も増える一方なので、新たな変化が生じて課題が尽きることがなく、知識やユースケースのインプットも終わりはないでしょう。
これはつまり、常に「変化=生存競争」に晒されているエリアということでもあります。我々インフラエンジニアは過酷な時代に生きているのです。AIのキャッチアップをしなければいけませんし、普段の業務範囲外の知識や最新情報の獲得も重要なことなのです。
CCoEという組織として、インフラエンジニアという個人として、クラウド時代を生き残るために変化に強い存在を目指せていますか?と自問自答しなければならない、と今回改めて認識した次第です。
また「変化に強いCCoE組織と人になることを目指す」ということを、さらに言語化していくことが次の課題となりました。