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NISTは設定基準ではない

Last updated at Posted at 2026-01-01

NISTは設定基準ではない ― CSPM設計に効く“思想”の話

本執筆は
AWS Security Hub CSPM 有効化設計の教科書 CIS / NIST / PCI をどう選ぶか
の補足資料です。

CSPM を触っていたり、Inspectorの脆弱性対応をしている際に
必ず一度はこう思います。

「NIST ってなんだっけ。結局どの設定をONにすればいいんだろう?」

この問いに対する答えは、少し意地悪ですがこうです。

NIST は“設定基準”ではありません。

初めにこのような認識をお持ちください。
CIS は「今できているか」を測るもの、
NIST は「どこまで目指すか」を決めるもの。


1. なぜNISTは分かりにくいのか

NIST は、

  • 組織はどのようにリスクを管理すべきか
  • 事故が起きたときにどのように対応すべきか

といった、「どう考えるか」を示す枠組みです。

そのため NIST を

「このチェックをONにすればいい」

と理解しようとした瞬間、
必ず混乱します。


2. v3 と v4 の何が変わったのか

〜「v4だけ有効化すればいい」は本当か?〜

PCI DSS v4.0.1 は最新規格であり、
「これから新規に対応するなら v4 だけでよい」と言われることもあります。

しかし、既存環境では“v4だけ有効化”が必ずしも正解にならないケースが存在します。


v3 と v4 の思想の違い

観点 v3.2.1 v4.0.1
基本姿勢 チェックリスト型 継続的運用・リスクベース型
評価方法 年次監査中心 常時運用を前提
実装の自由度 低い カスタムコントロールが可能
要求レベル 技術要件中心 技術+運用+証明責任

v4 は単なるアップデートではなく、
「監査対応型」から「日常運用型」への大転換です。


v4だけで自動判定しきるのは難しい?

v4 では、

  • 要件の表現が抽象化
  • 「組織のリスク評価に基づき適切な管理を実施すること」

という文言が多くなり、
技術設定だけでは“合否を機械的に判断しにくく”なっています。

一方 v3 は、

  • Security Group はこう設定する
  • ログはこの条件を満たす

といった、CSPMと相性の良い具体的ルールが多い

つまり

v3 = 設定の健全性を機械でチェックしやすい
v4 = 運用の成熟度を人が説明する必要がある

という構造です。


v3 を併用する価値が残るケース

以下のような環境では、
v3 をベースラインとして残す意義があります。

  • 既に v3 ベースで長年運用している
  • 監査証跡が v3 項目単位で整備されている
  • CSPM による機械検知を重視したい

この場合、

v3 = 技術的ベースライン
v4 = 将来の運用モデル

という二層構造で考える方が現実的です。


結論:v4はゴール、v3は足場

  • 新規環境
     → v4 を中心に設計
  • 既存環境・CSPM重視
     → v3 をベースに v4 へ段階移行

PCI DSS v4 は最終到達点であり、
v3 を“捨てるべき過去の規格”と考えると、
運用は必ず破綻します。

3. NISTをCSPMにどう落とし込むのか

NIST をそのまま CSPM に当てはめると、

  • 検知数が爆発
  • 優先度が不明瞭
  • 現場が疲弊

という状態になります。

NIST は

“CSPMにどういう役割を担わせるかを決めるための設計図”

として使うのが正解です。

たとえば

NISTの考え方 CNAPPでの役割
Protect CSPM / CIEM
Detect CWPP / CDR
Respond SOAR / チケット連携
Recover バックアップ / DR設計

この対応関係を整理することで、
「なぜこの基準をONにしているのか」を説明できるようになります。


4. NISTを“ON/OFF”で考えてはいけない理由

CIS は

  • ON にする
  • ルールに違反したら検知される

という単純な構造ですが、
NIST を同じ感覚で扱うと、必ず失敗します。

なぜなら NIST は、

「どの設定を有効にするか」を決める基準ではなく、
「どの仕組みに、どんな役割を持たせるか」を整理するための枠組み

だからです。


ON にした瞬間、何が起きるか

NIST 800-53 を CSPM にそのまま適用すると、

  • 検知項目が一気に数倍に増える
  • 監査・文書管理・統制プロセスまで指摘対象になる
  • 設定変更では解消できないアラートが大量に出る

結果として、

「どう直せばいいのか分からないアラート」
がダッシュボードを埋め尽くします。


NIST の正しい使い方

NIST は次のように使うのが正解です。

NIST の要求 割り当てるツール
設定の健全性 CSPM(CIS)
権限の統制 CIEM
振る舞い検知 CWPP / CDR
事故対応 SOAR / チケット管理
復旧体制 バックアップ / DR

こうして初めて、
NIST は CSPM を“育てるための設計図”になります。


「NISTをONにする」という発想が危険な理由

NIST を「ONにするもの」と捉えた瞬間、

  • CSPM が “万能ツール” になり
  • 何でも検知すべきだと思い込み
  • 最終的に誰も使わなくなります。

NIST は、
CSPMに役割を与えるための思考フレームワークです。

ON/OFF の世界に持ち込んではいけません。

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