はじめに
エンジニアの転職面接で落ちる人と受かる人には、技術力以上に決定的な差があるように感じます。
私は異業種からエンジニアに転職し、SESから自社開発のSaaSベンチャーやメガベンチャーと、その他複数の会社を経験してきました。転職活動では面接を受ける側として悔しい思いもしましたし、面接官として候補者の方々と向き合う機会がありました。
そうした経験を振り返ったとき、印象に残っているエンジニアに共通していたのは、技術の深さはもちろん、自分が関わっているプロダクトへの解像度の高さことでした。システムの全体像、使っている人のこと、技術選定の背景、今ある課題、そういったことを自分の言葉で話せる人ばかりでした。
この記事では、私が経験の中で大切だと感じてきた4つの思考習慣をご紹介します。転職を意識している方にはもちろん、今の現場でもっと価値を発揮したいと思っているエンジニアの方にも、少しでも参考になると嬉しいです。
※なお、この記事で想定しているのは自社プロダクトを持つ事業会社のエンジニア求人です。現場によっては評価軸が異なる部分もある点、あらかじめご了承ください。
面接官が本当に見ているもの
技術面接と聞くと、アルゴリズムやデータ構造の知識、コーディングの速さを想像する方も多いかもしれません。もちろんそれらが問われる場面もあります。しかし面接官として多くの候補者と話してきた中で、合否を分けていたのは意外なところにありました。
それは**「今の、あるいは過去の仕事をどれだけ自分の言葉で語れるか」**です。
面接でよく聞かれる質問があります。
- 「今のプロジェクトについて教えてください」
- 「なぜその技術を選んだのですか?」
- 「開発する上で苦労したことは何ですか?」
一見シンプルに見えるこれらの質問に、多くの方が曖昧な答えを返します。「チームで決めたので詳しくは…」「担当外の部分なので…」という言葉が出た瞬間、面接官の中では「この人は自分の仕事をどう捉えているんだろう」という疑問が生まれます。
もちろん、すべてを知っている必要はありません。大切なのは知ろうとしてきたか、考えてきたか、という姿勢です。
逆に、自分の担当範囲を超えてプロダクト全体を語れる人、技術選定の背景や課題感を自分の意見として話せる人は、経験年数に関わらず印象に残ります。
面接官は「この人と一緒に働いたらどうだろう」という目線で見ています。そのイメージが湧く人は、自然と評価が上がります。
次の章からは、その「語れるエンジニア」になるための4つの習慣を具体的に解説していきます。
習慣①:プロジェクトの「文脈」を理解する
あなたが今関わっているシステムは、誰が、どのように、どれくらいの規模で使っているでしょうか。
自分の担当タスクをこなすことに集中するあまり、この問いに即答できないエンジニアは意外と多いものです。
ここで言う「文脈」とは、以下のようなことです。
- このシステムは誰のどんな課題を解決しているのか
- ユーザーはどんな場面でどのように使っているのか
- 利用規模はどのくらいで、それはビジネス的にどんな意味を持つのか
これらを理解しておくことは、コードの質にも直結します。ユーザーの使い方を知っていれば、エラーハンドリングの優先度も変わります。利用規模を把握していれば、パフォーマンスへの意識も自然と高まります。
面接でも、機能の説明で終わる人と、「誰のためのプロダクトで、自分はどんな役割を担っていたか」まで話せる人では、印象が大きく異なります。
まずは日頃から自分のプロダクトを実際に使ってみること、ビジネスサイドのメンバーと話す機会を作ることから始めてみてください。
習慣②:自分の外側の技術を知る
自分の担当範囲の技術を理解するのは当然として、関わっていない領域の技術にも目を向けていますか。
「それは自分の担当外なので」という言葉は、面接の場では少し危険です。なぜその技術が選ばれたのか、どんなメリット・デメリットがあるのかを語れるエンジニアは、同じ経験年数でも明確に際立って見えます。
具体的に意識したいのはこういった問いです。
- このプロジェクトでなぜその言語・フレームワークが採用されているのか
- 他の選択肢と比べてどんなトレードオフがあるのか
- 実際に運用する中でそのメリット・デメリットは感じられているか
全てを深く理解する必要はありません。大切なのは**「なぜ?」を持つ習慣**です。
チームの技術選定の議論に耳を傾ける、アーキテクチャに関するドキュメントを読んでみる、そういった小さな積み重ねが「プロダクト全体を見渡せるエンジニア」への近道になります。
習慣③:課題を見つけ・考え・動く
プロジェクトの「今の課題」と「将来起こりうる課題」を、普段から意識して考えているでしょうか。
言われたタスクをこなすだけでなく、課題を自分で見つけ、改善を提案できるエンジニアは、現場でも面接でも一目置かれます。特に自社プロダクトを持つ事業会社では、この姿勢を重視する傾向が強いです。
- 今のコードベースやアーキテクチャで、将来問題になりそうな箇所はどこか
- 開発体験や運用コストの面で、改善できそうなことはないか
- ユーザーにとって不便なままになっていることはないか
もちろん、気づいて行動に移せるのがベストです。しかし完璧な解決策がなくても、課題を言語化して共有するだけでも十分な価値があります。
面接では「どんな課題意識を持って仕事をしてきたか」は必ずと言っていいほど問われます。 日頃から課題を言語化する習慣があれば、この問いに対して自分の言葉でリアルに答えられるはずです。
習慣④:品質を守る・上げるための意識を持つ
「動けばいい」から一歩踏み出して、品質を常に意識できているかが、エンジニアとしての成熟度を測るひとつの指標になります。
ここでいう品質とは、テストやコードレビューといった技術的なものだけではありません。
- 仕様の抜け漏れを事前に拾えているか
- 将来の開発者が読んでも理解できるコードになっているか
- 障害が起きたとき、素早く原因を特定できる設計になっているか
こういった視点を日頃から持てているかどうかです。
品質への意識は、面接で直接問われることもあります。「開発する上で大切にしていることは何ですか?」という質問に対して、具体的なエピソードとともに答えられるか。抽象的な「品質を大切にしています」ではなく、自分なりの品質観を持っていることが伝わると、面接官の印象は大きく変わります。
日々の小さな「これでいいのかな?」という問いを大切にすることが、長期的に大きな差を生みます。
おわりに
ここまで4つの習慣をご紹介してきました。
- プロジェクトの「文脈」を理解する
- 自分の外側の技術を知る
- 課題を見つけ・考え・動く
- 品質を守る・上げるための意識を持つ
これらに共通しているのは、**「自分の担当範囲を超えて、プロダクト全体に関心を持つ」**という姿勢です。
これらは面接のために身につけるものではありません。日々の仕事の質を上げるために習慣化した結果が、面接でそのまま滲み出る——それが最も強い面接対策になる、というのが私の実感です。
明日からすべてを実践する必要はありません。まずはひとつずつ意識することで数ヶ月後には大きな違いが生まれてくるはずです。