はじめに
Amazon Q in Connect には、「会話の内容に基づくナレッジの自動推奨」機能があります。
この機能を有効にすると、顧客とのチャットや通話の内容がリアルタイムに解析され、質問内容に応じた適切なナレッジ記事や回答文がエージェントに自動で提示されます。
本機能は英語環境が前提でしたが、今回のアップデートにより 日本語にも対応しました。
これにより、日本語のチャットや通話内容をもとにナレッジをリアルタイムで提示できるようになり、国内環境でも本格的に活用可能となりました。
本記事では、日本語での音声通話を例に、ナレッジ自動推奨がどのように動作するのか、
また、その導入に必要な設定手順について解説します。
本記事の情報は2025年6月時点のものです。
最新情報については公式ドキュメントをご確認ください。
目次
1. 動作環境
2. 前提条件
3. アップデート内容
4. 設定
5. 動作確認
6. (付録) Salesforce上の Amazon Q in Connect による自動推奨
1. 動作環境
本記事で使用する環境は以下のとおりです。
- AWS リージョン: 東京(
ap-northeast-1
)
2. 前提条件
本記事では以下を前提とします。
- AWSアカウントが作成されていること
- Amazon Connectの初期設定(電話番号の取得やキューの設定など)が完了していること
- 対象のインスタンスでAmazon Q in Connectが有効化されていること
- こちらの記事を参考に、 ナレッジベースの作成 までの初期設定が完了していること
- データソースの種類は問いません(本記事ではSalesforceをデータソースに選択しています)
3. アップデート内容
今回のアップデートにより、日本語を含む以下の6言語がサポートされるようになりました!
- 日本語
- スペイン語
- ポルトガル語
- フランス語
- 韓国語
- 中国語
次章では、日本語での自動推奨を有効にするために必要な設定手順を紹介します。
4. 設定
4.1 AIプロンプトの作成
ナレッジの自動推奨(Answer recommendation) には、下記3タイプのAIプロンプトを設定する必要があります。
-
ANSWER_GENERATION(回答生成)
- 目的: ナレッジベースの文書や抜粋をもとに、顧客の意図に対応する解決アクションを生成する
- 特徴: 生成された応答は、エージェントがすぐに使える簡潔な回答文として提示される
-
前提: クエリは
Query Reformulation
によって事前に整形されたものが利用される
-
INTENT_LABELING_GENERATION(インテントラベル生成)
- 目的: エージェントと顧客の発話を分析し、顧客の意図(インテント)を特定・要約する
- 特徴: 生成されたインテントのリストは、Amazon Q in Connect ウィジェット内に表示され、エージェントが選択可能となる
-
QUERY_REFORMULATION(クエリの再構築)
- 目的: エージェントと顧客の会話の書き起こし(Transcript)をもとに、ナレッジ検索に適したクエリを自動生成
- 特徴: 顧客が直面している問題を要約し、関連性の高いナレッジ記事の検索を補助
デフォルトで用意されているAIプロンプトは、作成したAIエージェントに割り当てることができないため、上記3つのAIプロンプトを新規に作成します。
- 参考: 作成方法
作成するAIプロンプト
- 名前: 任意
- AIプロンプトタイプ: プロンプトの作成で紹介した3種類(例:
回答生成
)
「作成」 をクリックすると、それぞれのタイプに合わせたデフォルトのAIプロンプトが入力されているため、そのまま 「公開」 をクリックします。
上記手順で3タイプ(回答生成
,インテントラベル生成
,クエリの再構築
)のAIプロンプトを作成してください。
4.2 AIエージェントの作成
- Amazon Connect コンソール > Amazon Q > AIエージェント > 「AIエージェントを作成」 より、プロンプトを作成します
作成するAIエージェント
- 名前: 任意
- AIエージェントタイプ:
回答の推奨
- ロケール:
日本(Japanese)
プロンプトフィールドの 「プロンプトを追加」 より、作成するAIプロンプトで作成したAIプロンプトを3つ全て追加し、 「公開」 をクリックしてください。
最後に、「デフォルト」 > 「編集」 より、上記で作成したAIエージェントを 「回答の推奨
」 に設定します。
4.3 Amazon Connectコンタクトフローの作成
検証用のコンタクトフローを作成します。
任意のコンタクトフロー内に以下画像の2つのブロックを追加します。(参考)
- 「記録と分析の動作を設定」ブロック
-
Contact Lens 音声分析より、
リアルタイムおよび通話後の分析
を有効化する
-
Contact Lens 音声分析より、
- 「Amazon Q Connect」ブロック
- Amazon Connectインスタンスに紐づいているAmazon Q in Connectドメインを選択する
5. 動作確認
- エージェントステータスがAvailableになっていることを確認後、こちらで作成したコンタクトフローを紐づけた電話番号に電話をかけます。(図中①)
- 着信確認後 「通話を受信」 をクリックします。(図中②)
- 通話が開始されるまで、Amazon Qはローディング状態となります。(図中③)
5.1 ナレッジの自動推奨の様子
「Amazon Connectとはどのようなサービスか、具体的に教えてください」と発話したところ、およそ5秒後に「こちらが新しい提案です...
」と出力され、続いて 顧客の質問事項 (アマゾンコネクトの詳細とサービス内容について知りたい。
)が出力されました。
また、顧客の質問事項 をクリックすることで、推奨される回答が出力されました。
データソースを基に出力された回答なため、環境により回答内容が異なります。
6 (付録) Salesforce上の Amazon Q in Connect による自動推奨
Amazon Q in Connectは、Amazon Connect CTI Adapterにより、SalesforceのUIに統合することが可能です。
CTI Adapterのセットアップが完了したSalesforce環境での動作検証となります。
CTI Adapterのセットアップ方法についてはこちらを参考にしてください。
6.1 動作確認
エージェントワークスペースを利用した場合と同様に、Salesforceと統合したAmazon Q in Connectでも、日本語による発話の検知およびナレッジの自動推奨が行われることを確認しました。(下図: Amazon Q in Connectをユーティリティバーに表示)