元記事: https://moday.me/blogs/engineering/tech-stack-selection
MODAYの技術スタック選定 — Claudeに丸投げしたら、知らないサービスが並んでいた
このブランドのコンセプトは「AI駆動型ブランド立ち上げ」
先に前提を書いておきます。MODAY の事業コンセプトは、Tシャツを売ること以上に 「AI駆動型のブランド立ち上げをどこまでやれるか」 を試すこと、というのが半分くらいある。
ECコンサルを本業でやっていて、現場の実務はそれなりに見てきた。その上で、自分1人で、世界向けに、3日で立ち上げる、という条件で どこまで AI に判断と実装を任せられるか。これを自分で実験している。
なので、技術スタック選定もこの方針でやった。「分からないから AI に聞いた」ではなく、最初から AI に投げる前提で、自分は判断軸だけ出す という分担にしている。
その結果、こういうスタックになった。
| レイヤー | 採用 |
|---|---|
| ストア | Shopify (Dawn theme) |
| POD | Gelato |
| 翻訳 | Translate & Adapt |
| 自動化 | Make.com |
| Webhook | FastAPI on Render.com |
| 画像生成 | fal.ai FLUX Pro |
| AI 文章処理 | Anthropic API |
このうち、自分で名前を知っていたのは Shopify と Anthropic API だけ だった。あとは全部、Claude との会話の中で初めて見たサービス名だ。
このスタックを選んで、組み始めてから、まだ3日しか経っていない。
Shopify を選んだ理由は、技術じゃなくてニュースだった
Shopify を選んだ理由は、シンプルだ。
少し前に Shopify MCP のニュースを見た。ああ、これなら Claude Code でストアを組めるな、と思った。それがほぼ全てだった。
普段はECコンサルをやっていて、Shopify は外側からは見ていた。でも自分で本格的に触るのは初めてだ。それでも「Claude Code が MCP 経由で触れるなら、自分が Shopify を知らなくても何とかなる」と踏んだ。
国内サービス(BASE、STORES)は最初から検討に入れていない。理由は1つ、最初からグローバルに売りたかった から。9言語、複数通貨、複数の決済手段。これを最初から見せてくれるのは Shopify しかなかった。
選定軸が「技術スペック」ではなく「Claude Code と相性が良さそうか」と「世界に出せるか」だった、というのが正直なところ。
POD は最初から Claude に投げる前提だった
Tシャツの製造・発送をどうするか。
POD(Print On Demand)サービスを、自分は1つも知らなかった。Printful も Printify も Gelato も、聞いたことすらなかった。
だがこれは「困った」のではなくて、最初から AI に投げて選ばせる前提 だった。自分の知識量で世界中の POD サービスを比較しても、たかが知れている。それなら、判断軸だけこちらが出して、選定そのものは Claude に任せる方が、結果的に良い選択肢が並ぶ。
投げた質問はこれ。
Shopify でオリジナルTシャツをオンデマンドプリントで自動的に販売したい。ターゲットはアメリカ・ヨーロッパ・アジアなどグローバルマーケットで、日本も入れるけどサブのイメージ。どのオンデマンドプリントサービスを使うべきか、リサーチしてくれん?
これだけ。条件は全部ビジネスレイヤー だ。「グローバル」「自動的に」「日本はサブ」。技術的な比較軸(SDKの言語、レート制限、Webhookの形式、認証方式)は1つも出していない。出せない、と言ってもいい。
返ってきたのが、これ。
グローバル展開のオンデマンドプリントについて、主要3サービスを比較しました。結論から言うと、Gelato が今回のユースケースに最もフィットします。
🥇 Gelato(最推薦)
- 32カ国・140拠点以上のローカル印刷ネットワーク
- 日本・韓国・シンガポール・マレーシア・オーストラリア・インド・中国でローカル生産に対応
- EU・米国・アジアの顧客に平均72時間以内での配送が可能
- 関税リスクが低い(現地生産のため越境しない)
- 200カ国以上に配送対応
- 弱み: Printifyと比較すると商品ラインナップがやや少ない、価格はPrintifyより若干高め
🥈 Printful(ブランド重視ならこちら)
- 北米・欧州・アジアに17拠点
- 品質管理が厳格で、ブランド構築向き
- 弱み: 3社の中で最も価格が高い
🥉 Printify(コスト重視ならこちら)
- 90以上のプリントプロバイダーネットワーク、950種以上の商品
- 価格がGelatoより10〜20%安いケースが多い
- 弱み: アジアのローカル生産拠点がGelatoより少ない、日本語サポートなし
推奨戦略:グローバルメインで日本はサブという条件なら、Gelatoをメインに使う。アメリカ・ヨーロッパ・アジアすべてでローカル生産できるため、送料・関税・配送スピードのどれを取っても有利です。
決めた。会ったことも触ったこともない POD サービス に、ストアの根幹を預けることになった。
これが、コンサルとして同じ比較を自分でやろうとしたら、3社のドキュメントを読み比べて、関係者に相談して、と1週間は使う。それが、ほぼ即時。
FastAPI に至っては「使ってるの?」レベル
スタック表に「Webhook: FastAPI on Render.com」と書いた。
これ、自分で書いていて少し笑う。FastAPI が何なのか、まだちゃんと分かっていない。
構築の初期、Shopify からの注文 webhook を受けて Gelato に流す処理が必要になった。Claude Code が「FastAPI で書いて Render.com にデプロイします」と言ってきた。Python のフレームワークらしい、という程度の理解で「お願いします」と返した。
書かれた。デプロイされた。動いた。自分は Render の管理画面でログを眺めるくらいしかしていない。
ちなみに、この構成は 今はもう使っていない。構築中に違和感があって、別の方法に切り替えた。その話は次か、その次の記事で書きます。
「AI駆動型でやる」と決めている以上、自分のスタックを、自分で全部は説明できない。それは織り込み済みで進めている。
これは賢いのか、危ういのか
ここまで書いて、自分でも整理がついていない。
メリットははっきりしている。
- 自分が知らなかった選択肢が、最初から検討の俎上に上がる
- 「自分の技術力」が制約にならない
- 判断と実装が同時に走るので、1週間以上かかるはずの選定が即時に終わる
- 結果として、非エンジニア1人でグローバル D2C が現実的に組める
リスクもはっきりしている。
- 障害が起きたとき、何が起きているか自分で把握できないかもしれない
- スタックの「なぜ」を自分の言葉で説明できない(だから今、こうやって書きながら整理している)
- ベンダーが死んだとき、代替の判断が遅れる
このトレードオフが、半年後にどう転ぶかはまだ分からない。動いている間は最高で、止まったら詰むかもしれない。
それでも今このやり方を試しているのは、「AI にどこまで任せられるか」を、本気の事業で計測したい からだ。趣味プロジェクトじゃ意味がない。実際のお金が動き、実際のお客さんが買い、実際の発送が起きる場で試して、初めて答えが出る。
3日で組んだスタックで、世界に売る
このスタックを選んで、組み始めてから3日。
そのうち実装している時間はもっと短い。
その3日で、ストアが立ち上がり、9言語の翻訳が走り、注文 webhook が動き、Gelato への商品連携が動き始めた。「AI 駆動型ブランド立ち上げ」という実験の、最初のスタックがこれだ。
たぶん、半年後にはこのスタックの半分が入れ替わっている。FastAPI / Render はもう外した。他にも怪しいところはいくつかある。
でも今日この瞬間、これで世界に売る準備が整いつつある、というのが一番大事なところで。
次は「Claude Code に任せた作業と、人間がやった作業の分離」を書きます。
— Yoskee
moday.me