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キカガクで一番人気の『脱ブラックボックスコース』に完全版が登場&全編無料で公開決定!の裏話

Last updated at Posted at 2020-12-24

はじめに

メリークリスマス!
株式会社キカガク 代表取締役の吉崎です。

こうやって Qiita に記事を投稿するのがなんと『2年ぶり』です。
月日の流れは早いものです。

では、さっそく本題から。

みなさん、大変長らくお待たせしました!!!!!

2017 年に皆さんご存知の Udemy で公開以来、なんと Udemy だけでも 38,000人以上の方が受講してくださったキカガク流『脱ブラックボックスコース』。
微分から単回帰分析まで扱う初級編と、線形代数から重回帰分析まで扱う中級編まではスムーズにリリースしており、中級編の最後に『上級編も近々...』なんて言いつつ、大変申し訳ありません!

...実は仕事をサボってました。

なんてことはないのですが、今回のコース紹介後に書く裏話にある葛藤があり、なかなかリリースができていませんでした。

そんな心苦しい思いは今日でおさらばです。

みなさん、大変お待たせしました。
キカガク『脱ブラックボックスコース』が確率統計とロジスティック回帰、そして、ディープラーニングの基礎となるニューラルネットワークの数学といま大注目の PyTorch による実装まですべて網羅した上級編を加えた『完全版』が登場です!!!!!!

しかも、しかもしかも!!!!!

2020 年バージョンにブラッシュアップした初級編、中級編、上級編までを含んだ完全版の全12時間の動画が、なんと、、、

すべて無料で大公開です!!!!!(どどん)
脱ブラックボックスコース-.jpg
▶︎ 脱ブラックボックスコースを無料で学び始めたい方はこちら!

このコースは本当におすすめです。
個人的に初学者のときに学びたい項目を全部入れました。
そして、無料で学べるということは私含めたキカガクに1円も入らないということなので、そんなときには本当におすすめしたいものしか勧めませんよね。

なぜこんなキラーコンテンツを無料で公開することに決めたのかの裏話は、コース紹介のあとで教育に対する強い思いとともに書くので、最後までお付き合いいただけると嬉しいです。
今日はクリスマス・イブなのに、みなさん、お付き合いいただき、本当にありがとうございます。

▶ プレスリリース記事はこちら
人工知能・機械学習の基礎が学べるキカガクの一番人気『脱ブラックボックスコース』に完全版が登場&全12時間分の解説動画付きで無料公開!

脱ブラックボックスコースの紹介

人気のブロガーっぽく『おすすめな理由3選』でまとめてみましょうか。

おすすめな理由1.すべてのスタート地点である

Udemy で受講して頂いている方も多いと思うので、雰囲気を知っている方もいると思いますが、初めての方向けにどういった位置づけのコースかというと、ずばり、こんな感じです。

01.png

これからこの分野で研究を行って行く方のスタート地点であり、業界特化で学び始める方にとってのスタート地点でもあり、アプリケーションに組み込んでいく方にとってのスタート地点でもあります。

つまり、この分野学びたいんだけど、何から始めたら良い?の回答に

キカガクの脱ブラックボックス

と言ってもらいたいのです。

一言で『全ての基礎』です。

ただし、本当に誰でもというわけではありません。

02.png

機械学習をこれから学んでいきたいエンジニアの方にとっては具体的な理論や実装方法を知るために、入り口として学んでいただきたいです。
つまり、すべてのエンジニアにはおすすめです。
※ 機械学習界隈の偉い人は比較的コメントが怖いのと、知識的に全く不要ですのでご遠慮願えますと幸いです。

逆にビジネス側の方にも受けてほしい内容ではあるのですが、こちらは提供してから3年間を見ていると、響く人と響かない人の2パターンに分かれるなぁという印象でした。
その分岐点を探ってみたところ、やはりビジネス側の人は最終的に実装することがないので、数学の理解やプログラミングでの実装に関して『結局どこに使えるねん』と野暮に感じるみたいですね。
※ 吉崎は京都出身の関西人でたまに関西弁が出ます(綾部市立八田中学校→舞鶴高専→京大)。

たしかに『具体的』には使えないんですよね(これポイントです)。

それでも、ビジネス側で有意義な結果に繋がったなと感じた方は上の図の中級から上級の方で、エンジニアとの会話を円滑に進めたいというところから、ビジネスの設計をする際の引き出しを増やしたいという方でした。
『人工知能 (AI)』や『ディープラーニング』というキラーワードが登場して4年近く経つ今、社内で多かれ少なかれ AI 関連の用語が会話に必要になってきてる方も多いはずです。
『会話についていけない...』と感じたら、これは学びはじめの合図かもしれません。

また、ビジネス側の方に多い特徴として、具体的な事例やビジネスモデルに関しては、驚くことにエンジニアの方よりも詳しい方が多くいらっしゃいます。
その方の伸び悩み点が、具体的な事例の知識ばかりで、これを抽象化して思考をまとめようにも根幹の理解がないのでまとめられず、知識体系として整理できないところです。
つまり、ビジネス側の方はエンジニアとは真逆で、『具体化』を知るために学ぶのではなく、『抽象化』を知るためにその理論を学ぶと良いはずです。
だからこそ、ある程度、具体的な事例などの知識がないと『抽象化』の恩恵を受けないわけですね。
これからこのAI関連の技術に関するビジネスアイディアを設計しつつも、引き出しが足りていないので、最適な選択ができているか不安という方も受講の合図です。

結論

  • エンジニア側の方は悩むことなく、一番最初の教材として最適
  • ビジネス側の方は具体的な事例を知ったあとにアイディアの幅を広げるために学ぶ教材として最適

おすすめな理由2.手書きの数学とハンズオン形式のプログラミング

私の講義で特に大切にしているのがこの学び方です。

03.png

最近2冊目の本が出版されたのですが感じることとして、やっぱり数学やプログラミングを理解するためには、その『過程』で考えていることを伝えないと、魅力が半減しちゃうなと。

難しそうに見えるかもしれない数式も、本当は設計者の思いや意図がたくさん詰まっており、その点としっかり対話できるかによって理解度が変わってきます。
この分野を学んでいて思うのが、中学校や高校のときに学んだ数学の『証明終了!』みたいな無機質な世界ではなく、こんな風に考えて、設計したんだろうなぁと人間臭さを感じるようなものなんです。
その性質上、対話をするための言葉が『数式』とするのが最も伝達効率が良いのですが、これが数学アレルギーの人を生んでしまっており、非常にもったいないと感じています。
もし、そのような数学アレルギーの方こそ、私の講義を見てみてください。
その数式ひとつひとつに設計者の意図があり、その数式と対話できるように紹介しています。

『AI を学ぶことを通して、人間の思考を知る』という言葉がぴったりであり、数式を通して知る世界はみなさんの住む世界と全く異なるものではなく、むしろ、みなさん自身がどのように考えているかを言語化したものに過ぎません。

ちなみに余談ですが、キカガクの講師はちょっと変わった未経験者採用のみに一本化しており、もともとは理系大学出身が多かったのですが、いまや文系大学出身7割、理系3割ぐらいと文理の比率が逆転しました。
教えてくれる人や仲間がいれば、人間どんな分野でも学べるということを証明できているはずです。

結論

数学やプログラミングではすべての『過程』を解説しているので、怖がらずに受けてみてください。
意外と新しい世界が開けるかも知れませんよ。

おすすめな理由3.最新の情報まで網羅されている

この最新は現時点でということではありますが、今回の脱ブラックボックスコースの目玉はディープラーニングフレームワークの PyTorch で解説していることといっても過言ではありません。
PyTorch は TensorFlow (Keras 含む)と並んで今や2大巨頭のディープラーニングフレームワークとなりました。

今年の 10 月時点までの情報ですが、Google Trends で検索数を見てみるとこんな感じでした。
※ 最新版は Google Trends でチェックしてみてください。

日本
05.png

世界
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私は Chainer 派でしたが、この Chainer も昨年末にメンテナンスモードに入り、PyTorch への移行が発表されたので、必然的に PyTorch を使うようになりました。
とは言うものの、TensorFlow も使えますし、キカガクの講座ラインナップには TensorFlow の講座もありました。

が!!

実は 2019年末から2020年春にかけて TensorFlow の受講者が激減し、その分が PyTorch に流れました。
というわけで、Google Trends で検索数を見るも良しですが、論文で採用されている比率を見るのも良いですが、キカガクが持つ独自情報として、受講生は圧倒的に PyTorch を選んでいるというわけです。
ちなみに受講生は研究者ではなく、ほとんどが企業の開発者です。

こう考えると、今から学び始める人は PyTorch を選ぶ方が良いと個人的に思います。
そして、PyTorch の魅力はなんといっても『エコシステム』です

PyTorch 単体だと、ネットワークの訓練を行う際にこれら全てを書かないといけないのですが、、、

06.png

PyTorch のエコシステムに認定されている PyTorch Lightning を使うと、考えないといけないところがぐっと減ります。

07.png

別に for 文で訓練ループ書いちゃえば良いじゃん派の声も聞きますが、これはプロの発想であり、初学者はできるだけ本質に集中して学ぶことが大事だと思っています。
だからこそ、全体をちゃんと理解したあとは、なるべく本質に集中できる簡易な書き方を導入していく。
このような流れでこのコースは紹介しています。

ただし、最新の情報に触れるというのはバージョンアップのリスクがあります。
実はこのコースをブラッシュアップしている最中に PyTorch Lightning が v0 系から v1 系へ正式リリースがあり、書き方が大幅に変わりました。本当に大幅にです。
そして、いま PyTorch Lightning を使ったチュートリアルはまだ v0 系で書かれているものも多く散見されます。
私が GitHub で最新のバージョンの差分まで常にウォッチしていたので、v1 系の書き方へ刷新しており、現時点では最新の情報をお伝えできているはずです。

あと、Optuna でのハイパーパラメータの最適化で、結構テクニカルなネットワークの設計まで紹介したので、そのあたりも製作者としてはこだわりのポイントだったりします。

PyTorch 自体はチュートリアルが豊富ですし、PyTorch Lightning も Optuna もチュートリアルがあるのですが、それぞれが単体での使い方しか紹介されていないため、エコシステム間のコラボレーションでの最適な書き方を見つけるのって結構苦労が多いんですよね。
その点も試行錯誤の上、クリアしているので見てみてほしいです。

結論

いま注目のディープラーニングフレームワークである PyTorch で紹介している上、PyTorch Lightning や Optuna など、そのエコシステムを使った書き方も最新版で紹介しています。

【PR】最近、インプレス社からこの PyTorch で実装する方法の書籍も出したので、辞書代わりに手元に置いてもらえると嬉しいです。内容は脱ブラックボックスに画像処理と自然言語処理の基礎、そして、デプロイを追加したものなので、まず『脱ブラックボックスコース』を学び終えていただいてから購入を検討いただける方がお財布に優しいです。

ディープラーニング実装入門 PyTorchによる画像・自然言語処理 (impress top gearシリーズ)

おまけ

実はこの脱ブラックボックスコースには続編がすでに用意され、撮影も終えています。
本日発表したプレスリリース内で触れているのですが、『メディカル AI 専門コース』へと繋がります。
このコースの詳細は来年1月に発表予定ですが、医療関係者でなくても画像処理系に興味がある方にとっては『ものすごく良い』内容になっています。
基礎だけでなく、応用編が用意されている安心感もおすすめの理由です。

以上、みなさんの受講をお待ちしています。

脱ブラックボックスコース-.jpg
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裏話スタート

では、ここからがこの記事の本題と言っても過言ではないはずです。
なぜ、今回このような売れ筋コースをわざわざ無料で公開することを決めたのか、その意思決定の裏側について綴ります。

成長する組織と4年間変わらない景色

キカガクは 2017 年の 1 月に創業したので、もうすぐで丸 4 年が経ち、1 月からは 5 期目に突入します。
この4年間、経営者としての力不足により組織的な紆余曲折はあったものの、会社は順調に成長してくることができました。
多くの方のお力添えのもとにキカガクの成長があり、大変感謝しています。
この支援をいただけたからこそ、自分達もより良いものを社会に届け、より多くの人を支援できるようになりたいと純粋に今でも思い続けられています。

経営的な話ですが、基本的に自己資本の比率を高めることを意識しており、資本業務提携を行っている1社のみ少し株を持って頂いてるだけで、ほぼ 100% 自分たちの意思決定を行う事ができています。
これも短期的には変えにくい教育業界という構造に対して長期的な利益のために挑戦的な取り組みができる良い体制を築ける良い舵取りでした。
結果的に、3年ほど時間がかかりましたが、未経験者採用でプロフェッショナルの講師を育てる組織内部の研修の仕組みができ、その知見を受講生にもフィードバックすることで、より良い教育体制を築くことができました。
個人的な考えですが、組織内部の教育体制を築けていない会社が、外部の受講生の教育が本当にできるのかな?と疑問に感じていたので、この点にはプライドを持った会社を作ろうと動いてきたことが、この背景です。
いまやどの企業の案件も絶賛していただけて一安心ですが、最初はヒヤヒヤで、綱渡りのような1年だったことを今でも覚えています。

このキカガクという組織自体が挑戦的な取り組みと、ブームの後押しによって成長できた4年間であった一方で、どうしても変わらないものがありました。
それは、受講生へ提供している講義のレベルです。
講義の質という意味ではなく、2017年の創業1年目から4年目の今年まで、どの企業も受講するのが『ディープラーニングハンズオンセミナー』というこの脱ブラックボックスコースに画像処理や自然言語処理の応用を加えたコースです。
最初は日本マイクロソフト社と共同で開催できたことで初速が出た上に、日本ディープラーニング協会のE資格講座として認定していただけてさらに加速し、経済産業省の第四次産業革命スキル習得認定講座へ認定されたことで個人であれば最大70%の給付金が得られる大きなバックアップにより加速し続けました。
キカガクの成長はこのコースとともにできあがったと言っても過言ではありません。

そして、このコースの受講生がある程度多くなってきた頃に、そろそろ応用編のコースも出して実活用を支援できるようにしたいと2018年4月に応用編を出すも受講生がなかなか集まりません。
初回こそ、なんとか最低限の集客ができたのですが、受講生はキカガクに絶大な信頼を寄せていただいているリピーターの方で、『キカガクさんが作るコースは面白いから内容見ずに申し込んだよ!』と大変嬉しいお言葉の一方で、応用編への需要ではありませんでした。
そこから2年が経ち、そろそろいけるかな...?と 2020 年春から応用編のコース提供をリベンジしますが、こちらも集客がほとんどできず、継続が難しいと判断しました。
COVID-19 の影響もありますし、キカガクの集客力の問題もあると思いますが、営業代理店との打ち合わせをしてもやはり需要は『入門編』のコースばかりで議論が続きます。

創業してから4年間何度思ったことかわかりませんが、教育とビジネスはトレードオフが難しいのです。
特にキカガクのように『教育』に対して思いが強い場合、たとえ売上がどれだけ上がったとしても結局受講生が実活用まで結びつかなければ喜べるものではありません。
この AI 界隈は、ビジネスとしては『美味しい』の一言に尽きるかも知れませんが、一方で『教育』としては歯がゆさが続きます。

いつか実活用を本気で支援するための施策が打てるように、まずは足元を徹底的に固めていこう。
ここからは一エンジニアが立ち上げた会社の泥臭い経営ストーリーであり、この結末が今回の発表に繋がるわけです。

タイミングを見間違えてはいけない

教育的な歯がゆさがあるなら、早々に無料で提供して、社会的な『教育』を優先しろよと思われるかも知れません。

ビジネスを大切にしつつも教育へ熱意を持ってくれるチームが集まってきた段階で、この組織であればこれからの社会を変えられるかも知れないと思いました。
だからこそ、組織が存続できる仕組みを確立できれば、これまでの売れ筋であっても多くの人が受講できるように値下げをしたり、無料で提供したりして、多くの人の成長へ貢献し、そして、次のレベルのコースを受講してもらえるような流れを作りたいと動き始めました。
これは Amazon Web Service (AWS) がとっている有名な戦略で、多くの人に提供できると値下げができ、値下げをするとさらに多くの人に提供でき、さらに値下げができるといった方式です。
AWSがITでのインフラとなっているように、『教育』での社会のインフラを作るために、この戦略で多くの人に広められた結果、ビジネスが成立するような構造を作り上げようと計画をします。

この計画を頭の中で実行しようと決めたのが2018年の始まりの頃で、本当はそのタイミングで脱ブラックボックスコースの上級編を含めて無料で提供するなどもありましたが、その頃から社員を採用し始めて組織を作り始めていたので、まずはある程度の基盤を固めてからだと、歯がゆさを残しながらも、将来的に理想とする教育を追求するべく、その頃は組織づくりを優先しました。
もし、この頃に Udemy などで無料版などを提供していれば、私個人としての収入はある程度得られて生活はできていたものの、今のキカガクのような組織は作れていなかったでしょう。

こんな理由で、いつか出そう出そうと思いながら、脱ブラックボックスコースは中級編を境に出すことをためらい続けていました。

組織づくりの仕込みが続く長い日々

そこからは組織を作り上げるため、以下の4つのステップまで到達できたタイミングで組織が完成と定義しました。

  • Step1. 私が指導してキカガクの講義ができる講師が育つ
  • Step2. 私が育てた講師が指導して、次の世代の講師が育つ
  • Step3. 自社プロダクトの原型を私が作り、講師が作れるように育てる(講師→講師兼エンジニアに昇格)
  • Step4. 私が育てた講師兼エンジニアが指導し、次の世代の講師兼エンジニアが育つ

※ キカガクメンバー向けに、読者へわかりやすいようにプロダクト開発だけをピックアップしていますが、講義のコンテンツ開発も同様に考えています。

Step1-2 と Step3-4 を講師とエンジニアの採用を別枠として並行して走らせても良かったのですが、自社プロダクトの魅力は『ドメイン知識』です。
せっかく組織を一から作るのであればどうせ時間もかかるので、『ドメイン知識×プロダクト制作』ができる強い人材を育てるところまで挑戦してみたかったので、長期戦覚悟で2018年から取り組みます。
...そして、結果的に3年かかりました。想像以上に長すぎました。。。

講師の育成は未経験者採用でかなり大変ではありましたが、それでも、より難易度が高かったのが、Step2 から Step3 に移るところでした。
COVID-19 の影響があるまでは研修ビジネスとして伸びていたので、自社プロダクトを作るエンジニアを講師から育てる時間があるのならば、なるべく講師に登壇してもらって売上を伸ばそうという流れがありました。
自ら成長を課しているベンチャー企業にとって売上が落ちるどころか前年比で成長していないことはありえないので、悔しいのですが売上に目が行ってしまうことがあります。
売上が伸びれば新しい講師が採用できて、また新しく未経験者から育てることができるので良いのではと自分を説得する一方で、このままでは講師だけ増えて、自社プロダクトの開発ができる人を育てる時間は結局ないのでは...?とも感じていました。

『売上とビジネスモデル転換のジレンマ』とでも言いましょうか。

資金調達をあまり行わずに、既存の事業で稼ぎ黒字経営をして、その利益を新規事業の投資に回していくことをキャッシュエンジン経営と呼ぶ本に出会い、この経営スタイルで行こうと思っていました。
既存事業が大きくなると、その大きさに比例して新規事業に取り組む機会も増加するのかと予想していましたが、実際のところは、新規事業に取り組む機会は既存事業の大きさに反比例していました。

幸か不幸か COVID-19 で激変を余儀なくされる

そんな 2020 年の 2 月のことです。
ニュースで COVID-19 の話は聞いていましたが、流行病が海外で出たのかな程度の認識でしたし、おそらく多くの方もそうだったのではないでしょうか。
思った以上に影響がでるのが早く、教室に集まって対面形式で講義を行うキカガクのスタイルに対して、『COVID-19 感染予防』のために受講の延期が相次ぎました。
3~4 月の研修はほとんど延期になり、『延期なら、ずれただけだしOKでしょ』と思われるかも知れません。
ベンチャー企業は収入がなくても、最低 3 ヶ月、理想的には 6 ヶ月分のキャッシュがあると良いと言われており、オフィス解約や社員の今後も考えると、3ヶ月近く延期になって収入がないと結構厳しい状況でした。
解散は最終手段だとしても、より大きな企業へグループインする M&A 案など経営会議で検討を始めるレベルでした。
お声がけいただく企業も実は多かったのですが、結果的にはある銀行の大型融資で助けていただき、銀行の担当者とCFOには頭が上がりません。

そして、3〜6月くらいまでは、研修をオンライン化へ移行しましたが、『COVID-19 感染予防』から『COVID-19 の影響』と理由がよりシビアになり、やる気はあるけれど、できることのない日々が続きました。
ピンチはチャンスと言ったものですが、『ピンチはピンチ』です。胃が痛いです。
とはいえ、少し前から新規事業の仕込みとして取り組んでいた Vue/Nuxt によるプロダクト開発もそれなりに知見が貯まり始め、もしかしたら Step3 に移れるかもと、これを機に動き始めます。

まずはいつも新規事業に付き合ってくれる力強い相棒である執行役員の2人(もちろん、彼らもキカガク入社前は未経験組です)にビジネス側の研修で使える『シミュレータ』作らない?と持ちかけます。
ビジネス側の研修はワークショップ形式の企画系ぐらいしか取り組めることがなかったのですが、やっぱり AI って使ってみないと良いところも悪いところもわからないよねと、仮想的な環境で、AI を使ったビジネス体験ができるような Web アプリケーションを作りました。ゲームみたいな感じですね。
チャットボットでの対応で、まずは手動でひたすら100件対応すると10分かかる。
そこに、振り分けたクラスごとに頻出の単語を可視化して、ルールを決めて、対応してみると 100件で 5 分で終わる。
でも、ルールベースだとせいぜい if 文を 1階層か2階層が限界で、ルールを決める大変さを知る。
しかも、頻出単語がかぶっていると結構間違えてしまう。
そこで機械学習が登場!
なんとこの機械学習とやらは、最初に手動で振り分けたクラスだけ与えれば、そこからルールをデータ駆動で見つけ出して決めてくれるらしい。
しかも、確信度 (confidence) という値も出るから、自信があるときだけ全自動で振り分けて、自信がないときは手動モードに切り替えられる優れもの。
作業に慣れてきたこともあるけれど、機械学習を使うと 100 件で1分30秒で終わる。しかも間違いがこれまでよりも少ない。
最初から機械学習ありきでなく、こんな順番で理解していくとそれぞれのメリットとデメリットが理解でき、ビジネス側のアイディアの幅を広げるのではないかとシミュレータを3月から開発しはじめ、4月の『AIビジネス活用コース』でリリースしました。
これが大ヒット。今でも継続して開催できています。
やっぱりビジネス側の方も手を動かしながら体験によって理解できると嬉しいようでした。
今では、他のコースでもこのシミュレータを導入していき、唯一無二のコースを作っています。

これはオンラインでの講義だからというわけではありませんが、『受講生が能動的に学ぶ』ことの大切さを改めて感じた瞬間でした。

このシミュレータ開発によってビジネスの開拓と開発力の向上が達成できたため、また開発の相棒である執行役員の2人を呼んで、『さて、つぎはそろそろオンライン上で学べるプラットフォームを作ろうか』と提案します。
講義内で質問対応ができる B 向けの補助的なプロダクトと比較すると、自分たちの目の届かないところで動き続ける C 向けのプロダクトの難易度は高いと予想し、順を追っての判断でした。

これまで何度も Web サイトや Web アプリケーションを開発してきた成果もあり、ワイヤーフレームワークの設計からデザインの発注、フロントエンドのコーディングなどは円滑に行える体制が構築できており、あとは C 向けに長く開発を続けていくためのデータベースの設計やコンポーネント設計、テスト設計やセキュリティ要件の設計など、設計にかなりの時間を要しました。
また、技術調査の期間も設け、全体の設計前に、各コンポーネントごとに設計内容の簡易版を一度実装してみて、理解に曖昧さが残っていないかを検証したことも後々の開発スピードを向上させました。

そして、満を持して、今年の 9 月に ikus.ai としてリリースし、これはキカガクのメインプロダクトになるから『キカガク』という名前にしたいとの強い要望を受け、12 月に『キカガク』(https://www.kikagaku.ai) へと早々に改名しました。
そして、その傍らで、開発を行っている2人と協力して、社内で講師兼エンジニアとなれるように社内での研修資料を用意して、リリース後からさらに開発体制を加速させられるようにも準備しました。
そして、12 月現在、この開発を担当した CTO を中心として開発チームも組成することができ、ようやく目標としていた Step4 まで到達することができました。

ようやくたどり着いた景色

2018 年 1 月に組織を作ると決めて以来、本当に約 3 年間。
『ドメイン知識×プロダクト制作』ができる組織のスタート地点にようやく立つことができました。
ここまで来れば、あとはキカガクの素晴らしいメンバーがいろんなコンテンツを開発してくれて、プロダクトもより良い改善が施されていくはず。

この計画の最後の仕上げが『脱ブラックボックスコース』を多くの方に受けていただくべく無料で公開することでした。

ここまでのキカガクは組織を成長させるというビジネスと教育のトレードオフもあり、どうしても実活用よりも需要の多い基礎的なコースの提供を続けてきました。
この4年間で、他の教育企業も参入してきて、キカガクのコース内容がコモディティ化していると感じられていたかも知れませんし、それは一部事実として受け止めるべきです。

しかし、この4年間、コース内容を刷新せずにのんびり遊んでいたわけではありません。
約3年間という長い長い仕込みの期間を経て、自分たちが信じるより良い『教育』を追求していくための体制を整えました。

いまの成長したチームにとっては基礎的なコースだけでなく、業界へ特化したコースや、クラウドなどの実運用周りに特化したコース、また研究開発向けに理論に特化したコース、DXという文脈でビジネス側の方へのコースなど、幅広いラインナップの開発が始まっています。

08.png

より多くの方の実活用を支援できるような教育の会社になりたい。

そんな思いで、計画を達成できた暁として、そして、新しいキカガクの門出として、今回の『脱ブラックボックスコース』のリリースを迎えていました。

ね?裏話って結構深いでしょ?

おわりに

Qiita ではもっとプログラムを書かないといけないかも知れませんが、今回は『技術と経営』という分野として、プログラマーの方にも興味を持っていただける内容だと判断しましたので、大好きな Qiita で2年ぶりに書くことにしました。

不思議と創業してからいろんな苦労をしてきましたが、『教育』という分野への関心は高まる一方で、これからもキカガク含めて、教育の領域に携わっていきます。

そして、この記事を 2020/12/24 のクリスマス企画として公開しますが、キカガクの組織をこれからも成長させる戦略として、仕上げがもう一つ残っています。
こちらは5期の節目となる 2020/01/01 に報告予定ですので、楽しみにお待ちいただけると光栄です。

長くなりましたが、書いていて楽しい文章でした。
みなさんも最後までお付き合いいただき、本当に感謝です。
私の拙い文章とリアルな体験談でしたが、多くの人にシェアしたいと思える内容になっていると嬉しいです。

これからもより良い社会のためキカガク社員一同尽力してまいりますので、今後ともご支援のほど、よろしくお願いします。

メリー・クリスマス!

株式会社キカガク
代表取締役社長
吉崎 亮介
twitter: @yoshizaki_91

キカガクでは教育に熱い仲間を募集しています

こんな教育に熱い会社で働いてみるのも楽しそうだなと思った方、いまがチャンスですよ。

ちょうどこの記事を公開する前日が忘年会で、ある1シーンを切り取ると、こんな感じの全然笑なわなくてとっても働きにくいチームだとわかりました。
スクリーンショット 2020-12-23 22.50.29.png
職場に笑顔がなく、ひらすら真面目に働きたい方はぜひキカガクへお越しください!!!

...というのは当然冗談で(真面目風の顔を作るにもニヤけちゃってますね。笑)、仕事には真面目な一方で、楽しむ時は楽しむ、メリハリの利いたとっても良いチームです。
スクリーンショット 2020-12-23 22.52.00.png
こちらの方が自然体ですね。笑

仕事にはもちろん全力。
でも、20~30代の多感な時期って、悩みも含めて喜怒哀楽を一緒にできる仲間がいるって良いですよね。

▶︎ キカガクに関する求人情報は Wantedly をチェック!

みなさんからのご応募待ってます!
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