Jakarta EE 10 で API と実装が分離された Specification の一覧 #Java

2022 年 9 月、Jakarta EE 10 がリリースされました。

Jakarta EE となって初めての機能追加リリースですが、アプリケーションサーバの EoL 都合で Java / Jakarta EE 8 からジャンプアップを迫られるケースがありそうです。たとえば Red Hat JBoss EAP の場合、Jakarta EE 8 互換の 7.x は Full support が 2023 年 12 月 31 日に終了しています。Maintenance support ends も 2025 年 6 月 30 日に控えており、最近 GA となった 8.x は Jakarta EE 10 互換ですから、デッドラインは近いです。¹

	GA	Full support	Maintenance support	ELS-1	ELS-2
8.x	2024-02-05	2028-02-05	2031-02-05	2033-02-05	2034-02-05
7.x	2016-05-01	2023-12-31	2025-06-30	2027-10-31	2030-10-31

また、Red Hat による OpenJDK 8 サポートは 2026 年 11 月に Full support が終了します。² EAP 7.x は Java SE 8 / 11 が前提ですので、ELS-1 でも実質的にここが潮時でしょう。

だからといって Jakarta EE 10 対応を急いでも、簡単にはコンパイルさえ通らない場合があります。単純に名前空間を置換するだけでは終わらないということですね。本稿ではその具体例として、Jakarta EE 10 から API と実装が分離された Specification を紹介します。これらをライブラリとして使用している場合、実装も依存に追加しなくてはなりません。なお、Jakarta EE 10 から参照実装（Reference Implementations）でなく互換実装（Compatible Implementations）と呼ぶことになっています。

Jakarta Activation 2.1

互換実装は Eclipse Angus Activation です（GitHub）。

<dependency>
    <groupId>org.eclipse.angus</groupId>
    <artifactId>angus-activation</artifactId>
    <version>2.0.2</version>
</dependency>

Eclipse Angus は Jakarta Activation および Jakarta Mail に実装を提供するプロジェクトです。Sun の時代から JAF (JavaBeans Activation Framework) と JavaMail はセットでしたから、そのままお引越ししたような形ですね。

Jakarta JSON Binding 3.0

互換実装は Eclipse Yasson です（GitHub）。

<dependency>
    <groupId>org.eclipse</groupId>
    <artifactId>yasson</artifactId>
    <version>3.0.3</version>
</dependency>

Yasson という名前は古代ギリシャ神話のイアーソーン（英語ではジェイソンと発音）に由来するそうです³。 JSON-B をもじって Jason Bourne と名付けたかったところ、法的な制限のため採用されなかったのだとか。ジェイソン・ボーン、私も好きな映画です。

Jakarta JSON Processing 2.1

互換実装は Eclipse Parsson です（GitHub）。

<dependency>
    <groupId>org.eclipse.parsson</groupId>
    <artifactId>parsson</artifactId>
    <version>1.1.6</version>
</dependency>

Parsson という名前の由来は見つけられませんでしたが、Persson（スウェーデンで一般的な姓）と JSON-P をかけたものでしょうか。

Jakarta Mail 2.1

互換実装は Eclipse Angus Mail です（GitHub）。

<dependency>
    <groupId>org.eclipse.angus</groupId>
    <artifactId>angus-mail</artifactId>
    <version>2.0.3</version>
</dependency>

Jakarta EE 10 を利用したい場合は自然と Java SE 11 以上を選択することになります。このとき、JEP 320 の影響により API および互換実装を依存に追加する必要があるケースで注意が必要です。

おまけ: Commons FileUpload 2.0

Commons FileUpload を利用している場合、Jakarta Servlet 6.0 に対応するため Commons FileUpload 2.0 への移行が必要となります。詳細は移行ガイドに従ってください。依存先が org.apache.commons:commons-fileupload2-jakarta-serverl6 に変更され、commons-fileupload2-core にも依存します。

<dependency>
    <groupId>org.apache.commons</groupId>
    <artifactId>commons-fileupload2-jakarta-servlet6</artifactId>
    <version>2.0.0-M2</version>
</dependency>

なお、本稿投稿時点で Commons FileUpload 2.0 はマイルストーン 2 (M2)であり、正式版ではないことに注意してください。

Jakarta EE 10 で API と実装が分離された Specification の一覧

Jakarta Activation 2.1

Jakarta JSON Binding 3.0

Jakarta JSON Processing 2.1

Jakarta Mail 2.1

おまけ: Commons FileUpload 2.0

参考リンク