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SAFE_RELEASE MUST DIE

Last updated at Posted at 2015-03-20

SAFE_RELEASE/SAFE_DELETEを知らない人々は幸いである。

SAFE_RELEASE MUST DIE

こんな感じのマクロ:

wtf.cpp
// "安全な"COMポインタの解放処理マクロ
#define SAFE_RELEASE(p) if(p){ p->Release(); p=NULL; }

// "安全な"配列の解放処理マクロ
#define SAFE_DELETE(p) if(p){ delete[] p; p=NULL; }

あくまでC++言語のお話。C言語?知らない子ですね。
C言語でCOMを操作するとか、きがくるっとる

慈悲は無い

SAFE_RELEASESAFE_DELETE、またはそれに類するマクロは、絶対に使わないこと。

見た目だけC++ templateに変えても(SafeRelease)、本質的には同じである。何も改善していない。絶対に使わないこと。

  • 嬉々としてこのマクロを紹介するWebサイトを見かけたら、インターネット回線を切断してからWebブラウザを閉じ、該当サイトURLをブロックリストに追加しましょう。
  • このマクロを使っているソースコードを見かけたら、エディタをそっと閉じてPCに向かって清めの塩をまき、ファイルをランダムデータで3回上書きしてから削除しましょう。
  • このマクロを使っているプログラマを見かけたら、<censored>。

あと、MSDNはいい加減になんとかしてくれC++ templateに変えたからといって、決して許されるものでは無い。この誤訳に至っては、翻訳者は<censored>

スマートポインタ is awesome.

腐臭漂うC時代の負債マクロではなく、C++コンパイラやC++ライブラリが提供する「スマートポインタ(Smart Pointer)」を利用すること。絶対に。

COMオブジェクト参照カウントのリリース(IUnknown::Release())を行いたければ、以下のスマートポインタが利用できます。

動的確保された配列の解放(delete[])を行いたければ、以下のスマートポインタが利用できます。

というより、動的配列を確保している大半のケースでは、単にC++標準コンテナ std::vectorクラス で間に合います。

  • 有効要素数(size())とバッファ容量(capacity())という属性情報を、セットで管理しています。動的配列ではプログラマの責任で別途管理が要りますが、面倒くさいしバグの温床にしかなりません。
  • std::vector<T>の全要素は、連続したメモリ領域に配置されると保証されています。例えばT=charとすれば汎用の「メモリバッファ」として使えます。
  • operator[]を介した要素アクセスコストまで気にするなら、走査直前にT* ptr = &vec[0];とでもしてptr[n]アクセスすればゼロオーバーヘッドになります。

感情論はこれくらいにして、理性的な解説も

SAFE_RELEASEマクロは、何がどう駄目なのかを列挙していきます。よくありそうなCOMクライアントコードを考えます。

legacy_macro.cpp
bool my_func()
{
  ISomething *pObj = NULL;
  IFoo       *pFoo = NULL;
  HRESULT    hr;

  // Somethingクラスを作成(ISomethingインターフェイス取得)
  hr = CreateComObject(CLSID_Something, &pObj);
  // (戻り値hrチェック省略)

  // IFooインターフェイスを取得
  hr = pObj->QueryInterface(IID_Foo, &pFoo);
  if (FAILED(hr)) {
    // 関数を抜ける前にはReleaseを忘れずに!
    SAFE_RELEASE(pObj);
    return false;
  }

  // 別関数another_funcを呼び出し
  if (!another_func(pFoo)) {
    // 関数を抜ける前にはReleaseを忘れずに!
    SAFE_RELEASE(pFoo);
    SAFE_RELEASE(pObj);
    return false;
  }
  // まだまだ処理が続くよ...

  // 関数を抜ける前にはReleaseを忘れずに!
  SAFE_RELEASE(pFoo);
  SAFE_RELEASE(pObj);
  return true;
}

ATL提供のスマートポインタを使うと、次のように書けます:

modern_sp.cpp
#include <atlbase.h>

bool my_func()
{
  // Somethingクラスを作成(ISomethingインターフェイス取得)
  CComPtr<ISomething> pObj;
  HRESULT hr = CreateComObject(CLSID_Something, &pObj);
  // (戻り値hrチェック省略)

  // IFooインターフェイスを取得
  CComQIPtr<IFoo, &IID_Foo> pFoo = pObj;
    // QueryInterfaceが呼び出される
  if (!pFoo)
    return false;  // 自動的にReleaseされる

  // 別関数another_funcを呼び出し
  if (!another_func(pFoo)) {
    return false;  // 自動的にReleaseされる
  }
  // まだまだ処理が続くよ...

  return true;  // 自動的にReleaseされる
}
  1. マクロ版では結局プログラマの責任で、関数returnの直前で解放処理を記述しなければなりません。コード構造が変更されたり、新しいインターフェイスが追加された時に、対応する解放処理の追記を忘れるとリソースリークします。スマートポインタ版では自動的に解放してくれます。
  2. マクロ版は例外安全ではありませんanother_func()や後続処理からC++例外が送出されて関数my_funcを抜ける場合、インターフェイスはReleaseされずにリソースリークします。スマートポインタ版では例外による関数脱出であっても安全です。
  3. マクロ版はスマートポインタ版に比べて、本質的な処理コードに対するBookkeepingコードの比率が高くなり、ソースコードの**"ノイズ"が増えます**。コードの可読性が低くなることで、保守性・拡張性にも悪影響を与えます。
  4. C++を使っているのですから、変数宣言を関数先頭で行うのではなく。代入するタイミングで宣言すべきです。変数スコープを必要最小限に限定することは、ソースコードの可読性/保守性/拡張性を改善し向上させます。(マクロ版でも実施可能ですが、レガシーコードでは大抵C言語スタイル、つまり関数先頭で一括宣言するケースが多いようです。)
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