前稿では、ai-digest を「さくらの AI Engine」の Anthropic 互換 Messages API へ接続する設定を整理しました[1]。
今回は、LOOKBACK_HOURS=72 で ai-digest から Messages API を 1 回呼び出し、さくらの AI Engine のコントロールパネルに記録されたリクエスト数とトークン数を確認します。
API は 200 OK を返し、コントロールパネルには 1 リクエスト、入力約 10,600 トークン、出力 4,000 トークンとして記録されました。本稿では、この API 呼び出しに対応する利用量と、月 3,000 リクエストの無償枠に対する運用量を評価します。
先に結論
今回の実測結果は次のとおりです。
| 項目 | 実績 |
|---|---|
cli.py run の実行回数 |
1 回 |
| コントロールパネル上のリクエスト数 | 1 回 |
| 収集件数 | 117 件 |
| 重複排除後件数 | 117 件 |
| モデルへ渡す候補数 | 最大 60 件 |
| 入力トークン数 | 約 10,600 |
| 出力トークン数 | 4,000 |
| 重複排除完了から HTTP 200 まで | 約 59.7 秒 |
preview/Kimi-K2.6 の従量課金単価へ換算すると、この 1 回は約 1.84 円です。基盤モデル無償プランでは、チャット生成を月 3,000 リクエストまで利用できるため、1 日 1 回の運用なら 31 日の月でも 31 リクエスト、無償枠の約 1.03% です。
今回の出力は ai-digest が指定する上限の 4,000 トークンまで到達しました。したがって、約 1.84 円は、今回観測した入出力トークン数に基づく実測換算値です。実行ごとの出力内容や停止位置によって、出力トークン数は変動します。
実行条件
実行したコマンドは次です。
LOOKBACK_HOURS=72 python cli.py run
ログは次のようになりました。
2026-08-02 13:34:32,924 INFO ai_digest.collectors.arxiv: collected 111 arXiv papers
2026-08-02 13:34:34,211 INFO ai_digest.collectors.news_rss: collected 6 news articles
2026-08-02 13:34:35,329 INFO ai_digest.dedup: deduplicated 117 entries into 117
2026-08-02 13:35:35,010 INFO httpx: HTTP Request: POST https://api.ai.sakura.ad.jp/v1/messages "HTTP/1.1 200 OK"
実行時の主要条件は次です。
| 項目 | 設定 |
|---|---|
| バックエンド | claude |
| API | Anthropic 互換 Messages API |
| エンドポイント | https://api.ai.sakura.ad.jp/v1/messages |
| モデル | preview/Kimi-K2.6 |
| 対象期間 | LOOKBACK_HOURS=72 |
| 収集件数 | arXiv 111 件、ニュース 6 件 |
| 重複排除後 | 117 件 |
| 最大モデル入力件数 | 60 件 |
| 最大出力トークン数 | 4,000 |
| 最大話題数 | 6 件 |
ai-digest は、arXiv とニュースフィードから収集し、題名の類似度で重複を除いた後、生成 AI へ候補を渡します[2]。
重複排除後の件数は 117 件でしたが、モデルへ渡す候補は実装上の上限である 60 件です。各候補の概要は最大 700 文字に切り詰め、出力上限を 4,000 トークンに設定しています[3]。
コントロールパネルで確認した実績
さくらの AI Engine の 利用量 から、集計期間を 当月(2026年8月)、表示モデルを preview/Kimi-K2.6 にして確認しました。
グラフには、2026 年 8 月 2 日の利用量として次が表示されました。
| 項目 | コントロールパネルの表示 |
|---|---|
| リクエスト数 | 1 |
| 入力トークン数 | 約 10,600 |
| 出力トークン数 | 4,000 |
画面上では Anthropic 互換 Messages API の呼び出しも チャット生成(chat completions) として集計されています。
入力トークン数はグラフから読み取った概数です。出力トークン数は 4,000 の目盛りに一致しており、ai-digest の MAX_OUTPUT_TOKENS = 4000 とも一致します。このため、今回の応答は出力上限まで生成されたと判断できます。
API 利用量として対応付けられる理由
今回の実行では、cli.py run を 1 回開始し、ログには /v1/messages への POST が 1 回、200 OK として記録されました。コントロールパネルのリクエスト数も 1 です。
cli.py run: 1 回
Messages API の HTTP 200: 1 回
コントロールパネルのリクエスト数: 1 回
Anthropic Python SDK の自動再試行は、接続エラーや一部の 4xx、5xx を対象とします[4]。今回は 200 OK であり、コントロールパネル上も 1 リクエストなので、この実行では追加のリクエストは計上されていません。
この対応関係から、表示された入力約 10,600 トークンと出力 4,000 トークンを、今回の 1 回の Messages API 呼び出しに対応する実績として扱います。
1 リクエストの従量課金換算
preview/Kimi-K2.6 の従量課金単価は次です[5]。
| 区分 | 単価 |
|---|---|
| 入力 | 0.6 円 / 10,000 トークン |
| 出力 | 3 円 / 10,000 トークン |
今回の実績を換算します。
入力料金
= 10,600 ÷ 10,000 × 0.6 円
= 0.636 円
出力料金
= 4,000 ÷ 10,000 × 3 円
= 1.2 円
合計
= 0.636 円 + 1.2 円
= 1.836 円
小数第 2 位へ丸めると、約 1.84 円です。
基盤モデル無償プランでは、この金額がそのまま請求されるわけではありません。月 3,000 リクエストの無償枠を超えるとレート制御がかかり、従量課金プランへ自動移行しません[5]。ここでの金額は、同じトークン量を従量課金プランで処理した場合の換算値です。
1 日 1 回運用した場合
今回のトークン量が毎回同じだと仮定して、月間利用量を見積もります。
30 日の月
リクエスト数
= 1 回/日 × 30 日
= 30 回
入力トークン数
= 10,600 × 30
= 318,000
出力トークン数
= 4,000 × 30
= 120,000
従量課金換算
= 1.836 円 × 30
= 55.08 円
31 日の月
リクエスト数
= 1 回/日 × 31 日
= 31 回
入力トークン数
= 10,600 × 31
= 328,600
出力トークン数
= 4,000 × 31
= 124,000
従量課金換算
= 1.836 円 × 31
= 56.916 円
一覧にすると次です。
| 運用期間 | リクエスト数 | 無償枠使用率 | 入力トークン数 | 出力トークン数 | 従量課金換算 |
|---|---|---|---|---|---|
| 30 日 | 30 | 1.00% | 318,000 | 120,000 | 約 55.1 円 |
| 31 日 | 31 | 約 1.03% | 328,600 | 124,000 | 約 56.9 円 |
日次ダイジェストを 1 日 1 回生成する用途では、リクエスト数の無償枠には大きな余裕があります。
実行頻度を上げた場合
1 回の run が 1 リクエストであり、SDK の再試行や追加 API 呼び出しが発生しないものとして、31 日の月を見積もります。
| 実行頻度 | 月間リクエスト数 | 無償枠使用率 | 従量課金換算 |
|---|---|---|---|
| 1 日 1 回 | 31 | 約 1.03% | 約 56.9 円 |
| 1 時間に 1 回 | 744 | 24.8% | 約 1,366 円 |
| 30 分に 1 回 | 1,488 | 49.6% | 約 2,732 円 |
| 15 分に 1 回 | 2,976 | 99.2% | 約 5,464 円 |
| 10 分に 1 回 | 4,464 | 148.8% | 約 8,196 円 |
31 日の月では、15 分に 1 回、1 日 96 回の実行で 2,976 リクエストです。月 3,000 リクエストの範囲に収まります。
10 分に 1 回では 4,464 リクエストとなり、無償枠を超えます。
この見積もりは、1 回の実行が常に 1 リクエストで完結することを前提とします。通信障害やレート制限によって SDK が再試行した場合、同じ run でもリクエスト数が増える可能性があります。
トークン数から見たボトルネック
今回の実測では、出力 4,000 トークンが 1.2 円相当、入力約 10,600 トークンが約 0.64 円相当です。出力料金が全体の約 65% を占めます。
出力料金の比率
= 1.2 ÷ 1.836
≒ 65.4%
入力件数を減らすだけでなく、出力上限まで生成する実行が続かないように、出力条件を調整することが費用抑制に効きます。
今回の応答は 4,000 トークンまで生成されました。build_report の構造化出力が短く収まる条件では、出力トークン数が今回より少なくなる可能性があります。
したがって、今回の約 1.84 円は、次の条件で観測した実測値です。
60 件をモデルへ入力
出力上限 4,000 トークンまで生成
今回の実績から確定できること
今回の結果から、次を確定できます。
-
LOOKBACK_HOURS=72の実行で 117 件を収集しました。 -
ai-digestは最大 60 件を 1 回の Messages API リクエストへまとめました。 - さくらの AI Engine はその呼び出しを 1 リクエストとして計上しました。
- 入力は約 10,600 トークン、出力は 4,000 トークンでした。
- 重複排除完了から HTTP 200 まで約 59.7 秒でした。
- 従量課金換算では約 1.84 円でした。
- 日次 1 回なら、31 日で無償枠の約 1.03% です。
見積もりの適用範囲
今回の見積もりは、次の実測条件を基準にしています。
対象期間: 72 時間
収集件数: 117 件
モデル入力件数: 最大 60 件
入力トークン数: 約 10,600
出力トークン数: 4,000
API リクエスト数: 1 回
実際の利用量は、対象期間、収集件数、概要の長さ、出力内容、SDK の再試行によって変動します。特に、24 時間分だけを収集する通常運用や、入力候補が 60 件未満の日は、今回より入力トークン数が少なくなる可能性があります。
反対に、通信障害やレート制限により SDK の再試行が発生した場合は、1 回の cli.py run に対して複数リクエストが計上される可能性があります。Anthropic Python SDK は、接続エラーや一部の 4xx、5xx を自動再試行します[4]。
したがって、月間見積もりは固定費の予測ではなく、今回の 1 リクエストを同じ条件で繰り返した場合の換算値です。日次運用のリクエスト数については、月 3,000 回の無償枠に対して十分な余裕があると判断できます。
まとめ
ai-digest を LOOKBACK_HOURS=72 で 1 回実行したところ、さくらの AI Engine では 1 リクエスト、入力約 10,600 トークン、出力 4,000 トークンとして記録されました。
HTTP 200 の応答に対応して、リクエスト数とトークン数が計上されました。このため、今回の 1 回について利用実績を確認できます。
従量課金換算は約 1.84 円です。同じ利用量で 1 日 1 回実行しても、31 日で 31 リクエスト、無償枠の約 1.03%、従量課金換算で約 56.9 円にとどまります。リクエスト数だけを見ると、15 分に 1 回の実行でも 31 日で 2,976 リクエストとなり、月 3,000 リクエストの範囲に収まります。
今回の出力は上限の 4,000 トークンまで到達しました。出力が短く収まる実行では換算額が下がる可能性がありますが、今回の実測値をそのまま用いても、日次運用の消費量は無償枠に対して小さいと評価できます。
以上から、ai-digest を 1 日 1 回動かす用途では、月 3,000 リクエストの無償枠を使い切る心配はほとんどありません。利用量を左右する主な要因はリクエスト回数ではなく、1 回あたりの入出力トークン数、とくに単価の高い出力トークン数です。
本稿は、月 3,000 リクエストの無償枠を活用する Qiita の記事投稿企画への参加記事です[7]。
参考文献
- id774, さくらの AI Engine の Anthropic 互換 API で ai-digest を動かす. https://qiita.com/ynakayama/items/d486fc70c8a29f5f765c
- id774, ai-digest. https://github.com/id774/ai-digest
- id774, ai_digest/analyzer/summarizer.py. https://github.com/id774/ai-digest/blob/master/ai_digest/analyzer/summarizer.py
- Anthropic, Python SDK. https://platform.claude.com/docs/en/api/sdks/python
- さくらインターネット, さくらの AI Engine. https://ai.sakura.ad.jp/sakura-ai/ai-engine/
- さくらインターネット, AI Engine Inference API. https://manual.sakura.ad.jp/api/cloud/ai-engine/inference.html
- Qiita, OpenAI・Anthropic 互換 API を無料で使おう!「さくらの AI Engine」3,000 リクエスト使い切りチャレンジ. https://qiita.com/official-events/bd14d28b53326d318fec
