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6年分の自分の投稿をAIに読ませたら、同じことをずっと言っていた

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このシリーズについて

AI と一緒にキャリア資産を育てていく過程を記録しています。この記事は第4回です。

はじめに

前回は、ChatGPT と Claude Code の使い分けについて書きました。考えを広げる相手と、成果を管理する相手を分けている、という話です。

今回は、その ChatGPT で実際に何を掘っていたのかを書きます。価値観の棚卸しです。

材料に使ったのは、自分が過去に書いた投稿でした。6年分あります。読ませてみたら、思っていたより一貫したものが出てきました。忘れていた原体験と、ワクワクしていた頃の感覚も一緒に出てきました。

想定している読者

- AI に自己分析を手伝わせたいが、何を材料にすればいいのか決めかねている人
- AI が出してきた分析を、どこまで信じてよいか決めかねている人

この記事で扱わないこと

- 出てきた価値観そのものの中身
- 特定のサービスの操作手順

当時のやりとりの載せ方

- 引用: そのまま載せたもの
- 要約: 要点だけ書き直したもの
- 編集: 公開にあたり表現を変えたもの

6年前の自分が、同じことを言っていた

結果から書きます。

まず、過去に自分について書いたものです。

引用(2020年12月の投稿)

自分は怠惰で周りの影響を受けやすい単純なタイプ

次に、AI との壁打ちで言っていることです。

要約(2026年8月)

陰口、不平不満、現状維持の人とは距離を置きたい

言葉は違います。書いた場所も違います。それでも、立っている前提は同じです。自分は周りに影響される。だから、誰の近くにいるかを選ぶ。6年間ずれていません。

意外だったのは、2020年に自分がそう書いたことを、まったく覚えていなかったことです。覚えていたのは「そういう性格だと思っている」という自己認識だけで、それをいつから持っているのかは分かっていませんでした。

ここで大事なのは、この一致を「一貫している」と判定できた理由のほうです。AI に読ませる前に、判定の種類を決めてありました。この例だと、こう分かれます。

明言:2020年の投稿の文言そのもの。原文がある
傾向:6年の間に同じ趣旨の発言が複数ある。根拠を並べられる
仮説:影響されやすい自覚があるから誰の近くにいるかを選ぶ、という説明。これは AI が立てた解釈

3つを混ぜて書かせると、いちばん気持ちのいい話になります。「あなたは6年間ぶれずに、人との関わり方を大事にしてきた人です」と言われれば、たしかにそうだと思えてしまう。分けておくと、どこまでが自分の書いた事実で、どこからが AI の解釈なのかが残ります。

この分け方は後半で書きます。実際には、いま出した3つに「不足」を足した4つです。先に、材料をどう作ったかから書きます。

なぜ材料を集めたのか

始まりは、ワクワクしなくなったことでした。

仕事が面白いと思えていた時期があります。そのあと、似たような仕事をしていても、その感じが出てこなくなりました。何かを整理して、形にする。やっていることは近いのに、感情が違いました。

なぜそうなったのかが、自分では分かりませんでした。

分からないままなのがもやもやするので、なぜなぜ分析をしたいと考えました。

原因の候補はいくつも思いつきます。自分の価値観が変わったのか、置かれた環境が変わったのか、一緒に働く人の顔ぶれが変わったのか、まわりの空気が変わったのか、仕事の進め方が変わったのか。どれも当てはまりそうで、どれも決め手がありません。立てた仮説の答え合わせがしたい。そう思いました。

言葉にすると、価値観の衝突です。ただ、これはどちらかが悪いという話ではありません。人はスキルがつき、見える範囲が広がると価値観が変わります。だから衝突は自然に起きるもので、避けて通れません。日常でも、互いに譲ったり、妥協したりしながら過ごしています。気になっていたのは、その差分がどれくらい大きいのかを、自分で測れていなかったことでした。

ところが、いざ掘ろうとすると言葉が出てきません。iOS を続けたい理由を自分に問い直しても、専門性で差別化するというキャリア戦略の話しか出てきませんでした。技術やプロダクトのどこが面白いのか、何に責任を持ちたいのか。自分の言葉で言えていませんでした。

この2つは、同じところでつながっていました。自分が何にワクワクするのかを言葉にできていないから、なぜワクワクしなくなったのかも説明できない。「自分の軸」が曖昧になっていた、ということだと思います。

ここで AI に「私の価値観を分析してください」と聞くこともできます。実際にやってみると、それらしい答えは返ってきます。

ただ、そのとき材料になっているのは、私がその場で話した記憶だけです。記憶は都合よくできています。うまくいった話は残り、途中で考えが変わったことは消えます。いまの自分に合う筋書きへ、無意識に寄せてしまう。

そこへ AI が加わると、寄せる力がもう一段かかります。AI は渡された材料の中で、いちばん筋の通る話を組み立てます。材料が偏っていても、その偏りごと整えてしまう。

だから、先に材料を集めることにしました。私が忘れていて、あとから書き換えられないものを探しました。

材料をどこから取るか

使ったのは X の公式データアーカイブです。自分の全投稿を、提供元から一括で受け取れます。

API は使いませんでした。全期間の検索には上位の契約が必要で、無料の範囲では自分の投稿すら十分に読めなかったためです。

料金体系や無料枠の内容は変わります。私が確認したのは2026年8月時点です。使う前に公式の料金ページで確認してください。

公式アーカイブを選んだ理由は3つです。

1. 全期間、全件が取れる
2. 追加の費用がかからない
3. 提供元が用意した正規の手段である

3つ目は地味ですが重要でした。自分のデータであっても、規約の外側の方法で集めると、その材料を使った分析ごと後ろめたくなります。

申請から48時間以内に届きました。2つのアカウント分で、投稿は2,724件。2020年から2026年までです。

趣味の記録も足しました。ウイスキーのテイスティングノートで、44件あります。内訳は、記録用のアプリから CSV で書き出した36件と、メモアプリに書き散らしていた8件です。

材料には、見てはいけないものが混ざっている

X のアーカイブを展開して気づいたのですが、入っているのは投稿だけではありません。DM、メールアドレス、電話番号、広告の閲覧履歴まで含まれます。

これをそのまま AI に渡すわけにはいきません。分析に使うのは投稿の本文だけです。他は見ない、使わない。そう決めても、フォルダごと渡してしまえば同じことなので、置き場所を分けました。

raw/         公式アーカイブを展開したもの。加工しない
normalized/  投稿の本文だけを取り出したもの。1行1レコード
analysis/    AI が書く分析結果

raw は読むだけの場所として置いておきます。変換スクリプトで、必要な列だけを normalized へ取り出す。AI に渡すのは、そこから先だけです。

3層にした理由は、情報の切り分けだけではありません。あとで解釈を疑ったときに、原文へ戻れるようにするためです。

分析結果を読んでいると、「本当にそんなこと書いたか」と思う箇所が必ず出てきます。そのとき analysis から normalized を経由して raw の原文まで辿れないと、確かめようがありません。確かめられない分析は、結局のところ信じるか信じないかの話になってしまいます。

AI に読ませるときの4ルール

材料ができたので、読ませ方を決めました。書き分けを4つに絞っています。

以下、AI の振る舞いについて書いている部分は、2026年8月までに私が使っていて感じたことです。モデルもツールも更新されるので、いま同じことが起きるとは限りません。

引用(作業場の README より)

明言:本人が実際にそう書いた。原文を引用する
傾向:複数の発言から読み取れる。根拠を3件以上示す
仮説:AI が立てた解釈。根拠と確度を明示する
不足:検証に足りない情報。次に何を集めるか

最初の3つは、確からしさの段階です。原文があるのか、複数の材料から言えるのか、AI が考えたことなのか。この順に確からしさが落ちていきます。

4つ目の「不足」は後から足しました。材料が足りない部分に来たとき、AI は黙って埋めてくるからです。埋められた箇所は、他と同じ調子で書かれているので見分けがつきません。「足りない」と言う欄をあらかじめ作っておくと、そこへ出してくれます。

実際、この欄には「ある技術を好きなのか、それともその技術で嫌な思いをした記憶が残っているだけなのか、切り分ける材料がない」といった項目が残りました。分析としては未完成ですが、次に何を集めればいいかが分かる形にはなっています。

言い換えさせない

もう1つ、材料側で決めた原則があります。

原文は加工しない。改行も絵文字もそのまま
自分が使った語をそのまま残す。言い換えない
解釈には、必ず原文の引用を紐づける
原文から確定できることだけを事実の欄に書く。推測は解釈の欄へ

2つ目が効きました。

AI に整理させると、こちらの言葉はきれいな言葉へ置き換わっていきます。実際、分析結果では、さきほどの投稿がこうまとめられていました。

引用(分析結果より)

影響されやすい自覚があるから人と環境を選ぶ

意味は合っています。ただ、私が書いたのは「自分は怠惰で周りの影響を受けやすい単純なタイプ」でした。「怠惰」も「単純」も残っていません。自分を悪く言う言葉は、整理の過程で落ちます。落ちたあとの文は読みやすく、そして少しだけ立派になります。

言い換えそのものは避けられません。まとめるというのは、そういう作業です。困るのは、言い換えた先だけが残ることです。「影響されやすい自覚があるから人と環境を選ぶ」だけを渡されても、自分が本当にそう書いたのかは確かめられません。

だから、こう決めました。

AI の解釈は、必ず自分が書いた原文に紐づけさせる。

実際の分析結果では、この一文の隣に2020年の投稿と2026年の発言が並んでいます。並んでいれば、立派になった言い換えを読んだあとで、自分が使った言葉に戻れます。戻ってみて初めて、「怠惰」と「単純」を自分で選んで書いていたことに気づきました。

前回、ファイルを書き換えられる相手には作業のルールを渡す、という話を書きました。今回のルールは対象が違います。書き換えられるのは自分の過去のほうです。

振り返ってみると、この考え方は AI へのルールとして出てきたものだけではありませんでした。ウイスキーの記録にも、同じ悩みが残っています。

引用(2026年7月のメモより)

基本的なテイスティングは食べ物など伝わる表現を意識しつつ、
初回の感じたことはありのまま残しておくのも面白いと思った

伝わるように整えることと、最初に感じたままを残すこと。どちらかではなく、両方持っておきたい、と書いています。この時点の記録なので、昔からそう考えていたとまでは言えません。少なくともこの時点では、AI とは関係のないところで同じことを考えていました。

過去の投稿が一次資料と言えるのは、「過去に自分が何を書いたか」までです。書かなかったことは残っていませんし、SNS に出した自分と実際の自分が同じとも限りません。材料が増えても、分かる範囲は分かる範囲のままです。

同じに見えるものを、まとめさせない

材料には、X の投稿だけでなく、ウイスキーのテイスティングノートも入れていました。そこから AI が拾ってきたのが、結果が想定と違ったときに、対象より先に自分や条件の側を疑うという型でした。

たとえば、こう書いています。

引用(2025年3月のテイスティングノートより)

開封して時間が経ってるせいか、咲グラスだからかツンとしたアルコール感はない

「咲グラス」は、このとき使っていたグラスの名前です。開封からの経過時間なのか、グラスなのか。感じ方が違った理由を、酒ではなく条件の側から探しています。

別の日には、分からなかったものをそのままにせず、条件を変えてもう一度確かめようとしていました。

引用(2025年2月のテイスティングノートより)

度数が高く香りは芳醇だが味を感じ取れず…
ボトル入手して加水リベンジしたい

加水は水を足すことです。当時は高い度数に慣れておらず、口に入れると舌がアルコールに負けて、味が分からなくなりました。だから度数を下げる条件で、もう一度試したい、と書いています。

このときの1本は、スカリーワグ ウィンターエディション オレンジワインフィニッシュで、53.9度のカスクストレングスです。Barでウイスキーの飲み方を教わり、持ち寄り会や蒸留所セミナーなどの経験を積んで2026年3月に加水なしでリベンジ成功しました。2026年8月の時点では、72.3度のM&H ex-ISLAY アイラ樽 SINGLE CASK OLIO AKIHABARA SHUHANを楽しめるようになっています。条件を変えて試すのを繰り返しているうちに、対象ではなく、こちら側が変わりました。

仕事でも似たことをしています。不具合が再現しなければ、実装を疑う前に OS、端末、時刻、データ、手順を揃える。計測の数字が想定と違えば、発火条件のほうを疑います。

ここまでなら、「観測が好きな人」と一言にまとめることもできます。短くなりますし、読みやすくもなります。ただ、分析結果には、まとめずにこう残してあります。

引用(分析結果より)

同型だが向きが違う。自分向け / 他者向け

ウイスキーの観測は、自分の感覚の解像度を上げるためのものです。仕事の観測は、誰かの行動が変わったかを確かめるためのものです。同じ観測でも、向きが逆になっています。

一言にまとめると、この違いは消えます。そして、消えたほうに次の判断の材料が入っていることがあります。

共通点を見つけることが、分析のゴールではありませんでした。共通点を見つけたあとに、違いを残す。前の章のルールが「言い換えさせない」だとすると、こちらは「まとめさせない」です。AI は似ているものを見つけるのが得意で、見つけると1つの言葉にしたがります。似ていると判定した根拠と、違っている部分の両方を残させる。

忘れていた原体験が出てきた

材料と読ませ方を決めた効果は、一貫性が見つかったことだけではありませんでした。

壁打ちを続けていると、自分でも忘れていた話が出てきます。私の場合はこれでした。

引用(2026年8月の壁打ちより)

自分が IoT 製品とスマホ連動の恩恵を毎日受け、日常生活の QOL が変わった経験を
他の人にも共有したいと思うようになった
実際に使用して初めて分かる利便性や、今までの価値観がアップデートされる経験に、
なによりワクワクした
そのワクワクを共有できる人間になれたら、自分ももっとワクワクできるのではないか

具体的には、2017年ごろの出来事です。社用の携帯がガラケーから iPhone 6s に変わりました。そのとき、補聴器が iPhone とつながりました。

補聴器を外して受話器を当てる、という手順が消えました。毎日やっていた動作が、ある日なくなりました。

技術の話としては地味です。ただ、当時の自分にとっては、当たり前だと思っていた不便が、当たり前ではなかったと分かった出来事でした。

あとから調べると、補聴器が iPhone とつながる仕組みの発表は2014年、AirPods の第1世代は2016年でした。特定の人のために作られた技術のほうが先にあって、あとから広く使われるものへ広がっています。

この体験を、他の人にも渡したい。それが、エンジニアを目指した理由でした。

AI はこの発言に、こう判定を付けています。

引用(分析結果より)

読み取り(明言):起点は自分の不便ではなく他者の不便。
しかも「自分が受けた恩恵を他人にも渡したい」という順序になっている

明言なので、根拠は私自身の発言です。AI が組み立てた話ではありません。

ここは正直に書いておきます。この原体験は、集めた材料から出てきたものではありません。壁打ちの会話の中で出てきました。材料が効いたのは前半の一貫性のほうで、忘れていた話を引き出したのは、質問を重ねてくる相手のほうでした。

やってみて、頭が軽くなった

最後に、作法の話から少し外れます。

なぜワクワクしなくなったのかを知りたくて、価値観の棚卸しも兼ねて始めた作業でした。ただ、やっている間の感覚は、棚卸しとは別のものでした。終わったあと、頭が軽くなっていました。

やっていたのは、結局のところ自分自身の因数分解でした。ひとつの大きなもやもやを、いつ、何に対して、どう感じたか、という単位まで割っていく。割った先はどれも小さくて、扱える大きさになっています。もやもやが消えたわけではありませんが、正体の分からない塊ではなくなりました。

なぜそうなるのか、理由を3つ考えています。

1. 忘れていた原体験が戻ってくる
2. 散らばっていた記憶と判断が、1本につながる
3. 自分で言うのではなく、記録が示す

この3つは予想です。効果を測ったわけではありません。観測できているのは、終わったあとに頭が軽くなっていた、という自分の主観です。

3つ目が効いた気がしています。「自分は一貫している」と自分で言うのは、気恥ずかしくて難しい。ただ、6年前の投稿が目の前にあって、それがいまと同じことを言っているなら、認めるしかありません。自分を持ち上げる作業ではなく、記録を確認する作業になります。

原体験のほうも同じでした。「自分はユーザーの体験を大事にするエンジニアです」と書くと、盛っている感じがして書けません。でも、2017年に何が起きて、2020年に何を書いたかを並べるだけなら、事実です。

そうやって並べていたら、ワクワクしていた頃の感覚が戻ってきました。いま何をやりたいのかを考えるより先に、昔なぜ面白かったのかを思い出したほうが早いことがあります。

この記事のまとめ

  1. AI に自分を分析させる前に、材料と読ませ方のルールを決めておく。材料が記憶だけだと、いまの自分に都合のよい筋書きへ寄っていく
  2. 材料は置き場所を分ける。加工しない原文、AI に渡す部分、AI が書く分析。解釈を疑ったときに原文へ戻れる形にしておく
  3. AI の解釈は、必ず自分が書いた原文に紐づけさせる。言い換えられた時点で、確かめる手段がなくなる

手間はかかります。アーカイブを申請して、変換スクリプトを書いて、置き場所を分けて、読ませ方を決める。それでも、やってよかったと思っています。過去の自分が書いたものは、思っていたよりずっと素直でした。

次回は、この連載の設計書そのものの話を書きます。何を書かないかを決めるルールが、最初からあったわけではなく、指摘と修正の往復で増えていった経緯を、そのまま載せます。

参考

前回(第3回)

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