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シルバーSEの遺言:見積もりができたのはホスト時代まで。現代のWF開発は構造的に破綻している

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はじめに

私は、バブル崩壊直前の1989年からIT業界に身を置いている、シルバーSEです。35年の経験の中で、QCDを完璧に満たしたプロジェクトには片手で数えるほどしか出会えませんでした。
なぜ日本のPMはこれほどまでに苦戦するのか。当時から現代までの「IT現場」を知り、現場を去りつつある世代の技術者の一人としてとして、技術の変遷という視点からその正体を考察してみたいと思います。

日本のWF開発のプロジェクト管理がうまく行かない理由についての考察

最初に、日本のプロジェクト管理の状況

「日本のITプロジェクトの成功率は3割、海外のITプロジェクト成功率は7割」という話をどこかで読みました。実際、この業界にバブル崩壊直前の89年から生息していますが、QCD全部がうまくいった開発案件はなかなかお目にかかったことはありません。
※たまたま自分がそういう環境にいたのかもしれないですが。

背景についての考察

日本のIT企業が、いわゆるISO9001(組織が「顧客満足の向上」と「製品・サービスの品質の一貫性」を目指すための品質マネジメントシステムに関する国際規格。である。)に取り組み始めたのは1990年代半ばくらいからです。
当時プロジェクト管理と言えばKKD(勘と経験と度胸)でベテランSEが、鉛筆なめなめ見積もりを行い、スケジュールを組み、人を集めるという、属人的極まりない管理を行っていました。

利用技術からの考察

一方で、当時の技術動向としては、いわゆるホストからのダウンサイジングと呼ばれる動きが並行して始まりつつあり、プログラムを作る技術も、「ホスト+COBOL(代表的なプログラミング言語のひとつ)」から、クライアントサーバー型(以下クラサバ)」や「(初期の)Webシステム」に徐々に切り替わっていくという事態が並行して起きていました。
プロジェクト管理で重要なファクターの一つである「見積」は、ホスト時代の「ホスト+COBOL+JCL」であれば、ソースを書く労力はほぼ、プログラムの行数=作業量になりますし、言語が実装する機能も単純で、言語習得難易度も低かったと思います、また、動かすインフラ自体も「ホスト1台」、ネットワークも当時は専用線接続が主流なのでこちらもシンプル、稼働も安定しやすく、プログラムの稼働で、妙な挙動を起こすようなこともほぼおきませんでした。要するに、惑乱要素がすくなく、見積と実績が一致しやすかった。と考えることができると思います。
これがクラサバ、Webになり、複数のマシンやインターネットが複雑に絡み合い、OSの更新や、昨今ではセキュリティ要素なども加わって、複雑さ=惑乱要因を増しています。

表にまとめると・・・

要素 ホスト時代 (予測可能) クラサバ・Web以降 (不確実)
構成要素 ホスト1台+専用線 サーバー+DB+NW+ブラウザ
言語特性 記述量 = 作業量 ライブラリやFWへの依存度大
外部要因 閉じた環境で完結 OSやブラウザのアップデート、セキュリティ

といった感じですね。

第3の考察:『人』に対するコスト感覚の欠如

ここまでは、主に、技術的な側面から原因を考察しましたが、以下のような要因も、失敗の多い原因だろうとは考えています。
①PM/PLに人事権も諸々の裁量権もない。
②なぜか、ユーザーの当事者意識が薄い。
③ユーザー自身が、使ってるシステムの中身やシステムと業務の関係を知らない。
④無駄な機能を詰め込んでしまいやすい
⑤ユーザーが、我々ITエンジニアを魔法使いと勘違いしているほどの『使いっぷり』だが、圧倒的に足りないITエンジニアへのリスペクト
これらの要因の方が失敗原因としては有力なのかもしれません。
※参考

世界のITエンジニア給与ランキング(2024-2025年)

国名 平均年収 (米ドル換算) 順位/状況
アメリカ 約 $133,080 (約2,000万円) 世界1位
スイス 約 $112,500 (約1,700万円) 欧州トップクラス
オーストラリア 約 $100,000 (約1,500万円) 高水準を維持
中国 約 $50,000〜 (約750万円) 近年急速に上昇中
日本約 約 $36,000〜 (約550万円) 72カ国中26位〜31位程度

どうでしょう?
一目見て、日本のIT技術者の収入の悪さが目に付きませんか?
実際、G7の中でも給与の低迷が目立ち、2024年の調査では、世界的に給与が上がる中で、日本はドルベースで前年比5.9%減という衝撃的なデータもあります。

そりゃー、お金がすべてではないでしょう。そんなものなくても、俺は頑張れる!という方もおられるでしょうが、やっぱりお金は大事です。
私の会社でも毎年「今期の業績達成は皆さんのおかげです」と労をねぎらう事業部長の『空疎な』ご高説を賜りますが、「だったら給料上げてよ」と毎年のように思います。

私の結論(仮)

予定調和が好きな日本人は、ISO9001と同時にウォーターフォールをPM手法の主力に据えましたが、言葉を選ばずに言ってしまえば、WFで重要な見積もり自体が、技術的に困難になっていたのではないでしょうか?というように経験を振り返って感じています。
ここに日本のIT開発の失敗の多さの根本原因
があるのではないでしょうか?
また、上記で述べたような、「技術面や管理手法以前の課題」が多すぎる気もしてきます。

DXと同時に「アジャイルだ!」となったものの、その「アジャイル」も、日本では導入がなかなか進んでいっていません。最新の調査結果によると、日本企業でアジャイル開発手法を「本格的に活用できている」と言える比率は、全体の約10〜15%程度にとどまっていると見られています。
特に地方にいけば、それを指導できる人員も限られている、そんな状況だと感じます。
言い方を変えると、現在の日本のIT現場の状況は、
見積もりが不可能な現代の技術構造でWF(ウォーターフォール)を強行するから、その歪みが『なんちゃってアジャイル』という形で現場を壊している
という事も言えると思います。

状況を打破するには?

では、この状況をだれがどうやって打破できるのか?
ユーザー?一部の先進企業を除けばその力量は期待できません。
我々技術者の上司たち?課長は罰ゲームレベルの多忙さ、部長以上は、一部を除けば、現場を見ることもなく、「顧客第一」「スキルアップは自習で頑張れ」と空疎な掛け声と精神論まじりで『丸投げ』ではないですか?

結局、我々現場から、勇気をもって声を上げていくしかないのでしょう。

若い皆さんは、「労働者のストライキ」などというモノを見たことはないでしょうが、もはや、ストライキでも起こして、システムを2,3日止めて、「俺たちだってエッセンシャルワーカーなんだ!」と声を上げるべき時が来ているのかもしれません。(後始末が大変そうですが)

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