Workflow Apps を忘れないでほしい話
MCP や AI エージェントは、Workato が現在推進している重要なコンセプトの一つです。
「指示に応じて必要なデータを取得し、適切な処理まで実行してくれる」
そのような体験が現実のものになりつつあります。
その一方で、業務運用の観点では UIも引き続き重要な役割を担います。
本記事では、AI 活用が進む状況下での Workflow Apps の位置づけを簡潔に整理します。
なぜ今、Workflow Apps なのか
1) 人による承認・確認が必要
AI が提案してくれること自体は非常に有用です。
ただし、承認・差し戻し・例外判断など 責任を伴う最終決定は、人が実施すべきあるいは実施せざるを得ない場面が残ります。
2) 業務は「状態」を持つ
申請、承認待ち、差し戻し、完了、保留…。
業務は多くの場合、状態遷移によって成り立っています。
AI は会話ベースで処理を進められても、現場では 一覧で状況を把握したい/滞留を解消したい というニーズが必ず発生します。
3) 「誰が・いつ・何をしたか」を残したい
監査・運用・説明責任の観点では、利便性よりも明示性が優先されることがあります。
その点で、操作が記録される UI が用意されていることは、安心感と統制の両面で効果があります。
MCP / AI と Workflow Apps は「競合」ではなく「役割分担」
Workflow Apps を「AI の代替」あるいは「対抗する仕組み」と捉えると、目的の理解に齟齬が生じやすくなります。
本記事では、次のように整理します。
| 観点 | MCP / AI | Workflow Apps |
|---|---|---|
| 主役 | AI(提案・代行) | 人(確定・運用) |
| 得意 | 曖昧さを吸収して進める | 状態を見せて責任を乗せる |
| 向いている | 入口の加速、補助、整理 | 承認、例外処理、操作の記録 |
AI によって業務の入口が加速するほど、逆に 「確定する場所」 の重要性が増します。
Workflow Apps は、その領域で効果を発揮します。
「AI を使う業務」でも Workflow Apps がハマるシーン
実装の詳細に踏み込まなくても、シーンで捉えるとイメージしやすくなります。
シーン1:AI が“下書き”し、人が UI で“確定”する
- AI が入力内容を整形する(要約、分類、候補提示 など)
- 人が Workflow Apps 上で確認し、承認または差し戻しを行う
- レシピが裏側で連携する(Slack 通知、SaaS 更新、チケット起票 など)
AI による迅速さと、Workflow Apps による確実性を組み合わせることで、実運用に適用しやすくなります。
シーン2:例外・差し戻し・保留が発生する業務
AI は一般ケースを進めるのが得意ですが、業務では例外が避けられません。
例外が出た際に「戻せる/保留できる/状況を可視化できる」場所として UI があることで、運用が破綻しにくくなります。
とりあえず触るための簡単セットアップ
具体的な手順は Workato Docs に譲り、本記事ではこれだけ用意すればまず試せるという最小限のイメージだけ示します。
まずはこれだけで OK
- Workflow App を 1 つ作る
- 入力ページを 1 つ(フォームで十分)作る
- 保存先(テーブル)を 1 つ用意する
- 「登録されたらレシピが動く」ところまでつなぐ
ここまでで「UI → データ → 自動化」の一連が把握できます。
ここで一度出てくるのがユーザーグループ
この段階で意識したいのが ユーザーグループです。
筆者も当初、ここで理解に時間を要しましたが、最初から細部まで作り込む必要はありません。
- まずは 「使う人」 と 「管理する人」 の 2 グループ程度で始める
- 詳細な役割分担は、実運用を見ながら段階的に整備する
ユーザーグループは “設定項目” というより、運用を安定させるために後から育てていく仕組み、と捉えると進めやすいと思います。
まとめ:AI を活かすために、Workflow Apps を忘れない
MCP や AI の活用は、Workato が推進する重要な方向性であり、業務を前に進める大きな力になります。
一方で、業務には次の要素が残ります。
- 責任を伴う確定
- 状態管理
- 記録(監査・説明)
だからこそ、AI を業務に組み込む際には、
人が確定する場所としての Workflow Apps を見落とさないことが重要だと考えています。