はじめに
CRMツールのレポートで条件を絞り込むときに迷いがちなゴリゴリの文系(数学は忘却しました)が、数式を使わずにド・モルガンの法則について感覚的に咀嚼した内容をまとめてみます。
表面的な内容となっている点にご留意いただけますと幸いです。
ド・モルガンの法則を一言で表すと
ド・モルガンの法則を一言で表すと、「ある集合が別の集合と等しくなる法則」で、集合に関する考え方です。
具体的には2パターンあります。
『「AかつB」の否定』は、『「Aでない」または「Bでない」』と等しくなる
1パターン目は、『「AかつB」の否定』と、『「Aでない」または「Bでない」』は等しくなるというものです。
『「AかつB」の否定』をベン図にすると下記になります(雑な図ですがお許しください…)。
緑の部分が対象となる範囲です。「AかつB」であることを否定しているので、「AかつB」の範囲以外が対象となります。

「Aではない」をベン図にすると下記になります。A以外の範囲はすべて対象です。

「Bではない」をベン図すると下記になります。B以外の範囲はすべて対象です。

上記から、「Aではない」と「Bではない」を足すと、つまり『「Aでない」または(or)「Bでない」』という条件にすると、緑色の対象範囲が『「AかつB」の否定』と一致することがわかります。緑色の範囲を重ね合わせるということです。
文章で考えてみます。
『「早寝かつ早起き」でない』という群と、『「早寝でない」または「早起きでない」』という群は一致します。
まず、『「早寝かつ早起き」でない』とは、「早寝と早起きの両方ができていない」ということです。「早寝」と「早起き」の両方の条件が揃っていることを否定しています。
次に、『「早寝でない」または「早起きでない」』とは、「早寝でない」、もしくは「早起きでない」のどちらか一方、あるいは両方の条件に当てはまると言えます。つまり、「早寝」と「早起き」のうち、少なくともどちらか一方の条件を満たしていることを否定しています。
「早寝」と「早起き」という2つの条件があるとき、考えられるパターンは4つになります。
| 早寝 | 早起き |
|---|---|
| 〇 | 〇 |
| 〇 | ✕ |
| ✕ | 〇 |
| ✕ | ✕ |
『「早寝かつ早起き」でない』状態と、『「早寝でない」または「早起きでない」』状態の「真」と「偽」を一覧化表に付け加えてみましょう。
| 早寝 | 早起き | 『「早寝かつ早起き」でない』 | 『「早寝でない」または「早起きでない」』 |
|---|---|---|---|
| 〇 | 〇 | 偽 | 偽 |
| 〇 | ✕ | 真 | 真 |
| ✕ | 〇 | 真 | 真 |
| ✕ | ✕ | 真 | 真 |
「真」と「偽」がすべてのパターンで完全に一致しました。文章で考えても、『「早寝かつ早起き」でない』群と、『「早寝でない」または「早起きでない」』は理論的に同じであると言えます。
両方の条件を満たしていることを否定する場合、少なくとも片方の条件を否定すれば成立するからです。
『「AまたはB」の否定』は、『「Aでない」かつ「Bでない」』と等しくなる
2パターン目は、『「AまたはB」の否定』は、『「Aでない」かつ「Bでない」』と等しくなるというものです。
『「AまたはB」の否定』をベン図にすると下記になります。緑の部分が対象となる範囲です。

「Aでない」をベン図すると下記になります。Aの範囲以外すべてが対象です。

「Bではない」をベン図すると下記になります。Bの範囲以外すべてが対象です。

上記から、「Aではない」と「Bではない」を掛けると、つまり『「Aでない」かつ(and)「Bでない」』という条件にすると、緑色の対象範囲が『「AまたはB」の否定』と一致することがわかります。
文章で考えてみます。
『「早寝または早起き」でない』という群と、『「早寝でない」かつ「早起きでない」』という群は一致します。
まず、『「早寝または早起き」でない』とは、「早寝または早起き」であることを否定しています。「早寝または早起きである」とは、「早寝」か「早起き」の少なくとも片方の条件を満たしている状態です。
それを否定していることから、「早寝」と「早起き」の片方を満たせていない状態であり、つまり「早寝」と「早起き」の両方は満たせていないことになります。
次に、『「早寝でない」かつ「早起きでない」』とは、「早寝」と「早起き」の両方の条件を満たせていない状態です。
「早寝」と「早起き」という条件からなるパターンの一覧表に、「早寝または早起きでない」状態と、「早寝でない、かつ早起きでない」状態の「真」と「偽」を一覧化表に付け加えてみましょう。
| 早寝 | 早起き | 『「早寝または早起き」でない』 | 『「早寝でない」かつ「早起きでない」』 |
|---|---|---|---|
| 〇 | 〇 | 偽 | 偽 |
| 〇 | ✕ | 偽 | 偽 |
| ✕ | 〇 | 偽 | 偽 |
| ✕ | ✕ | 真 | 真 |
「真」と「偽」がすべてのパターンで完全一致しました。したがって、この『「早寝または早起き」でない』群と、『「早寝でない」かつ「早起きでない」』は理論的に同じであると言えます。
少なくとも片方を達成することを否定することは、両方とも達成しないことでも成立するからです。
まとめ
「私は焼き肉が好き、または、寿司が好きだ」の正しい否定は、「私は焼き肉が嫌い、かつ、寿司も嫌いだ」です。「または(or)」の否定は「かつ(and)」になります。
「IDカードが有効、かつ、パスワードも正しい」の正しい否定は、「IDカードが無効である、または、パスワードが間違っている」です。「かつ(and)」の否定は「または(or)」になります。
ド・モルガンの法則を押さえることで、複雑に思える「〇〇と〇〇を除いて」のような抽出条件を、「and」と「or」で単純に絞り込むことができます。
参考文献