はじめに
もうずいぶんと前の話になりますが、所属していたビジネスチームが混乱期にあったとき、エンジニアからの示唆が契機となり、ビジネスチームの生産性が見違えるように向上していった経験をしました。
当時のことをあらためて振り返り、異なる専門性を持つプロフェッショナルが協同することの重要性について書いてみたいと思います。
不確実性と向き合うエンジニアの課題解決能力が、非エンジニア組織の生産性を変えた話
目次
- 混乱期の真っただ中のビジネスチーム
- 定例ミーティングで問題提起を続けてくれたエンジニアの存在
- クリティカルシンキングが欠けていたことに気がついたビジネスチーム
- 異なる専門性をもつ者同士が協同する重要性
混乱期の真っただ中のビジネスチーム
当時所属していたビジネスチームは組織変更直後で、タックマンモデルで言う混乱期の真っただ中にありました。
メンバー一人一人の認識している現状が異なり、取り組んでいる施策の目的も曖昧で、なぜそれをやるのか共通認識化ができていませんでした。
- 前提が揃っていない
- 「これはAですか?」という問いにそれぞれ異なる前提で回答するので、「いいえBです」、「いやいやCじゃないでしょうか」、「この場合はどちらかと言うとDの可能性がありますね」という状態
- 議論がかみ合わない
- Aについて議論をしている認識のメンバーと、Bについて議論をしている認識のメンバーが混在
- 論点が定まらない
- Aについて議論していたはずなのに、なぜかBについての結論を出していた
まるでコントのようですが、全員真剣でした。そして全員が焦っていました。しかし、自分たちの問題を客観視することができていませんでした。
そうこうしているうちに、みるみるKPIが悪化してゆき、事業運営に支障をきたすレベルまでチームのパフォーマンスが低下してしまいました。
定例ミーティングで問題提起を続けてくれたエンジニアの存在
ビジネスチームの定例ミーティングには、エンジニアメンバーもアサインされていました。元々の目的は開発に関する相談のためでした。
しかし、ありがたいことにエンジニアメンバーは、開発に関する議題以外でも積極的に発言してくれました。
ビジネスチームがその場の空気に流されて非合理な結論に着地しかけたときは、しっかりと問題提起をしてくれました。
記憶している範囲ですが、前提情報の不足、目的と手段の逆転、各論に寄りすぎている、計画通りに事が運ばなかった場合のリスク感度の欠如など、提起された問題は多岐に渡っていたと思います。
問題は山積みでしたが、ビジネスサイドのメンバーにはオープンマインドが備わっていたので、指摘に耳を傾け、議論しなおしたり、仕切り直したりといった感じでした。
そんなプロセスの繰り返しによって、徐々に議論と意思決定の精度が上がってきた手ごたえを掴めてきました。
クリティカルシンキングが欠けていたことに気がついたビジネスチーム
当時のビジネスチームに不足していた要素は色々とありますが、一つだけ挙げるとすれば、批判的に物事を考える力が欠けていたのだと思います。
エンジニアメンバーからの示唆によって、ビジネスチームメンバーの一人一人が、下記の重要性を認識していきました。
- 定義を揃える重要性
- 認識の齟齬を疑い、曖昧さをなくす
- スコープを絞る重要性
- 顕在化している問題の重要さを疑い、今解決すべき課題を特定する
- 負債を考慮する重要性
- 技術的負債と言うよりも、ビジネス展開上の負債になり得る可能性へのリスク感度
議論はゴールから脱線しにくなり、論理的に仮説を立てて、根拠をもって戦略や優先順位を決められるようになりました。
その結果、KPIは回復基調に突入し、ビジネスチームは混乱期を脱することができました。チーム内で目的や目標の共通認識化がされて、相互理解と信頼をベースとした秩序がもたらされ、チームのフェーズは混乱期から統一期に進みました。
異なる専門性をもつ者同士が協同する重要性
当時所属していたビジネスチームの生産性が向上していった契機は、エンジニアメンバーからの示唆でした。
成功の要因は、専門性が異なることに由来する思考特性の差異によって、ビジネスチームに欠けていた思考を補完できたからではないかと考えています。
(心理的安全性が高く、一人一人に指摘を聞く姿勢がそなわっていたという前提のもとで)
あくまでも私の主観ですが、エンジニアとビジネス職には、下記のような思考特性の違いが傾向としてあるのではないかと感じています。
| 項目 | エンジニアの傾向 | ビジネス職の傾向 |
|---|---|---|
| 考慮する時間軸 | 長期的・継続的 | 短期的・瞬間的 |
| 思考プロセス | 演繹的(原理原則から結論を出す) | 帰納的(個別具体から結論を出す) |
| 意識が向きやすい問い | なぜ? | どうやって? |
| 重視するポイント | 設計力・再現性 | 突破力・柔軟性 |
上記に良い悪いや、どちらが優れているということはなく、職能による専門性に由来する差異だと考えています。
エンジニアは長い時間軸で物事を考える必要性が高く、そのため不確実性という名のリスク(振れ幅)をコントロールすることによって、課題を解決するアプローチを重視しているのではないかと感じます。
一方でビジネス職は、決して多くはないチャンスを掴むことが重要なため、いかにして難関を突破するかという、個別化された柔軟なアプローチによって課題を解決することを得意としているように思います。
両方とも必要な視点だと思います。変化のスピードが早く、不確かで予測しにくい複雑な環境下では、多角的に思考できることが適応力に繋がると思うので、アドバンテージになると感じています。
そういった文脈で、個別具体の開発の際にエンジニアとビジネス職が連携するのみならず、開発の前段階から協同して抽象度の高い問題解決にあたれると、組織として効果的ではないでしょうか。
一個人の体験談ですが、少しでも参考になれば幸いです。