ビジネス書の王道中の王道である「7つの習慣」。読んだことのある方も多いと思います。より良く生きるために身につけるべき習慣(原理原則)を記した大ベストセラーで、私自身も約20年前に手に取り、大きな学びを得ました。ここで書かれていることは、著者曰く「人生のオペレーティング・システム(OS)」とも言えるもので、こちらの表現の方がエンジニアの皆さんにはわかりやすいかもしれません。
ここではこの「7つの習慣」をシステム開発のプロジェクトマネジメントに応用してみます。人生を歩むことは人生というプロジェクトのマネジメントだと例えることもあるぐらいなので、人生をより良く生きるための普遍的なヒントから、プロジェクトをより良く運営するヒントも得られるに違いないと考えました。
以下では、書籍で示されている7つの習慣(原理原則)に従い、元々書籍で述べられている意味と、プロジェクトマネージャーとして応用したい解釈のそれぞれをまとめてみました。その7つとは以下の通りです。
(出典:フランクリン・コヴィー・ジャパンホームページ)
結果、この7つの習慣はプロジェクトマネージャーがプロジェクトを成功に導くために持つべき7つの習慣とも言い換えることができるものだと確信しています。7つの習慣を読んだことがある方もまだ読んだことがない方も、マネジメントとして持つべき思考と行動のチェックリストになるかと思います。よろしければ参考にしてみてください。
1.主体的である
元々の意味
人は起こったことに対する反応は100%自分で選ぶことができます。それはどんな状況でも他人や環境のせいにせず、前向きにコトにあたることを指します。特に問題が発生したとき、悲観して周りを責めるも、前向きに取り組むのも、決めるのは全部自分自身です。
プロジェクトマネージャーとしての解釈
プロジェクトにおけるリーダーシップの源泉は、何か問題が起こっても(たとえそれが自身の責任の範疇外のことであっても)、そのすべての責任を引き受けようとするプロジェクトマネージャーとしてのラストマンシップ(船に何かあれば一番最後に下船するという覚悟を示した言葉)です。これはPMは責任者として問題をすべて抱え込めという話ではなく、問題やリスクに対して常に前向きにチームを前進させる原動力となる意志を持つことを指しています。
2.終わりを思い描くことから始める
元々の意味
人生の最終形を描き、そのゴールから逆算して考えようというものです。その方法論として自身の価値観を示したミッション・ステートメントを作成することが提案されています。
プロジェクトマネージャーとしての解釈
以下の2点を最優先タスクとして認識します。
- C/Oの状態から逆算して必要なタスクを洗い出し、スケジュールを引きます。言い換えれば、成果物、プロジェクトスコープを明確にし、何が出来上がればPJは完了になるのか?を明らかにします。
- 背景や目的といったPJの骨格(PJ憲章)を言語化し、プロジェクトが完了した時にどんな違いを起こし、結果関係者はどんなメリットが享受できているはずなのかを関係者で齟齬がないように繰り返し共有します。また制約条件に対して意思決定が必要な場面での判断基準にします。
3.最優先事項を優先する
元々の意味
重要なこと、即ち理想(ミッション・ステートメント)の達成に貢献することを優先させましょう。緊急だが重要でないことばかりに時間を取られないように注意しましょう。
プロジェクトマネージャーとしての解釈
重要な問題解決は言うに及ばず、重要リスク、クリティカルパス、重要ステークホルダー対応に、リソースと注意を正しく割り当てることを怠らない。
4.Win-Winを考える
元々の意味
私も勝ってあなたも勝つ。関係者全員の利益を目指します。両方勝てないならno deal(今回は取引しない)を選択する勇気を持つことも大切です。
プロジェクトマネージャーとしての解釈
顧客と自社のどちらかが一方的に不利益を被る計画は必ず破綻することを理解しましょう。特にクライアントワークの場合は長期的に継続可能な関係でなければいづれ体制を維持できず最終的に顧客に迷惑をかけることになります。その場しのぎの無理な解決策は選択してはいけません。これはパートナー企業やチームメンバーに対しても同様です。
5.まず理解に徹し、理解される
元々の意味
自分が理解されることに執着しません。相手を理解してから自分を理解してもらう、その順序を忘れないようにします。常に相手の立場に立って考えます。
プロジェクトマネージャーとしての解釈
顧客やメンバー、パートナーに対して、自分都合だけの提案やリクエストになっていないか、常にチェックする。
特に協力パートナーに対して、自分たちが顧客からして欲しい態度や振る舞いを取る。(自分たちが顧客にされたくないことは、協力パートナーの方々にも行わない)
6.シナジーを作り出す
元々の意味:
全体の合計が個々の合計よりも大きくなるようにします。あなたの案でも私の案でもなく、私達の提案にします
プロジェクトマネージャーとしての解釈:
- 対顧客やパートナー:受注者と発注者の関係ではなく共創の関係を目指すように積極的・自発的な態度とコミュニケーションをとります。
- PJ内でもPM自ら情報発信を心がけつつ、皆が発信しやすい環境と空気を用意します。(心理的安全性の確保)
結果、メンバーの心理的安全性の確保だけでなく、担当者やチーム間の三遊間のゴロをなくし、自分の領域のちょっと向こうまでそれぞれが行えるチームを目指します。
7.刀を研ぐ
元々の意味
肉体、精神、知性、情緒などをバランスよく継続的に鍛錬することが大切とされます。
プロジェクトマネージャーとしての解釈
組織として個人として「成長」を意識させるチーム作りを目指します。PJ期間内でも節目での振り返りをルーチン化し、改善し続ける文化をチームに定着させます。そのテーマとしては、技術や生産性の向上を目的としたナレッジ蓄積やツールやルールの改善などから、PJカルチャーやワーキングスタイルなどメンバーの精神的な充実度に影響を与える要素を幅広く網羅すると良いでしょう。
以上、プロジェクトマネージャーとして意識すべき7つの習慣をまとめてみました。
PMBOKのような知識体系も有用ですが、よりシンプルな原理原則からプロジェクトの本質を理解することも有効だと考えています。
なお書籍では数字の小さな習慣から身につけるべきとされています。できれば週次などのペースで上記の項目に従って定期的に自身のマネジメント状況を振返れると効果的です。
ちなみに書籍「7つの習慣」をまだ手に取られたことがない方や、内容を短時間に復習したい方はこちらの動画がおすすめです。
10分でわかる7つの習慣まとめ
(冒頭のテンションに圧倒されますが(笑)、非常にコンパクトでわかりやすいのでおすすめです)
https://youtu.be/ztOJ9P2YDHk
何より一番ベストは書籍を読んで頂くことかと思います。分厚い本ではありますがきっと色々な気付きがあると思いますので、よろしければチャレンジしてみてください。