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AI時代のプロジェクト開発で本当に求められるスキル:ハッカソンで学んだ「解像度を高める」技術

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はじめに

「AIがコードを書いてくれる時代に、エンジニアに求められる価値とは何か?」

この疑問への答えを、Qiita✖️FastDOCTORハッカソンでの経験を通じて発見しました。短時間で初対面のメンバーと医療×AIアプリを開発する中で見えてきたのは、技術実装よりも「解像度を高める」作業の重要性でした。

本記事では、ハッカソンでの具体的な経験を元に、AI時代のプロジェクト開発で真に価値のあるスキルと、それを活かすための実践的な手法をお伝えします。

開発したプロダクト:「体調Do」

まず簡単に、我々のチーム「池田さんの無双鶏」が開発したアプリをご紹介します。

system.png

解決しようとした課題

  • 患者側の課題:メンタルヘルスケアにおいて、若年層の2割が治療効果を実感できずに通院を中断してしまう
  • 医療側の課題:患者数増加により、診療間のアフターケアに人員を割けない状況

ソリューション

LINEBotを活用した服薬・体調管理システムで、以下の機能を実装:

  1. 定期的な体調記録:薬の服用量と体調をフォームで入力
  2. AI励ましメッセージ:RAGによってパーソナライズされた応援メッセージ
  3. レポート自動生成:医師と患者向けの詳細な体調変化レポート(PDF出力可能)

linebot.png

AI時代に求められるスキル:「解像度を高める」技術

なぜ「解像度」が重要なのか

今回のハッカソンで最も印象的だったのは、実装自体はほぼ全員がAIを活用した「vibe coding」で完了できたということです。技術的なハードルが大幅に下がった今、差が生まれるのは以下の段階です:

  1. 課題の発見と定義
  2. 解決策の設計と要件整理
  3. プロジェクトの方向性決定

これらは全て「解像度を高める」作業であり、AIでの代替が困難な領域です。

解像度を高めるための具体的手法

1. 一次情報の重視

我々は1日目をほぼ丸々使って、FastDOCTOR社員の方から一次情報を収集しました:

  • コロナ禍以降の患者増加による医師不足の実態
  • オンライン診療におけるメンタルヘルスケア患者の割合
  • 実際の通院継続率のデータ

学び:二次情報だけでは見えない、現場の生の課題を発見できるのは人間だけです。

2. 多軸評価による意思決定

複数のアプリ案を以下の5軸でマッピングして選定しました:

  • インパクトの大きさ
  • 実現可能性
  • 新規性
  • 技術力の活用度
  • 利益創出の可能性

学び:感覚的な判断ではなく、構造化された評価軸で議論することで、チーム全員が納得できる意思決定が可能になります。

3. 課題の深堀りと構造化

表面的な「通院率が低い」という課題を、以下のように構造化しました:

通院中断の原因
├── 初診の印象が悪い(改善困難)
└── 治療効果を実感できない
    ├── 主観的な体調変化の把握困難
    ├── 服薬の継続性の問題
    └── 医師との情報共有不足

この構造化により、AIで解決可能な具体的なポイントが明確になりました。

効果的なプロジェクト進行の実践手法

開発フローの改善

従来多くのプロジェクトで見られる問題は、要件が不明確なまま実装に入ってしまうことです。今回の経験から導き出した理想的な開発フローは:

話し合い → UI設計 → 要件最終確認 → UI修正 → Backend → DB → インフラ

なぜUIを先に作るのか

  1. 要件の漏れ発見:実際に画面を作ってみると「この機能も必要だった」が見える
  2. チーム認識統一:抽象的な議論より、具体的なUIで認識を合わせられる
  3. 方針転換の防止:開発途中での大幅な仕様変更を避けられる

タスク分担の教訓

失敗例:技術領域で分担(フロントエンド、DB、RAG、LINEbot)
→ 相互依存により、一人が詰まると全体が止まる

改善案:機能単位での分担 + UI担当者の専任配置
→ 並行作業が可能で、見栄えも向上

発表準備の重要性

「過程ではなく結果(発表)で評価される」という現実を痛感しました。

反省点

  • 発表練習なしで本番を迎えた
  • 画面共有トラブルで1分間ロス
  • デモでの突然のエラー

学び:どれだけ良いものを作っても、発表で失敗すれば評価されない。短時間の発表では第一印象が全てです。

チーム開発での立ち回り

初対面チームでのファシリテーション

短時間で成果を出すため、以下の役割を意識的に担いました:

  1. 目的意識の維持:話が脱線しそうになったら即座に軌道修正
  2. 議論の構造化:感情論ではなく、評価軸に基づく議論への誘導
  3. 時間管理:限られた時間での優先順位付け

具体的な介入例

アプリ案の検討時、一つの案の詳細に入り込みそうになった際:
「詳細を詰める前に、まず5軸評価で全案を比較し、方向性を決めましょう」

このような小さな軌道修正の積み重ねが、最終的な成果に大きく影響しました。

AI時代のプロジェクト開発における新しい常識

開発時間の配分変化

従来:企画20% + 実装80%
現在:企画60% + 実装40%

AIによる実装効率化により、企画・設計フェーズの比重が大幅に増加しています。

求められるスキルセットの変化

技術スキル(重要度:中)

  • AIツールの効果的な活用
  • 基本的なアーキテクチャ理解

非技術スキル(重要度:高)

  • 課題発見・構造化能力
  • ファシリテーション・コミュニケーション
  • 意思決定・優先順位付け

まとめ:解像度を高める技術の実践

AI時代のプロジェクト開発では、以下の「解像度を高める技術」が最も価値のあるスキルです:

  1. 一次情報からの課題発見
  2. 構造化された問題分析
  3. 多軸評価による意思決定
  4. UI駆動での要件明確化
  5. 効果的なチームファシリテーション

これらのスキルは、AIが代替困難な人間ならではの価値であり、今後ますます重要になるでしょう。

技術の進歩により実装の敷居が下がった今だからこそ、「何を作るか」「なぜ作るか」「どう作るか」を明確にする能力が、プロジェクトの成否を分けるのです。


この記事が、AI時代のプロジェクト開発に取り組む皆さんの参考になれば幸いです。技術だけでなく、プロジェクト全体を俯瞰して「解像度を高める」ことの重要性を、ぜひ実践してみてください。

謝辞

チーム「池田さんの無双鶏」の皆さん、一次情報を共有いただいた医療現場の方々、このハッカソンを開催していただいたQiitaおよびFastDOCTORの皆様に感謝いたします。

参考:今回参加したプロジェクト

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