長時間机に向かっているのに、思ったほど前に進んでいない気がする。残業を重ねても成果が比例しない。そのまま「もっと頑張る」方向に努力を積み増していくと、消耗するばかりで根本は変わらない。マイクロソフトの現役エンジニアである牛尾剛さんの『世界一流エンジニアの思考法』は、その頑張り方自体を見直すきっかけをくれる本だった。
「試行錯誤」を減らすという逆転の発想
本書の芯にあるのは、いきなり手を動かして試行錯誤するのではなく、基礎の理解に時間をかけたほうが結局早いという考え方だ。優秀な同僚たちが実践している情報整理や記憶術、マルチタスクをやめる判断など、生産性を落としている原因を一つずつ言語化していく構成になっている。
アメリカで気づいた「日本にいると気づけないこと」
著者自身が日本からアメリカに渡って気づいたマインドセットの違いを、体験談として率直に書いているのも良かった。コミュニケーションの伝え方・聞き方、サーバントリーダーシップや自己組織型チームの話まで踏み込んでいて、個人の思考法から組織の動かし方まで一冊でつながっている。
読んでよかったポイント
- 「わからないことをすぐ検索しない」という一節で、自分がいかに理解を飛ばして手を動かしていたか気づかされた
- タイムボックス制の説明が具体的で、その日のうちにやり方を変えられるレベルまで落とし込まれている
- マルチタスクが生産性を下げるという話を、単なる精神論ではなくエンジニアの実務に即して説明していて納得感があった
- コミュニケーションの章は、レビューでのやり取りや会議での発言の仕方をそのまま見直したくなる内容だった
- AI時代の生き残り方を扱う最終章が、変化への向き合い方について落ち着いて考える機会になった
まとめ
もっと頑張るのではなく、頑張り方を変える。言葉にすると単純だが、実際に何をどう変えればいいかまで踏み込んで書かれているのがこの本の価値だと思う。今日の仕事の進め方を一つだけ変えるとしたら何にするか、読みながら考えてみてほしい。