「開発生産性を上げよう」と号令をかけたものの、何を測って何を変えればいいのか誰も答えられない。指標だけ導入して現場が疲弊する、という失敗も珍しくない。『エンジニア組織を強くする 開発生産性の教科書』は、その手前で立ち止まって考えるための地図をくれる本だった。
「測る」より前に「何を目指すか」を決める
本書は開発生産性とは何かという定義から入り、向上のためのステップ、取り組みを阻害する要因とその対策、パフォーマンスを測るための指標という順で進む。いきなり指標選びに飛びつかず、組織として何を目指すのかを先に固める構成になっているのが実務的だと感じた。
5社の事例がそのままケーススタディになる
後半はBuySell Technologies、ツクルバ、クラスメソッド、ワンキャリア、ファインディという5社の取り組みを事例として紹介している。理屈だけでなく、実際にどう始めてどこでつまずいたかまで具体的に書かれているので、自分たちの組織のどのフェーズに近いかを当てはめながら読める。
読んでよかったポイント
- 指標導入の失敗パターンが先にまとまっていて、自分のチームが同じ轍を踏みそうな箇所に事前に気づけた
- 事例パートが企業規模も業種もばらけているので、自社に近い立場の事例を選んで重点的に読めた
- 生産性向上の取り組みを阻害する要因の章が、技術的な話だけでなく評価制度や文化にまで踏み込んでいて納得感があった
- 指標を導入した後の「形骸化」を防ぐ視点が、他の生産性本にはあまりなかった部分で参考になった
- Appendixのチェックリストが、次のチームミーティングでそのまま議題に使えそうな粒度だった
さらに広げて読むなら
個人のAI活用を組織全体の生産性に広げる視点も気になるなら、AI活用が個人技で止まっているEMへ。チームの生産性を仕組みで引き上げる一冊も合わせて読むと、開発生産性の議論をAI時代の文脈まで広げられる。
まとめ
開発生産性の話は、指標を導入すること自体が目的化してしまいやすい。まずは自分たちが何を「速くしたいのか」を言葉にするところから、この本と一緒に始めてみてほしい。