はじめに
kintoneのレコード一覧分析AIについて、触ってみたものの「コピペするとMarkdown記号が邪魔」「結果が読みづらい」「100件までしか分析できない」といった声をいただくことがあります。
本記事では、実際に使い始めてから出てくる細かい困りごとに焦点を当て、それぞれの対応案を3つのTipsとしてご紹介します。
- Tips1:分析結果をきれいにコピペしたい → プロンプト指示で解決
- Tips2:Markdownの結果を読みやすくしたい → kintoneアプリ+Marked.jsで表示
- Tips3:100件を超えるレコードを分析したい → 一覧の分割+自動化(RPAなど)で対応
対象読者・前提条件
- kintoneの管理者権限を持っている方
- kintone AIが利用可能なプラン・契約である方
- kintoneの基本操作(アプリ作成・レコード追加)を把握している方
レコード一覧分析AIのおさらい
Tipsに入る前に、分析対象(生成AIに渡すコンテキスト)の考え方を簡単に整理しておきます。
レコード一覧分析AIは、「いま開いている一覧画面に表示されているもの」 が分析対象になります。
- 横方向(フィールド):一覧に表示しているフィールドが対象
- 縦方向(レコード):一覧に表示されているレコードが対象(最大100件)
一覧へのフィールド表示については、一覧の表示形式と表示する内容を設定するを、表示するレコード件数については、一覧の表示件数を変更するを参照してください。
ただし、一覧に表示できても、テーブルや添付ファイルは対象外です。
詳細は、レコード一覧分析AIを利用するを参照してください。
つまり、一覧の作り方そのものが、生成AIに渡すコンテキストの設計になります。後述のTips3で扱う「100件の壁」に対しても、一覧の絞り込みを工夫して、目的に合った範囲を切り出しておくことが、うまく使うためのコツになります。
Tips1:分析結果をきれいにコピペしたい
レコード一覧分析AIの生成結果は、Markdown書式になっています。また、分析の元になったレコード番号も含まれます。
これらを文書作成アプリケーションなどにコピペするときに、削除する手間がかかるというご意見がありました。
レコード一覧分析AIには、あらかじめ用意された分析メニュー(ボタン)と、自由に指示を入力できるプロンプト欄があります。本記事では、プロンプト欄を使って対応します。
プレーンテキストで出力させる
下記のプロンプト例を使ってみてください。分析内容は、目的に応じて変更してください。
業種と敗退要因に因果関係があるかを分析してください。
回答はコードブロック内にプレーンテキストのみで生成してください。
レコードへのリンクである[数字]形式で表示される参照番号は出力しないでください。
ポイントは、出力のフォーマット(コードブロック内のプレーンテキスト)と、出さないもの(参照番号)を、両方きちんと指定することです。
回答結果を見てみると、コードブロック内にプレーンテキストのみで出力されます。
```
業種と敗退要因の因果関係分析
■ 分析概要
全100件の商談記録のうち、失注案件は28件(28%)
業種別の失注状況と敗退理由の傾向を分析
■ 業種別失注率
〜以下略〜
```
Tips2:Markdownの結果を読みやすくしたい
こちらも先ほどと同様にMarkdownに関するご意見です。
Markdownは生成AIへの二次利用と相性が良い一方、画面で読むには少し読みにくく感じることもあります。
Markdownをレンダリングしましょう
cybozu developer networkにある「Marked.jsを使って社内ドキュメントを書きやすくしよう!」では、kintone上でMarkdownを見やすく表示する方法が紹介されています。ここからは、その記事の手順をベースに、生成AIの回答結果を表示するシーンに合わせて、ライブラリのバージョンや注意点を補足しながら進めます。
まず、回答結果を保存するアプリを作成します。
下図のとおり、”内容”という文字列(複数行)フィールドの下に、スペースフィールドを配置しています。
続いて、JavaScript / CSSでカスタマイズを設定します。
Marked.jsは、v16.x以降でURLおよびファイル名が変更されています。執筆時点でCybozu CDNで案内されているv17.0.5では、以下のURLを利用します。
https://js.cybozu.com/markedjs/v17.0.5/marked.umd.min.js
最新情報および詳細は、Cybozu CDNを参照してください。
Marked.jsはMarkdownをHTMLに変換するライブラリで、出力HTMLのサニタイズは行いません。お試しの範囲では問題になりにくいですが、業務運用としてレコードの値や、さまざまな生成AIツールの結果を表示する場合は、DOMPurifyなどによるサニタイズもあわせてご検討ください。
ここからは好みになりますが、github-markdown-light.cssに加えて、以下のmarkdown-custom.cssをJavaScript / CSSカスタマイズに追加で読み込んでいます。
.markdown-body {
background-color: rgb(255, 255, 255);
}
.markdown-body h1,
.markdown-body h3,
.markdown-body h4,
.markdown-body h5,
.markdown-body h6 {
color: #4a4a4a;
}
.markdown-body h2 {
color: #0969da;
border-bottom: 2px solid #0969da;
padding-bottom: .3em;
}
.markdown-body strong {
color: #e67e22;
}
全ての設定が終わると下図のようになります。
レコード詳細画面を表示すると以下のようになります。
アプリのデザインテーマをブラックにしています。
操作方法の不明点は、アプリのデザインテーマを変更するを参照してください。
Tips3:100件を超えるレコードを分析したい
こちらも、よくいただくご意見となります。現時点では、冒頭のおさらいで触れたとおり、一覧の絞り込みを工夫して分析対象を分割し、自動化と組み合わせる方法が現実的な対応案になります。ここでは、その一例をご紹介します。
題材として、営業日報があり、週に一回、先週分を担当ごとにまとめ、部門の会議に全員分をまとめて報告するというケースを想定します。3人の新人のデータを架空で作成したので、それを元に試してみます。
担当ごとの一覧から週間分析を実施
田中さん、中村さん、鈴木さんの3人の新人営業メンバーがいるとして、それぞれの先週のレコードを表示する一覧を用意しておきます。一覧をあらかじめ分割しておくことで、1回あたりの分析対象を現実的な範囲に収めるのが、ここでのポイントです。
操作方法の不明点は、一覧を追加するを参照してください。
まずは手動でやってみる
各担当の一覧を順番に開き、レコード一覧分析AIで週の分析を実施。結果を、営業日報アプリとは別に用意した営業週報アプリに登録していきます。
以下は、レコード一覧分析AI用のプロンプト例です。
あなたは営業マネージャです。コンテキストは新人営業メンバーの先週の日報データです。
■ 分析の観点
1. 週の活動サマリー(訪問数、活動種別の内訳、主な訪問先)
2. 注目すべき気づき・成長ポイント(顧客対応での気づきから特に良い点を抽出)
3. 支援が必要な点やアドバイス
4. 伸ばしていくべき長所
5. 翌週の重点アクション提案
■ 出力フォーマット
Markdown形式で、上記の各セクションに分けて記載してください。
具体的な日報の記述を引用しながら分析してください。
レコードの参照番号([番号]の書式で表示されるもの)は不要です。
下図のような操作になります。
数人程度であれば、この手作業の繰り返しでも十分に運用できます。
人数が増えたら自動化を組み合わせる
ただし、対象人数が増えてくると、一覧を開く → 分析する → 結果を営業週報アプリに登録する、という操作の繰り返しがどうしても煩雑になります。そこで、RPAなどのブラウザ操作自動化で、この繰り返しを省力化する方法が考えられます。
ご存じかと思いますが、他のSaaSと同様に、kintoneもDOM構造は非公開で予告なく変更されるため、RPAやブラウザ自動操作はサポート対象外です(kintoneコーディングガイドライン参照)。アップデートで動かなくなるリスクを織り込んだうえで、自己責任で活用する領域になります。
筆者はRPA製品を持っていないため、その代替として、AIエージェントからブラウザを操作するPlaywright MCPで試してみました。3人分の一覧を順番に開き、同じプロンプトで分析を実行し、結果を営業週報アプリにレコード登録するまでを、ブラウザ操作の自動化で行っています。
(以下のGIFは、1人分の様子をピックアップしたものです)
このように、分析〜登録までを一連の流れとして動かせそうな手応えが得られました。
要約データを元に会議報告資料を作成
3人の分析データが営業週報アプリに入ったので、これを会議報告用にもう一段要約します。レコード一覧分析AIの出力を、レコード一覧分析AIで再度まとめる、要約 → 要約 の二段活用です。
以下は、会議報告用のレコード一覧分析AIのプロンプト例です。
あなたは営業マネージャです。コンテキストは新人営業チーム(3名)の先週の日報の要約データです。部会報告用に以下のトピックで500文字以内の報告文章を作成してください。
■ 報告トピック
1. 活動概要
2. 特徴的な成長
3. 今後の指導方針
■ 出力フォーマット
回答はコードブロック内にプレーンテキストのみで生成してください。
レコードの参照番号([番号]の書式で表示されるもの)は不要です。
実行結果の一部を載せておきます。結果を、報告レポートやスライドに展開していただく想定です。
```
【新人営業チーム 週次報告】2026年3月9日〜3月13日
■活動概要
新人3名が計11件の顧客対応活動を実施。田中一郎は。。。(省略)
■特徴的な成長
3名に共通して顕著なのは、顧客理解の質的向上です。田中は意思決定プロセスの構造理解、。。。(省略)
■今後の指導方針
短期的には鈴木の初受注サポート(契約プロセス同行)を最優先とし、成功体験を創出します。中期的には全員に共通する課題である複数案件管理手法の体系的指導、ROI計算・稟議資料作成などの提案スキル強化を実施。各自の強み(田中の構造的思考、中村の顧客視点、鈴木の観察力)を活かした差別化育成も並行します。
```
まとめ
レコード一覧分析AIは、プロンプトの工夫とkintone標準機能の組み合わせで、できる範囲がぐっと広がります。本記事で3つのTipsを紹介しましたが、共通しているのは「kintoneのいつもの機能とAIを上手に掛け合わせる」、そして「普段の操作の延長で、AIをうまくリードしてあげる」という考え方です。
kintoneは、チームで使い、データを蓄積していくのに向いています。日々のデータ入力のルーティンが回っていれば、それ自体が生成AI活用の土台になり、応用の幅もさらに広がっていきます。
皆さんの現場でも、ぜひ「工夫」を楽しみながら試してみてください。








