「Gemini と Claude、どっちを入れる?」で止まっている人は、入口を間違えている。
Google が I/O 2026 で揃えた話は、モデル名の勝敗ではない。コーディングとオーケストレーションの主戦場を Antigravity に寄せて、同じハーネスの上に入口を四つ置いた、という話だ。結論から書く。Gemini vs Claude を聞くのをやめて、CLI / IDE / 2.0 / SDK のどれで仕事を回すかを選べ。 月曜にやることは、四つ全部入れることじゃない。 antigravity.google を開いて、今の作業に合う面を一つ決めることだ。
いま困っていること
ターミナルで gemini を叩いていた人と、エディタで diff を見ていた人と、デスクトップでエージェントを並走させていた人が、同じ「Google のコーディング AI」として会話している。箱が混ざる。だから「後継はどれ?」がモデル名の比較に落ちる。
落ちなくていい。後継と呼べるものは、コマンド名でもモデルカードでもない。どの窓から同じエージェントに仕事を渡すかだ。
I/O が先に言っていること
一次情報は Addy Osmani の I/O ‘26 news for agent developers on Google Cloud(2026年5月19日)だ。
ここでの Antigravity は、Google 側の コーディングとエージェントオーケストレーションの主解 として置かれている。開発者向けのコーディング戦略を、複数の面で共有する単一のハーネスにまとめた、と書いてある。Gemini ファミリーと共最適化していて、ここで作った Skills は面をまたいで持ち運べる想定だ。
その上に、当日の拡張が乗る。
- Antigravity 2.0 はスタンドアロンのデスクトップアプリ。コーディングエージェントを舵取りし、カスタマイズし、オーケストレーションする作業場。1つのプロンプトからサブエージェントを生やせる。マルチエージェントでタスクを並列に走らせられる。リファクタ、ユニットテスト、仕様からの足場、といった仕事をエージェントに振る前提の画面だ。
- Antigravity CLI は、同じハーネス、同じエージェント、同じ知能の品質をターミナル向けに切ったもの。速度とオーバーヘッドの低さに振ってある。デスクトップアプリと認証・コンテキスト・Skills・設定を共有する。別物を二系統で育てる話ではない。
- 企業向け は、Cloud OAuth で入り、Agent Platform の Project ID とリージョンをセットする。推論は Agent Platform のモデル経由で、クラウド境界の中に残る。データと利用条件を Cloud 側に揃える入口だ。
「Google しか使えない」ではない。同じ投稿は、Antigravity を推奨しつつ、Claude Code や Cursor のような他のコーディングエージェントでも、Agent CLI と ADK 経由で Google Cloud 上の推論に載せられる、と分けて書いている。モデル名でチームを割る必要はない。推論の置き場と、手元の入口は別レイヤだ。
Gemini CLI 個人向けの提供終了日を、非公式ブログから拾って断定しない。公式の I/O 投稿が言っているのは、開発者向けコーディング戦略を Antigravity に集約した、という方針だ。後継を探すなら、日付の噂より入口の表を見た方が早い。
入口は四つ。公式の比較表がそのまま答え
面の切り方は、Alex "Sandu" Astrum と Luke Schlangen の Choosing your surface(2026年6月10日)が一次だ。ドキュメントの入口は antigravity.google。
公式の Quick Comparison は、この4列だけだ。
| Feature | Antigravity 2.0 | Antigravity CLI | Antigravity IDE | Antigravity SDK |
|---|---|---|---|---|
| Interface | Desktop App | Terminal (TUI) | Desktop App | Python Code |
| Best For | Multiple simultaneous tasks | Command-line / Headless | Directly editing code | Building custom agents |
見た目は違う。下は同じエージェントハーネスだ。プラグインも Skills も、公式が「どの面を選んでも同じコアロジック」と書いている。だから四つ入れる必要はない。今の作業が表の Best For のどれに近いかだけ見ればいい。
2.0:並列タスクのデスクトップ
公式のデフォルト推奨はここだ。独立したプロジェクトをまたいで、複数の自律エージェントを同時に走らせるデスクトップアプリ。メインの作業場を塞がずにタスクを切り替え、監視できる。コード品質の確認や古いパッケージ探しを、定期実行としてスケジュールもできる。
「エディタの上位互換」ではない。公式 Codelab 側の説明では、2.0 はエージェントマネージャで、IDE そのものは含まない。コードを行単位で見たい人は、隣の IDE 面に行く。アイデアからエージェントに任せて、並走を眺めていたい人は 2.0 だ。
CLI:ターミナルとヘッドレス
Go 製。キーボードで速く動かすための TUI。ターミナルのコマンドからバックグラウンドエージェントを起動できて、いま開いている TTY をロックしない。SSH 先やリモートコンテナでヘッドレスに回したいなら、ここが面になる。
公式 Codelab は、この CLI を Gemini CLI の次の進化 と位置づけている。コマンドは agy。初回は Google アカウントでサインインする。無料枠の Gemini 利用は Google Cloud プロジェクトなしでも始められる、と Codelab は書いてある。Cloud プロジェクトや API キーがあるなら、そちらも設定してよい。
インストールの入口も公式に寄る。Codelab では次だ。
curl -fsSL https://antigravity.google/cli/install.sh | bash
agy
対話を開かず一発で投げるなら、非対話モードがある。
agy -p "Explain the architecture of this codebase"
「ターミナルに残る人の Gemini CLI 後継」を探すなら、モデル名ではなくこのコマンドだ。デスクトップと同じハーネスなので、CLI だけ別人格、にはならない。認証も Skills も設定も、2.0 と共有する前提で書いてある。
IDE:行単位で accept / reject したいとき
エージェントを今のワークスペースの中に置く面だ。エージェントがどの行を書き換えているかを見て、行単位で受け入れたり戻したりしたいならここ。デバッグが載っていて、ランタイムエラーをエージェントが見て、エディタ上でワンクリック修正を出せる、と公式は書いている。
SSH の向こうで黙って走らせたい仕事には向かない。逆に、差分を人間がレビューしてから残す仕事には、CLI より IDE の方が話が早い。見えない変更を後から git diff で追うより、行単位の accept / reject の方がレビューになる。
SDK:同じハーネスを Python で自分のエージェントにする
カスタムエージェントと自動パイプライン向けの Python ライブラリ。公式の Antigravity ツールが使っているのと同じツールとルールに、共有ハーネス経由で触れる。ローカルで書いて、コード変更なしで Google Cloud にデプロイできる、と表面比較の投稿は書いている。
「エディタを入れるか、CLI を入れるか」で止まっている人の選択肢ではない。エージェントそのものを成果物にしたい人の面だ。手元のコーディング補助が欲しいだけなら、先に上の三つから選ぶ。
どう選ぶか。How-to は作業の形だけ見る
モデルベンチを開かない。自分の作業が、画面を見る仕事か、画面を持たない仕事かを見る。
CLI を選ぶとき。 作業場所が SSH 先、コンテナの中、CI に近いヘッドレス、キーボードだけのターミナル、のいずれか。今のシェルを占有したくない。バックグラウンドでエージェントを投げたい。公式の Best For は Command-line / Headless で、Go 実装と「TTY をロックしない」が理由になっている。リモートの箱に GUI のデスクトップを持ち込む必要はない。
IDE を選ぶとき。 変更を行単位で見たい。accept / reject がレビューそのもの。ランタイムエラーをエディタ上でエージェントと共有したい。公式の Best For は Directly editing code。人間が diff の責任を持つ仕事は、ここに置いた方が速い。
2.0 を選ぶとき。 同時に複数タスクを走らせたい。プロジェクトを切り替えながら監視したい。定期実行をデスクトップから投げたい。公式のデフォルト推奨で、Best For は Multiple simultaneous tasks。コードを逐一撫でる画面ではない。オーケストレーションの画面だ。
SDK を選ぶとき。 公式の面を使うのではなく、同じハーネスで自前のエージェントを書いて Cloud に載せたい。ゼロコード変更でデプロイ、が公式の売りだ。アプリケーションの中にエージェントを埋め込む仕事は、CLI の設定ファイルでは足りない。
迷ったら、今いちばん多い作業を一つだけ当てる。SSH が多い週に IDE を四つ目として入れても、入口は増えるだけで仕事は増えない。逆に、毎日行単位で diff を見ている人が CLI の非対話だけに寄せると、レビューが後回しになる。面は道具箱ではなく、その週の主戦場だ。
他エージェントを残す選択もある。I/O 投稿は、Claude Code や Cursor を使い続けたまま、推論だけ Google Cloud に置く道を Agent CLI / ADK として残している。Antigravity の四面は「Google 製の入口」であって、「他を捨てろ」ではない。捨てるかどうかより、自分のループがターミナルか、エディタか、並走デスクトップか、コードとしてのエージェントかを決める方が先だ。
月曜にやること
ランキングも、モデル名の比較表も開かない。antigravity.google を開く。公式の4列を見て、今の仕事に近い面を 一つ 選ぶ。四つ入れない。
目安は短い。
- リモートやコンテナでヘッドレスに回す → CLI(
agy) - 行単位の差分を見てから残す → IDE
- 複数タスクをデスクトップで並走させる → 2.0
- 同じハーネスで自前エージェントを書いて Cloud に出す → SDK
企業の境界に推論を残したいなら、そのあとで Cloud OAuth と Agent Platform の Project ID / リージョンを足す。入口の選択より後でいい。先に面を四つ揃えると、設定だけが増えて、どれが主戦場か分からなくなる。
Gemini CLI から手を移す人向けに言うと、Codelab が示している次の名前はモデル名ではなく agy だ。後継の質問をモデル比較に戻さない。入口を一つ決めて、その面だけで一週間仕事を終わらせる。
一次情報
- Addy Osmani, I/O ‘26 news for agent developers on Google Cloud(Google Cloud Blog、2026年5月19日)— 主解としての Antigravity、共有ハーネス、2.0 と CLI、企業の Cloud OAuth / Project ID / リージョン、他エージェントの Cloud 推論
- Alex "Sandu" Astrum / Luke Schlangen, Choosing your surface: Antigravity 2.0, Antigravity CLI, Antigravity IDE, or Antigravity SDK(Google Cloud Blog、2026年6月10日)— 四面の役割と公式比較表。ドキュメントは antigravity.google
- 公式 Codelab: Accelerating Development with Antigravity CLI — CLI は Gemini CLI の次の進化、コマンド
agy、Google サインイン - 公式 Codelab: Automated UI Testing with Antigravity (AGY) CLI — 四面の位置づけ(2.0 はエージェントマネージャ、CLI は Gemini CLI の次の進化)
非公式ブログの提供終了日や CVSS は、この記事の事実には使っていない。日付の話が食い違ったら、上の I/O 投稿と表面比較の投稿に戻る。