TL;DR
- 2026年8月、Google Antigravityが公式のVS Code拡張機能として登場した。もう「Antigravityという別IDE」に引っ越す必要がない
- これをGitHub Codespacesの中にインストールすると、エージェントの実行環境が丸ごと使い捨てコンテナになる。つまり 「全部承認スキップ(Always Proceed)」を現実的な選択肢にできる
- GitHub CopilotとGoogle AI Proを両方契約している人は、Copilot側の契約を見直せる可能性が高い。Copilotは2026年6月からAIクレジット制(従量課金)に移行しており、「$10で無制限」の時代は終わっている
検証環境(2026年8月時点)
Codespaces: 2-core / Ubuntu 24.04 ベースの devcontainer
拡張:Google.google-antigravity(publisher: Google)
アカウント: Google AI Pro
Antigravity for VSCodeの導入例
Antigravityで作成した動画
1. 何が起きたのか:AntigravityがついにVS Code拡張になった
Antigravityは元々、VS Codeをフォークした独立したIDEとして2025年11月に公開された。エージェントに仕事を丸投げする「agent-first」なIDEで、Gemini 3.1 ProやClaude系モデルを使って複数ステップの実装をやらせる、というコンセプトだ。
面白いプロダクトではあったが、既存のVS Codeユーザーには大きな障壁が1つあった。
「引っ越しコスト」である。
キーバインド、設定、拡張機能、ワークスペース、そして何より Remote系の資産。フォーク製IDEはこのあたりが微妙に噛み合わない。実際、Antigravity IDE時代には「Codespacesに繋げない」「Dev Containers拡張が壊れる」といった報告がフォーラムに大量に上がっていた。
そして2026年8月、Googleが公式のIDE拡張機能をリリースした。VS Code、Visual Studio(Preview)、JetBrains、Zedの4本立てだ。
VS Code版はMarketplaceから普通に入る。
- 拡張ID:
Google.google-antigravity - 要件: VS Code 1.90以降、Googleアカウント(無料枠でもOK)
- 価格: 拡張自体は無料
初回起動時にローカルの agy バックエンドサービスが自動インストールされる構成になっている。この「バックエンドが手元に入る」という点が、あとで効いてくる。
2. 本題:なぜ Codespaces と組み合わせるのが「便利すぎる」のか
エージェント型コーディングツールを使ったことがある人なら、必ず一度は通る道がある。
承認ダイアログ地獄
Agent wants to run: npm install
[Allow] [Deny]
Agent wants to run: npm run build
[Allow] [Deny]
Agent wants to run: npx tsc --noEmit
[Allow] [Deny]
……これを1タスクで20回。
エージェントに任せているのに、人間がクリック係になっている。 本末転倒だ。
かといって全部自動承認にすると、今度は「自分のMacのホームディレクトリで rm -rf を打つかもしれないエージェント」と同居することになる。SSH鍵も .env も ~/Documents も、全部そこにある。
Antigravityの権限モデル
Antigravityは action(target) 形式の権限リソースを、Deny / Ask / Allow の3リストで評価する。優先順位は明確に Deny > Ask > Allow。
| アクション | 説明 | デフォルト |
|---|---|---|
read_file |
ファイル読み取り | Ask(ワークスペース内は自動許可) |
write_file |
ファイル書き込み | Ask(ワークスペース内は自動許可) |
command |
シェルコマンド実行 | Ask |
read_url |
Webページ取得 | Ask |
execute_url |
ブラウザ操作(クリック/入力) | Ask |
mcp |
MCPツール呼び出し | Ask |
unsandboxed |
サンドボックス外での実行 | Ask |
さらにAgent Settingsに Terminal Command Auto Execution という設定がある。
- Request Review: Allowリストにあるもの以外、絶対に自動実行しない
- Always Proceed: Denyリストにあるもの以外、確認なしで自動実行する
Always Proceed が、承認ダイアログ地獄からの唯一の出口だ。 そしてローカルマシンでこれをONにするのは、正直こわい。
そこでCodespacesである
Codespacesは、リポジトリごとに立ち上がる使い捨てのLinuxコンテナだ。
- 自分のホームディレクトリではない
- SSH鍵も、ブラウザのプロファイルも、他プロジェクトのソースも入っていない
- 壊れたら Delete して作り直せば10秒で元通り
つまり、環境そのものがサンドボックスになっている。
Antigravity側には Terminal Sandboxing(Preview)という機能もあるが、macOS/Linuxでプレビュー段階だ。Codespacesを使えば、そのサンドボックスをプラットフォーム側が最初から用意してくれている状態になる。
┌─────────────────────────────────────────────┐
│ ローカルPC │
│ ┌───────────────────────────────────────┐ │
│ │ VS Code(UI) │ │
│ └───────────────┬───────────────────────┘ │
└──────────────────┼──────────────────────────┘
│ Remote接続
┌──────────────────▼──────────────────────────┐
│ GitHub Codespaces コンテナ(使い捨て) │
│ ┌───────────────────────────────────────┐ │
│ │ Antigravity 拡張 + agy バックエンド │ │
│ │ → Always Proceed でノンストップ実行 │ │
│ │ → 壊れても Delete するだけ │ │
│ └───────────────────────────────────────┘ │
└─────────────────────────────────────────────┘
これが本記事の主張のすべてだ。「危険な設定」が「合理的な設定」に変わる。
3. セットアップ
3-1. devcontainer.json
拡張機能を確実にコンテナ側(リモート側)へインストールさせるため、devcontainer.json に書いてしまうのが一番早い。
// .devcontainer/devcontainer.json
{
"name": "antigravity-sandbox",
"image": "mcr.microsoft.com/devcontainers/universal:2",
"customizations": {
"vscode": {
"extensions": [
"Google.google-antigravity"
],
"settings": {
"terminal.integrated.defaultProfile.linux": "bash"
}
}
},
// 2-core のままにしておくとcore-hoursの消費が最も緩やか
// 重いビルドが必要なら 4 に上げる(消費は倍になる)
"hostRequirements": {
"cpus": 2
}
}
customizations.vscode.extensions に書いた拡張は、Codespaceのコンテナ内にインストールされる。ここが重要で、ローカル側のVS Codeに入れただけだと、拡張がUI側で動いてしまいコンテナのファイルシステムやターミナルに触れない可能性がある。
3-2. 拡張がリモート側に入っているか確認する
Codespaceを起動したら、必ず確認してほしい。
拡張機能ビュー(Ctrl+Shift+X)を開き、「Codespaces にインストール済み」セクションにAntigravityがいることを見る。ローカル側のセクションにしかいない場合は、歯車から「Install in Codespaces」を実行する。
さらに、コンテナのターミナルで実体を確認しておくと確実だ。
# バックエンドがコンテナ側に入っているか
ls -la ~/.local/bin/agy
which agy
agy --version
# 設定ディレクトリもコンテナ側に作られる
ls -la ~/.gemini/
3-3. サインイン:リモート環境での最大のハマりどころ
ここが一番詰まる。
Antigravityは通常、ローカルのデフォルトブラウザを自動で開いてOAuthを完了する。しかしCodespacesの中にはブラウザが存在しない。
CLI(agy)はSSH/リモート環境を検出すると、手動URLループにフォールバックする。
- リモートのターミナルで
agyを起動する - リモート環境を検出し、認可URLが表示される
- そのURLをローカルPCのブラウザにコピペする
- Googleアカウントでサインインする
- ブラウザに認可コード(英数字)が表示される
- コードをコピーして、リモートのターミナルに貼り戻す
デバイスコードフローと同じ要領だ。拡張側のサインインボタンでうまく飛ばない場合は、先にターミナルで agy を叩いて認証を通してしまうのが確実だった。認証が通れば拡張側もそのセッションを見る。
補足: CI/ヘッドレス用途なら、Google AI Studioで発行したGemini APIキーを使う方法もある。
~/.gemini/antigravity-cli/settings.jsonに{"modelProvider": "gemini"}を書き、GEMINI_API_KEYを環境変数にセットする。ただしこの場合はGoogle AI Proの枠ではなくAPI課金になる点に注意。
3-4. Always Proceed に切り替える
Antigravityの設定から Agent Settings → Terminal Command Auto Execution → Always Proceed を選ぶ。
これがCodespaces構成の本体だ。 承認ダイアログが消え、エージェントが npm install → build → test → 失敗を読んで修正 → 再テスト、を人間の介在なしで回すようになる。
3-5. それでもDenyリストは書く
「使い捨てコンテナだから何でもいい」わけではない。後述するが、Codespaceは使い捨てでも、そこに置かれた認証情報は使い捨てではない。
最低限これくらいは書いておきたい。
# Deny list
command(sudo)
command(gh auth token)
command(git push --force.*)
command(curl .* \| .*sh)
write_file(.git/)
write_file(/home/vscode/.ssh)
Allowリストは、逆に「よく使うが安全なもの」を明示しておくと、Request Reviewに戻したときもストレスが少ない。
# Allow list
command(git (status|diff|log|add|commit).*)
command(npm run (build|lint|test).*)
read_url(github.com)
read_url(developer.mozilla.org)
4. 使ってみた感想:何が変わったか
一番変わったのは 「エージェントに任せられるタスクの粒度」 だ。
承認が必要な環境だと、無意識に「1コマンドで終わる仕事」を頼むようになる。人間がクリックし続けるコストを、脳が勝手に見積もっているからだ。
承認が消えると、頼み方が変わる。
このリポジトリのテストを全部通るまで直して
これを投げて、席を立てる。戻ってくると、実装計画(Implementation Plan)とタスクリスト、そして「何をどう直したか」のWalkthroughが成果物として残っている。
Antigravityはこの 「証拠を残す」設計 が良くできていて、
- Implementation Plan: 実装前の設計をMarkdownで提示(レビューしてから走らせられる)
- Task List: 完了ステップのライブチェックリスト
- Walkthrough: 変更内容の説明
- Browser Recordings: ブラウザテストのスクリーンショット/録画
承認を捨てた代わりに、事後監査で品質を担保するという思想だ。Codespacesとの相性が良いのは、まさにこの部分だと思う。
サブエージェント周りも、コンテナ内なら気楽に使える。invoke_subagent で親子エージェントを立て、branch モードで 専用のGit worktreeを切って作業させる といったこともできる。ローカルでworktreeを勝手に生やされるのは正直嫌だが、使い捨てコンテナなら別だ。
5. 脱GitHub Copilot:契約を見直す
ここからが「両方契約している人」向けの話。
Copilot側の変化
GitHub Copilotは2026年6月1日からAIクレジット制(使用量ベース課金)へ移行した。月額は据え置きだが、含まれるクレジットを超えた分は別課金になる。
| プラン | 月額 |
|---|---|
| Free | $0 |
| Pro | $10 |
| Pro+ | $39 |
| Max | $100 |
さらに、上位モデルはPro+以上でないと選べないという線引きも入った。「$10で全部盛り」ではなくなった、というのが実態だ。
Google AI Pro側
一方、Google AI Pro(日本では月額2,900円)には、Antigravityがプラン特典として含まれている。
公式ドキュメントの記述では、Google AI Proユーザーは「5時間ごとにリフレッシュされる潤沢なクォータ(週次上限に達するまで)」を得る。Ultraはさらに上で、サードパーティモデルへのアクセスも付く。無料枠でも「週次でリフレッシュされる意味のあるクォータ」がある。
そして重要なのは、AI ProはAIコーディング専用サブスクではないことだ。Geminiアプリ、NotebookLM、画像/動画生成、5TBストレージ、Gemini CLI、Jules——これらが同じ2,900円に入っている。
比較
| GitHub Copilot Pro | Antigravity(Google AI Pro同梱) | |
|---|---|---|
| 月額 | $10 + 超過従量 | 2,900円(AI Pro全体の料金) |
| 課金モデル | AIクレジット制 | クォータ制(5時間ごとリフレッシュ) |
| エディタ | VS Code / JetBrains / Xcode等 | VS Code / VS / JetBrains / Zed / 専用IDE / CLI |
| エージェント | Copilot cloud agent | サブエージェント階層 + CLI + SDK |
| 成果物レビュー | PR差分 | Plan / Walkthrough / 録画 |
| タブ補完 | 強い | 無制限(ただし体感はCopilotが上) |
| コーディング以外 | なし | Gemini / NotebookLM / 5TB等が同梱 |
判断基準
私の結論はこうだ。
Copilotを解約していい人
- Google AI Pro(またはUltra)をすでに契約している
- 使い方の中心が「エージェントに複数ステップの実装を任せる」こと
- Codespacesやdevcontainerで開発している
- Copilotをタブ補完としてしか使っていない
Copilotを残すべき人
- タブ補完の体感速度と精度が最優先。これは今でもCopilotが強い
- GitHub上でのPRレビュー自動化(Copilot code review)を運用に組み込んでいる
- 会社のポリシーでGitHub Enterprise配下のツールしか使えない
- Claude系/GPT系モデルを指名して使い分けたい(Antigravityでサードパーティモデルを使うにはUltraが必要)
正直に言えば、タブ補完だけはCopilotの完成度が高い。 ここを捨てられるかが分岐点だと思う。逆に言えば、補完のためだけに月$10払っているなら、それは見直すべき支出だ。
6. ハマりどころ & 注意点
① Codespaceは使い捨てでも、認証情報は使い捨てではない
これが最大の落とし穴だ。
Codespacesのコンテナには、GitHubの認証情報が最初から刺さっている。gh コマンドは認証済みだし、git push も通る。つまり Always Proceed にしたエージェントは、あなたのリポジトリにpushできる。
さらにCodespaces Secretsに登録した環境変数(APIキー等)も、コンテナ内から丸見えだ。
「サンドボックスだから安全」はファイルシステムの話であって、権限の話ではない。 Denyリストで git push --force や gh auth token を塞ぐ、作業は必ずブランチで行う、本番の認証情報はSecretsに入れない、といった対策は必要になる。
② core-hoursの消費
Codespacesの無料枠は個人アカウントで月120 core-hours + 15GBストレージ、GitHub Proで180 core-hours + 20GB。
注意すべきは core-hours ≠ 実時間 であること。2コアマシンなら1実時間 = 2 core-hours なので、120 core-hours = 実質60時間。4コアなら30時間に半減する。
エージェントを走らせている間もカウントされるので、「投げて放置」スタイルは消費が早い。
- アイドルタイムアウトは既定30分。短くする
- 停止中のCodespaceもストレージを消費する。保持期間(既定30日)を短くする
- 重いビルドが不要なら2コアで十分
③ 拡張がローカル側に入ってしまう
前述のとおり。devcontainer.json に書くのが最も確実。手動で入れた場合は、拡張機能ビューでインストール先セクションを必ず確認する。
④ ブラウザ系機能はコンテナだと制約がある
Antigravityの browser サブエージェントはChromeインスタンスを立ち上げてUIテストを行う。コンテナ内でこれをやるには追加のセットアップが要る。devcontainer featureでChromeを入れるか、この機能はローカル環境に譲るのが現実的だ。
⑤ MCP設定ファイルの置き場所
MCPサーバーの設定は、グローバルなら ~/.gemini/config/mcp_config.json、プロジェクトローカルなら .agents/mcp_config.json に置く。Codespacesではホームディレクトリが再作成のたびに消えるので、リポジトリ管理される .agents/ 側に置くのが正解だ。
なお、Antigravityのリモート系MCPサーバー設定は url ではなく serverUrl キーを使う。CursorやVS Codeの設定をコピペすると動かないので注意。
⑥ サインイン後のセッション
/logout でキーリングから認証プロファイルを消せる。共有Codespaceを使う場合は忘れずに。
7. 向いていないケース
正直に書いておく。
- オフラインで作業する時間が長い人。Codespacesは当然ながらネット必須
- 巨大なモノレポ。Codespaceの起動時間とストレージが厳しい。prebuildで緩和はできる
- ネイティブアプリ/GUI開発。コンテナ内で完結しない
- 無料枠だけで回したい人。120 core-hoursはエージェントを常時走らせるには足りない
- タブ補完中心の使い方。これはCopilotのほうが快適
まとめ
- Antigravityの公式VS Code拡張により、IDEを乗り換えずにエージェントを使えるようになった
- Codespacesと組み合わせると、エージェントの実行環境ごと使い捨てにできる。結果として「Always Proceed(全自動実行)」が現実的な選択肢になる
- これは単なる時短ではなく、エージェントに任せられるタスクの粒度そのものを変える
- Google AI Proを契約しているなら、Copilotの契約は見直す価値がある。ただしタブ補完の快適さは今でもCopilotが上
- ただし「サンドボックス」を過信しないこと。コンテナは使い捨てでも、そこに刺さった認証情報は使い捨てではない
エージェントに承認を求められ続ける生活から抜け出したい人は、一度試してみてほしい。