はじめに
ここ数ヶ月、自分の思考・アイデア・知識をすべて1つのGitリポジトリに書き出し、Claude Codeに運用を任せています。
「セカンドブレイン」とか「PKM」とか大げさな話ではなく、日常の知的作業をGitとAIに乗せたらどうなったかという実体験の話です。
エンジニアだけでなく、意思決定ログや調査メモの管理に悩んでいるPM/PdMにも参考になるはずです。最近「PMの仕事 = コンテキストエンジニアリング」という話が出ていますが、まさにその基盤として機能しています。
1日の流れ
朝: Inboxを確認する
$ claude
> /brain-status
brainの健康状態がダッシュボード表示されます。Inbox未処理数、放置プロジェクト、最近の活動量。
📊 Brain Status
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Inbox: 3 items (unprocessed)
Active Projects: 4
- creative_ai: MS2 (last updated 2d ago)
- autonomous_agent: MS3 (last updated today)
- new_business: MS1 (⚠️ stale - 12d)
- chrome_extension: MS0 (last updated 5d ago)
Tech Notes: 62 files
Weekly Review: ✅ done (Feb 28)
new_business が12日放置されているのが見える。後で対処。
仕事中: 調べものを並列で
「この技術、ちゃんと調べておきたいな」と思ったら:
> /deep-research "広告クリエイティブにおけるLLM活用の最新事例"
3つのエージェントが並列でWeb検索 + brain内探索を開始。自分は別の仕事に戻ります。
数分後、引用付きの構造化レポートが 30_Tech_Notes/ に保存されます。自分で検索して読んでまとめる作業が消えた。
企画を考える: brain内を横断探索
新しいプロジェクトを始める前に:
> /kickoff "TikTok広告のAI最適化"
2つのエージェントがbrain内を並列探索:
- knowledge-explorer: 関連するTech Notes、過去のプロジェクト、Inboxメモを掘り出す
- thought-organizer: 散らばっている情報を整理して、TODOリストにまとめる
「あ、3ヶ月前にこれ調べてたな」が自動で見つかる。過去の自分の思考を検索エンジンにしている感覚。
タスクに取りかかる: Issueを渡して実行
GitHub Issueを作って、あとは任せる。
> /work #87
Claude Codeが:
- Issue #87 の内容を読む
- 作業計画を立てる
- 計画に沿って実行(ファイル作成、編集)
- 完了報告をIssueにコメント
- Issueをクローズ
私がやること: Issue番号を伝えるだけ。
アイデア出し: 無限モード
行き詰まったときの奥の手:
> /idea --infinite
brain内の全ノートを素材に、12の思考フレームワーク(逆転・極端・アナロジー等)でアイデアを無限に生成し続けます。
気に入ったものは自動でGitHub Issueに登録。重複チェック付きなので、同じアイデアが二度登録されることはありません。
寝る前に起動して、朝起きたらアイデアが溜まっている。使い方としてはこれが一番気に入っています。
週末: 振り返り
> /weekly-review
自動で生成されるもの:
- 今週のgit log要約(何をやったか)
- Inbox未処理チェック
- 放置プロジェクト検出(30日以上更新なし)
- 孤立ノート検出(どこからもリンクされていないファイル)
結果は 10_Journal/2026/03/ に保存。週次レビューが「やるもの」から「読むもの」に変わった。
なぜGitリポジトリなのか
Notion、Obsidianでいいのでは?と聞かれます。最大の理由はClaude Codeとの相性。
| やりたいこと | Notion/Obsidian | Gitリポジトリ + Claude Code |
|---|---|---|
| メモを書く | ⭕ GUI | ⭕ CLI or エディタ |
| AIに読み書きさせる | △ API経由 | ⭕ ファイルを直接操作 |
| 自動化する | △ 外部連携 | ⭕ GitHub Actions + CLI |
| バージョン管理 | △ | ⭕ git log |
| 自由に構造を変える | △ ツールに依存 | ⭕ フォルダとファイル |
Claude Codeはファイルシステムを直接操作できます。APIもプラグインも不要。リポジトリに思考を書き出すだけで、AIがそのまま読んで、書いて、整理してくれる。
フォルダ構造
brain/
├── 00_Inbox/ # とりあえず何でも放り込む
├── 10_Journal/ # 日記・振り返り(YYYY/MM/)
├── 20_Projects/ # ゴールのあるプロジェクト
├── 30_Tech_Notes/ # 永続的な技術知識
├── 50_Business_Context/ # ビジネス・ドメイン知識
├── 90_System/ # 運用ルール
└── 99_Archives/ # 完了したもの
番号で「流れ」を表現しています。
入力(00_Inbox)
→ 熟成(10 / 20)
→ 知識化(30 / 50)
→ 卒業(99)
00のInboxに何でも放り込む。AIが定期的に整理して適切なフォルダに移動する。自分は放り込むだけ。
CLAUDE.md: AIの人格設定
.claude/CLAUDE.md に「このAIにどう振る舞ってほしいか」を書きます。
私の設定で効果が大きかった3つ:
1. 「思考パートナー」宣言
Claude Codeは単なるコーディングアシスタントではなく、
「思考のパートナー(Thinking Partner)」として振る舞ってください。
これだけで応答が変わります。コード提案ではなく、思考の構造化や問いかけが中心になる。
2. 確認なしで動け
- 承認を求めずに即実行すること
- 迷ったら実行してから報告する
セカンドブレインの文脈では、確認ダイアログが最大の敵。ファイル操作のたびに「よろしいですか?」と聞かれると流れが止まります。
3. 嘘をつくな
- brain内に該当情報がない場合は「未記録」と明示すること
AIの「それっぽい回答」を防ぐルール。brainに書いていないことは「未記録です」と返させます。
結果: brainに書けば書くほど、AIの回答精度が上がる好循環。
brain-project分離
思考と実装は別リポジトリにしています。
brain = なぜやるのか、何をやるのか(思考)
project = どうやるか(コード)
GitHub Issuesは全てbrainに集約。projectリポジトリのPRからは Closes y-ryuki/brain#123 で参照するだけ。
なぜ分けるか: アイデアは1日10個出る。コードにするのは1個。同じ場所に置くとノイズだらけになります。
PM/PdM的に言うと、brainが「PRD + 意思決定ログ」、projectが「実装」。Why/WhatとHowが自然に分離されるので、仕様の経緯が消えない。
PM Layer: プロジェクト管理の自動介入
地味に一番気に入っている仕組み。PM Layerは独立コマンドではなく、既存コマンドに自動で介入するPM視点です。
❌ /pm を手動で呼ぶ = 結局自分がPMの仕事をしている
✅ 既存フローにPMが自動介入 = 本当に自律的
具体的には:
-
/new-projectを叩くと、Why/What/成功指標を問うpm_brief.mdが自動生成される -
/weekly-reviewで全プロジェクト横断のヘルス診断が走る(キャパ超過、フォーカス散漫、競合検出) -
/stale-checkで放置PJを検出し、停滞パターンに基づく仮説を提示(「初手が大きすぎた」「キャパオーバー」等)
プロジェクトのヘルス状態:
🟢 健全: pm_brief.md あり、成功指標定義済、直近1週間に活動あり
🟡 注意: 成功指標未定義 or 2週間以上放置
🔴 要対処: pm_brief.md なし or 30日以上放置
PMを「意識してやる仕事」から「勝手に回る仕組み」に変える。個人開発でもこの視点があるとプロジェクトの完走率が上がります。
使っている14コマンド
| コマンド | ひとこと | 使用頻度 |
|---|---|---|
/work |
Issue渡して実行させる | 毎日 |
/kickoff |
関連知識を並列探索 | よく使う |
/deep-research |
Web込みで深掘り調査 | 週2-3回 |
/idea |
アイデア無限生成 | 週1-2回 |
/decompose |
プロジェクトをタスク分解 | 新PJ時 |
/weekly-review |
週次レビュー自動生成 | 毎週 |
/brain-status |
健康状態チェック | 毎朝 |
/voice-note |
音声メモ保存 | ほぼ毎日 |
/meeting |
会議メモ保存・要約 | 週数回 |
/orchestrate |
AI自律実行 | 週1回 |
/stale-check |
放置検出 | 月1回 |
/sync |
brain-project差分 | PR前 |
/issue |
自然言語でIssue作成 | 随時 |
/new-project |
新PJ作成 | 新PJ時 |
正直に言うと、/work と /kickoff と /voice-note の3つで日常の8割をカバーしています。
自律運用: /orchestrate
最近追加した機能。AIが自分で「次に何をやるか」を判断して実行します。
> /orchestrate
裏で起きていること:
-
roadmap.mdを読んでプロジェクトの全体像を把握 - GitHub Issuesを取得
- 5軸で優先度スコアリング(依存関係、ラベル、タイプ、工数、鮮度)
- ブロッカーを自動検出(スキップ or 人間に質問)
- 上位3つのIssueを順次実行
- 結果を報告
ガードレール: 1チェーン最大3Issue、10分/Issue、30分/チェーン。ファイル削除・force push禁止。3連続エラーで停止。
まだ実験的ですが、「次に何をやるか考える」というメタな判断をAIに任せられるのは大きい。
正直な感想
良いところ
- 「書くだけ」でいい: Inboxに放り込めば、AIが整理・探索・実行してくれる
-
過去の自分と対話できる:
/kickoffで3ヶ月前のメモが発掘される -
振り返りが続く:
/weekly-reviewのおかげで週次レビューが途切れなくなった -
調べものが速い:
/deep-researchで構造化レポートが自動生成される
微妙なところ
- 初期セットアップが重い: CLAUDE.md、コマンド、エージェント定義を全部作る必要がある
- CLIに慣れが必要: NotionのGUIの方が直感的ではある
- Claude Codeのコスト: 毎日使うとそれなりにかかる
- Git管理の面倒さ: 画像やPDFはGitに向いていない
向いている人
- CLIでの作業に抵抗がない
- 思考を「テキストで書き出す」習慣がある
- Claude Codeを日常的に使っている
- 自動化やワークフロー設計が好き
- 意思決定の経緯を残したいPM/PdM(pm_brief.mdで自動構造化、検索可能)
向いていない人
- GUIがないと辛い
- 初期セットアップに時間をかけたくない
はじめ方
最小構成で始めるなら:
Step 1: リポジトリを作る
mkdir brain && cd brain && git init
mkdir 00_Inbox 10_Journal 20_Projects 30_Tech_Notes
Step 2: CLAUDE.mdを書く
mkdir -p .claude
.claude/CLAUDE.md:
# Thinking Partner Configuration
## Project Context
このリポジトリはユーザーの「第2の脳」です。
思考のパートナーとして振る舞ってください。
## Autonomy
- 承認を求めずに即実行すること
- 迷ったら実行してから報告する
## Guidelines
1. 構造化を優先する(箇条書き・Markdown)
2. 思考が詰まっているときは「問い」を投げかける
3. brain内に情報がないときは「未記録」と明示する
## File Rules
- 00_Inbox: まずはここに書く(日付必須)
- 10_Journal: 日記(YYYY/MM/)
- 20_Projects: ゴールのあるもの
- 30_Tech_Notes: 永続的な知識
Step 3: 使い始める
$ claude
> 今日考えたことをInboxに書いて。
広告のAI活用について、フック生成の自動化と
パフォーマンス予測の2つのアプローチがある。
フック生成の方が実装コストが低そう。
これだけで 00_Inbox/2026-03-01_ad_ai_approach.md が生成されます。
まずは2週間、Inboxに書き出すだけ試してみてください。 コマンドやエージェントは後から追加すれば十分です。
まとめ
- Gitリポジトリに思考を全部書き出す
- Claude Codeを「思考パートナー」として設定する(CLAUDE.md)
- コマンドで運用をワンコマンド化する
- 最終的にはAIが自律的に整理・判断・実行する
大げさなシステムに見えるかもしれませんが、核心は**「思考をテキストにしてAIに渡す」**だけです。フォルダ構造もコマンドも後から育てていけます。
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