朝日新聞社・メディア研究開発センターの山本と申します。
今回、アドベントカレンダー6日目の記事として、1年間育休を取得した話を紹介します。どんな流れで会社に報告して育休取得したか、引き継ぎで苦労したポイント、周りからの反応などお伝えできればと思います。
技術的な話はありませんが、エンジニアのキャリアとして育休取得をどうするか考える人も多いと思うので、参考になれば幸いです。
まだまだ珍しい男性育休の1年間取得
令和になって育休を取る男性が増加しています。社会的にも男性の子育て参加が求められる中で、男性が育休を取ることに対する抵抗感は少なくなってきていると感じます。
ただそうはいっても、男性が育休を取るパターンとしては出産後の1〜3ヶ月間が多いです。育児休業上限である1年間取るケースはまだまだ珍しいと思っています。
男性育休に関する仕事を機に育休取得を決意
私が子どもができたら男性育休を取ろうと思ったのは、実は仕事がきっかけでした。2022年に男性育休を啓発する企画に携わり、男性育休を啓発するウェブサイトの開発を行っていました。サイトにおけるイベントやセミナー企画などにも関わる中で、まだまだ世の中的に男性育休が取得されていない現状を目にしました。
せっかく男性育休を促進する取り組みを仕事でしていたのだから、自分に子どもができた時は必ず育休を取得して、子育てに積極参加しようとひそかに思いを秘めました。
妊娠判明後、誰にもいえないつらい時期
それから翌年2023年2月に妻の妊娠が判明しました。ただ、妊娠初期は初期流産や心拍が確認できないなどの色々なリスクがあります。そうした点から安定期に入るまでは周りにも相談できない状況がありました。
ちょうどそのタイミングで新しい仕事の引き継ぎがありました。さらに組織再編などもあり仕事環境も変わる中で、業務的な負荷も高まっていました。
妻のサポート+妻にお願いしていた家事も担当することになり、慣れない新しい仕事も積み重なって苦しい状態が続いていました。
妻の辛さを見て1年育休を決意
しかし、私よりもずっと辛い思いをしているのは妻でした。つわりで気持ち悪さに襲われながら、移動するのも一苦労です。特に家が4階でエレベーターがなかったので、階段の上り下りのたびに疲弊していました。
妊娠初期に多量の出血を経験し、無事に子どもが育つか、精神的にも不安を抱える妻を見て、1年育休を取ることを決意しました。妊娠は代わってあげられないからこそ、出産後の子育ては自分がやろうと。
上司への妊娠と育休取得を報告
安定期に入って会社に報告できるタイミングで、すぐに妊娠の報告と育休を取る意向であることを伝えました。育休を取得する5ヶ月前(2023年6月)です。その際には数ヶ月ではなく長期で取得したい旨も一緒に伝えました。どれぐらい育休を取るかによって後任の体制が変わるためです。
社内では定期的に「ハラスメントセミナー」が管理職向けに行われるなど、セクハラ・パワハラに加えてパタハラ(パタニティー・ハラスメント)への注意事項も周知されており、育休を取得しやすい環境が整えられています。
上司「育休、いいんじゃない!何ヶ月取る?三ヶ月ぐらい?」
私「1年取ろうと思ってます。」
上司「え?・・・ああ・・・おおお・・・いいんじゃない・・・」
少しずつ男性育休を取ることへの理解が進んでいると感じました。
育休に向けて引き継ぎ準備に着手
育休取得予定の2023年10月に向けて、担当している業務を引き継ぎしなければなりません。ただ、所属部署の人繰りが難航し、なかなか後任のメンバーがアサインされません。それでも育休を取らねばならないので、常に引き継ぎを意識したドキュメント化に取り組みました。
過去に複数回実施した作業はマニュアル化しておき、新しい作業はスクショ+ログをとりながら、すぐにマニュアルにできるようにしました。前任者から引き継いだマニュアルで当初自分の理解が追いつかなかった箇所に補足説明を加えて、次の担当者に説明できるよう、後任が来る前に準備を日々進めていきました。
そうこうしているうちに後任の人繰りがついたという話を上司からもらったものの、アサイン時期は育休の3週間前というスケジュールに…
ただキャリアも長くスキルの高い先輩だったので、なんとか突貫作業で引き継ぎできました。
育休取得2ヶ月前に異動・・・
バタバタと引き継ぎに取り組んでいたタイミングと同時にもう1つ発生したのが、異動です。
育休を取ることを伝えて1ヶ月もしないタイミングで異動の内示。今の業務も兼務したままというものの、まさかの育休取得予定の2ヶ月前に異動が決まりました。ただ、移動先の部署の上司に配慮いただき、2ヶ月間で終わるボリュームの新しくできた仕事を割り振ってもらいました。そのため、異動先の業務は引き継ぎの必要なく、与えられたタスクを完了して育休に入りました。
ただ、異動前の業務(兼務)については育休直前に大急ぎで引き継ぎを進めていたので、出産に向けた準備とあわせて本当に慌ただしく日々が進んでいきました。
男性育休を取ることへの周りの反応
男性育休を取ることについてはチームや上司から特にネガティブな反応を受けることはありませんでした。もちろん、担当している業務をどう引き継ぐかという点に苦慮されていましたが、育休期間を短くするべきだとか、育休を取ることへのネガティブな声はありませんでした。
さらに、育休予定日の1ヶ月前ぐらいから以前一緒に仕事をした人などにも育休を取ることを伝えはじめましたが、みなさん「おめでとう」と声がけしてくれました。「俺の時は育休を取るなんて無理だったけど、絶対取った方がいいよ。」という声をいただき、男性側が育休を取ることに対する認識が大きく変わっていると感じました。
出産後は怒涛の育児の日々
実際に育休が始まってからは怒涛の日々でした。3時間おきのミルクはスキマ時間があると思いきや、ミルクを飲むのに20分弱かかります。飲んでも吐いてしまった場合は服を着せ替えてシーツも取り替え、哺乳瓶も洗って消毒・乾燥させると気づいたら次のミルクの時間があっという間に来てしまいます。
10時、13時、16時、19時、22時、翌1時、翌4時までミルクをあげて、朝7時のミルクは妻にお願いするスケジュールでした。
夜は仮眠を取りたい気持ちに駆られるものの、寝てしまうと起きられないので耐え抜く毎日でした。新生児突然死症候群という恐ろしい病気の話を聞き、呼吸が止まってないかたびたび寝息をチェックしている心配ぶりでした。
少しずつ授乳間隔が長くなり、慣れてきたと思ったら、今後は離乳食がスタート。子どもにあげるための野菜を選別し、朝から鍋で柔らかくなるまで煮込む毎日が始まりました。
子の成長が間近で見られる幸せ
仕事と比べてもなかなかハードな育児ですが、それでも1年間育休をとったことでよかったことはたくさんありますが、その中でも大きく2つありました。
まず1つ目は子どもファーストで行動ができる点です。私はマルチタスクが苦手なので、仕事と子育ての両立は困難だったと思います。
2つ目に子の成長を間近で見られる点です。乳児は日々あっという間に成長します。寝返りをうったり、座れるようになったり、つかまり立ちしたり。
毎日子育てで子どもと過ごしていたからこそすぐに気付け、成長を感じられました。また、ほぼ毎日家にいて一緒に過ごしているので、パパ見知りにもなりませんでした。
育休取得で得られたもの
育児では子どものそばにいる必要があり、パソコンなどで作業は難しかったです。かつての首相が 「育休中にリスキリングを」 と言っていましたが、子育てしながらリスキリングに取り組むのは個人的に大変だと感じました。
育児の隙間時間にできたのはSNSぐらいでした。自分の趣味用アカウントを楽しむ中で、いかにSNSで拡散されるか投稿フォーマットやタイミングを工夫してみました。元々Xが15,000、Instagramが8,000フォロワー規模のアカウントだったのですが、気づけば育休中の1年で合計7,000人ほど増えてました。復帰後の業務として広報も担当することになったので、育休中に得た知見やノウハウは活用していきたいと考えています。
育休取得で得られた最も大きかったものは妻からの信頼でした。「産後の恨みは一生」、「産後クライシス」という言葉もあり、子どもの誕生で家庭関係が悪化するケースもあります。出産後の大きなダメージを負った妻の代わりに育児を主体的に行ったことで、妻からも感謝してもらえました。
ただ、育休が終わるタイミングで妻から、「育休終了はむしろ始まりにすぎない。子育てに終わりはない。」 という金言をもらい、育休から復帰後も子育てには積極的に取り組む所存です!笑
終わりに
子どもができた時、育休を取るかどうか悩まれる人は多いと思います。ただ、子どもの子育てに専念できる機会は育休以外にほとんどありません。
子どもの成長をしっかり見たいという方はぜひ「育休を取る」という強い決意で、引き継ぎなど取り組んでもらえればと思います。幸いなことに時代が進んだことで以前よりも確実にとりやすくなっています。過去の事例にとらわれず、自分の判断で取りたい期間の育休を取得してもらえればと思います。
なお、育休中は働いている時よりも収入が減少するので、子どもの子育て費用がかかることも考慮して、事前に貯蓄しておくことがおすすめです。