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スマートじゃないDIYスマートホーム

Last updated at Posted at 2017-12-07

FUJITSU Advent Calendar 2017 8日目の記事です。
昨年はSI現場でいろいろ作った話を書きました。今回は仕事とは無関係。

こんなものが出来上がります

(動画は音が鳴ります)

人間はぼけーっと起きただけで何もしていません。

とある未来の家のお話…

朝、起床時間。

照明が徐々に明るくなり、カーテンがゆっくりと開く。
すべて機械が自動的にやってくれる。そろそろテレビの電源が入るだろう。タイミングはバッチリ。

柔らかな日射しに、自然と目が覚める。爽やかな朝だ。

…という夢を見たんだ。

10年以上前、IT系の雑誌でこんな話を読んだ記憶があります。
しかし残念なことに、一人暮らしの私の部屋にその未来は訪れていません。

でも、ちょっとでもそういう未来に近づいてみたい。
というわけで、Raspberry Piを使って手作り感あふれる「DIY未来」を作ってみました。

材料

品名 価格 備考 (私が買ったもの)
Raspberry Pi 3 Model B \5,000 ネットワーク接続できれば別モデルでもOK
ブレッドボード \200 BB-801 (秋月 P-05294)
ジャンパーワイヤ (オス-オス) \180 秋月 C-05371
ジャンパーワイヤ (オス-メス) \220 秋月 C-08934
人感センサ(焦電型赤外線センサ) \500 SB412A (秋月 M-09002)
ACアダプタ 5V (0.5A~) \650 GF12-US0520 (秋月 M-01801)
DCジャック DIP化モジュール \313 マルツエレック DC-POWER-JACK基板(MDK024)
電解コンデンサ 100μF \10 ルビコンPX 100μF/16V/105℃ (秋月 P-10271)
サーボモータ \400 SG-90 (秋月 M-08761)
USB オーディオ変換アダプタ(DAC) \1,220 BUFFALO BSHSAU01BK
スピーカ - (PC用スピーカを流用)
オーディオケーブル - (余ってたものを流用)

各材料について

ブレッドボード、ジャンパーワイヤ
Raspberry Piと各電子部品との接続に用います。
人感センサ
人(熱源)が動くと反応します。
サーボモータ
普通のモータと違い、"指示した位置(角度)まで動いてくれる"モータです。照明をつけるのに使います。
ACアダプタ、DCジャック、電解コンデンサ
サーボモータへの電源供給用です(コンデンサは動作安定化のため)。照明をつけるのに使います。なぜDCジャックだけマルツが登場するのかというと、ハンダ付け済みだからです(手抜き)。
※RasPiの+5Vで事足りるかもしれませんが未検証です。
USB オーディオ変換アダプタ(DAC)、スピーカ、オーディオケーブル
音楽や音声を流すのに使います。
USB DACを用意するのは、サーボモータでPWM機能を使うとRasPiのアナログ音声出力が使えなくなるためです。

1. 起きたらクラシックを流し、帰ったら「おかえり」と喋ってもらう

最初に簡単なところから。人感センサに反応して音声再生をさせます。

人感センサとスピーカを繋ぐ

SB412A

まずは人感センサを繋ぎます。SB412Aのピンそばに表示があるので、確認しつつ接続します。

SB412Aのピン表示 Raspberry Piのピン 補足
"+" +5V +5Vは2箇所あるがどちらでもOK。+3.3Vでも動作
"VO" (Vout) GPIO4 任意のGPIOでもOK
"-" GND GNDは複数箇所あるがどこでもOK

ブレッドボード図

そして、Raspberry PiにUSB オーディオ変換アダプタ(DAC)を接続し、さらにスピーカの入力端子とをオーディオケーブルで繋ぎます。ちなみにDACへ出力するためにはちょっと工夫がいります(参考:Rapberry Pi に USB DAC をつないでオーディオサーバーにする (接続編) - Qiita)。

スクリプトを書く

人感センサの出力(Vout)は通常LOWで、熱源が動くとしばらくHIGHになります。
これを利用して、長時間センサがLOWのままだと就寝・外出とみなし、そこからHIGHになったタイミングで起床・帰宅と判断します。

スクリプトはPythonで。
GPIOの入力はRPi.GPIOモジュールを、音声再生にはomxplayerをsubprocessモジュールで実行しています。omxplayerではなくmpg321等でもかまいません。

#!/usr/bin/python3
# -*- coding: utf-8 -*-

# -- 設定
pin = 4                           # センサのGPIOピン
welcome_sound_seconds = 180 * 60  # 外出・就寝したとみなす無反応時間(秒)
watch_interval_seconds = 5        # 監視間隔(秒)

# -- スクリプト
import RPi.GPIO as GPIO
from time import sleep
import subprocess
import datetime

GPIO.setmode(GPIO.BCM)
GPIO.setup(pin, GPIO.IN)

off_seconds = 0
away_from_room = False

try:
	while True:
		# 経過時間を測定
		value = GPIO.input(pin)
		if value == 0:
			off_seconds += watch_interval_seconds
		else:
			off_seconds = 0
		
		if away_from_room == False and off_seconds >= welcome_sound_seconds:
			# 外出モードオン
			away_from_room = True

			print(datetime.datetime.now())
			print("value:", value, ", off_seconds:", off_seconds)
			print("away:", away_from_room)

		if away_from_room == True and off_seconds == 0:
			# 外出モードオフ
			away_from_room = False

			hour = datetime.datetime.now().hour
			if hour > 4 and hour < 12:
				subprocess.Popen(['omxplayer', '-o', 'alsa', '/home/pi/Music/peergynt_morning.mp3'])
			else:
				subprocess.Popen(['omxplayer', '-o', 'alsa', '/home/pi/Music/welcome.mp3'])

			print(datetime.datetime.now())
			print("value:", value, ", off_seconds:", off_seconds)
			print("away:", away_from_room)

		sleep(watch_interval_seconds)

except KeyboardInterrupt:
	pass
finally:
	GPIO.cleanup()

音声ファイルはscp(WinSCP)などでRaspberry Piに転送しておきます。
また、omxplayerが入っていなければインストールしておきます。

$ sudo apt-get install omxplayer

人感センサの設置場所を決める

下記を満たすような、絶妙な場所を探して配置します。

  • 就寝時には反応しない
  • 起床時、帰宅時には反応する
  • 在宅中にも「外出・就寝とみなす無反応時間(3時間)」以内にちょくちょく反応する

データシートでは、検出角度は100度、最大検出距離は3~5mとなっています。この辺も加味します。

デモンストレーション

無反応時間を10秒に設定して確かめてみます。よい感じです。

※動画では権利的に微妙なのでゆっくりに喋ってもらいましたが、実際はトールとカンナちゃん(小林さんちのメイドラゴン #11)が「おかえり(なさい)」と言ってくれます。最高です。

2. テレビじゃなくてPCの電源を入れてもらう

PCがないと落ち着かない人間なので、人感センサに反応したらPCの電源を入れてもらいます。

ここではWake on LAN機能を使います。
ネットワーク越しに特殊なパケットを送りつけることで電源が入ります。

PCのWake on LAN(WoL)を有効にし、MACアドレスを確認する

BIOS・OS・NIC(ドライバ)によって設定方法が異なるので、手順は端折ります。
MACアドレスは ipconfig /all (Windows) とかで。

※Windows 10+Realtek(RTL8111F) NICの組み合わせだと、設定を有効にしても機能せず、公式サイトから最新版ドライバをインストールしたらやっと機能した、ということがありました。

スクリプトを書く

まずは wakeonlan をインストールしておきます。

$ sudo apt-get install wakeonlan

さっきのスクリプトの「外出モードオフ」のところに、wakeonlanコマンドを実行するようにコードを追加します。

		if away_from_room == True and off_seconds == 0:
			# 外出モードオフ
			away_from_room = False

			hour = datetime.datetime.now().hour
			if hour > 4 and hour < 12:
				subprocess.Popen(['omxplayer', '-o', 'alsa', '/home/pi/Music/peergynt_morning.mp3'])
			else:
				subprocess.Popen(['omxplayer', '-o', 'alsa', '/home/pi/Music/welcome.mp3'])

			print(datetime.datetime.now())
			print("value:", value, ", off_seconds:", off_seconds)
			print("away:", away_from_room)
			
			# PCの電源を入れる
			subprocess.Popen(['wakeonlan', '00:00:5E:00:53:01'])

3. 照明をつけてもらう

最後に、照明をつけてもらうようにします。

といっても、電気工事とかは怖くてできません。
そこで、サーボモータに照明のスイッチを押してもらいます。

サーボモータを繋ぐ

サーボモータ、ACアダプタ、DCジャック、コンデンサを繋ぎます。
※電解コンデンサは極性があるので+-逆に繋がないよう注意します。

SG-90のワイヤ色 接続先 補足
橙 (PWM) RasPi GPIO18 GPIO18限定。PWM機能を使用
赤 (+) DCジャック +
茶 (-) DCジャック - と RasPi GND RasPi GNDは複数箇所あるがどこでもOK

qiita_2_ブレッドボード_.png

サーボモータの動かし方

サーボモータを動かすには"PWM"を使います。
一定周期で信号のON/OFFを繰り返すのですが、そのON/OFFの比率(デューティ比)によって、サーボモータの位置を指示できます。

サーボモータの設置場所とスクリプトを試行錯誤する

「スイッチを押す」という動きを実現するには、試行錯誤するしかありません。
Raspberry Piでサーボモータ(SG90)を制御する|Buffer Overruns を参考にしつつ、サーボモータの設置場所と指示角度・指示タイミングを決めます。

20171202_PC020950.jpg

※サーボモータには、付属する白い部品(ホーン[Horn]:角)をつけておきます。

余っているダンボールとセロハンテープで固定。急に手作り感が出てきました。
そしてPythonスクリプトを書いては調整を繰り返し、安定してスイッチが押せるようになりました。

import RPi.GPIO as GPIO
import time

GPIO.setmode(GPIO.BCM)

gp_out = 18
GPIO.setup(gp_out, GPIO.OUT)
servo = GPIO.PWM(gp_out, 50) 

servo.start(0.0)

time.sleep(0.2)

servo.ChangeDutyCycle(9)
time.sleep(0.2)

servo.ChangeDutyCycle(11.5)
time.sleep(0.2)

servo.ChangeDutyCycle(9)
time.sleep(0.2)

servo.stop()

サーボモータのようす

サーボモータ動作

がんばってスイッチを押してくれています。

スクリプトを書く

GPIO18をPWM出力として初期化し、サーボモータを動かす処理を組み込みました。

#!/usr/bin/python3
# -*- coding: utf-8 -*-

# -- 設定
pin = 4                           # センサのGPIOピン
pwm_pin = 18                      # サーボモータのPWM制御ピン
welcome_sound_seconds = 180 * 60  # 外出・就寝したとみなす無反応時間(秒)
watch_interval_seconds = 5        # 監視間隔(秒)

# -- スクリプト
import RPi.GPIO as GPIO
from time import sleep
import subprocess
import datetime

GPIO.setmode(GPIO.BCM)
GPIO.setup(pin, GPIO.IN)
GPIO.setup(pwn_pin, GPIO.OUT)

servo = GPIO.PWM(pwn_pin, 50) 

off_seconds = 0
away_from_room = False

try:
	while True:
		# 経過時間を測定
		value = GPIO.input(pin)
		if value == 0:
			off_seconds += watch_interval_seconds
		else:
			off_seconds = 0
		
		if away_from_room == False and off_seconds >= welcome_sound_seconds:
			# 外出モードオン
			away_from_room = True

			print(datetime.datetime.now())
			print("value:", value, ", off_seconds:", off_seconds)
			print("away:", away_from_room)

		if away_from_room == True and off_seconds == 0:
			# 外出モードオフ
			away_from_room = False

			hour = datetime.datetime.now().hour
			if hour > 4 and hour < 12:
				subprocess.Popen(['omxplayer', '-o', 'alsa', '/home/pi/Music/peergynt_morning.mp3'])
			else:
				subprocess.Popen(['omxplayer', '-o', 'alsa', '/home/pi/Music/welcome.mp3'])

			print(datetime.datetime.now())
			print("value:", value, ", off_seconds:", off_seconds)
			print("away:", away_from_room)
			
			# PCの電源を入れる
			subprocess.Popen(['wakeonlan', '00:00:5E:00:53:01'])
			
			# サーボモータを動かす
			servo.start(0.0)
			sleep(0.2)
			servo.ChangeDutyCycle(9)
			sleep(0.2)
			servo.ChangeDutyCycle(11.5)
			sleep(0.2)
			servo.ChangeDutyCycle(9)
			sleep(0.2)
			servo.stop()


		sleep(watch_interval_seconds)

except KeyboardInterrupt:
	pass
finally:
	GPIO.cleanup()

完成: 未来がやってきた!

出来上がりました。動画は冒頭に載せたので省略。
既に1ヶ月ほど運用していますが、安定して動いています。照明スイッチの押し損ねもありません。

見た目は不格好でスマートさのかけらもありませんが、DIYで未来がやってきました!

おわりに

意外と便利、何より楽しい

「勢いで買ったけどどうしよ…」と思っていましたが、割と便利なものが出来ました。
既製品では出来ないヘンテコな動きも自由にできるのが良いです。

また、ソフトウェアだけでは出来ない「物理的なフィードバック」は非常に楽しいです。

代償: お金と時間

あんまり楽しいので、2ヶ月くらい毎週秋月に通っていました。
ここに載せていない電子部品も色々買っていて、合算すると結構な額に…

もっと未来へ

まだまだ何かできそうです。
最近スマートスピーカが流行りだしてきたので、ラズパイさんに音声認識で電気を消してもらいました。

完璧…! と思ったのですが、実際に運用すると3回に1回しか反応しませんでした。悲しくなったので使っていません。

うーん、次は何をしようかな。

参考


これは個人の見解であり、所属する組織の公式な見解ではありません。

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