🎯 はじめに
X線天文のデータ解析に欠かせない HEASoft (High Energy Astrophysics Software)。ですが、Apple Silicon (M1〜M4) の Mac では、HEASoft の公式バイナリ(mac_intel版)は直接動かないことがあります。
そこで今回は、Apple M4 + macOS 15.5 環境で heasoft-6.35.1mac_intel.tar
を動かすまでの手順を丁寧に解説します。
💻 前提知識
- Apple Silicon (M1〜M4):新しいMacに使われているCPU。従来のIntel Mac (x86_64) 向けソフトとはアーキテクチャが異なる。
- Rosetta 2:Intel Mac用のソフトをApple Silicon上で動かすためのエミュレーション機構。
- XQuartz:X11(グラフィカルな描画ライブラリ)をMacで使うための環境。
- ソースコードから入れる場合は、酒井くんの下記の記事を参考にしてください。
-
HEASoft というX線衛星データの解析ソフト(
xspec
,fv
,ftools
などが含まれる)知らない人は下記の記事など一読ください。
- Linux系に install する場合は下記を参考にしてください。CALDBの設定なども書いてますので。
1️⃣ ターミナルを Rosetta モードで開く
HEASoft の mac_intel バイナリは x86_64
用なので、ターミナルも Rosetta モードで開く必要があります。
✅ 手順:
- Finder で
Terminal.app
を右クリック → 「情報を見る」。 - 「Rosettaを使用して開く」にチェックを入れる。
- ターミナルを再起動。
✅ 確認:
ターミナルを再起動して、arch
と打つ。
arch
→ i386
または x86_64
と出れば OK。
2️⃣ バイナリの取得と展開
HEASoft の公式ページから heasoft-6.35.1mac_intel.tar
をダウンロードし、展開します。
- 2025.6.6 時点では、version 6.35。ただし、server の問題?なのか、ダウンロードに数時間かかった。かつ、無線では途中で終わるので、有線LAN(速度2倍くらいかなぁ)でやった。
ダウンロードできたら、mkdir ~/work/software
など、後でわかるようなディレクトリを掘って、そこで展開する。
tar -zxvf heasoft-6.35.1mac_intel.tar
cd heasoft-6.35.1
3️⃣ configure の実行
環境変数を設定してから、configure を行います。gfortran
は brew install gcc@14
などで入れておきましょう。
詳細は、ご本家のmanualも参照してください。
pyhon
を自分のローカルに anaconda で入れてる場合は、$HOME/opt/miniconda3/bin/python3
に入ってるはずです。下記、python については自分の環境に合わせてください。他は、大体同じ場所にあると思いますが、自分で ls
して全部のファイルがあるかを確認してください。
export CC=/usr/bin/clang
export CXX=/usr/bin/clang++
export PERL=/usr/bin/perl
export FC=/opt/homebrew/bin/gfortran-14
export PYTHON=$HOME/opt/miniconda3/bin/python3
./configure > config.txt 2>&1
4️⃣ HEADASの初期設定と xspec 起動チェック
HEADAS の初期化
headas-init.sh がどこにあるかをちゃんと探してから、
export HEADAS=$HOME/work/software/heasoft-6.35.1/x86_64-apple-darwin23.6.0
source $HEADAS/headas-init.sh
を、.zshrc に書き込むなどして初期化する。
heasoft 関連は、ciao と干渉することがあるので、.zshrc
で headas-init.sh の source まではやらずに、使う時だけ、source する方がよいこともあります。
X11 のエラーが出る場合
dyld[11291]: Library not loaded: /opt/X11/lib/libX11.6.dylib
といったエラーが出る場合、X11ライブラリ(XQuartz)がインストールされていない可能性があります。
5️⃣ XQuartz のインストールと確認
✅ インストール:
brew install --cask xquartz
インストール後は 一度ログアウト or 再起動してください。
✅ ライブラリの確認:
file /opt/X11/lib/libX11.6.dylib
出力例:
/opt/X11/lib/libX11.6.dylib: Mach-O universal binary with 3 architectures: [i386] [x86_64] [arm64]
このように x86_64
を含んでいれば、Rosetta モードの HEASoft から利用可能です。
6️⃣ GUI アプリ(fvやcpdなど)での注意点:プライバシーとセキュリティ
HEASoft には GUI ベースのアプリ(fv
, cpd
, ximage
など)がありますが、これらを起動すると macOS のセキュリティ機能によりブロックされることがあります。
✅ 対処法:
- GUIアプリを起動しようとする。
- 「“○○” は開発元を確認できないため開けません」というダイアログが出る。
- 「システム設定」→「プライバシーとセキュリティ」→ 下の方にある「このまま開く」ボタンを押す。
全部で数個程度なので、必要に応じて許可すれば OK です。
🔚 おわりに
Apple Silicon ではアーキテクチャの違いから一筋縄ではいかない HEASoft の導入ですが、Rosetta + XQuartz を正しく使えば mac_intel
バイナリも十分動かせます。
将来的には Apple Silicon ネイティブビルドの安定化が期待されますが、今のところはこの方法がもっとも簡便です。
これで、HEASOFTのinstallができた人でも、CALDBも設定しないと動かないソフトウェアも多いので、CALDBについては、
を参考にして設定してください。