自己紹介
はじめまして。株式会社シンシアの徐 聖博です。
株式会社シンシアでは、Webシステム・モバイルアプリの受託開発、IT人材紹介、そして現在は新規事業として「Dandori AI」というサービスの開発を行っています。
Dandori AIは、イベント業界向けに見積作成や案件整理を支援するAIサービスです。
弊社では、新規事業開発を進める中で、エンジニアだけでなく、BizサイドのメンバーもAIを活用しながらプロダクト開発に関わっています。
私はエンジニア出身なので、最近はBizサイドのメンバー向けに、Claude CodeやCursorなどのAIコーディングエージェントを使った研修も行っています。
今回の記事では、弊社で実際に取り組んでいる「Bizサイドのプロダクト開発におけるAI活用」について書きます。
「ちょっとした修正」を毎回エンジニアに依頼していないか
「システムのここを少し直したい」
そう思ったとき、毎回エンジニアにSlackで依頼していないでしょうか。
もちろん、すべての開発を非エンジニアが自分でやるべきだとは考えていません。
ただ、以下のような小さな修正であれば、AIコーディングエージェントを使うことで、非エンジニアでもかなりの範囲を自分で進められるようになってきています。
- UIの文言修正
- ボタンの色変更
- リンク先の変更
- 画像の差し替え
- 簡単な表示調整
- エラーメッセージの改善
- LPや管理画面の軽微な修正
これまでは「エンジニアに依頼するしかない」と思われていた領域の一部が、AIによってBizサイドにも開かれ始めています。
この記事では、非エンジニアがAIを使って小さなシステム修正を行うための実践手順をまとめます。
これまでのシステム修正は、なぜ時間がかかっていたのか
従来、小さな修正でも以下のような流れになりがちでした。
- Bizサイドがエンジニアに修正依頼を出す
- エンジニアが内容を確認する
- 認識違いがあれば追加で質問する
- エンジニアが実装する
- Bizサイドが確認する
- 修正があれば再依頼する
このやり取り自体は必要です。
ただ、ボタンの文言を少し変えるだけ、リンク先を差し替えるだけ、といった修正でもこの往復が発生すると、数時間から数日かかることがあります。
結果として、Bizサイドは「小さい修正だから後回しにしよう」となり、エンジニアは「細かい依頼が多くて本質的な開発に集中できない」となります。
これは事業スピードの観点でかなりもったいないです。
AIコーディングエージェントを使うと何が変わるのか
Claude CodeやCursorのようなAIコーディングエージェントを使うと、Bizサイド自身が修正の一次対応をできるようになります。
AIに対して、
- どの画面か
- どの箇所か
- どう変えたいか
- 何は変えてはいけないか
を伝えれば、AIがコードを探し、修正案を出し、場合によってはそのまま変更まで行ってくれます。
たとえば、以下のような依頼です。
管理画面のユーザー一覧ページで、
「詳細を見る」というボタンの文言を
「プロフィールを確認する」に変更してください。
既存の処理は変えず、文言だけ変更してください。
変更したファイルも教えてください。
このように依頼すると、AIが該当するコードを探し、修正してくれます。
もちろん、最終確認やレビューは必要です。
ただ、「どこを直せばよいかわからない」という最初の壁がかなり低くなりました。
非エンジニアが使いやすいAIコーディングツール
代表的な選択肢は以下です。
| ツール | 特徴 | 非エンジニア向け |
|---|---|---|
| Cursor | VS CodeベースのAIエディタ。画面上でコードを見ながらAIに依頼できる | 最初に使いやすい |
| Claude Code | ターミナル上で動くAIコーディングエージェント。複数ファイルの修正に強い | 少し慣れが必要 |
| GitHub Copilot | エディタ内でコード補完やチャットができる | 開発者向け寄り |
非エンジニアが最初に使うなら、個人的にはCursorが一番入りやすいと思います。
理由はシンプルで、コードを直接書けなくても、画面上でAIと会話しながら変更内容を確認できるからです。
一方で、Claude Codeは慣れるとかなり強力です。複数ファイルにまたがる修正や、既存コードの調査には非常に向いています。
AIに依頼するときに必要な3つの情報
AIにうまく修正してもらうには、依頼の出し方が重要です。
最低限、以下の3つを伝える必要があります。
1. どこで:対象ページや画面
まず、どの画面を直したいのかを伝えます。
悪い例:
- あの管理画面を直して
- ユーザーのところを変えて
- いつもの一覧ページを修正して
これだとAIは対象を特定できません。
良い例:
-
https://example.com/usersのユーザー一覧ページ - 管理画面の「請求書一覧」ページ
- ログイン後、左メニューの「設定」から開く会社情報画面
URLがある場合は、そのまま貼るのが一番早いです。
2. なにを:対象の箇所
次に、ページ内のどこを変えたいのかを伝えます。
良い例:
- ヘッダー右上の「お問い合わせ」ボタン
- ユーザー一覧テーブルの「ステータス」列
- プロフィール詳細画面に表示されている氏名
- 登録フォーム下部のエラーメッセージ
ファイル名やコンポーネント名がわからなくても問題ありません。
「画面上で見えている名前」で伝えれば、AIがコードを検索して該当箇所を探してくれます。
3. どうしたいか:変更内容
最後に、具体的にどう変えたいのかを伝えます。
悪い例:
- もっといい感じにして
- わかりやすくして
- かっこよくして
良い例:
- ボタンの背景色を青にして、文字色を白にしてほしい
- 「送信する」という文言を「無料相談を申し込む」に変更してほしい
- ステータスが「対応中」の場合だけ、文字色をオレンジにしてほしい
- 氏名をクリックしたらLinkedInのURLに遷移するようにしてほしい
AIには、抽象的な依頼よりも、具体的な変更内容を渡す方がうまくいきます。
そのまま使える依頼文テンプレート
以下の形で依頼すると、かなり伝わりやすくなります。
以下の画面を修正してください。
対象画面:
https://example.com/users
対象箇所:
ユーザー一覧テーブルの「ステータス」列
変更したい内容:
ステータスが「対応中」の場合は文字色をオレンジにし、
「完了」の場合は文字色をグリーンにしてください。
注意点:
- 既存の表示ロジックはなるべく変えないでください
- 見た目の変更だけにしてください
- 修正後、どのファイルを変更したか説明してください
- 影響範囲がありそうな場合は、修正前に教えてください
ポイントは、「対象画面」「対象箇所」「変更内容」「注意点」を分けて書くことです。
これだけで、AIの精度はかなり上がります。
実際の作業手順
Cursorを使う場合の流れは以下です。
ステップ1:Cursorでプロジェクトを開く
まず、Cursorで対象のプロジェクトフォルダを開きます。
非エンジニアがここを自力でセットアップするのは難しい場合があります。
その場合は、最初だけエンジニアに以下のように依頼してください。
Cursorでこのプロジェクトを開いて、
ローカル環境で画面確認できる状態にしてください。
以後、簡単な文言修正やUI修正は
AIに依頼しながら自分で試せるようにしたいです。
ここまで整えてもらえば、以降の小さな修正はかなり自走しやすくなります。
ステップ2:AIチャットに修正を依頼する
CursorのAIチャットに、以下のように入力します。
https://example.com のトップページで、
ヘッダー右上にある「お問い合わせ」ボタンの背景色を青(#0066CC)、
文字色を白(#FFFFFF)に変更してください。
変更後、どのファイルを修正したか教えてください。
AIは該当するファイルを探し、変更案を提示してくれます。
ステップ3:差分を確認する
AIがコードを変更すると、どのファイルのどの部分が変わったかが表示されます。
非エンジニアでも、最低限以下は確認してください。
- 変更されたファイル数が多すぎないか
- 関係なさそうなファイルが変更されていないか
- 削除してはいけなさそうな処理が消えていないか
- 文言や色など、依頼した内容と合っているか
完璧にコードを読めなくても、「明らかに変な変更がないか」を見るだけで十分意味があります。
ステップ4:ブラウザで確認する
ローカル環境で実際に画面を開き、変更結果を確認します。
たとえばNext.jsというフレームワークなら、通常以下のようなURLで確認することが多いです。
※ 環境設定や、確認画面はエンジニアに協力してもらい確かめてください。
http://localhost:3000
確認すべきポイントは以下です。
- 依頼した箇所が変わっているか
- 他の表示が崩れていないか
- ボタンやリンクが正しく動くか
- スマホ幅でも極端に崩れていないか
AIの説明よりも、実際の画面確認を優先してください。
ステップ5:レビュー依頼を出す
問題なさそうであれば、エンジニアにレビューを依頼します。
非エンジニアがいきなり本番反映までやる必要はありません。
むしろ、最初の運用としては「AIで修正案を作るところまで」を非エンジニアが担当し、「レビューと本番反映」はエンジニアが担当するのが安全です。
レビュー依頼の例:
AIを使って、トップページの「お問い合わせ」ボタンの色を変更しました。
ローカルでは表示確認済みです。
変更内容に問題がないかレビューをお願いします。
この流れにすれば、Bizサイドが改善スピードを上げつつ、エンジニア側も安全性を担保できます。
非エンジニアがAIで対応しやすい修正
以下は、非エンジニアでも比較的対応しやすいです。
- ボタンや見出しの文言変更
- 説明文、エラーメッセージ、ラベルの修正
- 色、余白、フォントサイズの調整
- 画像の差し替え
- リンク先URLの変更
- 表示順の変更
- 特定条件で文言を出し分ける程度の簡単な表示ロジック変更
たとえば、以下のような依頼です。
料金ページの「お問い合わせ」ボタンの文言を
「無料相談する」から「まずは相談してみる」に変更してください。
ボタンの色やサイズは変えないでください。
これはAIに任せやすい修正です。
エンジニアに任せるべき修正
一方で、以下は非エンジニアだけで進めるべきではありません。
- データベースのテーブル追加・カラム追加
- 認証・ログイン・権限管理に関わる変更
- 決済処理に関わる変更
- 個人情報やセキュリティに関わる変更
- 外部API連携の変更
- インフラ・サーバー設定の変更
- 大量データ処理やパフォーマンスに関わる変更
- 既存機能の仕様を大きく変える変更
このあたりは、事業リスクやセキュリティリスクが大きい領域です。
AIが「できます」と言っても、そのまま進めるべきではありません。
判断に迷ったら、AIにこう聞くとよいです。
この変更は、データベース・認証・決済・セキュリティ・外部API・インフラに影響しますか?
非エンジニアがAIで修正してよい範囲か、それともエンジニアに依頼すべきか判断してください。
この質問を挟むだけでも、危ない変更を避けやすくなります。
失敗しないための注意点
1. 本番環境を直接触らない
一番重要です。
AIが便利でも、本番環境のコードを直接編集してはいけません。
必ず以下の流れにしてください。
- ローカル環境で修正する
- 画面で確認する
- エンジニアにレビューしてもらう
- 問題なければ本番反映する
これは最低限の安全ラインです。
2. AIの言うことを鵜呑みにしない
AIは自信満々に間違えることがあります。
特に、
この修正で問題ありませんか?
と聞くと、AIは「問題ありません」と答えがちです。
重要なのは、AIの回答ではなく、実際の画面と動作です。
- 画面が崩れていないか
- 期待した通りに動くか
- 他の機能に影響していないか
ここは必ず人間が確認してください。
3. git操作は最初に整備してもらう
非エンジニアがgitコマンドをすべて覚える必要はありません。
ただし、変更履歴を残すためにgitは必要です。
エンジニアに以下のように依頼するとよいです。
非エンジニアでもAIに自然言語で指示するだけで、
ブランチ作成、変更保存、レビュー依頼までできるように整備してください。
例:
「今の変更を保存して、レビュー依頼を出して」
と言えば、必要なgit操作が進む状態にしたいです。
Claude CodeやCursorを使えば、このあたりの操作もかなり自然言語で進められます。
4. 変更範囲を小さくする
AIに一度に大きな依頼をすると失敗しやすくなります。
悪い例:
管理画面全体をもっと使いやすくしてください。
良い例:
ユーザー一覧画面の検索ボックスのプレースホルダーを
「名前・メールアドレスで検索」に変更してください。
最初は、1回の依頼で1つの修正に絞るのが安全です。
5. うまくいかなければ会話をリセットする
AIとの作業では、途中から話が複雑になりすぎて、修正方針がブレることがあります。
その場合は、無理に続けず、会話をリセットして最初から依頼し直す方が早いです。
さっきの修正は一度忘れてください。
最初からやり直します。
対象画面:
https://example.com/users
対象箇所:
ユーザー一覧の検索ボックス
変更内容:
プレースホルダーを「名前・メールアドレスで検索」に変更してください。
AIは試行錯誤しながら使うものです。
一発で完璧に出す前提にしない方がうまくいきます。
社内で運用するなら、ルール化した方がよい
非エンジニアがAIで修正できるようになると、現場のスピードはかなり上がります。
ただし、無秩序にやると危険です。
社内で運用するなら、最低限以下のルールを決めるべきです。
- 本番環境は直接触らない
- データベース・認証・決済・セキュリティ関連は触らない
- 変更後は必ずローカルで画面確認する
- 本番反映前にエンジニアレビューを必須にする
- 1回の変更範囲を小さくする
- AIが変更した内容をそのまま信用しない
- 変更理由をレビュー依頼に書く
このルールがあれば、非エンジニアでも安全にAI活用しやすくなります。
BizサイドがAIを使えると、プロダクト開発の進み方が変わる
BizサイドがAIを使えるようになると、単に「小さな修正が早くなる」だけではありません。
顧客から聞いた課題を、そのまま改善案に落とし込みやすくなります。
たとえば、顧客から以下のような声があったとします。
- このボタン名だと意味がわかりにくい
- この画面で次に何をすればよいかわからない
- エラーメッセージが不親切
- 入力項目の順番が業務フローと合っていない
これまでは、Bizサイドが内容を整理し、エンジニアに依頼し、優先順位を調整する必要がありました。
もちろん今後もそのプロセスは必要です。
ただ、AIを使えば、Bizサイド自身が以下のような初動を取れます。
- 修正案を作る
- 影響範囲をAIに確認する
- 画面上の改善案を整理する
- 仕様のたたき台を作る
- 簡単な変更であれば修正案まで作る
これにより、エンジニアとの会話の質も上がります。
「なんとなく直してほしい」ではなく、「こういう理由で、この箇所を、このように変えたい。AIで修正案も作ったのでレビューしてほしい」と言えるようになるからです。
これはプロダクト開発においてかなり大きな変化だと思っています。
まとめ
AIコーディングエージェントの登場によって、非エンジニアでも小さなシステム修正に関われる時代になりました。
特に以下のような修正は、AIを使えば自分で進めやすいです。
- 文言変更
- ボタンやリンクの修正
- 色や余白の調整
- 画像差し替え
- 簡単な表示条件の変更
一方で、データベース、認証、決済、セキュリティ、インフラに関わる変更は、必ずエンジニアに任せるべきです。
重要なのは、非エンジニアがエンジニアの仕事を奪うことではありません。
小さな修正をBizサイドで進められるようにし、エンジニアはより重要な設計・実装・レビューに集中できる状態を作ることです。
これからの現場では、「AIに正しく依頼できる力」が、業務改善やプロダクト開発のスピードを大きく左右すると感じています。
まずは、ボタンの文言を1つ変えるところから始めるのがよいと思います。
最後に
株式会社シンシアでは、非エンジニアのビジネス職も積極的に採用しています。
弊社では、BizサイドとエンジニアがAIを活用しながら、一緒に新規事業やプロダクト開発を進めています。
営業、事業開発、カスタマーサクセス、プロダクト改善などに興味があり、AIを使って自分の仕事の幅を広げていきたい方は、ぜひ一度お話しできるとうれしいです。