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OS 選びの時代は終わり?Omarchy という新しい選択肢

Last updated at Posted at 2025-12-06

はじめに

開発者なら一度は悩んだことがある「Windows か Mac か問題」──
使えるツールの違い、開発環境の整えやすさ、ライブラリの互換性など、OS 選びは気づけばプロダクト開発よりも疲れる「タスク」になっていることがあります。

しかし最近、この前提を揺さぶる存在が現れました。
それが Omarchy です。

本記事では、IT 歴 7 か月のど素人が、ほぼノーストレスで Linux デビューできたので、導入方法や基本操作、導入後の設定までまとめています。

個人の感想ですが、正直 Windows や Mac の初期セットアップより圧倒的にわかりやすく簡単 と感じました。


こんな人におすすめ

  • そろそろ PC を買い替えようと思っている人
  • OS よりも PC の筐体・スペック重視の人
  • 「Linuxこわい…」と思っている人
  • 特定の OS への“信仰”がない人

目次

  1. Omarchyについて
  2. 導入手順
  3. 基本操作
  4. 設定
  5. まとめ

Omarchyとは?

まずは簡単に Omarchy の概要から。

Omarchy = Omakase + Arch Linux
つまり「開発者向けに必要な設定・ツールを“おまかせ”で詰め込んだ Arch Linux」です。
読み方はおそらく「オマーチ」。

通常の Arch Linux は“素”の状態で、GUI すら入っていない玄人向け OS です。そこに Rails の生みの親 DHH(David Heinemeier Hansson)が「もっと簡単に Linux の世界へ入れるようにしたい」という思想で手を加えたのが Omarchy。

TypeCraft のインタビューでも、DHH は次のようなニュアンスの話をしています。

  • Linux と Arch の思想に強く感動した
  • ただ入口がとにかく狭い
  • 「まず知ってもらわないと良さに気づけない」
  • だから Arch の初期セットアップをおまかせ化した

上記はインタビュー内容を噛み砕いて書いているため、若干の意訳が含まれます。

実際どんなことができるの?

  • ほぼすべての操作がショートカットで完結する(Super + …)
  • ツールのインストールがとにかく簡単
  • デフォルトのターミナル(Ghostty)がすでに快適
  • 画面分割・タブ切り替えなどがノンストレス(Hyprland)
  • DockerやGitがデフォルトで導入されている

あくまで私の体験ベースですが、実際にはもっと多くの“痒いところに手が届く”設定が最初から揃っています。

導入について

「Linux は難しそう…」
そう思っていた私でも、作業時間は 1 時間もかかりませんでした。

細かいカスタマイズに手を出すと沼ですが、インストールだけなら本当に簡単です。

まず何をしたらいい?

1. USB を準備する

ISO ファイルの容量が約 6GB ほどあるため、16GB 以上の USBを用意してください。

私はこれを使いました
BUFFALO USB3.2(Gen1)対応 ノックスライド 16GB

2. ISO ファイルをダウンロード

公式サイトから最新の ISO を取得できます:
👉 https://omarchy.org/

トップページにある ISO ボタンからダウンロードしてください。

3. USB に書き込み

書き込みには balenaEtcher を使います。

  1. https://etcher.balena.io/ からインストール
  2. USB を挿す
  3. balenaEtcher を起動
    • Select image → ダウンロードした ISO を選択
    • Select drive → 挿した USB を選択
    • Flash! をクリック

書き込み完了後、USB はそのままで OK!

次はどうする?

1. BIOS のセキュアブートを OFF にする

PC により操作方法が違います。
また、マウスやトラックパッドは使用できませんので、矢印キーを使用してください。

  1. PC の電源を切る(USB 挿しっぱなし)

  2. PCの電源を入れる(USB 挿しっぱなし)
    電源ボタンを押してすぐに

    • Windows PC → F2 または DEL
    • Mac(Intel) → ⌘ + R
      を押しっぱなし
  3. BIOS(またはUEFI)が起動される
    BIOS(または UEFI)画面で Secure BootDisable に変更

最近のノート PC は Secure Boot が強めなので、ここを OFF にしないと USB ブートが弾かれます。

2. 起動ディスクを USB にする(ブートメニュー)

セキュアブートを OFF にしたら、次は 「USB から PC を起動する」 作業です。

  1. 変更を保存して BIOS/UEFI を終了します

    • 画面下部に Save & ExitF10: Save & Exit などと書かれているので、それを選択。
  2. PC が再起動したら、すぐに ブートメニュー を開きます

    • よくあるキー:
      • F12 / F11 / F8 / Esc あたりが多いです

メーカーごとに起動方法が違うので、作業前に調べておく。
PC起動ボタンを押してすぐブートメニューの起動キーを連打しておく。
起動しなかった場合は再度電源をOFFにして、上記を試してください。

  1. 「Boot Menu」や「Boot Option」的な画面が出たら、
    • USB~~ と書かれているもの(さっき作った Omarchy の USB)を選びます
    • Enter で決定

うまくいくと、数秒〜十数秒待ったあとに Omarchy のインストーラー画面 が立ち上がります。

Omarchy インストーラーの操作

インストーラーは、画面の指示にしたがって質問に答えていくだけのタイプです。
基本的に「上から順に選んでいく」 だけで大丈夫です。

画面構成はバージョンによって少し変わる可能性がありますが、だいたい次のような流れです。

1. 言語・キーボード

  1. Language

    • ターミナル等の言語の選択です。
    • 迷ったら English のままで OK(あとからも変えられます)
  2. Keyboard layout

    • 日本語キーボードなら Japanese
    • US 配列なら US を選択

2. タイムゾーン

  • TimezoneAsia/Tokyo を選びます。
    → これで時刻やログのタイムスタンプが日本時間になります。

3. ネットワーク(あれば)

  • 有線 LAN ならたいてい自動認識されてそのまま使えます
  • Wi-Fi の設定画面があれば、
    • 自分の SSID を選んで
    • パスワードを入れて接続

4. ユーザー名とパスワード

ここは 毎日起動後にログインするときに使うアカウント です。
ターミナル操作でいうところの usradd です。

  • Username
    • 例:taro のような、半角英数字の短い名前にしておくと楽です
  • Password
    • 前項のユーザのパスワードです。
    • 長すぎなくていいので、「あとで忘れない」ことを最優先に
  • Confirm password:
    • パスワードの再入力です。
    • 同じパスワードを入力

5. ディスク暗号化用パスワード

Omarchy は フルディスク暗号化(LUKS)を標準で使います。

  • ここで入力するパスワードは、
    PC の電源を入れたときに最初に聞かれるパスワード です。
  • ログイン用パスワードと同じでも別でも OK ですが、心配な方は別のパスワードにしてください。
    • 最初は 同じにしておくと覚えやすい です。

ここを忘れると、中のデータにアクセスできなくなるので、
1Password などのパスワードマネージャ」に入れておくのが安心です。

6. インストール先ディスクを選ぶ

次に、どのディスクに Omarchy を入れるか を選びます。

  • Install driveSelect target disk のような項目で、
    • nvme0n1 / sda などのディスク一覧が出てくるので
    • 「中身を全部消してもいいディスク」を選びます。

ここで選んだディスクの中身は 全部消えます
デュアルブートしたいなら、公式マニュアルの「Manual installation」を見る必要があります。

7. 設定確認 → インストール開始

最後に、さきほど入力した内容の確認画面が出ます。

  • 言語・キーボード
  • タイムゾーン
  • ユーザー名
  • ディスクの選択
  • 暗号化の有無

に間違いがなければ、「Install」や「OK」 を選択するとインストールが始まります。

  • だいたい 5分くらい で終わります。(PC の速さによる)
  • 進捗バーやログが流れていくので、見ているだけで OK です。

インストール完了〜再起動まで

インストールが完了すると、画面に 「Installation complete」「Reboot」 などの表示が出ます。

  1. Reboot ボタンを選択

  2. PCが再起動するときに、

    • 画面が真っ暗になったタイミングで USB メモリを抜きます
  3. そのまま待つと、

    • 黒い画面に「Enter passphrase for /dev/~~」のような
    • 暗号化パスワード入力画面 が出ます

ここで、さきほど設定した ディスク暗号化用パスワード を入力します。

  • 正しく入力できると、数秒〜十数秒後に
    → Omarchy / Hyprland のグラフィカル画面が立ち上がります。

初回起動の流れと最低限やること

はじめて Omarchy が起動すると、マウスだけではほとんど何もできない のでちょっと驚くと思います。
でも大丈夫です。基本はすべてキーボード で操作します。

1. 最初に覚える 4 つのキー

Superキー とはWindowsでいうところのwinキーです。

  • Super + Space
    → アプリランチャー(アプリ検索)
    image.png

  • Super + Alt + Space
    → Omarchy メニュー(インストールや設定、アップデートなど)
    image.png

  • Super + Esc
    → システムメニュー (シャットダウンやロックなど)
    image.png

  • Super + K
    → 主なキーバインドの一覧を表示(困ったらまずこれ)
    image.png

2. ネットワークの確認

Chromium などブラウザを開いてネットにつながるか確認します。

  1. Super + Shift + B → ブラウザ起動
  2. 好きなサイトを開いて表示されれば OK

Wi-Fi をあとから変えたいときは、Waybar(画面上部バー)の右上あたりのネットワークアイコンから切り替えできます。
image.png

3. 最初のアップデート

Omarchy には 「Omarchy 用のアップデート+Arch パッケージ更新」 をまとめて行う仕組みがあります。

  • 画面中上の時計の横に、丸い矢印のアイコンが出ていたらクリック
    image.png

    または

  1. Super + Alt + SpaceUpdate を選択
    image.png
  2. Omarchy を選択
    image.png
  3. Yes を選択
    image.png

Arch に慣れている人は sudo pacman -Syu を叩きたくなるかもしれませんが、
Omarchy 環境では公式が UpdateOmarchy を推奨 しています。

基本操作

Omarchy は Hyprland(タイル型 WM) が標準になっているため、Windows や Mac とは操作感が大きく異なります。

最初はびっくりしますが、慣れると戻れなくなる快適さです。
image.png

よく使うショートカット

操作 キー
Omarchyメニューを開く Super + Alt + Space
アプリランチャーを開く Super + Space
システムメニュー Super + Esc
ウィンドウを閉じる Super + w
ターミナル(Ghostty) Super + Enter
ウィンドウの左右移動 Super + 矢印キー
ワークスペース移動 Super + Tab
任意のワークスペース移動 Super + 数字
ウィンドウのグループ化 Super + g
分割されたウィンドウのグループ化
(ワーグスペースにグループがある場合)
Super + Alt + g
グループ内のタブの切替 Super + Alt + 矢印キー
Super + Alt + Tab
ウィンドウの最大化 Super + f

上記は私がよく使うキーですが、他にもたくさんのショートカットキーがあります。
確認方法は前項でもご紹介しておりますが、 Super + k です。

設定

ここからは「設定」パートとして、初心者が最初に触りやすい設定ファイル を紹介します。
ポイントは 2 つだけです。

  1. 自分が触るのは ~/.config 以下のファイル(「dotfiles」)

  2. ~/.local/share/omarchy は Omarchy 本体側のファイルなので、
    基本的には触らず、上書きしたい場合は ~/.config に書く

1. Omarchy メニューから安全に編集する(おすすめ)

設定ファイルは、手でパスを打たなくても、

  • Super + Alt + SpaceSetupConfig → (変更したい項目)
    から開くのが一番安全です。
  1. Super + Alt + Space を押す
  2. 矢印キーで SetupConfig を選ぶ
  3. たとえば Hyprland を選ぶと
    ~/.config/hypr/hyprland.conf が Neovim で開く
  4. 編集して :wq すると、
    → 必要なサービスが自動 的に再起動されます

2. 日本語入力(fcitx5)

ここまで進められた方は気付いているはずです。日本語入力ができないと。
ということで、まずは日本語入力をできるようにするところから紹介します。

といいたいところですが、こちらはとてもわかりやすく解説されている記事がありますので、
下記の記事を参考にMozcを追加してください。
Zenn:Omarchyインストール後に日本語環境を快適にする

3. どのファイルをどう変えると何が起きる?

代表的な設定ファイルと「何が変わるか」について紹介します。

公式マニュアルで挙がっている主な dotfiles と、その効果です。

ファイル 役割(ざっくり) こんな変更ができる
~/.config/hypr/hyprland.conf Hyprland 全般:キーバインド・デフォルトアプリなど 新たに conf ファイルを作成したときに追記する
~/.config/hypr/monitors.conf モニター構成、解像度、配置 外部モニターの解像度変更、縦置きモニターの回転など
~/.config/hypr/hypridle.conf 画面消灯・サスペンドなどのアイドル設定 画面ロックまでの時間を伸ばす/短くする
~/.config/hypr/hyprlock.conf ロック画面の設定(テーマからのシンボリックリンク) 基本はテーマ側で管理されるので触る機会は少なめ
~/.config/waybar/config.jsonc 画面上部バー(Waybar)の構成 トレイアイコンを常に表示、CPU 使用率表示の追加など
~/.config/waybar/style.css Waybar の見た目(色・角丸など) バーの高さ、フォントサイズ、色など
~/.config/walker/config.toml アプリランチャー(Walker)の設定 検索の挙動や外観のカスタマイズ
~/.config/ghostty/config ターミナル(Ghostty)の設定 フォントサイズ、行間、テーマ、キーバインドなど
~/.config/uwsm/default デフォルトエディタ/ターミナルの指定 Neovim → VSCode に変更、など(Hyprland の再起動が必要)
~/.XCompose 絵文字や名前・メールの簡易補完 ;shrug → ¯_(ツ)_/¯ のようなカスタム絵文字など

具体例 1:キーバインドを変えてみる(Hyprland)

例として、Super + Shift + m で開くアプリを Spotify → Youtube-tui に変える というカスタマイズをします。

  1. Super + Alt + SpaceSetupKeybindings
  2. Neovim(デフォルト設定のエディタ) で ~/.config/hypr/bindings.conf が開く
  3. 次のような行を探す(Neovimの場合、/spotify と入力して検索もできます)
    bindd = SUPER SHIFT, M, Music, exec, omarchy-launch-webapp "https://spotify.com"
    
  4. それを次のように書き換え:
    bindd = SUPER SHIFT, M, Music, exec, omarchy-launch-tui youtube-tui
    

    youtube-tuiAURなどでインストールできます。

  5. :wq で保存して Neovim を閉じる
  6. Super + Shift + m を押して Youtube-tui が起動すれば成功!

具体例 2:画面ロックの時間を変える(Hypridle)

Hypridle の設定で、スクリーンセーバー・ロック・画面オフの時間 を変更できます。

  1. Super + Alt + SpaceSetupConfigHypridle
  2. ~/.config/hypr/hypridle.conf が開く
  3. 次のような部分を探す:
    # 例
    general {
        lock_timeout = 150000    # ロックまで 2.5 分
    }
    
    listener {
        timeout = 1800000        # 画面ロックまで 30 分
    }
    
    listener {
        timeout = 2400000        # 画面オフまで 40 分
    }
    
    
    # 単位はミリ秒なので、例えば「ロックまで 10 分」にしたいなら:
    
    general {
        lock_timeout = 600000    # 10 分
    }
    
  4. :wq で保存すると、自動的に Hypridle が再読み込みされます

具体例 3:キーボードの打鍵感やトラックパッドの挙動(input.conf)

キーボードリピートの速さ・トラックパッドのナチュラルスクロールなどは、
~/.config/hypr/input.conf で変更できます。

  1. Super + Alt + SpaceSetupInput
  2. ~/.config/hypr/input.conf が開く
  3. 例えば:
    input {
        kb_repeat_rate = 50       # 1 秒あたり何回リピートするか
        kb_repeat_delay = 200     # キーを押してからリピートが始まるまでの時間(ms)
        touchpad {
            natural_scroll = true
        }
    }
    
  4. :wq で保存すると、自動で再読み込みされます

おまけ

Mattermost のインストール方法

最後に、Mattermost(Slack っぽいチャットツール)のデスクトップクライアント の入れ方です。

Omarchy は Arch Linux ベースなので、
mattermost-desktop という公式パッケージをそのまま使えます。

1. 一番カンタンな方法:Omarchy メニューから入れる

  1. Super + Alt + Space で Omarchy メニューを開く
  2. InstallPackage を選択
  3. 検索窓に mattermost-desktop と入力
  4. 一覧に出てきた mattermost-desktop を選択 → Enter
  5. パスワードを聞かれたら入力 → インストール開始

完了したら

Super + Spacemattermost と入力して起動できます

Omarchy の Install → Package は、内部的には
sudo pacman -S パッケージ名 を良きように叩いてくれるラッパーです。

2. ターミナルから直接インストールする場合

ターミナルが好きな人は、Ghostty を開いてコマンドで入れても OK です。

  1. Super + Return でターミナル(Ghostty)を開く

  2. 次を実行:

    sudo pacman -S mattermost-desktop
    
  3. インストール後、

    • Super + Spacemattermost と打てば起動できます。

まとめ

「OS 選びの時代は終わり?」という問いの答え

Omarchy を使ってみて強く感じたのは、
「どの OS を選ぶか」より「どんな開発体験をしたいか」で選ぶ時代になった ということ。

  • GUI を使わず素の Linux をカスタムしたい人
  • Mac のように洗練された環境で開発したい人
  • Windows では WSL に頼らざるを得なかった人

そのすべてに「最適解では?」と思わせるだけの完成度があります。

最後に:読者へメッセージ

もしあなたが少しでも興味を持ったなら、
Omarchy を試す価値は大いにあります。

PC のスペックを最大限に活かせて、設定も簡単で、学習環境としても最高です。

「Linux は難しい」という固定観念を、最初に壊してくれる OS だと感じました。

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