はじめに
クラウド環境の利用が進む中、セキュリティ対策もクラウドに最適化された形が求められています。AWSには多くのネイティブセキュリティ機能が用意されており、適切に使えば高い効果を発揮します。
しかし、実際の運用では以下のような課題を感じることもあります。
- どの機能をどう組み合わせるか
- どこまでカバーできているか
- 設定ミスの可能性
- マルチアカウントやマルチリージョンの煩雑さ
そこで注目されているのが、CNAPP Cloud Native Application Protection Platform
です。CNAPPは、複数のセキュリティ機能やコンプライアンス機能を1つに統合したクラウドセキュリティプラットフォームで、2021年にGartnerによって提唱され注目を集めるようになりました。
今回、複数のCNAPP製品を実際に操作してみて、AWSネイティブのセキュリティ機能と比較した内容をまとめました。
※本記事は製品選定を目的としたものではなく、CNAPPの主要機能がクラウド環境においてどのように実現されるかを理解することを目的としています。
CNAPPの機能概要
CNAPPは、クラウド環境におけるセキュリティを統合的かつ包括的に管理するためのプラットフォームです。1つのダッシュボードで複数のセキュリティ機能を横断的に扱えるのが最大の特徴であり、主に以下の機能群で構成されています。
1. CSPM(Cloud Security Posture Management)
- 目的:クラウドリソースの設定ミスやセキュリティベストプラクティス違反を継続的に検出・可視化
- AWSでの対応機能:AWS Config、Security Hub CSPM
-
CNAPPの強み:マルチクラウド・マルチアカウント対応
ベストプラクティスやコンプライアンス要件を横断的に評価
リスクの優先度付けや可視化が分かりやすく、運用負荷が低い
2. CWPP(Cloud Workload Protection Platform)
- 目的:仮想マシン、コンテナ、サーバレスなどのワークロードの脆弱性管理とランタイム保護
- AWSでの対応機能:Amazon Inspector、GuardDuty
-
CNAPPの強み:マルチクラウド環境のワークロードを横断的に可視化・管理
OS・コンテナ・Kubernetes・サーバレスまで保護
エージェントレス/エージェント併用など柔軟な導入方式
3. CIEM(Cloud Infrastructure Entitlement Management)
- 目的:IAM権限の可視化と過剰権限の特定
- AWSでの対応機能:IAM、Access Analyzer、Organizations
-
CNAPPの強み:マルチクラウドクラウドを横断した権限管理の一元化
実際の利用状況を踏まえた過剰権限・未使用権限の検出
4. IaCスキャン(Infrastructure as Code)
- 目的:TerraformやCloudFormationなどのコードに含まれる設定ミスやセキュリティリスクを事前に検出
- AWSでの対応機能:CloudFormation Guard(cfnテンプレート)、CodeBuild+Security Hub(限定的)
-
CNAPPの強み:CI/CDパイプラインに統合しやすく、開発段階でのセキュリティチェックを自動化可能
CSPMと連携し、コードと実環境の両面からセキュリティを担保
5. DSPM(Data Security Posture Management)
- 目的:クラウド上に存在するデータの可視化とリスク管理
- AWSでの対応機能:Macie、IAMとS3で一部対応
-
CNAPPの強み:S3やRDSなどに存在する機密データの自動検出・分類
「どこに」「どんなデータが」「誰に公開されているか」を横断的に可視化
CSPM・CIEMと連携したデータ×設定×権限のコンテキストでの評価が可能であり、「機密データが格納されており、かつ過剰な権限を持つIAMロールからアクセスが可能」といったリスクを検出可能
6. CDR(Cloud Detection and Response)
- 目的:クラウド環境における脅威の検知と対応
- AWSでの対応機能:GuardDuty、Security Hub、CloudTrailなどの組み合わせ
-
CNAPPの強み:複数の検知ソースを統合した相関分析
CSPM・CWPP・CIEM・DSPMの情報を踏まえたコンテキストアラート
攻撃パスや影響範囲を可視化し、対応優先度を明確化
GuardDutyは高精度な脅威検知が可能ですが、検知結果を「どのリソースに」「どんな設定・権限・データリスクがある状態で起きたのか」まで把握するには、GuardDuty単体では難しくなります。
CNAPPのCDRでは、「脆弱性のあるワークロード」「リソースの設定不備」「付与されている過剰権限」「影響を受ける可能性のあるデータ」を1つのストーリーとして可視化できるため、リスク対応の優先順位付けが明確になります。
CNAPPを使って感じたメリット
実際に2つのCNAPP製品を数か月間使ってみて、以下のようなメリットを感じました。
1. 統合管理による運用効率の向上
AWSでは、Config、Inspector、GuardDutyなど複数のサービスを個別に設定・確認する必要がありますが、CNAPPでは1つのダッシュボードで全体を俯瞰できるため、運用の手間が大幅に削減されました。
また、対象クラウド環境をオンボーディング(クラウド環境との接続作業)するだけで、主要なセキュリティ機能(CSPM、CWPP、CIEMなど)のスキャンが即座に開始されるため、導入のハードルが低く、スピーディかつ包括的なセキュリティ評価が可能です。
2. マルチクラウド・マルチアカウント対応
AWSネイティブ機能ではアカウントやリージョンごとに設定が必要な場面もありますが、CNAPPでは複数アカウント・複数クラウドを一元管理できるため、セキュリティ運用のスケーラビリティが非常に高いと感じました。
私も今回AWSとGCPをオンボードしてみましたが、一つの画面でまとめて管理できることに少し感動しました。
3. リスクの優先度付けが明確
CNAPPでは、検出されたリスクに対して「重大度」「影響範囲」「対応優先度」が自動で付与されるため、どこから対応すべきかがすぐに判断できます。
※この点はAWS Security Hubでも同様の機能が提供されています。
4. 導入・操作のしやすさ
GUIベースで直感的に操作できるため、一度使い方を覚えれば、日常的な操作に迷うことはほとんどなく、非エンジニアでも扱いやすい印象を受けました。
CNAPPを使って感じたデメリットと注意点
1. 製品ごとの機能差・UIのクセ
CNAPPは製品によってUIや機能の設計思想が異なり、慣れるまでに時間がかかるかもしれません。特に、初めて使う際には「どこで何が見られるのか」が分かりづらい場面もありました。
私の場合は、複数の製品を同時に触っていたため、画面構造で迷子になることが多々ありましたが、慣れてくると操作自体は直感的で扱いやすくなる印象でした。
2. 初期設定に一定の知識が必要
IAMロールの設定やクラウド連携の理解が必要で、クラウド初心者には少しハードルが高いと感じました。
3. コスト面の不透明さ
CNAPPは多機能である分、ライセンス体系が複雑です。どの機能がどのプランに含まれているかを理解する必要があります。
運用規模によっては、AWSネイティブの方がコストを抑えられるケースもあるかもしれません。
4. 一部機能はAWSネイティブの方が優れている
例えば、DDoS対策(AWS Shield)やWAF(AWS WAF)など、ネットワークレベルやアプリケーションレベルの攻撃に対する防御はAWSネイティブの方が強力です。
5. 対応していないクラウドがある
今回使用した2つのCNAPPはAWS、GCP、Azureに対応していましたが、製品によってはOCI、IBM、Alicloudなどに対応していない場合もあります。
まとめ:AWSネイティブも優秀。一方でCNAPPはその先を見据えた選択肢
AWSネイティブのセキュリティ機能は、個別に見れば非常に強力で、クラウド環境の保護に必要な要素は一通り揃っています。ただし、運用負荷や可視性の限界を感じる場面も多々あります。
一方、CNAPPはそれらの課題を統合的に解決できるプラットフォームとして非常に有効でした。
- 1つのダッシュボードで全体を俯瞰できる
- マルチクラウド・マルチアカウント対応が標準
- リスクの優先度が明確で、対応がしやすい
- 開発段階からセキュリティを組み込める(IaCスキャン)
- 運用負荷が軽減され、セキュリティチーム以外でも扱いやすい
もちろん、製品ごとのクセやコスト面など注意すべき点もありますが、クラウドセキュリティの運用を本気で改善したいなら、CNAPPは非常に有力な選択肢だと感じました。
今後は、CNAPPを軸にしたセキュリティ運用が主流になっていく可能性も高く、AWSネイティブ機能との併用や補完関係を意識しながら、よりスマートなクラウドセキュリティ体制を構築していくことが重要だと考えます。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
以上、はじめての投稿でした!