はじめに
初投稿日の3月14日は、3.14ということで円周率πの日です。
円周率にまつわる話と天才数学者ラマヌジャンを取り上げてみます。
ラマヌジャンと聞いても通な人しか分からないですけど、その天才ぶりとハーディ先生との幸運な出会いそして32歳という短い生涯は、映画『奇蹟がくれた数式』にもなりました。この映画は、2016年10月22日に公開されました。
円周率の日
3月14日は円周率の日ですが、円周率近似値の日と呼ばれる日がいくつか存在します。
月日 | 理由 |
---|---|
7月22日 | 7月22日はヨーロッパ式では 22/7 と表記される。アルキメデスが求めた近似値となる。 |
12月21日(閏年は12月20日) | 中国における近似値の日である。祖沖之が求めた円周率の近似値である 355/113 の分子に由来する。 |
4月27日 | 新年からこの日までに地球が動く距離が2天文単位となる。地球の公転軌道の長さと移動距離の比が円周率に一致する。 |
11月10日(閏年は11月9日) | 新年から314日目である。 |
この記事は可能な限り円周率の日または円周率近似値の日に更新するようにしている。
円周率とは
円周率は「円周と直径の比」のことです。
直径の長さを 1 とした場合に円周が 3.14(π) となります。
あまり直径は使わず、半径 1 として円周は 2π とした方が馴染みがあります。
円周率は、小学5年生で習います。中学になると「π(パイ)」という記号を使います。
この記号は、ギリシア語で周を表す περιμετρoζ ( perimetros ) の頭文字です。
無理数・超越数
円周率は小数展開が無限に続き、しかも循環しません。
惑星探査機「はやぶさ」にプログラムされた円周率は16桁です。3億キロメートルの宇宙の旅から帰還するために使う円周率の桁数を、JAXAは16桁としました。3.14だけでは、15万キロメートルも軌道に誤差が生じるとのこと。
数学的には円周率は無理数かつ超越数です。
無理数とは分子・分母ともに整数である分数として表すことのできない実数で、逆に分数であらわせる数は有理数となります。
また、無理数の中には、さらに「超越数」と呼ばれる不思議な数たちがいます。無理数であるにもかかわらず、どんな代数方程式の解にならない数たちです。
超越数の意味といくつかの例
円周率以外にも、自然対数の底(ネイピア数) e も無理数かつ超越数です。
自然対数の底(ネイピア数) e は何に使うのか
簡単な歴史
理論的に π を計算に取り組んだのは、紀元前3世紀頃のギリシャの数学者アルキメデスです。
それ以前でも紀元前2000年頃の古代バビロニア人が円周率の近似値として $3,3\frac{1}{7} \fallingdotseq 3.142857, 3\frac{1}{8} = 3.125$ などが使われたと考えられている。
紀元前1650年頃の古代エジプトでは $\left (\frac{16}{9} \right)^2 \fallingdotseq 3.1605$ が円周率の近似値として最古の数学の本と言われるパピルスに記されている。
日本では、1663年に日本で初めて数学的な方法で円周率を計算し発表した和算家の村松茂清が、π を7桁まで計算し、1681年に関孝和が、π を16桁まで計算、1722年に弟子である建部賢弘は、π を40桁まで計算している。
17.和算家たちの円周率 - Imujii's Page
コンピューターの利用
π は無限小数なので、短時間でどこまで計算できるかというコンピューターの性能指標になっている。
世界で最初の電子計算機と言われているENIAC(1946年)を使用して、1949年に2037桁を計算しました。
現在は、スーパーコンピューターの性能を活用して、π の桁数の計算競争の時代になっています。1982年からしばらくの間は日本がリードしていました。
コンピュータ計算の記録 - 円周率.jp
ラマヌジャンの円周率公式を使うことで億の桁を突破することができ、ラマヌジャンの円周率公式を改良したものが現在の主流になっていて兆の桁数になっています。
円周率πを速く正確に計算する公式集
記憶力UP
真田丸で、真田信幸(大泉洋さん) の病弱な妻おこうを演じられた長野里美さんは、円周率1000桁を覚えるのを3ヶ月くらい続けると、長いセリフでもばんばん頭に入ってくるとのこと。ただ、セリフが記号的に感じる弊害もあり、やり過ぎには注意しているようです。
伊東四朗さんは円周率1000桁を憶えたとかで、2011年のTV番組内で円周率500桁書いていました。歳をとってくると記憶力が落ちるから訓練してるんでしょう。
暗記法 円周率を覚えよう!
ゆとり教育の象徴
ゆとり教育の象徴としてよく言われているのが、円周率を「3」で教えるというものですが、「基本は3.14で教えること。ただし場合により3でも可」というスタンスで、現場の先生は「3.14」で教えていました。
学力低下やゆとり教育への批判としてマスコミがセンセーショナルに「円周率は3」を広めたために、誤解が解消されなかった。
現在では「3でも可」という文言は除外され、「円周率は3.14を用いるものとする」となっています。
バージョン番号で活用
TeXのバージョンは、3.1,3.14,3.141,と円周率に近づくようにしているってのは面白いですね。
https://ja.wikipedia.org/wiki/TeX
2016年10月1日現在のバージョンは 3.14159265
パスワードで活用
円周率をパスワードに使用する人も結構いるでしょう。
先頭からだとバレやすいので、例えばπの10桁目などを使うような工夫は必要です。
以前、iPhoneのロック解除のパスコードを「円周率300桁」にしたと話題がありましたね。
ラマヌジャン
インドの数学者のシュリニヴァーサ・アイヤンガー・ラマヌジャン1887年12月22日 - 1920年4月26日)は、極めて直感的、天才的な閃きにより「インドの魔術師」の異名を取った。
現代の数学者を悩ませ続ける「100年前の数学の魔術師」シュリニヴァーサ・ラマヌジャン - WIRED
ものすごく数学をやりたくなった話 天才ラマヌジャンの数奇な運命
皆さんが「天才」という言葉を思うとき、アインシュタインの名前なんかをよく思い浮かべるでしょう。ちなみに3月14日はアインシュタインの誕生日でもあります。
ラマヌジャンの円周率公式
$$\displaystyle {\frac {1}{\pi }}={\frac {2{\sqrt {2}}}{99^{2}}}\sum _{n=0}^{\infty }{\frac {(4n)!(1103+26390n)}{(4^{n}99^{n}n!)^{4}}}$$
$$\displaystyle \frac{4}{\pi}=\sum _{{n=0}}^{\infty}{\frac{(-1)^{n}(4n)!(1123+21460n)}{882^{2n+1}(4^{n}n!)^{4}}}$$
ライプニッツの円周率公式
$$\displaystyle {\frac {\pi }{4}}=1-{\frac {1}{3}}+{\frac {1}{5}}-{\frac {1}{7}}+{\frac {1}{9}}-\cdots = \sum _{n=0}^{\infty }{\frac {(-1)^{n}}{2n+1}}$$
上記の円周率公式は違いが分かりやすくなるように比較としてライプニッツも載せました。いかがででしょう、ラマヌジャンの残した結果(円周率公式はあくまで一部)は随時こんな感じで、数学の歴史の中で、「何故こんな式を生み出せたのか、全く説明できない」というレベルのもので、「地球に舞い降りた宇宙人が、気まぐれにその知識を振りまいていった」なんて表現する数学者の方もいたりします。
ラマヌジャン自身も寝ている間にナーマギリ女神が教えてくれたとか言ってしまうわけで、ラマヌジャンの発見した法則は、いくつかは数学の歴史を塗り替えるほどのみごとなものであり、いくつかは明らかな間違いで、そして残りは未だに正しいか誤りかわからない、という破天荒ぶりなのです。
友人からのプレゼント
一応、神頼みというわけではなく、15歳の時に友人からプレゼントされたイギリス人数学教師のジョージ・カーが著した「純粋・応用数学基礎要覧」の本との出会いが数学を鍛える下地にありました。
この本は受験用の数学公式集で大学初年級までに習う6000あまりの定理や公式が表題ごとに並べられ簡単な注が添えられただけで証明の手法らしきものは何もないという本です。ラマヌジャンはこれらを自らの手で証明することに没頭し、独自の方法をあみ出すなどしていたのです。
幸運な出会い
せっかくの天才ぶりもインドでは相手にされなかった中で、ケンブリッジ大学のゴッドフレイ・ハロルド・ハーディは理解を示し、ラマヌジャンをケンブリッジ大学に招聘し、ラマヌジャンは1914年に渡英しました。
しかし、寝ている間にナーマギリ女神が教えてくれたと言ってしまうラマヌジャンですから、証明する作業があまり出来ません。共同研究を行っていたハーディも、彼の直感性を損ねることを恐れて証明を押し付けることは避け、朝ラマヌジャンが持ってきた半ダースもの「定理」を一日かけて改めて証明するという方法をとったのです。
しかし、二人が一緒に研究できたのはわずか3年足らずでした。
短い生涯
せっかくイギリスには来れハーディとも共同研究は出来るようになったものの、イギリスでの生活に馴染むことが出来ず50時間研究して20時間寝るという不規則な生活、そしてラマヌジャンは敬虔なヒンドゥー教徒であり厳格な菜食主義者だったため食事もままならず。
さらに不幸なことに第一次世界大戦下のイギリスはドイツによる通商破壊もあり、そのような食材の確保が困難になってしまった。
やがて病いを患ってインドに帰国、1920年に32歳の若さで病死してしまいます。
時代が平時であれば、もっとすごい業績をハーディと共に歩めたと思います。
数学上の業績
ラマヌジャンの数学上の業績に対しては、保型形式、2次のゼータ関数の発見、あるいは円周率の公式のような無限級数に関してのものが知られています。
ラマヌジャン - Math難関大学への数学
相対性理論はアインシュタインがいなくても10年以内には誰かが発見したでしょうが、ラマヌジャンが発見した公式は、100年経ってとしても誰も発見出来なかったでしょう。
ラマヌジャンの円周率公式を理解したい
https://sites.google.com/site/tpiezas/0013
https://sites.google.com/site/tpiezas/0019
以前から、$99^2$ などどうやって求まったんだろうと気になっていた。
一番上のサイトから理解しようとしたが難しい。分かるところまで数式を展開してみた。
$232$がどうやって求まるのか分からない。それ以外の定数値は、$232$から求めることができるようだ。
$$\begin{align} \frac{\sqrt{C}}{\pi} = \sum_{n=0}^{\infty} \frac{(4 n) !}{n !^{4}} \frac{A n + B}{C ^n} \end{align}$$
$$A=844480\sqrt{2},B=35296\sqrt{2},C = j_{2A}(\frac{\sqrt{-232}}{4}) = 24591257856 = 396^4$$
$$公式にA,B,Cを当てはめる。$$
$$\begin{align} \frac{1}{\pi} = \sum_{n=0}^{\infty} \frac{(4 n) !}{n !^{4}} \frac{844480\sqrt{2} n + 5296\sqrt{2}}{\left( 396^4 \right) ^{n+1/2}} \end{align}$$
$$2^5=32でくくれるため、前に出す。$$
$$\begin{align} \frac{1}{\pi} = 32 \sqrt{2} \sum_{n=0}^{\infty} \frac{(4 n) !}{n !^{4}} \frac{26390 n + 1103}{\left( 396^4 \right) ^{n+1/2}} \end{align}$$
$$分母の指数部分である n+1/2 を分解$$
$$\begin{align} \frac{1}{\pi} = 32 \sqrt{2} \sum_{n=0}^{\infty} \frac{(4 n) !}{n !^{4}} \frac{26390 n + 1103}{\left( 396^4 \right) ^{n} + \left( 396^4 \right) ^{1/2}} \end{align}$$
$$\left( 396^4 \right) ^{1/2} = 396^2 なので前に出す。$$
$$\begin{align} \frac{1}{\pi} = \frac{32 \sqrt{2}}{396 ^ 2} \sum_{n=0}^{\infty} \frac{(4 n) !}{n !^{4}} \frac{26390 n + 1103}{\left( 396^4 \right) ^{n}} \end{align}$$
$$分子 32 と分母 396^2 = 156816 は、16で割ることができる$$
$$\begin{align} \frac{1}{\pi} = \frac{2 \sqrt{2}}{9908} \sum_{n=0}^{\infty} \frac{(4 n) !}{n !^{4}} \frac{26390 n + 1103}{\left( 396^4 \right) ^{n}} \end{align}$$
$$9908は99^2である。ラマヌジャンの円周率の公式がでてくる。$$
$$\begin{align} \frac{1}{\pi} = \frac{2 \sqrt{2}}{99 ^ 2} \sum_{n=0}^{\infty} \frac{(4 n) !}{n !^{4}} \frac{26390 n + 1103}{\left( 396^4 \right) ^{n}} \end{align}$$
$$396は99 \times 4である。下記のように書き換えることができる。$$
$$\displaystyle {\frac {1}{\pi }}={\frac {2{\sqrt {2}}}{99^{2}}}\sum _{n=0}^{\infty }{\frac {(4n)!(1103+26390n)}{(4^{n}99^{n}n!)^{4}}}$$
最後に
ホワイトデーのお返しとして、3月14日は円周率の日ということで、円周率とラマヌジャンについて書いてみました。
ラマヌジャンに興味をもってくれた方は映画『奇蹟がくれた数式』を見てみるといいでしょう。