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【re:Invent 2025】クラウド運用担当が米Sysco社のChalk Talkで参考となったこと: 3選(IND327)

Last updated at Posted at 2025-12-04

はじめに

こんにちは!今回はじめて re:Inventに参加することとなった @y_yokouchi です。
この記事では, 会期中, 12/1初日に実施された≪Sysco社のChalkTalkに参加して参考となったことを3つ≫をレポートしていきます。

INDEX

Chalk Talk(チョークトーク)とは?
Sysco Corporation(シスコ社)とは?
セッションの概要
その1:MCPサーバで情報を探す労力を大幅削減
その2:役割別にカスタムエージェントを作り運用を最適化する
その3:運用標準をRulesでコード化しエージェントに徹底させる
まとめ

Chalk Talk(チョークトーク)とは?

AWS re:Invent でも毎年よく使われるセッション形式で、
ホワイトボードを使った少人数・双方向の技術セッションのことです。
スライドではなく、講師がホワイトボードに図を書きながら解説します。
そのため「リアルタイムで設計を深掘りする」雰囲気があります。
普通のBreakout Session(数百〜数千人)と違い、
質問・相談がしやすいのが特徴です。

Sysco Corporation(シスコ社)とは?

グローバル規模のフードサービス企業として、そのオペレーションは非常にスケールの大きいものです。今回、同じリテール領域として, 少しでも運用効率化のヒントをもらえばと、セッション参加しました。

  • グローバル展開:73万以上の顧客ロケーション
  • 財務規模:800億ドル以上
  • インフラ規模:世界10か国に330以上の配送センター
    Sysco社公式より

セッションの概要

  • 参加したセッション
    • Sysco's Digital Transformation: Platform Engineering with Amazon Q (IND327)
    • Level: 300 – Advanced
    • Speaker:
      • Amit Singh(Senior Solutions Architect, Amazon)
      • Dilhan Manawadu(Sr. Director, Global Platform Engineering & Services, Sysco)
         
        :woman_tone1: < 特に、Manawadu氏は平易な英語を使って説明されており、リスニング能力低い私には大変有難かったです。 Chalk Talkの中でも満員近くの人が参加していました。

 

  • 概要
    • Sysco社にはプラットフォームエンジニアリングについて、「①認知負荷※」「②コスト・インフラ管理」「③サイバーセキュリティ」 の3つの運用課題に直面していました。
      ※「認知負荷」とは、システムが複雑なゆえ, 膨大な知識を常に参照しなければならないということです。
       
      3つの運用課題についての説明とSpeakerのManawadu氏
      IMG_2030.jpg
      $\color{black}{\tiny \textsf{© Copyright belongs to AWS or Sysco, as applicable. }}$
       
      :woman_tone1: < 会社の規模は全く違っても, 運用課題は弊社とほぼ同じではないですか…?
       
    • そこで運用課題を解決するべく, AWSのAIを活用したソリューションを導入しました。
      • Amazon Q Developer + MCPサーバ(+Rules設計)
      • Amazon CodeWhisperer 導入
    • これにより開発効率・統制・標準化・セキュリティが大幅に向上したとのことです。

それでは, Chalk Talkに参加して, 参考となったことを3つ紹介します。

MCPサーバで情報を探す労力を大幅削減

  • :star:技術ポイント
    MCP(Model Context Protocol)により
    AWS CLI / 社内ドキュメント / 標準手順 / 料金API / 設計書 をひとつの「AIが参照できるハブ」に集約しました。
    MCPを使うことで, 明示的に参照リソースを決めることができ不要なリソースの参照を防ぐことができるメリットがあるそうです。

MCPサーバの詳しい仕組みは, 公式ドキュメントを参照ください。

  • :star:どんな効果を生んだのか?
    認知負荷の改善に多いに役立ちました。
    それまで、エンジニアは大量のドキュメント・API・SDK・コード・運用情報など、膨大な知識を常に参照する必要がありました。
    • 400人以上の開発者が複雑なテックスタックに苦しむ
    • NoSQL / MongoDB など複数DB
    • サービスメッシュ含む複雑なネットワーク
    • ハイブリッド環境(クラウド+データセンター)
       
      この膨大なインプット情報を集約することで, MCPサーバに「情報を探す労力」を丸投げすることができたのです。
      弊社に当てはめた場合、ドキュメント管理や俗人化の課題に応用が利きそうではないでしょうか。
       
      MCPサーバをハブとした情報集約の説明
      IMG_2033.jpg
      $\color{black}{\tiny \textsf{© Copyright belongs to AWS or Sysco, as applicable. }}$

役割別にカスタムエージェントを作り、運用を最適化する

  • :star:技術ポイント
    セッションの中では, EKSトラブルシュート専用エージェントの作成についての言及がありました。
    前述したようなMCPサーバで, EKS固有の知識ベース(運用手順・内部ドキュメント)を参照可能にし
    Toolsの設定でエージェントがGit, AWS CLI, MCPサーバを利用できるようにしました。
    また役割定義, 具体的なプロンプトの指示等も行ったとのことです。
    具体的なエージェントの定義ファイルの設定方法についても詳しい紹介がなされました。
     
  • :star:どんな効果を生んだのか?
    こちらも認知負荷の改善に多いに役立ちました。
    元々, 運用上EKS(やArgoCD)の複雑性が運用負荷を生んでいたそうですが
    エージェントを利用することで負荷解消に繋げたとのことです。
    実際の現場では, 暫定的な運用ではなく恒久的な運用や業務・ある程度ルールの変わらないものをエージェント化することで運用負荷効果が高まりそうだと感じました。

運用標準をRulesでコード化し、エージェントに徹底させる

  • :star:技術ポイント
    また今回最も興味深かったのが, カスタムエージェントの品質担保のため,
    Rulesファイルと連動させ、特定のルールを常に順守させるようにしたことです。

    具体的には, Rule markdown ファイルでルールをコード化しました。
    実際の標準・設計書等のドキュメント類をインプットとする場合には, MCPサーバに紐づけを行い, その参照先をRuleに厳守するよう記載する方法をとるようです。

Rule markdown ファイルのの説明
IMG_2035.jpg
$\color{black}{\tiny \textsf{© Copyright belongs to AWS or Sysco, as applicable. }}$
 

  • :star:どんな効果を生んだのか?
    "Rules" はAIが生成するコードや判断に直接影響する設計であり
    セキュリティ・監視・インフラ標準を遵守させるための仕組みと説明ありました。
    確かに, 重要な運用業務をエージェントに任せる・実用化するとなった場合の
    品質の均一化・標準化にはとても有益そうです。

まとめ

今回は Amazon Q Developer + MCPサーバを使ったSysco社の運用改革について
紹介してみました。
今回のre:Invent全体を通して感じているのが、エージェントを運用の場に活用しているユースケースが目立っているということです。 ただ、日本では実際の利活用まで辿り着いている企業は(弊社も含め)まだ多くないと感じておりますので非常に参考になりました。

  • メンテナンス性の課題
    参加してみての感想ですが、実際にエージェントを作った後のメンテナンス性も
    非常に重要と感じました。

    エージェントを使って俗人化排除や標準化を行ったとしても、実際に運用担当を行う(エンジニア職でない)人がメンテナンスができる状態でないと、なかなか運用サイクルを回すのは困難です。
    たとえば、エージェント本体は触らず、誰もがなじみのある領域(たとえばドキュメント管理を行うフォルダ)をメンテナンスするだけでサイクルが回せるようにする、といった工夫が必要と思いました。

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