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オブザーバビリティについて

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はじめに

システム開発や運用に携わる皆さん、日々の業務で「監視」や「可視化」といった言葉を耳にしない日はないのではないでしょうか。しかし、近年、これらと並んで注目されているのが「オブザーバビリティ(Observability)」という概念です。

「監視と何が違うの?」「具体的に何をするの?」といった疑問をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。この記事では、オブザーバビリティとは何か、なぜ今重要なのか、そしてどのように実践していくのかを、初心者の方にも分かりやすく解説します。

監視(Monitoring)とオブザーバビリティ(Observability)の違い

まず、混同されがちな「監視」と「オブザーバビリティ」の違いを明確にしておきましょう。

  • 監視(Monitoring):

    • 既知の問題に対する閾値やルールに基づいたチェック。
      「CPU使用率が80%を超えたらアラート」「ディスク容量が90%になったら通知」といったように、事前に定義された状態をチェックします。
    • システムの健全性を大まかに把握するには有効ですが、予期せぬ問題が発生した際には、原因究明に時間がかかることがあります。
    • 「何が壊れたか」は教えてくれますが、「なぜ壊れたか」までは教えてくれません。
  • オブザーバビリティ(Observability):

    • システムがどのような状態にあるかを、その**内部から生成されるデータ(テレメトリーデータ)**を通じて推測し、理解する能力。
    • 未知の、あるいは予期せぬ問題が発生した場合でも、その根本原因を迅速に特定し、解決に導くための情報を提供します。
    • システムが出力するログ、メトリクス、トレースといった多様なデータを統合的に分析することで、システムの振る舞いを多角的に把握します。
    • 「なぜ壊れたか」だけでなく、「次に何が起きるか」を予測することも可能になります。

簡単に言えば、監視が「固定カメラで特定の場所を監視する」イメージだとすると、オブザーバビリティは「システム全体に多数のセンサーを配置し、あらゆる角度から詳細な情報を収集・分析する」イメージです。

なぜ今、オブザーバビリティが重要なのか?

現代のシステムは、マイクロサービス、コンテナ、サーバーレスといった技術の普及により、ますます複雑化・分散化しています。このような環境では、従来の監視だけでは対応しきれない問題が多発するようになりました。

  • システムの複雑化: サービス間の依存関係が複雑になり、ある箇所の問題が予期せぬ別の箇所に影響を及ぼすことがあります。
  • 変化の速さ: アジャイル開発やCI/CDによって、システムの変更が頻繁に行われるため、常にシステムの挙動を把握しておく必要があります。
  • 未知の問題への対応: 予期せぬ障害やパフォーマンス劣化が発生した際、その原因を迅速に特定し、復旧することがビジネス継続のために不可欠です。
    オブザーバビリティは、これらの課題に対応するための強力な手段となります。

オブザーバビリティを構成する3つの柱(テレメトリーデータ)

オブザーバビリティを実現するためには、システムが出力する以下の3種類のテレメトリーデータが不可欠です。

  1. メトリクス(Metrics):

    • 時間経過とともに変化する数値データです。
    • CPU使用率、メモリ使用量、リクエスト数、エラーレート、レイテンシなど、システムのパフォーマンスや健全性を示す定量的な情報を提供します。
    • グラフ化してトレンドを把握したり、異常を検知するためのアラート設定に利用されます。
    • 例: http_requests_total{method="GET",path="/api/users"} 12345
  2. ログ(Logs):

    • システムやアプリケーション内で発生したイベントの記録です。
    • 「ユーザーAがログインしました」「データベースへの接続に失敗しました」といった、具体的なイベントの発生時刻、内容、関連情報などをテキスト形式で記録します。
    • 問題発生時の詳細な状況把握や、監査証跡として利用されます。
    • 例: 2023-10-27T10:30:00Z INFO User "Alice" logged in from 192.168.1.100
  3. トレース(Traces):

    • 複数のサービスをまたがるリクエストの処理経路を可視化するものです。
    • 分散システムにおいて、あるユーザーリクエストがどのサービスを、どのような順序で、どれくらいの時間かけて通過したかを追跡できます。
    • パフォーマンスボトルネックの特定や、サービス間の依存関係の可視化に非常に有効です。
    • OpenTelemetryなどの標準化された技術が普及しています。

これらのデータを単独で見るのではなく、統合的に分析することで、システムの全体像を深く理解し、問題発生時に迅速に原因を特定できるようになります。

オブザーバビリティを実践するために

オブザーバビリティを実践するためには、以下のようなステップが考えられます。

  1. テレメトリーデータの収集:

    • アプリケーションやインフラから、メトリクス、ログ、トレースを適切に出力するよう設定します。
    • OpenTelemetry などの標準化されたライブラリやエージェントの導入を検討しましょう。
  2. データの一元管理と可視化:

    • 収集したデータを一元的に集約し、保存するプラットフォームを導入します。
    • Prometheus、Grafana、Elasticsearch、Kibana、Jaeger、Zipkin といったオープンソースツールや、Datadog、New Relic、Dynatrace といった商用SaaSなど、様々な選択肢があります。
    • それぞれのデータが関連付けられ、相関分析ができる環境を構築することが重要です。
  3. チーム文化の醸成:

    • オブザーバビリティは単なるツール導入だけでなく、開発チームと運用チームが協力し、システムの状態を常に意識し、改善していく文化が重要です。
    • オブザーバビリティの概念を理解し、活用できるスキルを身につけるための教育や共有も大切です。

まとめ

オブザーバビリティは、現代の複雑なシステムを安定稼働させ、ビジネスを加速させるための重要な要素です。単なる監視の強化にとどまらず、システムの「なぜ?」を深く掘り下げ、未知の課題にも対応できる能力を組織にもたらします。

この記事が、皆さんのオブザーバビリティへの第一歩となれば幸いです。ぜひ、ご自身のシステムにオブザーバビリティを導入し、その恩恵を実感してみてください。

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