はじめに
Power Virtual Server(PowerVS)のDAL10(Dallas 10)で、Power Edge Router(PER)というコンポーネントが利用可能になりました。
https://cloud.ibm.com/docs/power-iaas?topic=power-iaas-per
PERの登場により、PowerVSのネットワーク周りが大きく変わります。PERへの対応によってどのような変化があるかを整理しました。
PER非対応のPowerVS | PER対応のPowerVS | |
---|---|---|
x86(VPC, Classic)との接続 | Cloud Connection(実体はDirect Link 2.0)を作成。 | Transit GatewayにPowerVSを接続。PERが有効になった環境ではCloud Connectionを作る必要は無い(メニューから選択できなくなっている)。 |
IBM CloudのIaaS endpoint(161.26.0.0/16)へのアクセス | 直接はアクセスできない。対応しているサービスについてはVPE、そうでないサービスについてはreverse proxy等で中継してやる必要がある。 | 直接アクセス可能(Transit Gatewayに接続していなくてもアクセス可能) |
IBM CloudのPaaS endpoint(166.8.0.0/14)へのアクセス | 直接はアクセスできない。対応しているサービスについてはVPE、そうでないサービスについてはreverse proxy等で中継してやる必要がある。 | 【2024/8 追記】直接アクセス可能(Transit Gatewayに接続していなくてもアクセス可能) |
Transit Gatewayへの接続方式 | PowerVSから延びているCloud Connection(DL2.0)を選択し、"Direct Link"タイプとして接続 | "Power Systems Virtual Server"タイプとして接続 |
オンプレミスからPowerVSへのアクセス | x86環境(VPC, Classic)に配置したサーバーでのNATや、Classicに配置したVRAでのGREトンネリングを行う | オンプレミス <-> DL2.0 <-> Transit Gateway <-> PowerVS の通信が可能 |
PowerVS同士の通信 | Transit Gateway経由で可能 | Transit Gateway経由で可能 |
DAL10にWorkspace作成
DAL10にWorkspaceを作成します。作成時にupgraded networking環境であることが表示されます。
PERが有効になったWorkspaceには、NetworkのメニューにCloud ConnectionsやVPN connectionsのメニューがありません。
IaaS endpointsへの接続
サブネットの作成やAIXのオーダーはこれまでと同様です。
AIXにログインします。
IaaS endpoints(161.26.0.0/16)に直接アクセスできます。
LPARにExternal IPを付けている場合、デフォルトゲートウェイがパブリック側GWを向いているので、161.26.0.0/16についてプライベート側GWに行くよう静的経路を設定します。
DNS
IBM CloudのDNS(161.26.0.10, 161.26.0.11)を直接参照できます。
# cat /etc/resolv.conf
nameserver 127.0.0.1
nameserver 161.26.0.10
nameserver 161.26.0.11
search power-iaas.cloud.ibm.com
# nslookup www.yahoo.co.jp
Server: 161.26.0.10
Address: 161.26.0.10#53
Non-authoritative answer:
www.yahoo.co.jp canonical name = edge12.g.yimg.jp.
Name: edge12.g.yimg.jp
Address: 183.79.217.124
#
NTP
time.adn.networklayer.com(161.26.0.6)を直接参照できます。
/etc/ntp.confに下記2行を追記
server time.adn.networklayer.com
slewalways yes
# ntpq -p -n
remote refid st t when poll reach delay offset disp
==============================================================================
*161.26.0.6 172.17.65.16 2 u 932 1024 377 53.77 -0.054 0.08
#
ICOS
ここ等の手順を参考にs3cmdツールのインストールや初期設定を実施します。
VPEを構成しなくてもPowerVSからICOSのDirect Endpointにアクセスできます。
# nslookup s3.direct.jp-osa.cloud-object-storage.appdomain.cloud
Server: 161.26.0.10
Address: 161.26.0.10#53
Non-authoritative answer:
Name: s3.direct.jp-osa.cloud-object-storage.appdomain.cloud
Address: 161.26.0.47
#
# s3cmd ls
2021-11-08 15:04 s3://bucket-osa-20211109
2021-11-08 15:41 s3://bucket-syd-20211109
# s3cmd ls s3://bucket-osa-20211109
2022-09-12 11:54 1073741824 s3://bucket-osa-20211109/tmpfile
#
Red Hat Subscription
サブスクライブ済みになっています。
[root@tmgw-rhel-dal10 ~]# subscription-manager list
+-------------------------------------------+
インストール済み製品のステータス
+-------------------------------------------+
製品名: Red Hat Enterprise Linux for Power, little endian
製品 ID: 279
バージョン: 8.6
アーキテクチャー: ppc64le
状態: サブスクライブ済み
状態の詳細:
開始: 2023年01月01日
終了: 2024年01月16日
製品名: Red Hat Enterprise Linux Server (for IBM Power LE) - Update Services for SAP Solutions
製品 ID: 382
バージョン: 8.6
アーキテクチャー: ppc64le
状態: サブスクライブ済み
状態の詳細:
開始: 2023年01月01日
終了: 2024年01月16日
製品名: Red Hat Ansible Engine
製品 ID: 408
バージョン: 2.9
アーキテクチャー: ppc64le
状態: サブスクライブ済み
状態の詳細:
開始: 2023年01月01日
終了: 2024年01月16日
[root@tmgw-rhel-dal10 ~]#
なお、Red Hatについては、プロビジョニング後のデフォルト状態で、161.26.0.0/16宛の通信がプライベート側GWに行くよう経路設定済みでした。
[root@tmgw-rhel-dal10 ~]# route -n
Kernel IP routing table
Destination Gateway Genmask Flags Metric Ref Use Iface
0.0.0.0 192.168.231.129 0.0.0.0 UG 100 0 0 env2
161.26.0.0 172.16.235.1 255.255.0.0 UG 101 0 0 env3
ここまではTransit Gatewayに接続しなくてもできます。
ここから、x86リソースや他拠点のPowerVSやオンプレミスと接続するために、Transit Gatewayに接続します。
Transit Gatewayへの接続
Transit GatewayでConnectionを追加する際の選択肢として、Power Systems Virtual Serverが追加されています。
2023年7月時点では、DAL10のPowerVSがこの接続方式に対応しています。
BGP reportにPower Systems Virtual Serverからの経路情報が載るようになり、同じTransit Gatewayに接続しているx86リソース(VPC, Classic)や他拠点のPowerVSと通信が可能になります。
PERの登場により、PowerVSからIBM Cloudのサービスを利用しやすくなり、また、オンプレミスからも接続しやすくなりました。日本での提供開始が望まれる新機能と思います。
以上