AIエージェント協業開発入門
はじめに
近年、LLM(大規模言語モデル)を中心とした AIエージェント を、単体ではなく複数で協業させる開発スタイルが現実的になってきました。本記事では、実プロジェクトでの経験を踏まえながら、
- なぜエージェントを分けるのか
- どのように役割分担するのか
- 人間はどこに介在すべきか
を整理し、「再現可能な協業開発パターン」としてまとめます。
単体AI開発の限界
単一のAI(または単一チャット)で開発を進める場合、次のような問題が発生しがちです。
- 文脈が長くなりすぎて重要な前提が埋もれる
- 設計・実装・検証・ドキュメントが混線する
- 人間が「今、何をAIに任せているのか」分からなくなる
これらは 能力不足ではなく、役割設計不足 が原因であることが多いです。
AIエージェント協業という考え方
AIエージェント協業開発では、
1エージェント = 1つの明確な責務
を原則にします。
人間のチーム開発と同じく、AIにも役割を与えます。
代表的なエージェント例
| エージェント | 主な役割 |
|---|---|
| 設計エージェント | アーキテクチャ設計・方針決定 |
| 実装エージェント | コード作成・修正 |
| 検証エージェント | テスト・ログ確認・妥当性検証 |
| ドキュメントエージェント | README / 記事 / 図解作成 |
| レビュアー | 仕様逸脱・副作用チェック |
これらを同時並行ではなく、明確な受け渡しで連携させます。
人間の役割は「判断」と「切り替え」
協業開発において、人間が常にコードを書く必要はありません。
人間の主な役割は次の3つです。
- ゴールと制約を決める
- どのエージェントに渡すかを判断する
- 結果を採用・却下する
重要なのは、
人間が「実装者」ではなく「編集長」になる
という意識転換です。
実践的ワークフロー例
以下は、実際に安定して回る協業フローの一例です。
[人間]
↓ 目的・制約を明示
[設計エージェント]
↓ 設計案
[実装エージェント]
↓ コード
[検証エージェント]
↓ OK / NG + 修正点
[人間]
↓ 採用判断
ポイントは、途中で役割を混ぜないことです。
コンテキストは「固定文書」で共有する
長期プロジェクトでは、チャット履歴に依存しないことが重要です。
おすすめ構成
-
PROJECT_STATE.md- 用語定義
- 設計方針
- 優先度
- 禁止事項
各エージェントは、
「この文書を前提として振る舞う」
という契約のもとで動かします。
これにより、
- チャットを分けても破綻しない
- ローカルLLM / クラウドLLMを切り替えられる
- 人間が全体像を把握しやすい
といった利点が得られます。
よくある失敗パターン
❌ すべてを1チャットでやろうとする
→ 文脈肥大・判断不能
❌ AIに「よしなに」任せる
→ 仕様逸脱・やり直し増加
❌ 人間が細部まで介入する
→ AIの強みを潰す
協業とは「丸投げ」でも「過干渉」でもありません。
AIエージェント協業が向いている領域
- 研究開発(R&D)
- 個人〜少人数開発
- プロトタイピング
- 技術記事・ドキュメント作成
特に 「設計と実装を往復するプロジェクト」 では効果が高いです。
まとめ
AIエージェント協業開発の本質は、
- AIを増やすことではなく
- 責務を分離すること
にあります。
適切に設計すれば、
個人開発でも、複数人チーム並みの開発体験
を実現できます。
次のステップとしては、
- 自分用の「エージェント役割テンプレ」を作る
- プロジェクト用の固定コンテキストを整備する
ことから始めるのがおすすめです。