2
0

Delete article

Deleted articles cannot be recovered.

Draft of this article would be also deleted.

Are you sure you want to delete this article?

GPT-5.6 とは?Sol・Terra・Luna の3モデル構成を、ベンチマークと料金で読み解く 🚀

2
Last updated at Posted at 2026-07-14

grareco-overview.png

はじめに

GPT-5.6 は、OpenAI が 2026年7月9日に公開したモデルです。特徴は、単一のモデルではなく Sol(旗艦)・Terra(中位)・Luna(廉価)という3つのバリアントで提供される点にあります。3つとも 1M トークンの入力コンテキストと 128K トークンの最大出力を持ち、ChatGPT・Codex・OpenAI API・GitHub Copilot から使えます。

この記事では、GPT-5.6 の3バリアントがどう違い、どう使い分けるのかを整理します。具体的には、それぞれの位置づけ、新しくなったポイント(Sol の Ultra mode、セキュリティコーディングの強化)、他社モデルを含むベンチマーク比較、そしてバリアント別の価格です。コストの見積もりをしたい方にも、モデル選びで迷っている方にも役立つようにまとめました。

先に数字の扱いを断っておきます。本記事のベンチマークとコストの値は、第三者集計と各社公称値の寄せ集めで、同じ環境で同じ日に回し直した値ではありません。とくに SWE-bench Pro は、2026年7月8日に OpenAI 自身が「タスクの約30%に根本的な欠陥がある」と監査結果を公表しており、解釈に注意が必要です。この点は本文の「ベンチマークの読み方」で改めて触れます。

GPT-5.6 とは:Sol / Terra / Luna の3構成 🌞🌏🌙

まず全体像です。GPT-5.6 は、性能とコストの異なる3つのバリアントに分かれています。名前はラテン語で、Sol が太陽、Terra が地球、Luna が月です。上から順に、高性能で高価な Sol、バランスの Terra、軽量で安価な Luna という並びになります。

以下の図は、3バリアントの位置づけを示しています。

この図のポイントは、コンテキストと最大出力は3つとも共通で、違うのは「知能とスピードと価格」だという点です。難しいタスクは Sol、日常業務は Terra、大量の軽い処理は Luna、というように、タスクの重さでバリアントを選ぶ設計になっています。

共通スペックを表にまとめます。

項目 GPT-5.6(Sol / Terra / Luna 共通)
公開日 2026年7月9日
入力コンテキスト 1M トークン
最大出力 128K トークン
提供 ChatGPT(Plus/Pro/Enterprise)/ Codex / OpenAI API / GitHub Copilot
バリアント Sol(旗艦)/ Terra(中位)/ Luna(廉価)

3バリアントの使い分け 🧭

3つのバリアントは、タスクの難しさとコスト感度で選びます。以下の図は、選定の目安です。

この図のポイントは、まず「Sol の知能が本当に要るか」を最初に切り分ける点です。要らないなら、あとはコスト感度で Terra か Luna を選びます。次の表のように、役割で考えると迷いにくくなります。

バリアント 向いている用途 イメージ
Sol 🌞 難しい推論、長時間のエージェント、セキュリティ解析 最高性能が要る本気の作業
Terra 🌏 一般的な開発、要約、チャット 日常業務の主力
Luna 🌙 分類、抽出、大量の単純処理 とにかく安く数をこなす

何が新しいのか:Ultra mode とセキュリティ強化 ✨

GPT-5.6 で目立つ変更が2つあります。1つは Sol の「Ultra mode」、もう1つはセキュリティコーディングの大幅な向上です。

Sol の Ultra mode(並列サブエージェント)

Sol には Ultra mode という動作モードがあり、4つのサブエージェントを並列で走らせます。トークンコストは 3〜4倍になりますが、難しいエージェントタスクでの精度が上がります。実際、シェル操作のエージェント評価である Terminal-Bench 2.1 では、標準の 88.8% が Ultra mode で 91.9% まで伸びます。

以下の図は、標準モードと Ultra mode の違いを示しています。

この図のポイントは、Ultra mode が「トークンを多く使って精度を買う」トレードオフだという点です。3ポイントの精度向上に 3〜4倍のコストを払う価値があるかは、タスクの重要度しだいです。

セキュリティコーディングの大幅向上

もう1つは、セキュリティ関連のコーディング能力です。GPT-5.5 と比べて、脆弱性の発見・悪用系のベンチマークで20ポイント以上の改善が出ています。

ベンチマーク Sol GPT-5.5
ExploitBench 2 73.5% 47.9% +25.6
SEC-Bench Pro 71.2% 45.8% +25.4
ExploitGym 3 24.9% 15.1% +9.8

これはセキュリティ研究や防御ツールの開発には追い風ですが、二面性のある能力でもあります。用途によっては提供側の安全対策が効く場面もあるので、そこは実際に触って確認するのが確実です。

他LLMとのベンチマーク比較 📊

ここからは、GPT-5.6(主に Sol)が他のモデルとどれくらい差があるのかを見ていきます。

繰り返しになりますが、以下の数値はベンダー公称値・第三者集計の寄せ集めで、同一ハーネス・同一日付の再実行ではありません。順位の傾向をつかむ材料として読んでください。

推論・コーディングの主要スコア(Sol)

ベンチマーク GPT-5.6 Sol 測定内容
Terminal-Bench 2.1 88.8%(標準)/ 91.9%(Ultra) シェルベースのエージェントコーディング
Artificial Analysis Coding Agent Index 80 エージェント総合
ARC-AGI-2 92.5% 流動的推論・抽象化
ARC-AGI-3 7.8% 次世代の難関推論
GPQA Diamond 約94% 大学院レベルの推論

ARC-AGI-3 の 7.8% が低く見えますが、これは各社そろって苦戦している次世代ベンチで、絶対値の低さより「まだ誰も解けていない領域」という位置づけです。

他社モデルとの比較(SWE-bench Pro)

コード修正の SWE-bench Pro を、他社と並べます。ここで大事なのは、同じベンチでも測定ハーネスによって数値が大きく変わる点です。

モデル Anthropic ハーネス Scale 標準化
GPT-5.6 Sol 64.6% 46.1%
Claude Sonnet 5 63.2%
Gemini 3.1 Pro 54.2% 46.1%
Claude Fable 5 約80%(論争あり)

(出典: 各社公称・第三者集計 [edenai ほか]。同一環境での再実行値ではありません)

Sol は Anthropic ハーネスで 64.6% と、Sonnet 5(63.2%)とほぼ並び、Gemini 3.1 Pro(54.2%)を上回ります。ただし Scale の標準化ハーネスでは 46.1% まで下がり、Gemini 3.1 Pro と同点になります。つまり「どのハーネスで測ったか」で順位も差も変わるということです。

Web 開発の WebDev Arena では、少し順位が変わります。

モデル WebDev Arena Elo
Gemini 3.1 Pro 1,487(首位)
GPT-5.6 Sol 1,353
Claude Fable 5 約1,653(別集計)

Web 開発の対戦評価では Gemini 3.1 Pro が Sol を上回ります。軸を変えると強いモデルが入れ替わるのは、最近のフロンティアモデルに共通した傾向です。

ベンチマークの読み方:数字を鵜呑みにしない ⚠️

GPT-5.6 のベンチマークを見るうえで、避けて通れない話が2つあります。

1つ目は、2026年7月8日に OpenAI が公表した監査です。SWE-bench Pro のタスクの約30%に根本的な欠陥があると指摘されました。SWE-bench Pro は各社が競って高スコアを出しているベンチですが、そのタスク自体の信頼性に疑問符が付いた形です。この監査以降のスコアは、数値の絶対値よりも「傾向」として読むのが安全です。

2つ目は、前の節でも触れたハーネス差です。同じ SWE-bench Pro でも、Anthropic ハーネスと Scale 標準化で Sol のスコアは 64.6% と 46.1% に割れます。ベンダーが自社に有利なハーネスの数字を出すのは珍しくないので、「どの条件で測ったか」を確認する癖が要ります。

以下の図は、ベンチマークを読むときの注意点を整理したものです。

この図のポイントは、公開スコアは出発点にすぎない、という点です。最終的には自分のユースケースで動かして、精度・トークン・レイテンシを測るのがいちばん確実です。

価格 💰

バリアント別の価格を見ていきます。GPT-5.6 は用途に応じて Batch・Priority・長コンテキストの料金も用意されています。まずは標準の通常料金です。

バリアント 入力(per 1M) 出力(per 1M)
Sol 🌞 $5.00 $30.00
Terra 🌏 $2.50 $15.00
Luna 🌙 $1.00 $6.00

上位から下位へ、入力・出力ともにおおよそ半額ずつ下がっていく分かりやすい階段です。用途別の料金も含めると、次のようになります。

バリアント 通常(入/出) Batch(入/出) Priority(入/出) 長コンテキスト(入/出)
Sol $5 / $30 $2.5 / $15 $10 / $60 $10 / $45
Terra $2.5 / $15 $1.25 / $7.5 $5 / $30 $5 / $22.5
Luna $1 / $6 $0.5 / $3 $2 / $12 $2 / $9

Batch は通常の半額、Priority は倍額、というのが基本の関係です。加えて、プロンプトキャッシュはキャッシュ読み出しが 90% 割引、書き込みは非キャッシュの 1.25 倍です。同じ接頭辞を何度も使うワークロードなら、キャッシュだけでコストが大きく下がります。

他社と並べると、GPT-5.6 の価格帯がつかみやすくなります。

モデル 入力 出力
Claude Fable 5 $10 $50
GPT-5.6 Sol $5 $30
Claude Sonnet 5 $3(導入 $2) $15(導入 $10)
GPT-5.6 Terra $2.5 $15
Gemini 3.1 Pro $2 $12
GPT-5.6 Luna $1 $6

旗艦の Sol でも Claude Fable 5 の半額で、中位の Terra は Sonnet 5 や Gemini 3.1 Pro と競合する価格帯です。廉価の Luna は Gemini 3.1 Pro よりさらに安く、大量処理向けの選択肢になります。

コスト効率で見る使い分け 💡

単価だけでなく、「1タスクあたりいくらかかったか」で見ると、モデルの実力とコストの関係がよりはっきりします。以下は Web スクレイピングのタスク(Zyte Scraping Benchmark、2026年7月)での実測です。

モデル 品質スコア 1実行コスト コード行数
Claude Fable 5 0.910 $4.74 239
Claude Sonnet 5 0.879 $1.48(導入価格) 202
GPT-5.6 Sol 0.857 $1.47 192
GPT-5.6 Luna 0.814 $0.26 152
GPT-5.6 Terra 0.813 $0.57 122

(出典: Zyte Scraping Benchmark 2026年7月 [第三者集計])

この表から読み取れることを整理します。

まず、GPT-5.6 Sol と Claude Sonnet 5 は、1実行コストがほぼ同じ($1.47 対 $1.48)です。Sol は単価こそ Sonnet 5 より高いのに、出力トークンを半分以下しか使わず、所要時間も短いため、結果として同じコストに収まっています。コーディングタスクでは、Sol は Claude Fable 5 と比べて「出力トークン半分未満・所要時間半分未満・コスト約1/3減」と報告されています。

次に、Luna の安さが際立ちます。1実行 $0.26 は Fable 5 の $4.74 の約18分の1です。品質スコアは 0.814 と最上位ではありませんが、「そこそこの品質を最安で大量に」という用途にはよく合います。

まとめると、最高品質なら Fable 5、コスパのバランスなら Sol か Sonnet 5、とにかく安く数をこなすなら Luna、という住み分けになります。私自身がもし新規で選ぶなら、まず Terra か Sonnet 5 を主力に置き、難所だけ Sol を差し、大量の下処理は Luna に回す、という構成から始めると思います。

使い方・提供形態 🛠️

GPT-5.6 は、幅広い経路で使えます。

  • ChatGPT(Plus / Pro / Enterprise): 対話 UI から利用
  • Codex: コーディングエージェント
  • OpenAI API: アプリ組み込み。バリアントをモデル名で指定
  • GitHub Copilot: エディタ統合

API から使う場合は、タスクの重さに応じて Sol / Terra / Luna を切り替えるのが基本です。1つのアプリの中でも、計画や難所は Sol、定型処理は Terra や Luna、というように役割で振り分けると、品質を保ちながらコストを抑えられます。前掲のコスト実測が示すとおり、単価の高いモデルが必ずしも1タスクあたり高くつくとは限らないので、実際に測って選ぶのがおすすめです。

まとめ

GPT-5.6 でいちばん持ち帰ってほしいのは、「1つのモデルではなく、Sol・Terra・Luna をタスクの重さで使い分ける」という一点です。最高性能が要る難所は Sol、日常業務は Terra、大量の軽い処理は Luna。この振り分けだけで、品質とコストのバランスは大きく変わります。

ベンチマークを見るかぎり、Sol は Sonnet 5 と肩を並べ、コスト効率でもよく戦えています。一方で、Web 開発では Gemini 3.1 Pro が上に立つなど、軸によって強いモデルは入れ替わります。しかも SWE-bench Pro は 7月8日の監査で信頼性に疑問が付き、ハーネス差でも数値が割れます。だからこそ、公開スコアは出発点として眺めつつ、最後は自分のタスクで実測して選ぶのが確実です。

まずは1つのワークフローで、Sol・Terra・Luna を並べて品質とコストを測ってみてください。「この作業に Sol の知能は要らなかった」と気づく場面が、きっと何度かあるはずです。

参考

2
0
0

Register as a new user and use Qiita more conveniently

  1. You get articles that match your needs
  2. You can efficiently read back useful information
  3. You can use dark theme
What you can do with signing up
2
0

Delete article

Deleted articles cannot be recovered.

Draft of this article would be also deleted.

Are you sure you want to delete this article?