はじめに
Claude Code には、応答の質とコストを左右する「つまみ」が2つあります。1つは Model(どのモデルに頼むか)、もう1つは Effort(どれだけ深く考えさせるか)です。Model は /model コマンドで Fable 5・Opus 4.8・Sonnet 5・Haiku 4.5 などを切り替えられ、Effort は /effort コマンドで low から max までの5段階を調整できます。
この記事では、この2つのつまみをどう使い分けるかを整理します。具体的には、モデルエイリアスの一覧と切り替え方、Effort レベルの意味と設定方法、タスク別の「Model × Effort」組み合わせ早見表、そして opusplan や ultrathink などの小技です。Claude Code を日常的に使っている方が、「なんとなく既定のまま」から一歩進んで、コストと品質を意識的にコントロールできるようになることを目指します。
内容は Claude Code の公式ドキュメント(Model configuration)と公式ブログの使い分けガイドに準拠しています。エイリアスの解決先や既定値は Claude Code のバージョンやプロバイダで変わるので、2026年7月時点・Anthropic API 直結の場合として読んでください。
2つのつまみ:Model と Effort 🎛️
まず全体像です。Model と Effort は役割がはっきり分かれています。
以下の図は、2つのつまみがそれぞれ何を決めるかを示しています。
この図のポイントは、2つが独立したレバーだという点です。Model はチームメンバーの人選のようなもので、知能の上限と時間単価がここで決まります。Effort は選んだ人に「ざっくりでいいよ」と言うか「じっくり考えて」と言うかの指示です。同じ Sonnet 5 でも、low と xhigh では考える深さもトークン消費も大きく変わります。
そして実践でよく効くのが、「モデルを乗り換える前に、まず Effort を上下してみる」という順序です。Effort の調整はモデル切り替えよりも軽い操作で、多くの場合それだけで望む挙動になります。この感覚を持っておくと、無駄な高級モデル利用を減らせます。
Model の選び方 🤖
モデルエイリアス一覧
Claude Code では、正確なバージョン番号を覚えなくても、エイリアスでモデルを指定できます。Anthropic API 直結の場合、主なエイリアスは次のように解決されます。
| エイリアス | 解決先 | 位置づけ |
|---|---|---|
fable |
Fable 5 | 最難・最長時間のタスク向け。既定モデルではない |
opus |
Opus 4.8 | 複雑な推論・難しい実装 |
sonnet |
Sonnet 5 | 日常コーディングの主力 |
haiku |
Haiku 4.5 | 速くて安い。単純なタスク |
best |
Fable 5(アクセスがあれば。なければ最新 Opus) | 「一番良いやつ」指定 |
opusplan |
プランモード中は opus、実行は sonnet | 計画だけ賢く、実行は安く |
sonnet[1m] / opus[1m]
|
1M トークンコンテキスト版 | 長いセッション向け |
default |
アカウント推奨(または組織既定)に戻す | リセット用の特殊値 |
参考までに、単価も並べておきます(per 1M トークン、2026年7月時点)。
| モデル | 入力 | 出力 |
|---|---|---|
| Fable 5 | $10 | $50 |
| Opus 4.8 | $5 | $25 |
| Sonnet 5 | $3(導入 $2) | $15(導入 $10) |
| Haiku 4.5 | $1 | $5 |
Fable 5 と Haiku 4.5 では単価が一桁違います。「この作業に Fable の知能は要るか」を意識するだけで、毎日のコストは大きく変わってきます。
切り替え方
モデルの指定方法は複数あり、優先順位が決まっています。
# セッション中に切り替え(引数なしでピッカーが開く)
/model sonnet
# 起動時に指定(そのセッション限定)
claude --model opus
# 環境変数(そのセッション限定)
export ANTHROPIC_MODEL=sonnet
settings ファイルで恒久的に設定することもできます。
{
"model": "sonnet"
}
/model のピッカーでは、Enter で「切り替え+新規セッションの既定として保存」、s で「このセッションだけ切り替え」になります。ちょっと試すだけなら s、乗り換えるなら Enter、と使い分けると事故がありません。
モデル選定フロー
どのモデルを選ぶかは、タスクの種別で決めるのが基本です。以下の図は、公式の使い分けガイドをフローにしたものです。
この図のポイントは、真ん中の Sonnet 5 が「迷ったときの答え」になっている点です。日常のコーディングは Sonnet 5 で十分こなせます。そこから、上に外れる(Sonnet で歯が立たない)ときだけ Opus 4.8 や Fable 5 へ、下に外れる(知能が余っている)ときだけ Haiku 4.5 へ動かす、という考え方です。
Fable 5 については、公式が使い方のコツを明記しています。手順ではなく成果(どうなっていてほしいか)を渡す、曖昧な問題(根本原因調査・障害デバッグ・設計判断)を任せる、検証のリマインダーは不要(自分で検証する)、普段なら分割するような大きめのタスクをそのまま渡す、の4点です。逆に言うと、手順が明確な小さい作業に Fable 5 を使うのはもったいない、ということでもあります。
Effort の選び方 🔥
レベルと既定値
Effort は、モデルがステップごとに「考えるかどうか・どれだけ考えるか」を自分で決める適応推論(adaptive reasoning)の強さを制御します。対応レベルはモデルによって異なります。
| モデル | 対応レベル | 既定 |
|---|---|---|
| Fable 5 / Sonnet 5 / Opus 4.8 / Opus 4.7 |
low medium high xhigh max
|
high(Opus 4.7 のみ xhigh) |
| Opus 4.6 / Sonnet 4.6 |
low medium high max
|
high |
対応していないレベルを指定すると、そのモデルが対応する範囲の中で一番近い下のレベルに丸められます(例: Opus 4.6 に xhigh を指定すると high で動きます)。
各レベルの使いどころは、公式ドキュメントの表現をベースにするとこうなります。
| レベル | 使いどころ |
|---|---|
low |
短くスコープが決まった、レイテンシ重視のタスク。知能はそれほど要らない場合 |
medium |
コスト重視。多少の知能を犠牲にしてトークンを削減したいとき |
high |
トークンと知能のバランス点。ほとんどのモデルの既定 |
xhigh |
より深い推論。トークン消費は増える。難しいコーディング・エージェント作業に |
max |
最深推論・トークン制約なし。効果はあるが過剰思考になりがち。広く使う前にテストを |
1つ注意があります。Effort のスケールはモデルごとに較正されているので、「Sonnet 5 の high」と「Opus 4.8 の high」は同じ強さではありません。レベル名はあくまでそのモデル内での相対値です。
設定方法と優先順位
Effort の設定方法も複数あります。
# セッション中に変更(引数なしでスライダーが開く)
/effort xhigh
# モデル既定に戻す
/effort auto
# 起動時に指定
claude --effort high
# 環境変数(最優先)
export CLAUDE_CODE_EFFORT_LEVEL=medium
settings ファイルにも書けます(max と ultracode は書けません)。
{
"effortLevel": "high"
}
さらに、スキルやサブエージェントの frontmatter に effort を書くと、それが動いている間だけセッションの設定を上書きできます。優先順位を図にまとめます。
この図のポイントは、frontmatter の effort が「局所的な上書き」として使える点です。たとえば探索用のサブエージェントに effort: low を書いておけば、メインセッションを high のまま、雑用だけ安く回せます。
もう1つ、地味に大事な挙動があります。Fable 5・Opus 4.8・Opus 4.7 に初めて切り替えたときは、以前に別モデルで設定した effort ではなく、そのモデルの既定が適用されます。「さっき low にしたのに、モデルを変えたら high に戻っている」と感じたら、これが理由です。切り替え後に /effort で選び直せば、以降はその選択が保持されます。
Model × Effort の組み合わせ早見表 🗺️
2つのつまみを組み合わせた、タスク別の推奨をまとめます。私が普段使っている感覚も込みですが、骨格は公式の使い分けガイドに沿っています。
| タスク | Model | Effort | ねらい |
|---|---|---|---|
| 難しいリファクタ・込み入ったバグ修正 | opus |
xhigh |
深い推論に投資。手戻りを減らす |
| 日常のコーディング・機能追加 | sonnet |
high(既定のまま) |
バランス。迷ったらこれ |
| コスト重視の定型作業・軽い編集 | sonnet |
medium |
品質を保ちつつトークン削減 |
| 大量の単純作業・分類・整形 | haiku |
low |
最速・最安で数をこなす |
| 根本原因調査・設計判断・複数日規模 | fable |
high(既定のまま) |
成果を渡して任せる |
| 探索用サブエージェント |
haiku or sonnet
|
low |
fan-out を安く広く |
以下の図は、この早見表を「コスト × タスク難度」の平面に置いたものです。
この図のポイントは、上に行くほど1タスクあたりのコストが上がるという単純な構造です。合言葉にすると、「安い fan-out は広く、判断は高く」。数を撒く作業は Haiku+low で広くこなし、品質が出力に直結する判断だけ Opus や Fable に高い effort で任せる。この一文だけ覚えておけば、だいたいの場面で正しい方向に倒せます。
便利な小技 ✨
Model と Effort の基本を押さえたうえで、知っていると得する機能を4つ紹介します。
opusplan:計画は賢く、実行は安く
/model opusplan にすると、プランモード中は opus、実行フェーズは sonnet に自動で切り替わります。設計の質は計画段階でほぼ決まるので、「考えるところだけ Opus に投資する」という、この記事の思想をそのまま体現したエイリアスです。
ultrathink:そのターンだけ深く考えさせる
プロンプトのどこかに ultrathink と書くと、そのターンだけ深い推論を要求できます。セッションの effort 設定は変わらないので、「基本は medium で回しつつ、ここぞの1回だけ粘ってほしい」というときに便利です。ちなみに "think hard" のような言い回しはキーワードとしては認識されず、ただのテキストとして渡ります。
このデッドロックの原因を ultrathink で調べてください
ultracode:xhigh + ワークフロー編成
/effort ultracode は、モデルの effort レベルではなく Claude Code 側の設定です。モデルには xhigh を送りつつ、実質的なタスクでは動的ワークフロー(マルチエージェントの編成)まで行います。トークンは相応にかかるので、品質最優先のセッション限定モードとして使います。
[1m] と /fast
sonnet[1m] / opus[1m] は 1M トークンコンテキスト版の指定です(sonnet が Sonnet 5 に解決される場合はもともと 1M なので効果はありません)。長時間のセッションでコンテキスト切れが気になるときの選択肢です。/fast は Opus を高速出力で動かすモード(Opus 4.8/4.7 対応)で、モデルの知能はそのままに出力速度を買う、Effort とはまた別の軸のつまみです。
サブエージェントとスキルでの指定 🤝
「安い fan-out は広く、判断は高く」を実装レベルで効かせるのが、サブエージェントとスキルの frontmatter です。
サブエージェント定義(.claude/agents/*.md)では、model と effort を指定できます。
---
name: repo-explorer
description: リポジトリ内を広く検索して要約する
model: haiku
effort: low
---
(サブエージェントへの指示)
こう書いておくと、メインセッションが opus + xhigh で動いていても、この探索エージェントだけは haiku + low で安く走ります。逆に、レビュー担当のサブエージェントに model: opus を与えて判断だけ賢くする、という使い方もできます。環境変数 CLAUDE_CODE_SUBAGENT_MODEL で、サブエージェント全体の既定モデルを変えることも可能です。
以下の図は、この分業のイメージです。
この図のポイントは、Claude Code のセッション1つの中でも「高い判断役と安い実働部隊」の構成が組めるという点です。全部をメインのモデルでやらせるより、トークンの使いどころがはっきりします。
迷ったときの初期値 🧭
最後に、設定に迷ったときの現実的な始め方をまとめます。
- まず
sonnet+ effort 既定(high)で使い始めます。日常のコーディングはこれで大半が回ります。 - 難しい問題で出力が浅いと感じたら、モデルを変える前に
/effort xhighを試します。それでも足りなければ/model opus。 - 逆に、単純な作業で応答を待つ時間がもったいないと感じたら
/effort mediumへ。大量の軽作業は/model haiku+lowに逃がします。 - 根本原因がわからない障害調査や、丸1日規模の大きな仕事ができたら
/model fable。成果だけ伝えて任せます。
この順番のいいところは、各ステップが1コマンドで済み、かつ「上げすぎ・下げすぎ」にすぐ気づける点です。effort はセッションを跨いで保持されるので(max を除く)、一度自分の作業スタイルに合う組み合わせを見つければ、あとは時々微調整するだけになります。
まとめ
大切なことは「Model はタスクの種別で選び、Effort はタスクの難度で調整する」という一点です。日常は sonnet + high、難所は opus + xhigh、単純作業は haiku + low、最難の調査は fable。そして迷ったら、モデルを乗り換える前にまず /effort を動かしてみる。
2つのつまみは独立しているので、組み合わせは自由です。サブエージェントの frontmatter まで使えば、1セッションの中で「安い fan-out は広く、判断は高く」という構成も組めます。まずは今日のセッションで /model と /effort を一度ずつ開いて、自分がいまどの設定で動いているかを確認するところから始めてみてください。既定のままでも困っていなかった方ほど、調整の効果に驚くはずです。
