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レコチョクAdvent Calendar 2023

Day 8

レコチョクチケット(NFT)のエスノグラフィー調査報告

Last updated at Posted at 2023-12-07

この記事は レコチョク Advent Calendar 2023 の8日目の記事です。

はじめに

株式会社レコチョクのQA(Quality Assurance)を担当している清崎と申します。

レコチョクでは"利用時の品質"にも重点を置いて取り組んでおり、その手段の1つとしてUXリサーチを取り入れております。
今回は、取り組み事例として、レコチョクチケット(NFT)のエスノグラフィー調査の事例を紹介します。

レコチョクチケット(NFT)とは・・・

レコチョクチケットについてはこちらで紹介されているのでご参照ください。

紙チケットのように所有でき、電子チケットのように扱える唯一無二の特別なチケットです。

私自身、年に数回はコンサートやフェスに足を運びますが、電子チケットは身近になったなと実感しております。
2023年のナンバーワンアクトはGREENROOM FESTIVALで観たTASH SULTANAです。
ギター、ベース、ドラム、サックスなどをたった1人でルーパーを操ってインプロビゼーションをこなす姿は圧巻のパフォーマンスでした。

概要

背景

2023年5月から新型コロナウイルス感染症が"5類感染症"に変更となり、全社集会と懇親会が実に4年ぶりのリアル開催になりました。
今回、全社集会と懇親会の入場受付に自社サービスの"レコチョクチケット(NFT)"を利用することになり、実利用者がどのような使い方をするか行動観察を行う絶好の機会でしたので取り組みました。

調査方法

  • エスノグラフィー調査
    エスノグラフィー調査とは、「現地で利用者の行動や周囲の環境を観察する定性的な調査手法」です。
    文化人類学などでは、エスノグラフィー調査は対象地域に数ヶ月や1年のような長期間行うことが求められますが、ほとんどの場合、製品やシステム開発ではそうもいかないため、シンプルな現場観察にならざるを得ません。
    レコチョクでもクイック実施できる方法を採用しました。

調査目的

「電子チケット(二次元コード)の提示」から「リーダー端末で読み取る」操作の流れを観察して、何気ない行動から潜在的な問題を見つけ出し、それらをプロダクトへフィードバックすることが目的です。

調査条件・ポイントなど

ユースケース

  1. 事前に特設サイトから電子チケットを無料で購入する
  2. チケットは電子チケット(二次元コード)で、事前に受け取っている
  3. スマートフォンのWebブラウザで電子チケット(二次元コード)を表示させる
  4. 受付で電子チケット(二次元コード)をリーダー端末へかざして読取る
  5. 読み取りの成功・失敗を判断し、成功時にはレコチョクマのイラストが表示される

Flow.png

フィールドの条件

  • 調査員は2名(山里啓一郎清崎康史
  • 来場者は約200人
  • 受付係は3〜5名
  • 受付で利用するリーダー端末は最大5台

clip-hall.png

調査のポイント

  • 何気ない行動・表現・環境から気づきはあるか?
  • ユーザが意識していない部分でのニーズを把握する
  1. 表情や声のトーン:ユーザの表情や声のトーンからも、その人がどう感じているのかを探る
  2. ユーザーの挙動のパターン:特定のパターンがあるかどうかを見つける
  3. ユーザーのフィードバック:今回は交流しない観察を行うため、事後にアンケートを取得する
  4. 環境:受付の導線、照明の明るさ、リーダー端末の位置、通信などがユーザ体験にどのように影響を与えているか

準備

仮説の設定

調査結果と照らし合わせるために、「こんな問題が発生するであろう」「こんな行動を取る人がいるであろう」というものを書き出しました。

例えば次のようなもの

  1. 電子チケット(二次元コード)を表示するための操作が理解できていない
  2. 事前に用意した電子チケット(二次元コード)のスクリーンショットをリーダー端末にかざそうとする
  3. なんらかの理由で読み取り失敗する

フィールドの確認

事前に 会場受付の構造と広さを確認して、何を準備して考慮するかをイメージしておく

機材を準備する

  • 撮影用カメラ(2台)
  • 三脚
    後で振り返るための動画を記録することにしたため、撮影用カメラ(スマホ)と三脚を準備する。
  • メモ&ペン(記録用フォーマットを準備)
  • アンケート
    Webアンケートフォームを作成してレコチョクチケットを利用体験について回答を収集することにしました。

調査実施

調査現場の様子

clip-zoomin.png

  • 受付の導線
    開場の時間が45分あったため、分散入場されており待ち行列は発生しなかった。
  • 照明の明るさ
    入り口の扉を開放すると外の明るさもあり気にならない。
  • リーダー端末の位置
    高さ100cm(腰の位置)で体勢を低くしなくても読み取りできる。
  • スタッフの配置
     受付3名 
  • 読み取りから表示までの時間:平均約3秒

注意したこと

  • 仮説は立てていますが、一旦脇においてバイアスをかけないようにする
    どうしても答え合わせしたくなるので、まだ表面化していない問題や新たな発見を見つけることに重点を置きました。

  • 行動をメモするときに分析や主観を入れない事実だけを書く

    • 主観が入っている:読み取り音が鳴ったので、過去の経験から読み取り成功と確信し、画面表示の確認をせずに立ち去った。
    • 主観が入っていない:読み取り音が鳴ったことに気が付いており、画面表示の確認を行わずに立ち去っていった。
  • 観察していることを気付かれないよう過度な接触は避けた(ホーソン効果)

  • 周りの環境・状況にも注意を払う
    騒音や明るさ混雑状況などもメモしておく

  • タスクを完了するまでの所要時間を計測しておく
    行動や発話以外にも効率的に利用されているか時間を計測することで改善すべき点が見つかることもある。

調査結果

観察内容から類似する事実をまとめ、特に気になる行動に着目しました。

気になる行動(抜粋内容)

  • 「チケット表示」のボタンが存在することに気が付いていない
  • 3秒超えるともう一度読み取ろうとする
  • 周囲の環境影響で認証の音に気づいていなかった
  • 読み取り後になにをもって成功したか理解していない

アンケート結果(満足度結果)

調査結果とアンケートの自由回答を照らし合わせ、タスクの流れごとにまとめることにしました。

Question_n_survey.png

アンケートでは忌憚のないご意見やポジティブな反応もありました。

satisfaction.png

  • ご意見
    受付をした際に完了したかどうかを判別するためにリーダー端末へ伏せた後に端末画面を起こしたりしながら確認する必要があった。
  • 快適さ
    二次元コードをかざすだけなので、入場が楽だった。
    以前と比べて、受付が早くなり良いと思います。
  • 楽しさ
    もぎり後のレコチョクマの画像がランダムで可愛らしく、もぎり後にどんな画像に変化するかワクワクできて良かったです!

まとめ

良かった点

ユーザーテストやデプスインタビューなどの「用意された環境」ではなく、「自然な環境」での利用シーンを観察することは有益な経験でした。
行動以外に次のような環境面に起因する発見があり、オフィスでは気が付かないことがあると感じました。

  • 読み取り中に画面回転して"二次元コードが隠れてしまっている"ことに気が付かない
  • 受付に人が集まりだすとリーダー端末の読み取り音が聞き取り辛くなる

悪かった点

  • 2台のカメラを用意して「全体を俯瞰する画角」と「手元のクローズアップ」がわかるようにしたが、カメラ前に立ち止まる人が続出する事態になりました。配置はしっかり考えておく必要がある。
  • 調査員2名では、会場外の周辺まで観察できず、規模に合わせて調査員を配置する必要がありました。
  • 客観的な事実と観察に基づいて調査を行うつもりが、主観が混ざってしまう(主観が悪いことではありません)。

次のステップ

今回の調査で事実に基づく気づきを得たため、改善案の検討が必要です。
引き続き、レコチョクチケットの担当者と協力し、改善を進めていきます。
今回ご協力いただいた皆様に、心から感謝申し上げます。


明日の レコチョク Advent Calendar 2023 は9日目「エンジニア組織紹介 - バックエンドアーキテクトG -」です。お楽しみに!

この記事はレコチョクのエンジニアブログの記事を転載したものです。

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