この記事は 「本当にはじめて、今日からPythonを触ってみよう」 と思われている方に向けた記事です。なぜ書こうと思ったかと言いますと、Windows11上で "WSLを使わずに" GPUを利用してPythonで機械学習を勉強する旨の記事が 「WSLを利用する手順を紹介する記事」 が多いことにより、検索で埋もれてしまい、ヒットしにくくなっているためです。また、 すべてのスクリーンショットが明示されている手順書はあまりなさそう なので、それも意識しました。
本手順を契機に、Python民が増えたら嬉しいです。
今回Python開発環境の構築に利用したPC
以下のスペックのPCで開発環境を構築しました。
- Windows 11 Pro/Home
- Intel Core i5-12600K
- GeForce RTX3060Ti
- GPU使いたい方向けなので、なくても問題ありません
- ある程度(8GB over)のメモリを搭載したGPUをご準備ください
本記事の流れ
- GPU周りの開発に必要なライブラリやドライバをインストールする
- Anacondaをインストールする
- Pythonを直接インストールしない
- Visual Studio Codeをインストールする
- Pythonの仮想環境を定義する
- このとき自動的にPythonがインストールされる
- PyTorch/TensorFlow(GPU対応版)をインストールする
Anaconda on Windows11:インストール前の準備
まず、Anaconda3のインストールに際して、GPU周りを事前にセットアップします。 Python環境は作りたいけどGPUは要らないよ、という方は本節を読み飛ばしてください。
- GPUドライバを最新のものに更新する
- NVIDIA CUDA/cuDNNを利用したいため
- 今回はGPUとして「NVIDIA GeForce RTX3060Ti」を搭載しました
- CUDA + cuDNNをインストールする
- 今回はGPUにRTX3060Tiを利用します
- CUDA 12.6 Update 3
- cuDNN 9.6.0
NVIDIA GPUドライバを最新版へと更新する
事前に、WindowsにインストールされているNVIDIAのGeForceドライバーを最新のものにアップデートします。GeForceドライバーより 「ドライバーの自動更新」-「今すぐダウンロード」 をクリックし最新の状態に更新してください。
CUDA 12.6 Update 3をインストールする
続いてGPUを汎用的な演算へ利用できるようにする 「CUDA」 をインストールします。
ダウンロードとインストール
下記のWebサイトへアクセスし 「Windows」-「x86_64」-「Windows11」-「exe(local)」 を選択して、表示されるインストーラーをダウンロードしてインストールしてください。
インストール後の確認
インストール後、スタートメニューから 「環境変数」 を開いて、 「システム環境変数」 に 「CUDA_PATH」「CUDA_PATH_V12_6」 が含まれていることを確認してください。
PowerShellから「nvidia-smi」でGPUが見えることを確認する
Windowsのスタートボタンを右クリックして 「ターミナル(管理者)」 を選択し、開いたターミナル上で nvidia-smi
を実行し、以下の画面が表示されることを確認してください。この確認により 「インストールされたCUDAのバージョン」 と 「インストールされているGPUドライバのバージョン」 を見ることができます。
cuDNN 9.6.0をインストールする
CUDAと同様にして 「cuDNN」 をインストールします。cuDNNはCUDAをDeep-Learning-Neural-Networkから利用できるようにするためのミドルウェアです。Windows10向けのインストーラーしかありませんが、Windows11環境であってもWindows10のインストーラーでインストールして問題ありません。 「Windows」-「x86_64」-「Windows10」-「exe(local)」 を選択して表示されたインストーラーを利用してください。
Anaconda3をインストールする
それでは、いよいよPythonをインストールしていきましょう。Pythonのインストールでは、直接Pythonをインストールするのではなく、 「Anacoda3」 と呼ばれるPythonの仮想環境(Pythonと開発に必要なライブラリを含んだ小さな箱)を定義するための 開発をサポートするアプリケーション をインストールし、Pythonの仮想環境を作る際にAnaconda3経由でPythonをインストールします。
Anaconda3をダウンロードする
まず、下記のサイトへアクセスし、Pythonをダウンロードしてください。
ダウンロード完了後、インストールします。
Anaconda3をインストールする
ダウンロードしたファイルを開き、インストールを開始します。
インストール先は パスに空白や日本語文字列が含まれない C:¥Anaconda3¥
としました。
以上でAnaconda3のインストールは完了です。
Anacondaを初期化する
Anacondaを使う準備を進めていきましょう。
condaコマンドを実行できるように環境変数を設定する
Anacondaを利用するには、環境変数 「PATH」 に、Anacoda3をインストールしたフォルダー内にある Scripts
が指定されていると都合が良いです。 環境変数を開き、PATHに対して編集を行い C:¥Anaconda3¥Scripts
を指定 します。ここまで来たら一旦Windowsを再起動してください。
condaを実行できるようポリシーを追加する
続いて、Anacondaのコマンドである conda
を呼び出せるように、Windows Power Shellから設定を行います。Windowsスタートボタンを右クリックし 「ターミナル(管理者)」 を開き、下記のコマンドを入力し、 警告なくコマンドを実行できる ようにします。
$ Set-ExecutionPolicy RemoteSigned -Scope CurrentUser
conda initを実行する
「ターミナル(管理者)」 上で conda init
を実行し、初期化を行います。最後に conda info -e
を入力すると、現在の、Pythonの仮想環境がインストールされていない状態を確認することができます。 ここまで来たら一旦Windowsを再起動してください。
$ conda init
# no change C:\Anaconda3\Scripts\conda.exe
# no change C:\Anaconda3\Scripts\conda-env.exe
# no change C:\Anaconda3\Scripts\conda-script.py
# no change C:\Anaconda3\Scripts\conda-env-script.py
# no change C:\Anaconda3\condabin\conda.bat
# no change C:\Anaconda3\Library\bin\conda.bat
# no change C:\Anaconda3\condabin\_conda_activate.bat
# no change C:\Anaconda3\condabin\rename_tmp.bat
# no change C:\Anaconda3\condabin\conda_auto_activate.bat
# no change C:\Anaconda3\condabin\conda_hook.bat
# no change C:\Anaconda3\Scripts\activate.bat
# no change C:\Anaconda3\condabin\activate.bat
# no change C:\Anaconda3\condabin\deactivate.bat
# no change C:\Anaconda3\Scripts\activate
# no change C:\Anaconda3\Scripts\deactivate
# no change C:\Anaconda3\etc\profile.d\conda.sh
# no change C:\Anaconda3\etc\fish\conf.d\conda.fish
# no change C:\Anaconda3\shell\condabin\Conda.psm1
# no change C:\Anaconda3\shell\condabin\conda-hook.ps1
# no change C:\Anaconda3\Lib\site-packages\xontrib\conda.xsh
# no change C:\Anaconda3\etc\profile.d\conda.csh
# no change C:\Users\ixiv2\OneDrive\ドキュメント\WindowsPowerShell\profile.ps1
# no change HKEY_CURRENT_USER\Software\Microsoft\Command Processor\AutoRun
# No action taken.
$ conda info -e
# conda environments:
#
# base * C:\Anaconda3
Visual Studio Codeをインストールする
Visual Studio Codeは広く利用されているプログラムの開発環境です。様々な拡張機能を追加することにより、あらゆる言語のプログラムの実装やデバッグをすることができます。 下記のサイトからインストーラーをダウンロードしてインストールしてください。
インストールするとWindowsスタートメニューから、それを確認することができます。 拡張機能をインストールするため に、早速、Visual Studio Codeを起動してください。
Visual Studio Codeに拡張機能をインストールする
Visual Studio Code左端にあるメニューから 「拡張機能」 を選択し、以下の拡張機能をインストールしてください。インストール後、 Visual Studio Codeを再起動してください。
- Japanese Language Pack for Visual Studio Code
- Python
- Jupyter
- Remote Development (今回は特に利用しません)
- WSL (今回は特に利用しません)
- Docker (今回は特に利用しません)
Visual Studio CodeからPyTorchを利用する
Windowsスタートボタンを右クリックし 「ターミナル(管理者)」 からAnacondaを操作して、Pythonの仮想環境を作成します。ここでは、機械学習系で広く利用される 「PyTorch」 と 「TensorFlow(GPU)」 のセットアップ手順を紹介ます。
PyTorchをインストールする
以下のコマンドを実行し、PyTorchをインストールするための仮想環境を作成します。
# Pythonの仮想環境を作成する
$ conda create -n first_pytorch python=3.12
# Pythonの仮想環境にログインする
$ conda activate first_pytorch
# Pythonのバージョンを確認する
(first_pytorch) $ python --version
# Python 3.12.8
続いて、PyTorchのWebサイトからPyTorchをインストールするためのコマンドを確認します。このとき、CUDAのバージョンを指定する必要があります。今回は 「12.6 Update3」 をインストールしていますので、最もバージョンの近い 「CUDA 12.4」 を選択しました。
ターミナルで指定されたコマンドを実行します。
(first_pytorch) $ pip3 install torch torchvision torchaudio --index-url https://download.pytorch.org/whl/cu124
PyTorch以外にも機械学習を実装する際に必要となるであろうライブラリをインストールしておきます。 「ipykernel」 をインストールすることにより 「.ipynb拡張子」 のPythonスクリプトを作成した際に、対話形式でPythonのプログラムを実装することができます。
(first_pytorch) $ pip install ipykernel
(first_pytorch) $ pip install numpy
(first_pytorch) $ pip install matplotlib
(first_pytorch) $ pip install pillow
(first_pytorch) $ pip install opencv-python
作業フォルダーを開く
Visual Studio Codeの 「フォルダーを開く」 をクリックし、開発の作業に利用するフォルダを開きます。フォルダーはどこを選択しても問題ありませんが、今回は C:¥python_sandbox
を作成し、選択しました。
警告が出ますが、問題なければ 「作成者を信頼します」 をクリックします。
Visual Studio CodeからPython仮想環境を利用する
作業フォルダーに first_pytorch.ipynb
ファイルを作成します。これにより対話型のプログラム実装画面が表示されます。右上に表示されている 「カーネルの選択」 をクリックし、Pythonの仮想環境を選択します。
今回は先の手順で作成した 「first_pytorch」 を利用したいので 「別のカーネル」-「Python環境」-「first_pytorch」 を選択します。
GPUを認識できていることを確認する
最後に、以下のソースコードを実行し、Pythonの仮想環境構築の際にインストールした 「PyTorch」 をimport(import torch
)することが出来て、cuda.is_available()
を実行しGPUが利用できるようになっていることを確認しましょう。
import torch
torch.cuda.is_available()
Visual Studio CodeからTensorflowを利用する
続いて、 PyTorch向けとは別の新しいPythonの仮想環境 を定義し、 「TensorFlow(GPU)」をインストール します。機械学習のフレームワークはひとつの仮想環境に全部詰め込むのではなく、利用するフレームワークごとに仮想環境を定義した方が良いです。 これは、機械学習のフレームワーク間で依存するライブラリが衝突するためです。
TensorFlowをインストールする
ターミナルから以下のコマンドを実行して、TensorFlow(GPU)を含んだPython仮想環境を定義します。 仮想環境を作成する際に tensorflow=*=gpu_*
を指定 することにより、TensorFlow(GPU)を実行するために最適なPythonの仮想環境を定義することができます。
# Python仮想環境を作成する
$ conda create --name first_tensorflow tensorflow=*=gpu_*
# ...
# Python仮想環境にログインする
$ conda activate first_tensorflow
# Pythonのバージョンを確認する
(first_tensorflow) $ python --version
# Python 3.10.13
# 必要なライブラリをインストールする
(first_tensorflow) $ pip install ipykernel
(first_tensorflow) $ pip install numpy
(first_tensorflow) $ pip install matplotlib
(first_tensorflow) $ pip install pillow
(first_tensorflow) $ pip install opencv-python
Visual Studio CodeからPython仮想環境を利用する
Visual Studio Codeでカーネルを切り替えることにより、TensorFlowを利用することが出来ます。ここでも first_tensorflow.ipynb
ファイルを作成して、作業を行います。
GPUを認識できていることを確認する
最後に、下記のソースコードをプログラム上へ貼り付け、TensorFlowからGPUを利用できることを確認してください。出力に GPU
や「グラフィックボードの型番」等の表記が含まれていれば、問題ありません。
from tensorflow.python.client import device_lib
print(device_lib.list_local_devices())
昨晩、突然、PyTorch本を勉強したいという方が現れまして、突貫工事で記事を書きました。 本手順を利用することによりWindows11上でPyTorchやTensorFlow(GPU)のフレームワークを利用した機械学習を勉強できる かと思います。
是非、みなさまの開発にお役立てください。
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