はじめに
請求書を「発行する」側だけでなく、取引先から受け取った PDF 請求書・領収書・契約書をどう保存するかも、中小企業にとって悩ましい問題です。
メール添付、ダウンロードフォルダ、共有フォルダに散らばったままだと、あとから「取引先名」「日付」「金額」で探すのが難しくなります。電子帳簿保存法の観点でも、電子取引データは電子のまま保存し、検索できる状態にしておく必要があります。
NeNe Vault は、受け取った事業書類を自社サーバーに保存・検索・保全するためのオープンソース(MIT)です。基盤には、API-first / OpenAPI / MCP 対応を前提にした軽量 PHP フレームワーク NENE2 を使っています。
リリース状況(2026年6月時点) — NeNe Vault は 正式リリース直前の調整中 です。主要機能の実装は完了していますが、本番利用前の最終確認として 税理士 Review 3 と Tier A 共有ホスティング実機テスト が残っています。この記事は Docker での試用・評価向けです。実際の運用判断は、自社要件と税理士等の確認のうえで行ってください。MIT ライセンスですが 無保証 です。
誰向けの記事か — 経理・総務の方が「受け取った証憑を自社で保管できるか」を試したいとき、またはエンジニアが社内検証するときの ハンズオン です。法律解説そのものではなく、自己ホスト型 OSS としての動き方を確認します。
NeNe Vault でできること(この記事の範囲)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 受領書類の保存 | PDF / JPEG / PNG のアップロード |
| 検索 | 取引年月日・取引金額・取引先名の条件検索 |
| 変更履歴 | メタデータ変更、void / restore、ファイル版数の履歴 |
| 完全性 | ファイル SHA-256 を保存し、ダウンロード時に検証 |
| 出力 | 税理士確認用の manifest CSV / ZIP |
| MCP | AI ツールからの検索・履歴確認・メタデータ更新 |
しないこと — 請求書の発行、入金消込、銀行 CSV 正規化、仕訳、経費精算ワークフローは扱いません。発行側は NeNe Invoice、入金消込は NeNe Clear、銀行 CSV 正規化は NeNe Profile の領域です。
1. Docker で起動する
ホストに PHP / Node / Composer がある前提の、開発・検証向けクイックスタートです。
git clone https://github.com/hideyukiMORI/nene-vault.git
cd nene-vault
composer install
cp .env.example .env
docker compose up
起動後:
| 用途 | URL |
|---|---|
| 管理画面 | http://localhost:5186 |
| API | http://localhost:8600 |
初期管理者は .env の ADMIN_EMAIL / ADMIN_PASSWORD で設定します。デフォルトは次のとおりです。
| 項目 | 値 |
|---|---|
| メール | admin@example.com |
| パスワード | changeme123 |
本番では必ず強いパスワードと適切なシークレットを設定してください。
2. 受領書類をアップロードする
管理画面にログインし、Documents から PDF または画像ファイルをアップロードします。
登録する主なメタデータは次の3つです。
- 取引年月日
- 取引金額
- 取引先名
これは電子帳簿保存法の検索要件に合わせた最小セットです。NeNe Vault では、これらの項目をあとから検索できるように保存します。
3. 日付・金額・取引先で検索する
保存した書類は、取引日、金額範囲、取引先名で検索できます。
たとえば、税理士から「2026年5月の A 社からの請求書を見たい」と言われたとき、メールボックスや共有フォルダを探し回らずに、Vault 上で条件検索できます。
検索要件を「便利機能」ではなく、プロダクトの中心に置いているのが Vault の特徴です。日付・金額・取引先の組み合わせで探せることを、最初から設計の前提にしています。
4. ファイルの上書きではなく、履歴を残す
NeNe Vault は「間違えたからファイルを上書きする」という設計を避けています。
保存済みファイルは SHA-256 で検証され、変更が必要な場合は新しいバージョンや監査イベントとして履歴を残します。書類を無効化する場合も、ハード削除ではなく void として記録します。
これは、あとから「誰が、いつ、何を変更したか」を追えるようにするためです。
5. 税理士確認用にエクスポートする
保存した書類は、manifest CSV や ZIP として出力できます。
manifest には、書類 ID、取引日、金額、取引先名、ファイルハッシュなどが含まれます。税務調査や顧問税理士への確認時に、ファイルとメタデータの対応を説明しやすくするためです。
6. MCP から検索できる
NeNe Vault は、ローカル MCP サーバーからも書類検索や履歴確認ができます。
たとえば、AI アシスタントに次のように聞ける構成です。
2026年5月の請求書をすべて検索して、合計金額を教えて
主な MCP ツール:
| Tool | 目的 |
|---|---|
searchVaultDocuments |
日付・金額・取引先で検索 |
getVaultDocumentById |
書類詳細と SHA-256 を取得 |
getVaultDocumentHistory |
バージョンと監査履歴を取得 |
exportVaultDocumentsCsv |
manifest CSV を出力 |
ocrSuggestVaultDocument |
OCR でメタデータ候補を提案 |
OCR は「正」として自動反映するのではなく、あくまで候補です。最終確認は人間のオペレーターが行う前提にしています。
7. NeNe Invoice との関係
NeNe Invoice は、見積・請求・入金管理、つまり「発行する側」のシステムです。
一方、NeNe Vault は、取引先から受け取った請求書・領収書・契約書などを保存する「受領側」のシステムです。
同じ NeNe ファミリーですが、データベースは共有しません。必要な連携は HTTP API 経由に限定し、1つの巨大な会計システムにはしない設計です。
まとめ
NeNe Vault は、受領証憑を自社サーバーに置きたい中小企業向けの、軽量な保存・検索・監査ツールです。
- 電子取引データを電子のまま保存する
- 日付・金額・取引先で検索する
- 変更履歴と SHA-256 で追跡可能性を保つ
- 税理士確認用に manifest CSV / ZIP を出力する
- 請求発行や仕訳には踏み込まない
まずは Docker で触って、自社の証憑保存フローに合うかを 試す のがおすすめです。正式な本番判断は、Review 3 とリリース状況を確認したうえで行ってください。
リンク
| 種類 | URL |
|---|---|
| リポジトリ | https://github.com/hideyukiMORI/nene-vault |
| NeNe Invoice | https://github.com/hideyukiMORI/nene-invoice |
| NENE2 | https://github.com/hideyukiMORI/NENE2 |
| ポートフォリオ一覧 | https://github.com/hideyukiMORI |
フィードバックは GitHub Issues へ歓迎します。





