7年間PdMをやってきた自分が、Redditのあの投稿を見てハッとした――「What the hell is an AI Product Manager anyway?」
自分はその質問に、すぐには答えられなかった。
7年間の常識が、半年で崩れた
LLMを初めて使った時、JiraやFigmaを扱うのと同じ感覚で使っていた。ChatGPTを開き、要件を入力し、出力をコピーしてドキュメントに貼り付ける。7年間のプロダクトマネジメント経験があるから、こういうツールの使い方は得意なはずだった。
でも、違和感があった。
ある時、AIにPRDを書かせて開発者に見せた。開発者が言った。「要件は問題ないけど、なんでAIはうちの技術的負債を考慮してないの?」
言葉に詰まった。自分はAIに技術的負債を考慮させようとすらしなかった――自分の中では、あれはただの「ドキュメント生成ツール」だったから。
でも、LLMはJiraじゃない。Jiraは優先順位を判断しないし、あなたの前提を疑問視しないし、深夜3時に「この案にはリスクがあるかも」とメッセージを送ってこない。LLMは――それが可能なのだ。
Duke大学がCourseraで提供しているAIプロダクトマネジメント講座を受講した際、この違いが明確に言語化されていた。従来のツールは「Aを入力すればBが出力される」。一方、AIは「Aを入力すれば、BかCかDが出力され、それぞれに確率が伴う」。
7年間積み上げてきた常識が、わずか半年で崩れ去った。
ベテランの盲点:「どのモデルを選ぶか」にこだわっていた
2025年初頭、チームでプロジェクト案を議論する際、1週間かけてGPT-4、Claude、Geminiのベンチマークデータを比較した。パラメータ数、コンテキスト長、価格、API安定性……体裁の整った比較表を作成した。7年間の経験で培った「資料作りの技術」がここでも活きたと思っていた。
そして自分に問うた。「来年、50個のAIエージェントを管理する時、この比較表は何の役に立つ?」
答えられなかった。
その後、Google Cloudが発表したGemini Enterprise Agent Platformのアーキテクチャを見て、問題の所在が明確になった。エンタープライズ向けAIプロダクトにおいて、2026年以降の焦点はもはや「単一のモデル選定」ではなく、「複数エージェントのオーケストレーションをどう設計・管理するか」へ移行しつつある。モデル選択はあくまで一端に過ぎず、セキュリティガバナンス、パフォーマンス監視、システム間連携こそが本丸なのだ。PdMに求められるのは、エージェント間の責任分界点の設計、失敗時のフォールバックフロー、そしてビジネスKPIとの整合性検証である。
IBMが提唱するEnterprise AI Agentsの考え方はより直接的だ。AIエージェントは「人間の効率を上げるツール」と見るべきではなく、「ビジネスプロセスの再設計」と捉えるべきだと。エージェントが複雑なワークフローを自律的に完了できる時、「人間の作業を支援する」という位置づけ自体が揺らぐ。
7年間のPdM経験が、むしろ足かせになっていた:自分が注視していたレイヤーが低すぎた。
PropTechが教えてくれたこと
不動産テック(PropTech)に携わっているが、これはこの変革を観察するのに最適な窓口かもしれない。
従来の不動産管理は典型的な人材集約型業務だ。例えば、賃料回収、修繕手配、入居者対応、コンプライアンスチェック。AIエージェントが介入した後、変化は「不動産管理の効率が30%上がった」ではなく、大部分の事務作業が直接代替されたのだ。
パイロットプロジェクトを目の当たりにした。そこでは、エージェントが賃料督促、メンテナンスチケットの配布、入居者のよくある質問への返信を自動処理する。元々3人分の仕事量が、異常ケースを処理する1人で十分になった。
残った「人」の仕事は何になったか?入居者の苦情処理(感情判断が必要)、賃料値上げの判断(商業判断が必要)、オーナーとの交渉(関係構築が必要)。
これらはまさに7年間やってきたプロダクトマネジメントの中核だ――境界を定義する、曖昧性を処理する、価値判断を下す。AIが来ても、これらは変わらない。むしろ、より重要になった。
7年目のPdMが、AI時代に再定義する「AIプロダクトマネージャー」
7年目の今日、もし「AIプロダクトマネージャーって何?」と聞かれたら、3つのことを答える。
第一に、「人」の境界を定義する。
AIができることが増えるほど、プロダクトマネージャーの中核業務は境界を引くことになる。どの判断は人間がしなければならないか、どれをAIに任せられるか、引き継ぎポイントはどこか。これは技術問題ではなく、プロダクト問題だ。PropTechプロジェクトで最も時間をかけたのはAI機能の設計ではなく、「AIがいつ停止して人間の確認を待つべきか」のルール設計だった。
第二に、不確実性を管理する。
従来のソフトウェア出力は確定的だ。AIプロダクトの出力は確率的だ。「要件は確定している」という前提で7年間動いてきた自分にとって、これは大きな転換だった。プロダクトマネージャーは不確実性の中でユーザー体験を設計する必要がある――「許容可能なエラー率」を定義し、「AIが間違えた時の救済フロー」を設計する。今の自分のPRDには、必ず「AI失敗時のユーザー体験」という節がある。
第三に、エンタープライズ展開ではガバナンスが機能と同等、あるいはそれ以上に重要になる。
企業が数十個のエージェントを中核業務に展開する時、「このエージェントが間違ったことを言わないか」が「このエージェントがいくつの質問に答えられるか」より重みを増す。セキュリティ、コンプライアンス、説明可能性――以前は「非機能要件」と呼ばれていたものが、今はプロダクトの成否を分ける核心要件になっている。7年間で「機能要件を満たすこと」が最優先だった自分にとって、これは価値観の転換だった。
最後に
Redditのあの質問に戻る。「What the hell is an AI Product Manager anyway?」
7年目の自分の答えはこうだ:「AIを知っているプロダクトマネージャー」ではなく、「プロダクトマネジメントの本質を知っている、AI時代のバージョン」だ。
7年間やってきた「ニーズの翻訳者」としてのスキルは無駄にならない。ただ、そのスキルを「人間とAIの協働デザイナー」という新しい文脈で再定義する必要がある――人間とAIがどう一緒に働き、それぞれが何を担うかを設計する。
このパラダイムシフトは一朝一夕では起こらない。7年の経験があったからこそ、その本質に気づくのに半年を要したのだ。しかし、あのReddit投稿がこれほど議論を呼んだこと自体、業界が確実に次のフェーズへ動いている証だろう。
自分はまだ模索中だ。7年目にして、また初心者に戻った気分だ。もしあなたもAIプロダクトマネジメントに携わっているなら、ぜひ交流してほしい――この分野は変化が速すぎて、半年前の認識はもう古くなっているかもしれないから。
参考素材:
- Reddit r/ProductManagement: "What the hell is an AI Product Manager anyway?"
- Duke University: AI Product Management Specialization (Coursera)
- orq.ai: LLM Product Development in 2026
- AI21: The Complete Guide to LLM Product Development
- Google Cloud: Gemini Enterprise Agent Platform
- IBM: Enterprise AI Agents: Beyond Productivity
- Proptech.AI: Next-Generation Property Management